「人間の脳は25歳で完成する」。判断力や自制心に関わる前頭前野の話として、恋愛相談から車の運転まで、あちこちで引き合いに出されてきた定説です。ところが、25歳をはっきりした区切りとする根拠は見つかっておらず、思春期の発達を研究してきた心理学者も「なぜみんなが25を選んだのか、正直わからない」と話しています。脳の発達が20代まで続くことは研究で示されていますが、数字だけが独り歩きしたようです。
※注:前頭前野(前頭前皮質)は、額のすぐ内側にある脳の領域です。計画を立てる、リスクを見積もる、衝動を抑えるといった働きに関わるとされています。
※注:「俗説」とされているのは、「25歳で完成する」という区切りの部分です。10代後半から20代にかけて前頭前野の発達が続くこと自体が否定されたわけではありません。
今日の知ってた?
🧠 「脳(前頭前野)は25歳で完成する」という説は広く知られているが、25歳をはっきりした区切りとする強い根拠は見つかっていない。
📈 脳の発達が20代に入っても続くことは、多くの研究が示している。前頭前野は、脳のほかの領域よりゆっくり成熟する。
❓ 「25」という数字の出どころははっきりしない。米国の研究者ジェイ・ギードが2004年、米誌『タイム』の取材に「いま数字を選ぶなら、25歳まで追うでしょうね」と語ったことが、きっかけのひとつに挙げられている。
🗣️ 思春期の発達を研究する心理学者ローレンス・スタインバーグは2022年、米ウェブ誌『スレート』の取材に「なぜみんなが25を選んだのか、正直わからない」と答えた。
🔬 2025年に発表された研究は、脳の配線のうえでの発達期が30代のはじめごろまで続くと報告している。何歳ごろに落ち着くかは、人によって違うとされる。
背景:「25歳」はどこから来たのか
話の始まりは、1990年代の終わりごろです。体を傷つけずに脳の中を撮影できるMRI(磁気共鳴画像装置)を使い、同じ子どもの脳を何年もかけて繰り返し撮影して、成長にともなう変化を追う研究が進みました。代表的なのが、米国立精神衛生研究所のジェイ・ギードらが1999年に科学誌『ネイチャー・ニューロサイエンス』に発表した研究です。子どもから若者まで145人、計243回分の画像を調べ、神経細胞の本体が集まる「灰白質」の量が、前頭葉では思春期に入るころにピークを迎え、そのあと減っていくことを示しました。
減るといっても、衰えるという意味ではありません。使われない神経のつながりが整理されていく「シナプスの刈り込み」と呼ばれる過程だと説明されています。2004年には、神経科学者ニティン・ゴグテイらが、4歳から21歳までの13人を2年おきに撮影した結果を米国科学アカデミー紀要に発表しました。大脳の表面は、感覚や運動に関わる領域から先に成熟し、前頭前野はいちばん最後のほうになる、という内容です。
ここで注意したいのは、こうした研究が追いかけていたのが、20歳前後までだったことです。モントリオール大学の研究者テイラー・スノーデンは、学術系ニュースサイト『ザ・カンバセーション』への寄稿で、データが20歳あたりで途切れていたため、発達がいつ終わるのかは正確には言えず、25歳という数字は「最良の推定値」として広まっていった、と説明しています。
ギード本人の発言も残っています。2004年、米誌『タイム』の取材に「始めたときは、18歳か20歳くらいまで追うつもりでした。いま数字を選ぶなら、25歳まで追うでしょうね」と語りました。記事は、脳が本当に成熟する時期についてのギードの見立てを「25歳」と紹介し、それは米国でレンタカーを借りられる年齢でもある、と続けています。ギードは、レンタカー大手のエイビスについて「かなり優秀な神経科学者がいるに違いない」と冗談を添えました。
元スレッドがリンクしている英語版ウィキペディアの解説は、この説の正確な出どころは不明だとしたうえで、ギードのこの発言をきっかけのひとつに挙げています。当初の予定より長く追う必要がありそうだ、という研究者の見立てが、「25歳で完成する」という言い切りの形で広まった、という見方です。
もう少し詳しく
何が「俗説」なのか。10代後半から20代にかけて、前頭前野の発達が続くこと自体は否定されていません。疑問が向けられているのは、25歳という一点で脳が完成し、そこを境に判断力が切り替わる、という考え方です。米ウェブ誌『スレート』は2022年、この説を取り上げた記事で複数の研究者に取材しました。思春期の発達研究で知られる心理学者ローレンス・スタインバーグは、脳の発達が20代まで続くことには研究者のあいだで合意があるとしたうえで、「なぜみんなが25を選んだのか、正直わからない。響きのいい数字だから? 5で割り切れるから?」と答えています。エモリー大学の神経科学者アレクサンドラ・コーエンも「25歳という年齢に、魔法のようなものがあるとは思わない」と話しました。
個人差が大きい。同じ記事によると、脳の画像から「成熟の度合い」を数値にしようとした研究では、8歳の子どもの一部が、25歳の人の一部より高い値を示しました。オレゴン大学の発達神経科学者ケイト・ミルズは、脳の「成熟」がどういう状態を指すのか、はっきりした目安がまだ無いと指摘しています。カナダのマギル大学の科学解説サイトも、30代に入っても変化が続く脳もあれば、もっと早く落ち着く脳もある、と書いています。
変化は30代にも続く。2025年には、英ケンブリッジ大学のアレクサ・モーズリーらが、0歳から90歳までの約4000人分の脳画像を解析した研究を、科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に発表しました。調べたのは、神経線維の束である「白質」がつくる、脳内の配線のかたちです。配線の変わり方が切り替わる節目は、9歳、32歳、66歳、83歳ごろの4回。9歳から32歳ごろまでが、配線のうえでは「思春期」にあたる時期だとしています。
ただし、これは年齢の違う人たちを比べた研究で、同じ人を何十年も追いかけたものではありません。モーズリーは、この結果は脳の構造についてのもので、行動や認知能力については何も言えない、と断っています。スノーデンも先の寄稿で、25歳にも32歳にも「魔法のスイッチ」は無い、と書きました。
能力ごとにピークは違う。脳の画像ではなく、認知テストの成績を調べた研究もあります。2015年に心理学の専門誌に載った研究は、数万人分のデータをもとに、情報を処理する速さは10代後半、相手の感情を読み取る力は40代から50代、語彙は50代から60代にピークを迎える、と報告しました。「何歳で完成するのか」という問いは、どの能力の話かによって答えが変わることになります。
法律や政策でも引き合いに。若者の脳の研究は、制度の議論にも持ち込まれてきました。米国では、18歳未満のときの犯罪に死刑を科すことを禁じた2005年の連邦最高裁判決(ローパー対シモンズ事件)などで、スタインバーグらの研究が引用されています。英スコットランドには、25歳未満の被告について成熟の度合いを考慮するよう促す量刑の指針があり、米国の一部の州でも、18歳から25歳を対象にした見直しが提案されてきました。
映画の設定にも。2011年のSF映画『TIME/タイム』は、人間が25歳で年を取らなくなる世界が舞台です。監督のアンドリュー・ニコルは、25歳という設定には前頭葉の発達をめぐるこの説が影響したと語っています。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
たしか、被験者を追いかけていたのが25歳までで、その時点でもまだ変化が続いていたから、とりあえずそこで区切っただけ、という話じゃなかったっけ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
研究費がもっと続いていたら、今ごろ「脳は40歳で完成する」が常識になっていたのかもしれないな。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
リンク先を読むと少し違っていた。もともとは18〜20歳くらいまで追う予定で、研究者が雑誌の取材に「いま数字を選ぶなら25歳まで追うかな」と話したのが元らしい。それが「25歳で完成」に化けたみたいだ。
4. 海外の名無しさん
脳は一生変わり続けるものだと思ってる。止まったように感じるのは、新しいことを一度にたくさん覚える機会が減るからじゃないかな。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
厳密に言うと、死んだときにもちゃんと止まるぞ。そこだけは個人差がない。
6. 海外の名無しさん
完全なデタラメというより、込み入った話を乱暴に単純化しすぎた、というところだと思う。20代半ばでぴたっと止まるわけじゃないし、人によってペースも全然違う。「25」はせいぜい目安の数字で、きっちりした線引きじゃないんだよ。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
30を過ぎれば、誰でも薄々気づくよね。40歳のいまの自分は35歳のときと考え方がだいぶ違うし、35歳のときは30歳のときと違っていた。
8. 海外の名無しさん
26歳の誕生日の朝、何か変わるんじゃないかと少し期待していたんだけど、いつも通り二度寝して遅刻しかけた。賢くなった実感はまったくない。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
元恋人は「25歳になる少し前に、自分が変わったのがはっきり分かった」と言い張っていたよ。カウンセラーにその話をしたら、「思い込みでしょうね」と言われたけど。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
それ、変わったのは脳じゃなくて生活のほうじゃないかな。20代前半は進学や就職、ひとり暮らしで毎日がいっぱいいっぱいだけど、25歳ごろには仕事も人間関係も落ち着いてくる。気持ちに余裕が出るのは当然だと思う。
11. 海外の名無しさん
アメリカのレンタカーは25歳になると料金が安くなるから、てっきりこの説が根拠なんだと思っていた。
※注:アメリカのレンタカー会社の多くは、25歳未満の利用者に追加料金をかけたり、貸し出しを制限したりしています。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
あれは事故の多さを見て決めているだけだと思うよ。自動車保険が若い人ほど高いのと同じ理屈。当の研究者も昔、「レンタカー会社には優秀な神経科学者がいるらしい」と冗談を言っていたそうだ。
13. 海外の名無しさん
年の差カップルを批判するときの決まり文句だったよね、これ。「相手は25歳未満で脳がまだ完成していないから、対等な関係とは言えない」というやつ。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
うちは妻が12歳年下で、出会ったとき彼女は24歳だった。それを知った見ず知らずの人に、ネットで「前頭前野が完成していない相手と付き合うなんて」と本気で責められたことがある。24歳の大人が自分で決めたことなんだけどな。
15. 海外の名無しさん(>>13への返信)
年の差の是非は置いておくとして、18や19でもう働いて自活している人たちまで「まだ子ども」扱いするのは失礼だと思っていた。うちの国では18歳で実家を出るのがふつうだし。
16. 海外の名無しさん
この説がこれだけ広まったのは、みんな「科学がこう言っている」という分かりやすい答えが欲しいからだろうね。大人になっていく過程は、生まれつきの部分と経験の両方で決まる、なんて込み入った話は人気が出ない。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
短い動画で言い切るのにちょうどいい長さだしね。自分がもともと言いたかったことの裏づけにも使いやすい。
18. 海外の名無しさん
体や脳の豆知識で、スナップルのふたの裏に収まるくらい短いものは、だいたい単純化されすぎている。覚えておくと便利だよ。
※注:スナップルは米国の飲料ブランドです。瓶のふたの裏に、一行の豆知識が印刷されていることで知られています。
19. 海外の名無しさん
リンク先には「発達は20代まで続くが、25歳ではっきり区切れるという強い根拠は無い」と書いてあった。でも、25歳ぴったりで切り替わるなんて、本気で思っていた人がいるのかな。こういう数字はいつだって目安でしょ。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
それがいたんだよ。「25歳未満にはまともな判断ができない」と、文字どおりの意味で使う人をネットで何度も見た。
21. 海外の名無しさん
50代になっても、前頭前野にもう少し育ってほしい人を何人か知ってる。あくまで個人の観察だけど。
22. 海外の名無しさん
正確には、25歳と3か月と5日、4時間27分7秒で完成するんだぞ。うるう年もちゃんと計算に入っている。体は知ってるんだ。(もちろん冗談)
23. 海外の名無しさん
30代半ばだけど、いまだに完成していない自覚がある。夜中に要らないものを通販で買ってしまうし、締め切りにはぎりぎりまで手をつけない。
24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
ADHDの自分は、前頭前野に「そろそろ仕事をしてくれ」と毎日頼みこんでいる気分だよ。年齢で片づく話じゃなかった。
25. 海外の名無しさん
「だから25歳までは何をしても大目に見るべき」という言い訳に使われるのが、ずっと引っかかっていた。発達が続いていることと、責任を負わなくていいことは別の話だよね。
まとめ
「脳は25歳で完成する」という定説には、25歳を区切りとするはっきりした根拠が見つかっていません。発達が20代まで続くことは研究で示されていますが、落ち着く時期には個人差があり、30代以降も変化は続くとされます。コメント欄では「完全な間違いというより、単純化のしすぎ」という声や、分かりやすい答えを求めてしまう心理への指摘が目立ちました。きりのいい数字ほど、一度確かめてみたくなる話です。
元ソース: 「前頭前野は25歳で完成する」は俗説だった

コメント
6歳って説もあるな。
細かい数字は気にするなw