「抗体のレパートリーが11〜73%消えていた」はしかの本当の怖さは熱が下がった後に…体が免疫を“忘れる”らしい

「抗体のレパートリーが11〜73%消えていた」はしかの本当の怖さは熱が下がった後に…体が免疫を“忘れる”らしい 自然・科学

はしかは、熱と発疹が引けば治る病気だと思われがちです。ところが2019年、はしかにかかった子どもの血液を調べた研究で、それまでに身につけていた抗体のレパートリーが11〜73%消えていたことが分かりました。体が、過去にかかった病気の倒し方を「忘れて」しまう。研究者はこれを「免疫の健忘症(イミューン・アムネジア)」と呼んでいます。

今日の知ってた?

🧬 はしかにかかった子ども77人を感染の前と後で比べたところ、ほかの病原体に対する抗体のレパートリーが一人あたり11〜73%失われていた(2019年、米科学誌サイエンス)。同じ日に出た別の研究では、過去の感染を覚えている「記憶B細胞」の集団が減っていることも確かめられた。

背景:はしかとはどんな病気か

はしか(麻しん)は、麻しんウイルスによる感染症です。日本の国立健康危機管理研究機構(国立感染症研究所の情報提供を引き継いだ組織)の解説によると、感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染で、感染力は「非常に強い」とされています。症状が出る前から人にうつすことがあり、潜伏期間はふつう10〜12日。熱やせき、鼻水が続く時期のあと、いったん熱が下がりかけてから再び高い熱が出て、全身に発疹が広がります。

合併症として挙げられているのは、肺炎、脳炎、そして亜急性硬化性全脳炎(SSPE)です。SSPEは、はしかが治ってから数年〜数十年たって発症することがある、脳の重い病気です。はしかそのものに効く特効薬はなく、治療は症状をやわらげる対症療法になります。世界保健機関(WHO)の推計では、2024年に世界ではしかにより約9万5,000人が亡くなりました。

WHO によれば、ウイルスは感染者の呼吸やせき、くしゃみで広がり、空気中や物の表面で最大2時間ほど感染力を保ちます。患者が立ち去ったあとの部屋でもうつりうる、ということです。

日本では、2015年にWHOから「麻しんの排除状態にある」と認定され、その状態が維持されています。ただし国立健康危機管理研究機構の2026年4月の発表では、2026年4月15日時点の国内の報告数が299例で、前年の同じ時期(78例)の約3.8倍に増えていました。患者は10〜20代が中心で、その年代の患者の約半数は、ワクチンの2回接種が済んでいないか、接種歴が分からない人だったといいます。世界で報告が増え、国内にウイルスが持ち込まれる危険が高まっているとも述べています。

もう少し詳しく

「忘れる」とはどういうことか。はしかのウイルスは、免疫を担う細胞そのものに感染します。はしかにかかると一時的に免疫が落ち、ほかの感染症にかかりやすくなることは以前から知られていました。ただ、それは数週間から数か月の話だと考えられてきました。2019年11月1日、米国の科学誌サイエンスと、その姉妹誌サイエンス・イミュノロジーに、この見方を改める論文が2本同時に載りました。どちらも、それまでの免疫の「記憶」そのものが削られることを示すものでした。

ミナらの研究:抗体のカタログが減る。米ハーバード大学のマイケル・ミナ、スティーブン・エレッジらのチームは、オランダではしかが流行したときの、ワクチンを受けていなかった子ども77人(平均9歳)の血液を、感染の前と約2か月後で比べました。使ったのは「バイスキャン(VirScan)」という検査法で、数千種類の病原体の断片に対して、血液中にどんな抗体があるかを一度に調べられます。その結果、はしかのあとには、ほぼすべての種類の病原体について、抗体の種類と量が減っていました。失われた割合は人によって11〜73%。重症だった子(43人)では中央値40%、軽症だった子(34人)でも中央値33%が消えていました。一方、MMRワクチン(はしか・おたふくかぜ・風しんの混合ワクチン)を受けた乳児では、こうした変化は見られませんでした。アカゲザル4匹にはしかウイルスを感染させた実験でも、1匹あたり平均40〜60%の抗体が失われ、少なくとも5か月はその状態が続いていました。

ペトロワらの研究:記憶する細胞が減る。英ウェルカム・サンガー研究所のペトロワ、オランダ・アムステルダム大学のラッセルらのチームは、はしかにかかった人の、感染の前と後の血液に含まれるB細胞(抗体を作る細胞)の遺伝子を読み取りました。分かったのは2つです。過去に出会った病原体を覚えていた「記憶B細胞」の集団が減っていたこと。そして、新しい病原体に備える未熟なB細胞の集団も、十分に元どおりにはならず、免疫が未熟な状態に寄っていたことです。フェレットを使った実験では、はしかに近いウイルスに感染させると、インフルエンザのワクチンで得ていた免疫が弱まり、そのあとインフルエンザにかかったときに症状が重くなりました。

「11〜73%」の数字の意味。元の投稿は「免疫の記憶細胞と抗体の11〜73%が消える」と書いていますが、ミナらの論文で11〜73%というのは、血液中の抗体の「レパートリー(どの病原体に対する抗体を持っているかの幅)」が減った割合です。細胞の数を数えたものではありません。また、失われた抗体がずっと戻らないわけでもありません。論文は、その後に病原体に改めて出会うと抗体が回復することも確かめています。ただし著者らは、覚え直すには感染するかワクチンを受けるかして病原体に出会い直す必要があるとみており、元の状態に戻るには数か月から数年かかる可能性があると書いています。

以前から見えていた「影」。この2本より前の2015年にも、ミナらは高所得国の統計を使った研究をサイエンス誌に発表していました。はしかの流行が多かった年から2〜3年ほど遅れて、はしか以外の感染症による子どもの死亡が増える関係が、ワクチン導入の前にも後にも見られたという内容です。はしかが長い期間にわたって体の抵抗力に影響している可能性を、統計の側から示したものでした。2019年の2本は、その仕組みを血液の中で直接とらえた研究といえます。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
だから、はしかが怖いんだよ。病気そのものはたいていの人にとってそこまでひどくなさそうに見えるけど、それまでの免疫を丸ごと失うって考えたらゾッとする。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
大きな流行のない世界が長く続いたせいで、なんで人類がはしかを必死に根絶しようとしてきたのか、みんな忘れちゃってるんだよね。一撃で命を奪うタイプの病気じゃないからこそ、あとに残る合併症が見過ごされやすい。たちの悪い虫だよ。

3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
はしかで「免疫の健忘症」になるなんて、病気のくせに記憶喪失ものの映画みたいな設定持ってるのずるい。しかも主人公じゃなくて体のほうが記憶なくすっていう。

4. 海外の名無しさん
ひどい話なのは分かってるうえで真面目に聞きたいんだけど、免疫がリセットされるなら、自己免疫疾患とかアレルギーも消えたりしないの?

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
少なくとも自分はそうならなかった。子どものころはしかにかかったあと、ほかの子どもの病気を一通りもう一回やって、それ以来ずっと体が弱い。自己免疫の病気をいくつも抱えてるし、アレルギーもひどいのに、周りで流行ってるものには片っ端からかかる。うまく働かなくなったまま戻らない、って感じ。

6. 海外の名無しさん(>>4への返信)
はしかで、というのは無理。消える記憶を選べないからね。ただ、自己免疫の原因になってる免疫細胞だけを狙って減らす治療の研究は実際に進んでて、がん治療のために作られた CAR-T(自分のT細胞を取り出して作り変え、体に戻す方法)を全身性エリテマトーデス(ループス)に試す研究もあるらしい。

7. 海外の名無しさん
多発性硬化症の当事者として、すごく気になる話。免疫を一度リセットするために抗がん剤を使う治療があるんだけど、はしかの仕組みに抗がん剤を使わずに済むヒントが隠れてたりしないかな。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
はしかでそれをやるのは、キッチンのボヤを消すために家ごと爆撃するようなもんだと思う。

9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
しかも爆撃したあと、どの部屋が残るかは選べないっていう。研究のヒントにはなっても、治療にはならないよね。

10. 海外の名無しさん
6歳のときにかかった。自分は軽く済んだけど、3歳だった妹があまりに苦しくて泣き続けてたのを今でも覚えてる。そのすぐあとに水ぼうそうまで来て、あの夏は最悪だった。子どものころの予防接種の記録を見つけたら、ほかの予防接種は全部済んでたのに、はしかだけ抜けてたんだよな。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
自分もそれだった。接種の予定日に限って熱を出してて延期、次の予定日もまた風邪、っていうのを繰り返してるうちに、気づいたら20年たってて、大人になってからやっと最後の1本を打った。

12. 海外の名無しさん
ニュース記事のコメント欄で「はしかの何が問題なの?死亡率なんて低いじゃん」って書いてる人を見た。死ななきゃいいって話じゃないんだよな、これ読むと。

13. 海外の名無しさん
はしか自体は乗り切っても、そのあとの肺炎みたいな二次感染で亡くなる人は多い。大叔母の死亡診断書にもそう書いてある。

14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
ワクチンができる前は、子どもの感染症による死亡のかなりの部分が、はしかの免疫リセットを経由したものだったって試算を読んだ気がする。

※ 2015年にミナらがサイエンス誌に発表した研究は、はしかの流行から2〜3年遅れて、はしか以外の感染症による子どもの死亡が増える関係があったと報告しています。具体的な割合は研究の推計によるもので、時代や国によって異なります。

15. 海外の名無しさん
SSPE の話を聞いたら、もっと怖くなるよ。

16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
亜急性硬化性全脳炎だっけ。治ったと思って何年もたってから、脳でウイルスが悪さを始めるやつ。自分はむしろそっちのほうがずっと怖い。ある日突然始まって、助からない。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
めったに起きないとは言っても、流行が起きて感染者が何千人にもなれば、「めったに」が現実の人数になる。

18. 海外の名無しさん
17歳でかかって、ひどく寝込んだ。そのあと2年間で喉の痛みが14回、風邪は2〜3週間おきにひいてた。当時は自分が弱いだけだと思ってたけど、これを読んで納得した。

19. 海外の名無しさん
姉は1950年にはしか、1952年にポリオにかかった。ワクチンが出る少し前に生まれちゃったんだよね。間に合ってたら喜んで打ってたはず。78歳の今も、ポリオの後遺症と目の不調を抱えて暮らしてる。

20. 海外の名無しさん
水ぼうそうのワクチンが広まる前にかかって、15年くらいたってから帯状疱疹が出た。10年以上たった今も跡が残ってるし、ときどき神経痛がぶり返す。水ぼうそうのときはちょっと発疹の出るインフルエンザくらいだったのに。昔の「ありふれた病気」がどれだけ後を引くか、みんなすぐ忘れるんだよな。

21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
帯状疱疹は本当にきつい。軽いほうだったのに、1週間くらい肋骨のあたりを尖った棒で突かれ続けてる感じだった。顔に出る人もいるらしいけど、想像したくない。

22. 海外の名無しさん
こういう研究が出ても、反ワクチンの人は「はしかワクチンにも同じことが起きるはず」って言い出しそう。

※ 2019年のミナらの研究では、MMRワクチンを受けた乳児には、はしかの感染後に見られたような抗体の減少は見られませんでした。

23. 海外の名無しさん
いや、そもそも免疫が消えるなんて話は信じない。ちゃんと証拠を出してくれ、聞きかじりじゃなくて。

※ 元になった研究は、2019年11月1日にサイエンス誌(ミナら)とサイエンス・イミュノロジー誌(ペトロワら)に掲載された査読付きの論文です。記事末尾の参考資料から要旨を読むことができます。

24. 海外の名無しさん
はしかって、部屋に感染者がいたあと、しばらくは空気だけでうつるんだよね。この感染力で、体のほうの記憶まで消していくって、ウイルスとしては設計が凶悪すぎる。

25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
病気になったうえに、それまで何年もかけて集めた免疫のカードを何割か捨てられるって考えると、ゲームならクソ仕様って言われるやつだな。

まとめ

はしかは、熱が下がれば終わりではありませんでした。2019年の2本の研究は、感染した子どもが過去に身につけた抗体の11〜73%を失い、記憶B細胞も減ることを示しました。コメント欄では「死ななきゃいいって話じゃない」という声や、かかった後に体が弱くなったという体験談が多く集まり、「免疫のリセットを病気の治療に使えないか」という真剣な質問には、「家ごと爆撃するようなもの」という返事が付いていました。

参考資料

元ソース: 今日知った話:はしかに感染すると、体の免疫の記憶細胞と抗体の11〜73%が消える「免疫の健忘症」が起き、過去の感染への戦い方を「忘れた」状態に免疫がリセットされることがある

コメント

  1. Reddit名無しさん より:

    自然免疫と獲得免疫は分けて考えましょう。

  2. Reddit名無しさん より:

    メモリーT細胞で抗体の記憶は残っているんだが、一定確率で減少して行く。
    稀に記憶が作れない人もいる。