捕まえた小鳥の風切羽(かざきりばね)を抜いて飛べなくし、岩の割れ目に押し込んでおく。逃げられなくなった小鳥は、そのまま「あとで食べる分」として取っておかれる——。ハヤブサの仲間に、そんな獲物の「保存」をする集団がいるという話が、海外掲示板で大きな反響を呼んでいた。
※注:風切羽は、翼の縁に並ぶ長くて丈夫な羽のこと。空を飛ぶのに欠かせない羽で、これを失うと鳥はまともに飛べなくなる。
今日の知ってた?
🦅 ハヤブサの仲間には、捕まえた小鳥を殺さずに「保存」しておく集団がいる。獲物の風切羽を抜いて飛べなくしたうえで、岩の割れ目やすき間に押し込んでおき、あとで食べるのだという。
この鳥はエレオノラハヤブサ(英名 Eleonora’s Falcon)。ただし報告した研究者たちによれば、これはモロッコ沖の島にいる、ある1つの繁殖集団(コロニー)だけで見られる行動で、種全体の習性というわけではないとされる。
背景:エレオノラハヤブサとは
日本で「ハヤブサ」と呼ばれている鳥とは、別の種類である。ハヤブサ属というグループには、日本でもおなじみのハヤブサやチョウゲンボウなど多くの種が含まれていて、エレオノラハヤブサもその一つだ。英語の falcon はこのグループの鳥を広く指す言葉なので、この記事でも「ハヤブサの仲間」と書いている。
主に地中海の島々や海沿いの断崖に、集団で巣を作る。冬になると、はるか南のマダガスカル島まで渡って過ごす。名前は、14世紀にイタリアのサルデーニャ島にあったアルボレアという国を治めた女性、エレオノーラにちなむとされる。彼女が公布した法典に、タカやハヤブサの巣を守る決まりが盛り込まれていたことが由来だという。英語版ウィキペディアによれば、この法典「カルタ・デ・ログ」によって、彼女はタカやハヤブサの巣を密猟から守った史上初の統治者とされている。繁殖地は地中海の島々のほか、カナリア諸島やスペイン、イタリア、モロッコ、アルジェリアの沖などに散らばっているが、世界の繁殖数のおよそ3分の2はギリシャに集まっていて、エーゲ海のティロス島だけで約650つがいが巣を作る。集団で繁殖するハヤブサの仲間は、ほかにはあまりいない。
ほかの多くの鳥と違い、子育ての時期が夏の終わりから秋にかけてと遅い。スレッドで最も支持を集めたコメントによれば、これは獲物が増える時期に合わせたものだという。この季節は、北ヨーロッパで生まれたその年の若い小鳥たちが、越冬地を目指して初めて地中海を渡る時期にあたる。まだ経験の浅い若鳥が大量に海を越えてくるタイミングに、子育てを重ねているわけだ。2024年の米ライブサイエンスの記事によると、エレオノラハヤブサが鳥を食べるのは7〜10月の繁殖期で、長旅で疲れた渡り鳥を飛んでいるところで捕まえる。このごちそうで親もヒナも、自分たちのマダガスカルへの渡りに備えて体をつくる。それ以外の季節は、トンボやチョウなどの昆虫が主な食べ物だという。
狩りの舞台は海の上である。陸の上と違って、海の上には小鳥が逃げ込める茂みも木もない。
もう少し詳しく
見つかったのは、モロッコの大西洋岸の島。この行動が報告されたのは、モロッコ西岸の町エッサウィラの沖にあるモガドール諸島のコロニーだ。地元の漁師たちは前から知っていたが、鳥類学者が初めて記録したのは2015年。モロッコのムハンマド5世大学のアブデルジェバール・クニンバらが、この島のエレオノラハヤブサの数を調べていて気づいた。巣の周りの岩の割れ目や穴に、小さな渡り鳥が何羽も挟まっていて、風切羽を抜かれたものもいたが、どれもまだ生きていたという。エレオノラハヤブサが捕る鳥の多くは小さな鳴鳥だが、アマツバメやヤツガシラ、シギやチドリの仲間も獲物になる。
なぜ、生かしたまま取っておくのか。背景で紹介したのと同じコメントでは、次のように説明されていた。小鳥の渡りには波があり、風などの条件がそろった日には一度に大量の小鳥が海を越えてくる一方、風向きの悪い日にはほとんど渡ってこない。条件のよい日に捕まえた分を取っておけば、獲物が来ない日にもヒナに食べさせることができる。つまり、日によって大きく変わる獲物の量をならすための備えではないか、というわけだ。ただし書き手自身も「おそらく」と前置きしており、確かめられた結論として語られているわけではない。報告した研究チーム自身は、獲物を1〜2日(正確な期間は分かっていない)生かしておけば、ちょうどよいときに新鮮な餌が手に入る、死んだ獲物はすぐに乾いて食べられなくなるからだ、と説明している。
実は、閉じ込める場面を見た人はまだいない。英BBCワイルドライフ誌のサイト「ディスカバー・ワイルドライフ」は、この報告に慎重な見方もあると伝えている。英セント・アンドルーズ大学の鳥類学者ウィル・クレスウェルは、ハヤブサが獲物の羽を一部むしるのも、死んだ獲物を隠しておくのもよくあることなので、生きたまま隠すのはそれほど大きな飛躍ではない、としつつも、ハヤブサが意図して閉じ込めているとは言い切れないとみる。割れ目の鳥は、ハヤブサの爪から逃げて岩に隠れていただけかもしれないからだ。南アフリカのケープタウン大学の行動生態学者ロブ・シモンズも、英ニュー・サイエンティスト誌に、閉じ込められていた鳥は殺されまいと岩に隠れた逃亡者かもしれない、と話している。ハヤブサが獲物を押し込む場面も、あとで食べに戻る場面も、まだ誰も目にしていない。一方クニンバは、ハヤブサは死んだ獲物を隠すときには風切羽を抜かないので、生きた獲物の羽が抜かれていたのは、逃げたのではなくハヤブサの手が加わったしるしだと反論している。クレスウェルも「鳥類学や行動生態学の多くは、こうした逸話から始まる。ただ、示唆に富む話から真実へ進むには、きちんとした研究が要る」と述べ、この先どうなるかを楽しみにしている。
「エレオノラハヤブサなら、どれもこうする」わけではない。報告した研究者たちは、この行動はモガドール諸島の集団だけのもので、ほかの地域のエレオノラハヤブサにも、ほかの猛禽類にも、生きた獲物を閉じ込めたという報告は見つからないとしている。同じ種の中で集団ごとに行動が違うのか、それとも、ほかの繁殖地ではまだ観察されていないだけなのか。そこまでは、この話からは分からない。
日本でおなじみの「モズのはやにえ」とも、少し違う。獲物を取っておく鳥と聞いて、モズを思い浮かべた人も多いはずだ。モズの仲間は、捕まえた虫やカエル、トカゲなどを木の枝やトゲに突き刺しておく習性があり、日本ではこれを「はやにえ」と呼ぶ。スレッドでもモズの話で盛り上がっていて、英名は shrike(シュライク)、属の学名 Lanius(ラニウス)はラテン語で「肉屋」を意味する、という話まで出ていた。ただ、はやにえが獲物を枝に刺して留めておくのに対し、今回のエレオノラハヤブサは、獲物を生かしたまま飛べなくして閉じ込めておく。「取っておく」という点は同じでも、やり方はかなり違う。そのはやにえにも、日本の研究で新しい役割が見つかっている。2019年、大阪市立大学の西田有佑さんや北海道大学の高木昌興さんらの研究グループが国際学術誌『アニマル・ビヘイビア』に発表した研究によると、モズのオスは繁殖期以外の時期にはやにえを作り、主に繁殖が始まる直前の1月に食べる。はやにえをたくさん食べたオスほど、繁殖期のさえずりが速かった。はやにえを取り除いたオスはさえずりが遅くなり、メスとつがいになれる率も目立って低かった。速く歌えるオスはメスに好まれるので、はやにえは冬の保存食であるだけでなく、「歌の質」を上げるための栄養源にもなっている、というのが研究グループの結論だ。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
この鳥、ヒナを育てる時期そのものを獲物に合わせてるんだよ。狙いは、北ヨーロッパで生まれたその年の若い小鳥たち。越冬地に向かって生まれて初めて地中海を渡るタイミングだから、まだ経験が浅くて捕まえやすい。しかも狩り場は海の上で、小鳥には逃げ込む場所がない。生かしたまま取っておくのは、たぶん渡りが一気に進む当たりの日に捕まえた分を、風向きが悪くて一羽も渡ってこない日にヒナに食べさせるためだと思う。
名前くらいは覚えて帰ってくれ。エレオノラハヤブサだ。
2. 海外の名無しさん
自然界、容赦なさすぎる。今日これを知る必要は正直なかった。羽を抜く、割れ目に押し込む、あとで食べる、と手順がいちいち計画的なのがいちばん怖い。
3. 海外の名無しさん
閉じ込めた小鳥に「ばたばたしても無駄だよ。疲れて肉が筋っぽくなるだけだから」って優しく声をかけてそう。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
続けて「下味の塩水を肌にすり込むんだ」まで言い出したら、完全に『羊たちの沈黙』の井戸の場面だよ。閉じ込めた相手に肌の手入れをさせてた、あれ。獲物の“仕上がり”を気にしてる点まで一緒。
5. 海外の名無しさん
やってることが冷酷すぎる。その場で仕留めるならまだしも、獲物を飛べなくして置いておくって発想がもう悪役のそれ。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
公平を期すなら、人間は同じことを工業規模でやってるけどな。狭い囲いに入れて、食べる日まで生かしておくわけだし。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
それはみんな知ってるでしょ。この話でみんなが驚いてるのは、動物が自分で手順を踏んで、生きた獲物をあとのために閉じ込めてるって部分だよ。
8. 海外の名無しさん
これを「ダーク」だと感じる人が多いのが、正直ちょっと面白い。人間だって何百年も前から食べるための動物を囲って生かしてきたし、やり方が違うだけだと思う。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
たぶん引っかかってるのは、これが自然の中に普通にある行動だってことなんだよ。善悪を選べる人間だけがやることなら、まだ納得のしようがあったんだけど。
10. 海外の名無しさん(>>8への返信)
うちの母に読んで聞かせたら、第一声が「ダーク……」だった。自分の感想も8とほぼ同じ。
ただ、動物が獲物を「捕虜」みたいに扱うとは普通は思わない、というのは分かる。クモが糸で獲物を巻いて取っておくとか、カリバチが毒で麻痺させたイモムシに卵を産みつけるとかは、どれも自分の体から出す糸や毒を使ってる。この鳥は「羽がなければ逃げられない」ことを利用してるわけで、ある意味、道具を使うのに近い気がする。どこまでが本能で、どこからが覚えた行動なのかは知りたいな。
11. 海外の名無しさん
で、結局どのハヤブサの話なの? 種名も書かずに「ハヤブサの一団が」だけで済ませると、何でも鵜呑みにするやつが出てくるぞ。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
エレオノラハヤブサ。ただしこれは、ある1つのコロニー(集団で繁殖している場所)で見られる行動で、種全体がやってるわけじゃないらしい。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
1か所の集団だけってことは、どこかの一羽が始めたやり方が、群れの中で広まったってこともあるのかな。だとしたら、それはそれで賢い。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
その線は面白いよね。ただ、本当にそこだけの行動なのか、ほかの繁殖地ではまだ誰もじっくり観察していないだけなのかは、この話からは分からないと思う。岩の割れ目の奥なんて、人間が見に行くのも大変だろうし。
15. 海外の名無しさん
ギリシャ神話のプロメテウスを思い出した。岩山に鎖でつながれて、毎日ワシに肝臓を食べられ、夜のうちに元に戻ってまた食べられる。あれも「生かしたまま食べ続ける」話だった。
16. 海外の名無しさん
小鳥の側から考えるとつらい。生まれて初めての渡りで、初めて海を越えようとしたその日に捕まって、風切羽を抜かれて岩の隙間に押し込まれるんだからな。越冬地どころか、対岸すら見られなかった。
17. 海外の名無しさん
要するに冷蔵庫がないから、生かしたまま置いておくのがいちばん傷まない保存方法なんだろうな。人間だって、昔は食べる日まで鶏を庭で飼っておいたわけだし。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
傷まないってのもあるかもしれないけど、1の説明と合わせると「捕まえられる日と捕まえられない日の差をならしてる」ってほうが大きいんじゃないかな。渡ってくる小鳥が多い日にまとめて確保して、来ない日にヒナに食べさせる。冷蔵庫というより、備蓄倉庫だ。
19. 海外の名無しさん
獲物を捕まえて、近くの枝やトゲに突き刺しておく鳥もいるぞ。見た目はころころした小さな鳥で、家事をしてたら窓の外で歌ってくれそうな顔をしてるのに。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
モズの仲間だね。英語ではシュライクと呼ばれていて、属の学名ラニウス(Lanius)はラテン語で「肉屋」って意味らしい。やってることと名前がここまで一致してると、もう文句のつけようがない。
21. 海外の名無しさん(>>19への返信)
しかも1匹だけじゃなくて、何匹も枝やトゲに刺して、ちょっとした食料庫みたいにしてることがあるらしい。毒のあるバッタをトゲに刺しておいて、しばらく置いてから食べるって話も読んだことがある。すぐには食べられない獲物でも、置いておけば食べられるようになるってことか。
22. 海外の名無しさん
モズで思い出した。最初に妻と住んだ家で、寒波で枯れた庭木を春に掘り起こそうとしたら、折れた枝先やトゲに小さなトカゲが何匹も刺さって死んでた。庭のアガベ(リュウゼツランの仲間)なんてトカゲだらけ。本気で「近所に小動物を殺して回るヤバい子どもがいる」と思ったよ。
ちょうど海外ドラマ版の『ハンニバル』を観てた時期で、作中に「シュライク」とあだ名される殺人犯が出てくる。その由来になった鳥を調べてみたら、前庭の木に住み着いてたのはマネシツグミじゃなくて、よく似たモズの仲間だった。うちの庭のトカゲは、何世代にもわたってあいつにやられてたらしい。
23. 海外の名無しさん
鳥って恐竜の子孫どころか、分類の上では恐竜そのものなんだよな。だとしたら、大昔の肉食恐竜にも、獲物を動けなくしてから取っておくようなやつがいたかもしれない。想像するとちょっと寒気がする。
24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
英語だと猛禽類のことを「ラプター」と呼ぶからね。ヴェロキラプトルの「ラプトル」と同じ言葉で、もとはラテン語の「奪う者」。呼び名の時点で、血筋を隠す気がない。
25. 海外の名無しさん
残酷だと感じるのも分かるけど、自分はまず感心した。飛ぶための羽を抜いて、逃げられない岩の割れ目に入れておく。それが全部ヒナを飢えさせないための工夫なんだとしたら、渡り鳥の波に頼った子育てがどれだけ綱渡りなのか、って話でもあると思う。
まとめ
エレオノラハヤブサのある繁殖集団では、捕まえた小鳥の風切羽を抜いて飛べなくし、岩の割れ目に閉じ込めてあとで食べる行動が見られるという。渡ってくる小鳥の数が日によって大きく変わるため、その差をならす備えではないかと説明されていた。コメント欄は「自然界は容赦ない」という声と「人間も家畜で同じことをしている」という声に分かれつつ、モズのはやにえや恐竜、ギリシャ神話にまで話が広がり、羽を奪えば檻になると分かっているかのような手際に感心する声も出ていた。


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