「光より速いニュートリノ」騒動の原因は、緩んだ光ファイバーケーブルだった…名古屋大学も参加した実験の顛末

「光より速いニュートリノ」騒動の原因は、緩んだ光ファイバーケーブルだった…名古屋大学も参加した実験の顛末 自然・科学

2011年9月、スイスのCERN(欧州原子核研究機構)から730km先のイタリアの地下研究所へ飛ばしたニュートリノが、光よりおよそ60ナノ秒早く着いた、という測定結果が発表されました。本当ならアインシュタインの特殊相対性理論が揺らぐ大事件です。ところが約半年かけて調べた末に見つかった原因の一つは、GPSの時刻信号を運ぶ光ファイバーケーブルのコネクタの接続不良(緩み)でした。

今日の知ってた?

📡 2011年、OPERA実験は「ニュートリノが光より約60ナノ秒速く730kmを飛んだ」と発表。翌2012年、原因は光ファイバーケーブルの接続不良と時計の発振器のずれだったと判明し、測り直したニュートリノの速さは光速と矛盾しないことが確かめられた。

背景:OPERA実験とは

ニュートリノは、電気を帯びておらず質量もごくわずかな素粒子です。ほかの物質とほとんど反応しないため、地球さえ素通りします。この性質を利用したのが、CERNとイタリアのグラン・サッソ国立研究所を結ぶ「CNGS」という計画でした。CERNの加速器で作ったニュートリノのビームを地中に向けて撃ち出し、約730km離れたグラン・サッソ山の地下で待ち受ける検出器でとらえます。トンネルは掘っていません。ニュートリノは岩盤をそのまま突き抜けていきます。

その検出器の一つがOPERAです。本来の目的は、光の速さを測ることではありませんでした。ニュートリノには電子型・ミュー型・タウ型の3種類があり、飛んでいるうちに別の種類へ姿を変える「ニュートリノ振動」という現象が知られています。OPERAは、CERNから送り出したミュー型のニュートリノが、途中でタウ型に変わって届く瞬間を直接とらえることを狙っていました。2016年にまとめられた報告では、タウ型のニュートリノを5例見つけ、偶然では説明できない水準(5.1シグマ)で振動を確かめています。

飛行時間の測定は、いわば副産物でした。ビームが出た時刻と検出器に届いた時刻を、GPSと原子時計を使って10ナノ秒(1億分の1秒)より細かい精度で突き合わせます。距離のほうは測量をやり直し、730kmの道のりを20cmの誤差で求めました。CERNの2011年9月23日の発表によれば、1万5000回を超えるニュートリノの観測をもとにした結果は、光の速さで飛んだと仮定した場合より60.7ナノ秒早い到着でした。730kmを光が進むのにかかる時間は約2.4ミリ秒なので、差は10万分の2.5ほど。光が60ナノ秒で進む距離は約18mです。ニュートリノは730km先のゴールに、光より18mほど前に飛び込んだことになります。

特殊相対性理論では、質量を持つものは真空中の光速を超えられません。これが崩れれば、因果関係の前提まで考え直す必要が出てきます。ですから研究チームは、大発見として発表したわけではありませんでした。代表者のアントニオ・エレディタート氏は、CERNのセミナーについて「広く素粒子物理学の研究者に検証してもらうためのもの」と説明しています。自分たちでは誤りを見つけられなかったので、外の目で調べてほしい、という公表でした。

もう少し詳しく

原因は「二つの誤差」だった。CERNは2012年2月23日、OPERAが時間の測定に影響しうる要素を二つ見つけたと発表しました。一つは、GPSの時刻合わせに使う時刻の刻み(タイムスタンプ)を作る発振器です。こちらはニュートリノの飛行時間を長めに見積もらせる方向に働きます。もう一つは、外のGPS受信機から地下のOPERAの基準時計(マスタークロック)へ時刻信号を運ぶ光ファイバーのコネクタで、測定当時はきちんと機能していなかった可能性がありました。こちらは飛行時間を短めに見せる方向です。米サイエンティフィック・アメリカン誌によれば、3月28日に示された分析では、接続の不具合によってGPSの信号の通り道に73ナノ秒の遅れが加わっていました。信号が遅れて届いた分だけ、ニュートリノが早く着いたように記録されていたわけです。発振器のずれと差し引きして、全体で約60ナノ秒の誤差になっていました。

同じ山の地下で、別の実験が測り直した。2011年11月、OPERAはCERNから極めて短い間隔のビームを送ってもらって測り直し、約20回のきれいな観測でも結論は変わらないとしていました。決め手になったのは、同じグラン・サッソ研究所にある別の検出器ICARUSです。2012年3月16日、ICARUSは同じ短いビームを使った測定で、ニュートリノは光より速くないという結果を出しました。代表を務めたのは、1984年にノーベル物理学賞を受けたカルロ・ルビア氏です。さらに5月には、グラン・サッソの4つの実験(Borexino、ICARUS、LVD、OPERA)が改めて測定しました。2012年6月8日、京都で開かれた第25回ニュートリノ物理学・天体物理学国際会議で、CERNの研究担当所長セルジオ・ベルトルッチ氏が、4つの実験はどれも光速と矛盾しない飛行時間を測ったと報告しています。OPERAの最初の結果は、光ファイバーを使った時刻システムの部品の不具合によるものとされました。

代表者は辞任した。測定のやり直しを待たずに、研究チームの中では責任を問う声が上がりました。サイエンティフィック・アメリカン誌によると、2012年3月末、実験の運営にあたる委員会で、代表者(スポークスパーソン)のエレディタート氏と、物理解析の責任者だったダリオ・アウティエロ氏への不信任動議が出されました。動議は過半数を得たものの、解任に必要な3分の2には届きませんでした。それでも2人は自ら職を退いています。エレディタート氏は、検証のために「居心地の悪い」結果を外に出したことは正しかったと主張していました。論文は2012年7月に改訂され、最終的な値は光速の場合より6.5ナノ秒早い到着、ただし誤差の範囲(統計誤差だけで±7.4ナノ秒)に収まり、光速と矛盾しないものになりました。

日本の技術が実験の中心にあった。OPERAには日本からも名古屋大学などが参加していました。検出器の主役は「原子核乾板」です。写真のフィルムと同じ仕組みで、粒子が通った跡を、電子式の検出器よりはるかに細かく記録できます。名古屋大学の福田努氏の2009年の報告によれば、検出器は0.3mm厚の乾板57枚と鉛板を重ねた「ブリック」と呼ばれる単位でできていて、二つの標的にそれぞれ約7万5000個並んでいました。乾板には作ったときから宇宙線の跡が溜まっていくので、日本の東濃鉱山の地下でいったん跡を消す処理をしてからイタリアへ運んでいます。膨大な乾板を顕微鏡で読み取るために、日本で開発された自動読み取り装置「S-UTS」も使われました。なお、ニュートリノの飛行時間は乾板ではなく電子式の検出器で測っており、問題のケーブルは乾板とは関係がありません。ニュートリノ振動そのものは、1998年に岐阜県のスーパーカミオカンデが見つけ、のちに梶田隆章氏のノーベル物理学賞(2015年)につながった現象です。OPERAはその振動を、別の方法で「種類が変わった瞬間」として確かめる実験でした。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
桁がおかしい。GPS受信機からマスタークロックへのつなぎが緩んでいて、光ファイバーを通る信号が遅れた。そのせいでニュートリノの飛行時間が73ナノ秒短く記録されたらしい。0.000000073秒だよ。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
そこまで小さい時間を正確に測るなんて、普通に考えたらほぼ不可能だよ。それをやってのける人たちの仕事は本当にすごいと思う。

3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
そもそも、そんな一瞬をどうやって測るんだ?ストップウォッチのボタンを押して済む長さじゃないだろう。

4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
まずケーブルをしっかり差し込むところからだな。それだけは間違いない。

5. 海外の名無しさん(>>1への返信)
73ナノ秒って、信号が青に変わってから後ろの車にクラクションを鳴らされるまでの時間とだいたい同じだな。

6. 海外の名無しさん
ケーブルのほうが光より速く動いてたなら、そっちのほうがよっぽど大発見だったと思う。

7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
コツは力を抜くこと。力むとスピードが落ちる。鞭の先っぽが音速を超えるのと同じ理屈で、あとは速さの桁を6つ上げるだけ。楽勝だね。

8. 海外の名無しさん
これ覚えてる。高校のとき物理の先生に得意げにこの話をしたら「バカか」と言われて、そのあとすぐ否定されてた(笑)

9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
ちなみに、何を自慢したの?

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
アインシュタインは間違っていて、物理学の根っこの部分がひっくり返るぞ、って話(笑)

11. 海外の名無しさん(>>8への返信)
自分の黒歴史を正直に書けるのは立派だよ。ただ、原因がはっきりしたのは数か月後だから、先生も最初は物理の常識から「ありえない」と言ってただけなんだろうな。

12. 海外の名無しさん
実験に関わった人で、光より速いニュートリノを本当に捉えたと信じていた人はいなかったと思う。自分たちではミスが見つからないから、公表して世界中に原因探しを手伝ってもらったんだよ。

13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
そこが本当に尊敬できるところ。とんでもない発見をしたと煽るんじゃなくて、「どこかで間違えたはずなのに見つからない、助けてくれ」と世界に向けて言ったんだから。卓上で常温核融合ができたと騒いだ人たちとは大違いだ。

14. 海外の名無しさん(>>12への返信)
とはいえ、当時の理論物理学者たちが「自分の仮説ならこの結果を説明できる」と、論文の下書きを公開サイトのarXivに次々上げたのは止められなかったけどな。

15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
「見かけの超光速ニュートリノは量子の弱測定で説明できるか」って論文の要旨が「たぶん無理」の一言だったのは好き。声を出して笑ったわ。

16. 海外の名無しさん
記憶だと、発表はだいたい「光より速いニュートリノが出ている。ありえないし説明もできない。何か月も誤りを探したけど見つからない。誰か、俺たちの頭がおかしくないと証明してくれ」だった。そこからみんなで見直して、ケーブルに行き着いた。査読で鍛えられる科学って、こういうものだと思う。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
細かいけど、コネクタの不具合を見つけたのはOPERAのチーム自身だよ。ただ、同じ地下研究所の別の実験が測り直して決着がついたから、外の目が効いたのは間違いない。

18. 海外の名無しさん
電波天文台が知的生命体の信号を拾ったと思ったら、実は休憩室の電子レンジだったって話を思い出した。

19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
科学ニュースを読んできた経験から言うと、天文台のほうは「99.9%ありふれた原因でしょう」と言っていて、宇宙人発見だと騒いだのは記者のほうだったんじゃないかな。

20. 海外の名無しさん
粒子が光より速く動くことはあるよ。ただし水の中など物質の中を進む光より速いだけで、真空中の光の速さは超えない。そのとき出る青い光がチェレンコフ放射。

21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
日本のスーパーカミオカンデも、まさにそのチェレンコフ光を拾ってニュートリノを見てるんだよな。巨大な水槽の壁に光センサーがびっしり並んでるあれ。

22. 海外の名無しさん
アト秒と1秒の関係は、1秒と宇宙の年齢の関係とだいたい同じ。で、人類はそのアト秒の世界で実験してる。すごくない?

23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
それを聞くと、ナノ秒がずいぶんのんびりした単位に思えてくるから不思議だ。

24. 海外の名無しさん
科学機器がどうやってあの精度を出しているのか読むと、目が回りそうになる。試行錯誤と地道な改良の積み重ねの話は本当に面白い。

25. 海外の名無しさん
代表者が辞めることになったのは気の毒だと思う。最初から「おかしいから一緒に調べてくれ」という姿勢で出していたのに、結局責任を取らされた形だし。

まとめ

光より約60ナノ秒速いと記録されたニュートリノは、GPSの時刻信号を運ぶ光ファイバーのコネクタの不具合と発振器のずれが生んだ見かけの速さでした。コメント欄では、73ナノ秒という桁外れに小さな誤差への驚きと、「間違いを探してほしい」と公表した研究チームの姿勢を評価する声が目立ちました。光より速いケーブルのジョークで笑いつつも、緩んだ一本の接続を見つけ出すまでの地道さに、科学の手堅さを感じた人が多かったようです。

参考資料

元ソース: 2011年、OPERA実験の研究者はニュートリノが光より速く進んだと記録した。何か月も原因を探した結果、緩んだケーブルのせいだった

コメント

  1. Reddit名無しさん より:

    光より速い粒子はタキオンと言います、粒子説を採った場合の光はルクシオン。