「消防の船が来ると50メートル泳いで隣の岬へ移った」真冬の湖を渡った牛が島で過ごした4週間、その後は…

「消防の船が来ると50メートル泳いで隣の岬へ移った」真冬の湖を渡った牛が島で過ごした4週間、その後は… 自然・科学

と畜場行きのトラックへ追い立てられていた雌牛が、金属の柵を突き破って逃げた。止めようとした作業員はその場で腕を骨折。牛はそのまま湖に飛び込み、対岸ではなく、湖に浮かぶ島まで泳いで渡ってしまう。2018年のポーランドで実際に起きた話で、島に渡った牛はそこから約4週間、誰にも捕まらなかった。そして、この話には続きがある。

今日の知ってた?

🐄 2018年1月23日、ポーランド南西部で、と畜場へ送られる直前の雌牛が金属の柵を突き破って逃走した。止めようとした作業員1人が腕を骨折し、肋骨も痛めている。牛はそのままニスキェ湖に飛び込み、湖に浮かぶ島まで泳いで渡った。飼い主がボートで近づくと水に潜って逃げ、消防隊が船を出したときには約50メートル泳いで別の岬へ移動。島での暮らしは約4週間に及び、飼い主は途中で捕獲を諦めた。

背景:舞台はチェコ国境に近い、ポーランド南西部のダム湖

現場になったのはニスキェ湖(イェジョロ・ニスキェ)。ポーランド南西部のオポーレ県にあり、チェコとの国境が近い一帯である。名前は、ほとりにあるニサという町から来ている。

天然の湖ではなく、1971年に川をせき止めて造られたダム湖だ。水面の広さは約20平方キロメートル。「湖」と聞いて池のようなものを想像すると規模を見誤る。水位の変化でできた島や中州がいくつも浮かんでいて、牛が渡ったのはそのひとつである。岸から泳いで届く距離ではあるが、船を出さなければ人は近づけない。この「泳げば行けるが、歩いては行けない」という距離感が、以降1か月の攻防を決めることになった。

逃げたのはリムーザン種の雌牛。フランス原産の肉用種で、雌の成牛でも体重は600キロ前後まで育つ。そして牛は、見た目に反してごく普通に泳ぐ。洪水で増水した川を渡る牛の映像は各地で撮られている。ただし、これは1月の話である。ポーランドの内陸で、湖に氷が張ってもおかしくない時期に、600キロの動物が自分から水へ飛び込んだ。

もう少し詳しく

「鎮静剤を打っておけ」という助言は通らなかった。報道によれば、飼い主の男性は積み込みの前に鎮静剤を使うよう勧めていた。それが実行されないまま追い立てが始まり、牛は柵に突っ込んだ。金属製の柵は壊れ、作業員は腕を骨折、肋骨も打撲している。悪ふざけで壊れたわけではなく、600キロの動物が本気で走ったときに人の腕力で止まる道理がない、というだけの話である。逃走劇として語られる部分の裏で、ひとり病院に運ばれた人がいたことは書いておきたい。

ボートで近づくと、牛は水に潜った。島に渡られたあと、飼い主は船で回収に向かっている。ところが牛は水際まで追い詰められると水中に潜ってかわした。「彼女が潜るのを見た」と飼い主は語っている。のちに消防隊が船を出したときも、牛は約50メートル泳いで島の別の岬に移り、また捕まらなかった。追う側は船を回さなければならないが、逃げる側は最短距離を泳げる。1か月捕まらなかった理由は、根性というよりこの構造の差が大きい。

一頭の牛が、国民的な話題になった。ポーランドのメディアが連日この牛を追いかけ、話は全国区になる。ロック歌手から政治家に転じた国会議員パヴェウ・クキスは、牛が「英雄的に逃げた」と評価し、保護先を探すと表明した。国民が皆これくらいの粘りを見せればポーランドはもっと豊かな国になるだろう、という趣旨の発言まで残している。この段階で、彼女がと畜場へ送られる線は事実上消えた。飼い主も捕獲を諦め、島の牛は「逃げ切った牛」として広く知られることになる。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
子どものころ、品評会に牛を出していた。牛にも性格があって、中には戦士みたいな心臓を持ったやつが本当にいる。柵を壊して人を吹き飛ばして湖を泳ぎ切る牛も、たぶん子牛のころから片鱗はあったはずだ。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
品評会に牛を出すって、具体的には何をするんだ。ドッグショーみたいに、リングを歩かせて審査員に見てもらう感じなのか?

3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
だいたいそれで合ってる。引き綱をつけて、体を洗って、審査のリングを一周させる。ただし牛がまだ45キロくらいの小さいうちに綱を教えないと、大きくなってから逆に引きずり回されるか、てこでも動かなくなる。

4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
わかる。うちの牛は引き綱と毛布をつければ背中に乗れるくらいには言うことを聞く。ちゃんと教えれば牛はかなり従順だよ。だからこそ、聞かないと決めた牛の突破力もそれ相応ということになる。

5. 海外の名無しさん
品評会のリングで去勢牛が何かに驚いて、自分を突き倒したあと柵を飛び越えて、そのまま祭りの通路を全力疾走したことがある。午前10時で人がほとんどいなかったから助かったけど、午後だったら子どもの列に突っ込んでいた。

6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
午前中でよかったな。アニメのネタとしては最高でも、現実で起きたら誰も笑えない。今回の話も、作業員が腕を折っている時点で現場はかなりの騒ぎだったと思う。

7. 海外の名無しさん
柵を突き破ったところまでは痛快な話にできるけど、腕を折られた作業員は完全にとばっちりだよな。労災の書類の事故原因欄に「牛が柵を破って突進」と書く場面を想像すると、さすがに気の毒になる。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
しかも飼い主は事前に鎮静剤を打っておけと言っていたのに、それが実行されなかったらしい。600キロが本気を出したら人間の腕力でどうこうできる話ではないので、そこを省いた判断が全部に効いている。

9. 海外の名無しさん
アメリカ東海岸のマーサズ・ヴィニヤード島の近くにも、こういう牛の一家がいる。どこかから逃げ出して、小さい島のひとつに完全に住み着いた。前に見に行ったら砂浜で日向ぼっこしていた。

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
牛版のテミスキラってことか。ワンダーウーマンの故郷とされる、外の世界から切り離された島のことだけど。あそこの住人が全員牛だと思うと、だいぶ平和な世界観になるな。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
ただ、政治体制がどうなっているのかは分からないままだ。島の統治は誰が担当しているんだ。牛の議会があるのか、それとも一番でかい個体が決めているのか。

12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
牛による民主主義、つまり「モーくらしー」だろう。英語でも democracy に牛の鳴き声の moo を混ぜた同じ駄洒落が並んでいて、この手のスレは毎回ここに落ち着く。

13. 海外の名無しさん
島でオスの牛を見つけて群れを作って、そのまま二足歩行の連中から島を解放してほしい。逃げ切った先で王国を建てる牛、絵として最高だろ。柵のない土地に最初に立った一頭ということになる。

14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
牛解放戦線の初代リーダーの誕生だな。綱領は「柵の全廃」と「トラックの廃止」の二本柱で、活動拠点は湖の中の島。追手は船でしか来られないので防衛面もかなり優秀だ。

15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
昔「銃を持った牛たち」というネタ曲があって、まさにその内容だった。牛が自由のために立ち上がって、バッファローと共に走るか死ぬか、みたいな歌詞。20年以上前の曲なのに、今日のために作られたみたいな気分になる。

16. 海外の名無しさん
これ、我々のほうが悪役なのではという気持ちになる話だな。逃げる側にこれだけ肩入れしているということは、追いかけている側が自分たちだと全員わかっているわけで。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
その理屈を突き詰めると全部の話が同じ結論に着地してしまうんだよな。今日のところは、真冬の湖に飛び込んで4週間逃げ切った一頭の粘りだけを見ていたい。結論は各自が持ち帰ればいい。

18. 海外の名無しさん
ポーランドでは数年前、逃げた牛が野生のヨーロッパバイソンの群れに紛れ込んで一緒に暮らしていた、という話も報じられていた。あの国の牛、行動力の水準がちょっとおかしいのでは。

19. 海外の名無しさん
そもそも牛が泳げることを知らなかった。あの体型で浮くのか。しかも1月の湖だぞ。人間なら数分で動けなくなる水温のはずで、そこに自分から飛び込む判断が理解できない。

20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
牛は普通に泳ぐよ。洪水で増水した川を渡っている映像もあるし、体が大きいぶん浮力も出る。ただ真冬の湖を渡って、そのまま島で4週間というのは牛の中でも相当タフな個体だと思う。

21. 海外の名無しさん
4週間見つからない島って、どれくらいの広さなんだ。ダム湖と聞いて溜め池のようなものを想像していたけど、船で追いかけて逃げられている時点でスケールが全然違う。

22. 海外の名無しさん
政治家が英雄扱いして保護先を探すと言い出した時点で、この牛の余生は政治案件になったな。悪いことではないんだけど、注目が集まると当事者以外の都合で話が動き出すのが常なので、そこだけ少し心配になる。

23. 海外の名無しさん
映画化してほしい。原題は「反芻動物」あたりにして、ディカプリオが極寒の湖を泳ぐ。『レヴェナント:蘇えりし者』で熊に襲われながら生還する男を演じたんだから、今度は逃げる牛の役でもう一度賞を狙えばいい。

その後、彼女はどうなったのか

ここから先は、逃走劇の部分ほど広まっていない。2月下旬、牛は湖のほとりのシェストシェホヴィツェという村の近くで、ついに捕獲される。人手は5人、鎮静剤は3回打たれた。ところが、トラックに載せて運んでいる途中で牛は死んでしまう。報道によれば死因はストレスとみられ、この捕獲はと畜のためではなく、保護先へ移すためのものだった。生きていれば地元の行政トップの農場で余生を送る予定だった、と伝えられている。

助けるための移送で死んだことになるので、後味は良くない。ただ、1月の湖に飛び込んでから約1か月、彼女が誰にも捕まらなかったのは事実である。そしてその1か月、国じゅうがこの一頭を追いかけていたことも。

まとめ

と畜場行きのトラックの前で金属の柵を突き破り、作業員の腕を折り、真冬の湖を泳いで島に渡った雌牛。飼い主のボートからは潜って逃げ、消防の船からは50メートル泳いで逃げ、4週間捕まらなかった。海外のコメント欄は「牛にも戦士みたいな性格のやつがいる」という飼育経験者の証言と、島の王国を建てさせようという冗談で盛り上がる一方、腕を折られた作業員への同情や、「応援している自分たちは何から逃げられている側なのか」という静かな指摘もきちんと並んでいた。そして、逃走劇だけが有名になり、その後の顛末はあまり知られていない。彼女がいちばん自由だったのは、たぶん誰も船を出せなかった数日間だったのだと思う。皆さんはこの話、どこまで知っていましたか。

元ソース: ポーランドの雌牛が金属の柵を突き破り、作業員の腕を折って、と畜場行きを逃れるために近くの島まで泳いで渡った。農場主は最終的に捕獲を諦めた

コメント