夜空の月はあまりに当たり前にそこにあるので、それが太陽系でどれだけ異様な存在なのかは意識しづらい。惑星と衛星の組み合わせを一つずつ並べていくと、地球と月だけが列から明らかにはみ出す。主星に対する大きさでも重さでも、月には並ぶ相手がいない。
※注:この記事の「衛星」は、惑星のまわりを回る天然の天体という意味で使っています。打ち上げる人工衛星のことではありません。
今日の知ってた?
📏 月の直径は約3,474kmで、地球(約12,742km)のおよそ27%。質量は地球の約81分の1にあたる。太陽系の8つの惑星とその衛星を見渡すと、この「主星に対する比率」は月が群を抜いて最大で、次点の土星とタイタン(約4,200分の1)とは五十倍以上の開きがある。ただし準惑星まで含めれば話は別で、冥王星とカロンの質量比は約8分の1と、月と地球よりさらに大きい。
背景:衛星のランキングには、順位表が二つある
ただの大きさで並べると、月は太陽系で5位でしかない。1位は木星のガニメデ(直径約5,268km)、2位は土星のタイタン(約5,150km)。この上位2つは、惑星である水星(約4,879km)よりも大きい。以下、木星のカリスト、イオと続いて、ようやく月が出てくる。
ところが「その衛星は、自分の主星に対してどれだけ大きいか」で並べ直すと、順位表はひっくり返る。木星は巨大すぎて、あれだけ大きいガニメデでも質量比は約1万2800分の1。土星とタイタンで約4,200分の1、海王星とトリトンで約4,800分の1。そこに地球と月の81分の1が来る。桁がまるごと違う。
他の岩石惑星に至っては、比較の土俵にすら上がってこない。水星と金星には衛星が一つもない。火星が持つフォボスとダイモスは、直径がそれぞれ20km級と10km級の、いびつな岩の塊にすぎない。しかもフォボスは火星に少しずつ近づいていて、数千万年後にはロッシュ限界(注:主星に近づきすぎた天体が、その潮汐力で引き裂かれてしまう距離)に達して砕けると見られている。
もう少し詳しく
そもそも月はどこから来たのか。いま最も有力なのがジャイアント・インパクト説(注:巨大衝突説。誕生まもない地球に火星ほどの大きさの原始惑星がぶつかり、飛び散った破片が集まって月になったとする考え)である。月の密度は1立方センチあたり約3.34gで、地球の約5.51gよりかなり軽い。金属の核が小さく、岩石の外側部分が主体という中身をしている。これは「地球の外側をごっそり削り取って作った天体」だと考えると説明がつく。太陽系のよその衛星が、主星の周りのちりから素直に育ったり、通りすがりを捕まえたりして生まれたのとは、出自からして違うわけである。
地球と月は、地球の内部にある一点を回っている。2つの天体が回り合うとき、天秤の支点にあたる点を共通重心という。地球と月の共通重心は、地球の中心から約4,670kmのところにある。地球の半径は約6,371kmなので、地表から1,700kmほど下、まだ地球の内部だ。だから地球と月は、正式には二重惑星(注:どちらが主でどちらが従とも言えない、対等に回り合う2つの天体)とは呼ばれない。とはいえ、地球が月に振り回されて小さくよろけながら太陽を回っているのは事実である。
冥王星とカロンは、互いの外側を回っている。冥王星の直径は約2,377km、カロンは約1,212km。半分を超えている。質量比も約8分の1で、地球と月の81分の1を大きく上回る。その結果、共通重心は冥王星の地面より外、何もない空間に来てしまう。片方がもう片方を回っているというより、空中の一点をはさんで二つが回り合っている状態で、これを二重天体と呼ぶ人は少なくない。ただし国際天文学連合の正式な分類では、カロンは今も冥王星の衛星である。そして冥王星自体が2006年に惑星から準惑星へ移されているので、冒頭の「惑星に対して」という比較からは、そもそも外れている。月の一位は、この但し書きの上に成り立っている。
地球の1日は、月に少しずつ延ばされている。月の重力が海と地面をわずかに引き伸ばし、そのふくらみが地球の自転に引きずられてずれることで、ブレーキと同じ作用が働く。失われた回転の勢いは月の側へ渡され、月は年に約3.8cmずつ遠ざかっている。これはアポロの飛行士が月面に置いた反射鏡へ地上からレーザーを撃ち、往復時間を測ることで実測されている数字だ。逆算すれば、大昔の地球はもっと速く回っていたことになる。約14億年前の1日はおよそ18時間だったとする研究もある。
月が同じ面しか見せないのも、同じ仕組みの結果である。月は自転の周期と地球を回る周期がぴたりと一致していて、常に同じ側をこちらへ向けている。これを潮汐固定(注:潮汐力によって自転と公転の周期が揃い、片面を相手に向けたまま固定された状態)という。地球の潮汐が月の回転を長い時間をかけて削り、この釣り合いに落ち着かせた。太陽系の大きな衛星の多くが、主星に対して同じ状態にある。
地軸の傾きと気候の話は、もう少し慎重に扱いたい。地球の地軸は約23.4度傾いていて、これが季節を生んでいる。月の重力がこの傾きを安定させ、気候が極端に振れるのを防いできた、という説明はよく知られている。ただしこれは決着した話ではない。初期の計算は「月がなければ地軸は大きく暴れる」と示したが、後の計算では、月がなくても振れ幅はもっと穏やかにとどまるという結果も出ている。月が生命環境に効いたという議論全体が、この程度には揺れている。
月を引っぱる力は、実は地球より太陽のほうが強い。月にかかる太陽の引力は、地球の引力の約2.2倍ある。それでも月が地球から引きはがされないのは、地球と月がそろって太陽を回っているからだ。この関係の副産物として、月が太陽の周りに描く道筋は、どの瞬間を切り取っても太陽の側へ凹んでいる。地球の周りをぐるぐる回っているイメージとは裏腹に、月は一度も後戻りせずに太陽を回り続けている。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
冥王星が惑星から外された、あの日までのチャンピオンはカロンだったんだよな。冥王星に対するカロンの大きさは、地球に対する月なんて比じゃない。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
正確には、冥王星は惑星から外れて準惑星という枠に移された。で、カロンは冥王星に対して大きすぎて、二つの天体の共通重心が冥王星の内側に収まらない。地面より外の、何もない空間にある。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
だから冥王星とカロンは、片方がもう片方を回っているというより、空中の一点をはさんで互いに回り合っている。ただし冥王星は準惑星なので、惑星と衛星のランキングに並べるなら別枠扱いになる。そこは押さえておきたい。
4. 海外の名無しさん
冥王星を惑星に戻せという声は根強いけど、戻すなら同じくらいの天体を何十個も一緒に入れることになる。エリスに至っては冥王星より重い。惑星の数が三十を超えたあたりで、たぶん誰も文句を言わなくなる代わりに誰も覚えなくなる。
5. 海外の名無しさん
81分の1という数字が地味にすごい。木星とガニメデでだいたい1万2800分の1、土星とタイタンで4200分の1。同じ土俵に並べると、地球だけがやたら重い相棒を抱えて立っている。
6. 海外の名無しさん
個人的にいまだに慣れないのは、ガニメデが水星より大きいこと。衛星が惑星より大きいという字面が、もう何かの間違いに見える。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
大きいけど、重いのは水星のほう。ガニメデは氷と岩が混じった中身で密度が低い。水星は逆で、太陽に近すぎたせいか、半径の八割以上が金属の核という詰まりきった天体になっている。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
その水星、直径は火星の七割ほどしかないのに、表面の重力は火星とほとんど同じなんだよな。小さいのに手応えだけは一人前という、妙に負けん気の強い星だ。
9. 海外の名無しさん
地球に複雑な生命が生まれた理由のひとつが、この大きすぎる月だと言われている。偶然の積み重ねの上に自分たちが乗っかっているのだと思うと、たまに落ち着かなくなる。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
それって潮の満ち引きの話だよね? 月が大きいぶん潮汐も大きくなる、という理解で合ってる?
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
それも一つ。潮の差が大きいと、海岸に濡れる時間と乾く時間が交互に来る帯ができて、そこで濃縮と希釈が繰り返される。生命の材料になる化学反応にはありがたい環境だったという説がある。あとは、月の重力が地軸の傾きを安定させて気候が極端に振れにくくなった、という話もよく出てくる。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
安定の話はともかく、「月の潮汐のおかげで地球の核が溶けたままだ」という説明はさすがに行き過ぎだと思う。地球内部の熱の大半は放射性元素の崩壊と、できた頃の余熱だ。月による発熱の寄与は、比べ物にならないくらい小さいはず。
13. 海外の名無しさん(>>11への返信)
「月が隕石の盾になっている」もだいぶ盛られた話だよね。月は小さいし、38万kmも離れている。空に占める面積を考えれば、たまたま当たってくれたらラッキー、という程度の確率でしかない。
14. 海外の名無しさん
地軸を安定させたという説も、最近は一枚岩じゃなくなっている。昔の計算では月がないと地軸が大きく暴れるとされたけど、後の計算では月なしでも振れ幅はもっと穏やかにとどまるという結果も出ている。まだ揺れている領域なので、断言口調の解説を見たら少し身構えたほうがいい。
15. 海外の名無しさん
気をつけたいのは、地球の生命に必要だったことと、生命一般に必要なことは別だという点。うちの生き物はたまたまこの条件で組み上がっただけで、別の条件下では別の組み上がり方をするかもしれない。ただ、これがフェルミのパラドックス——宇宙はこれだけ広いのに、なぜ他の文明の痕跡がまるで見つからないのかという問い——の答えの一つだったら、それはそれで筋は通る。
16. 海外の名無しさん
素朴な疑問なんだけど、将来もし人工の月を作れるようになったら、火星の周りに置いて内部を温め直し、磁場を復活させて大気を保たせる、みたいなことは理屈の上では可能なんだろうか。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
理屈の上でも相当きびしい。月ほどの天体を一つ用意する時点でエネルギーの桁が現実離れしているし、その潮汐で核が動き出すほどの発熱が得られるとも思えない。ただ、そういうことを真面目に検討する人がいる時代に生きているのは、単純に悪くない。
18. 海外の名無しさん
月がなかった地球を想像するのが好きなんだ。潮はごく小さく、夜は本当に真っ暗で、1日は今よりずっと短い。海辺の生き物も夜行性の動物も、まるで違う形になっていたと思う。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
暦も違っていたはずだよね。ひと月という単位はそのまま月の満ち欠けから来ているわけで、あれがなければ人類は一年と一日のあいだを埋める区切りを、まったく別の何かで発明しなければならなかった。
20. 海外の名無しさん
毎回思うんだけど、こういう「主星に対する比率で最大」みたいな一位は、条件を足せばいくらでも作れるやつでは。惑星に限る、準惑星は除く、比べるのは主星との比率だけ。但し書きが三つ付いた世界一。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
言いたいことはわかるけど、今回に限っては条件を外しても圧勝なんだ。準惑星を入れるとカロンに首位を譲るだけで、あとは軒並み数十倍から百倍以上の差をつけられている。上に一つ増えたところで、順位表の形はまったく変わらない。
22. 海外の名無しさん
共通重心が地球の内部にあるという話、初めて知った。地球の中心から約4,670km——半径が6,371kmだから、地表から1,700kmほど下——にあって、地球はその点のまわりで小さくよろけながら太陽を回っている。月に振り回されている、という言い方がわりと正確なんだな。
23. 海外の名無しさん
月が年に3.8cmずつ遠ざかっているのを、アポロが月面に置いた反射鏡にレーザーを当てて測っている、というのが好きだ。半世紀以上前に置きっぱなしにした鏡が、今も黙って仕事をしている。
24. 海外の名無しさん
アシモフの『ファウンデーション』シリーズを思い出した。人類の故郷を探す手がかりが「4分の1ほどの大きさの衛星を持つ惑星」で、それが決め手になる。今回の話を読むと、あの設定がどれだけ的確な観察に立っていたかがよくわかる。
25. 海外の名無しさん
そして月の直径は太陽の約400分の1、距離も約400分の1。だから皆既日食であれだけぴったり重なる。しかも月は少しずつ遠ざかっているので、この重なりが見られるのは宇宙の時間で言えばほんの一瞬だ。その一瞬に生まれ合わせているのは、けっこうな幸運だと思う。
まとめ
月は直径で地球の約27%、質量で約81分の1。8つの惑星とその衛星を見渡せば並ぶ相手がなく、準惑星まで広げて、ようやく冥王星とカロンが上に立つ。コメント欄は冥王星の分類論争から始まり、ガニメデと水星の大小逆転を経て、月が生命環境に与えた影響へと流れていった。面白かったのは、その影響の話に「それは盛りすぎ」という指摘がすぐ並んだこと。核が溶けたままなのも隕石が当たらないのも月のおかげ、という語り口は、感心を誘う代わりに雑になりやすい。最後は、月が年に3.8cmずつ遠ざかっているという事実で静かに締まった。皆既日食がぴたりと重なる時代に居合わせたことを、素直に幸運だと言う人が多かった。

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