夜勤明けの朝、カーテンを閉め切った部屋で横になっても、外からは掃除機の音や宅配の呼び鈴が聞こえてくる。世の中は、昼に寝ている人がいることを前提に作られていない。そんな暮らしを何年も続けた人たちの体で、何が起きているのか。長期にわたる夜勤と、アルツハイマー病を含む認知症のリスクとのあいだに関連が見られる、という話が海外の掲示板で取り上げられ、実際に夜で働いている人たちが次々と書き込みに来た。
※注:以下で紹介するのは「関連が見られた」という研究結果であって、「夜勤が認知症を引き起こす」と証明されたという話ではない。統計上のつながりと、原因と結果の関係は別のものである。この記事は特定の働き方をやめるよう勧めるものでもない。
今日の知ってた?
📏 長期にわたって夜勤で働くことは、アルツハイマー病を含む認知症のリスクが高いことと関連している。ある大規模な研究では、常に夜勤で働いていた人のアルツハイマー病のリスクがおよそ2倍だったとされる。関与している可能性が高い要因として挙げられているのが、睡眠の乱れと概日リズム(体内時計)の乱れである。ただしこれらはあくまで「同時に見られた」関係であり、夜勤が原因だと確かめられたわけではない。
背景:体内時計は、光でしか合わせられない
人間の体には、約24時間の周期で動く時計が組み込まれている。これを概日リズムと呼ぶ。脳の視床下部にある、米粒よりも小さな神経細胞の集まりが中枢の役割を担っていて、そこが体温・血圧・ホルモンの分泌・消化・免疫といった、ほとんど全身の働きに「いまは活動の時間」「いまは休息の時間」という指示を出している。
※ 概日リズム:ラテン語で「おおよそ1日」を意味する語に由来する。放っておくと24時間ぴったりからわずかにずれるため、毎日リセットしないと少しずつ後ろへずれていく。
そのリセットに使われるのが、光である。とくに朝の強い光が目に入ると、体内時計は「ここが1日の始まりだ」と判断して針を合わせる。逆に暗くなるとメラトニンというホルモンが出て、体は休息の側へ傾く。夜に明るい照明の下で働き、朝の明るい時間に眠ろうとする生活は、この仕組みに対して毎回逆向きの合図を送り続けることになる。
ここで厄介なのが、体内時計は「意志」では動かないという点である。夜に働くと決めても、指示を受け取る臓器の側は簡単には切り替わらない。中枢の時計は光に強く反応するが、消化器や肝臓の時計は食事の時刻に反応するなど、体の各所で合図の受け取り方が違う。その結果、全身の時計がバラバラの時刻を指したまま何年も動き続ける。研究者が問題視してきたのは、夜に起きていること自体よりも、この「ずれたまま固定されない状態」のほうだった。
もう少し詳しく
「関連がある」は「原因である」ではない。この種の研究の多くは、大勢の人の職歴と後年の健康状態を突き合わせる形で行われる。そこで分かるのは、夜勤で働いた期間が長い集団と、そうでない集団のあいだに差があるかどうかである。差があったとしても、それが夜勤そのものによって生じたのか、夜勤で働く人に共通する別の何かによって生じたのかは、この方法では区別しきれない。元スレッドのタイトルが「関連している」「可能性が高い要因」という慎重な言い方で止まっているのは、そのためである。
交絡因子という言葉が出てくる理由。交絡因子とは、比べたい2つのものの両方に影響を与えている第三の要因のことである。たとえば夜勤で働く人は、そうでない人と比べて喫煙率・体重・所得・受けた教育の年数・運動する時間などの分布が違うことが知られている。これらはいずれも、それ自体が認知症のリスクと関係すると言われている項目である。研究者は統計の処理でこうした差を打ち消そうとするが、記録に残っていない要因までは調整できない。だから結論は「関連が見られた」で止まる。
睡眠中の脳では、掃除が行われているらしい。近年の研究で注目されているのが、眠っているあいだに脳の中の老廃物が洗い流される仕組みである。日中の活動で溜まった不要なたんぱく質が、睡眠中に液体の流れによって運び出されると考えられている。アルツハイマー病では脳に特定のたんぱく質が蓄積することが知られているため、この排出の効率が落ちる状態が長く続けばどうなるか、という筋道が想定されている。ただしこれも、動物実験や限られた条件下での観察から組み立てられている段階の話で、人間の夜勤者に当てはめて確かめられているわけではない。
夜が悪いのか、社会が昼向けにできているのが悪いのか。元スレッドで最も多くの賛同を集めたのが、この論点だった。夜勤で働く人は、単に起きている時間帯が違うだけではない。銀行も役所も病院も、開いているのは自分が寝ているべき時間帯である。家族や友人の予定は昼に組まれ、断り続ければ関係が細くなる。近所は昼に生活音を立て、自分の寝室だけが静かにならない。つまり夜勤には、体内時計の問題と、生活の質が削られる問題が最初から抱き合わせで付いてくる。研究の数字がどちらをどれだけ拾っているのか、現状ではきれいに分けられていない。
交代制のほうが厳しいのではないか、という見方。常に夜勤の人よりも、2日昼勤・2日夜勤といった形で勤務帯が入れ替わる人のほうが体への負担は大きいのではないか、という指摘もコメント欄では複数出ていた。ずっと夜であれば少なくとも生活のパターンは固定できるが、数日ごとに反転する働き方では時計を合わせ直す作業が終わらない。実際に、勤務帯が固定されているか回転しているかで結果が変わる可能性は研究の世界でも議論されている。
人によって、もともとの時計の位置が違う。朝に強い人と夜に強い人がいることは、生まれつきの体質としてある程度説明がつくとされ、クロノタイプと呼ばれている。ここから出てくるのが、「夜型の人が社会に合わせて朝早い勤務をしている場合はどうなのか」という疑問である。もし問題の本体が「自分の時計と勤務時間のずれ」なのだとすれば、負担を負っているのは夜勤者だけではないことになる。元スレッドでもこの点を挙げる人がいたが、大規模な研究の多くは職歴の記録をもとにしていて、一人ひとりのクロノタイプまでは把握していない。
2倍という数字の読み方。「リスクが2倍」という表現は、2つの集団を比べたときの倍率であって、その人の身に起きる確率をそのまま指しているわけではない。元の確率が小さければ、2倍になっても実際の差は小さく見えるし、逆もある。また、こうした研究は集団の平均を扱うもので、個々人の将来を言い当てるものではない。夜勤を長く続けた人の大半は認知症にならないし、昼だけで働いてきた人にも発症する人はいる。数字が示しているのは、そういう水準の話である。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
夜勤をやったのは9か月だけだったけれど、睡眠、日光を浴びる量、人との付き合い、それに生活の実務——朝9時前に開いている用事なんて何ひとつない——その全部が同時に壊れて、本当にひどい目に遭った。あれを何年も続けている人がいるという事実のほうが信じられない。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
6年やった。しっかり休めたという感覚を一度も持てなかった。そのうち2年は昼のゴルフ場の仕事も掛け持ちしていて、勤務のあいだに3時間しか眠れていなかったんだけど、不思議なことにその時期のほうが体調は良かった。時間が規則的だったからだと思う。丸一日寝ていていいと言われた日ほど、まったく寝つけなかった。
3. 海外の名無しさん
夜勤をしていた頃、睡眠を邪魔される回数が本当に多かった。世の中には「いま昼間だから、誰かが寝ている可能性はゼロ」という前提があるらしい。工事も、集金も、点検も、全部その前提で来る。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
本当にこれで頭がおかしくなる。朝5時に帰宅すると言うと、じゃあ朝ごはん食べてから昼はショッピングモールに行けるねと返される。私はいつ寝ることになっているの。9時間後にはまた出勤なんだけど。じゃあ私が空いてる時間、来週月曜の午前3時に買い物に行こうか、と言うと、その時間は寝てるからと言われる。そういうことなんだよ。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
近所の人は、朝7時に缶ビールを開ける自分を毎回変な目で見てくる。こっちにとっては仕事を終えた後の一杯なんだと説明したこともあるけれど、たぶん一生わかってもらえない。時間帯が違うだけで、やっていることは金曜の夜と同じなのに。
6. 海外の名無しさん
これって「夜であること」が問題なんじゃなくて、「大多数がやっていないこと」が問題なんじゃないかな。もし社会全体が夜勤を前提に組み立てられていたら、挙がっている不調の9割は消える気がするんだけど、どうだろう。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
専門家でもない素人の当てずっぽうだけど、いくつかは確かに「社会がそう作られていない」せいだと思う。それに加えて、長期の夜勤専従がどんな職種なのかにも左右されるはず。仮に夜勤の仕事の大半が警備だったとしたら、孤独と座りっぱなしの影響が全部その数字に乗ってくることになる。ただ、人間はもともと昼に活動する生き物で、それを反転させると体が眠っていたい時間帯に無理をさせることになる。その部分もかなり大きいと思っている。
8. 海外の名無しさん(>>6への返信)
すごく納得できる。夜勤の人がちゃんと休めないのは、体質の問題というより社会の構造の問題だ。銀行にも郵便局にも、たまには行かないといけない。昼に予定されている行事を、夜勤の前だから後だからと断り続けていたら家族から嫌味を言われるようになって、数か月でもかなり消耗した。あれを何年もやると考えると想像が追いつかない。
9. 海外の名無しさん
この手の夜勤の研究を見るたびに思うんだけど、直感的には体内時計そのものより生活の質に関係している気がする。現実には、夜勤の人が健康でいられるように社会が設計されていない。ただ実際、夜勤が好きで、よく眠れていて、かなり健康を保っている知り合いも何人かいる。睡眠・運動・食事・ストレス・人間関係をきちんと管理できている夜勤者だけを集めた研究が見たい。そこまで揃えば、リスクの多くは昼勤の人と変わらない水準に落ち着くんじゃないかと思っている。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
まさにそこが、研究する側もいちばん苦労している点らしい。統計で言う交絡因子——比べたい両方に影響してしまう第三の要因のことだけど、夜勤の場合はそれが多すぎる。喫煙率も、体重も、所得も、運動時間も、集団として偏りがある。ある程度は計算で打ち消せるけれど、記録に残っていないものは打ち消しようがない。だから結論がいつも「関連が見られた」で止まっていて、「夜勤のせいだ」とは書かれていない。
11. 海外の名無しさん
出典を思い出せないんだけど、夜勤はがん、糖尿病、心臓病の発症率の高さとも関連しているという話を読んだ記憶がある。認知症だけの話ではなかったはず。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
というより、教科書に載っているレベルの主要な身体疾患・精神疾患のほぼ全部と相関している、というのが正確なところだと思う。ただ、これだけ何でもかんでも関連が出てくるということは、夜勤という条件そのものより、その下にある「まともに休めない生活」が共通の入り口になっている可能性も考えたほうがいい。
13. 海外の名無しさん(>>11への返信)
10年間ずっと夜勤専従だった。うちの会社は「体内時計に逆らう働き方をさせているから」という理由で、夜勤の社員だけ病気欠勤の手当を厚くしていた。当時は太っ腹だなくらいにしか思っていなかったけれど、あれは会社が最初からリスクを把握していたということなんだよな。
14. 海外の名無しさん
自分は夜勤が好きだ。昼勤だった頃より、精神的にはずっと良くなった。仕事のある日は寝る時刻を決めていて、休みの日はみんなと同じように寝坊する。役所や通院の用事のために有給を使わなくていいのは本当に大きいし、夜勤手当も家計を助けてくれている。全員に合うやり方だとは思わないけれど、自分には合っている。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
これ、たぶん昼型の人を基準にした話なんじゃないかと思っている。自分は完全な夜型なのに朝がとんでもなく早い仕事に就いていて、平日は一日たりとも「死にそう」と思わない日がない。社会の標準に合わせて昼に働いているだけで、自分も同じ種類の負担を背負っているんじゃないだろうか。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
いま研究そのものを読める状況ではないんだけど、対象が「朝型」の人だけだったのかどうかが気になる。人にはそれぞれクロノタイプ、つまり体内時計の傾向があるわけで、夜型や中間型を集めて同じことを調べたら結果が変わるのか変わらないのか。そこが分からないと、自分の場合はどうなんだと考えようがない。
17. 海外の名無しさん
睡眠には、日中の活動で脳に溜まった老廃物を洗い流すという役割があるとされている。それを前提にすると、その仕組みを毎日引っかき回している状態が神経系に影響を残すというのは、そんなに驚く話ではない気がする。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
でも、睡眠の量そのものはちゃんと確保できている場合はどうなんだろう。以前は18時から6時までの夜勤だったけれど、いまの8時から17時という昼型の生活より、あの頃のほうが休めていた実感がある。時間帯の問題なのか、単に睡眠時間の問題なのか、そこが分かれるかどうかで話がまったく違ってくる。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
そうなんだよ。夜勤の研究では、「シフトをごまかして昼の生活も維持しようとする人」と「睡眠を最優先している人」を分けて見てほしいとずっと思っている。自分は7年やっていて、勤務後は毎回6〜8時間きっちり眠る習慣がついた。連休が入るときも一気に戻さず、数時間ずつずらして、いちばん早くて午前3時から11時の睡眠に落ち着かせる。同じ「夜勤7年」でも中身はまるで違うはずなんだ。
20. 海外の名無しさん
こっちは鉱山業界。勤務地と電力の事情で、今月は4時から14時、来月は17時から3時、みたいに丸ごと入れ替わる。働き始めてから経験した睡眠スケジュールは、少なく見積もっても6種類。まともに眠れているかと聞かれたら、答えは笑うしかない。
21. 海外の名無しさん
個人的には、ずっと夜勤より交代制のほうが体にはきついんじゃないかと思っている。2日昼勤・2日夜勤みたいなやつ。友人がそれを担当していた時期は、2年くらいずっとゾンビみたいな顔をしていた。うちの国には2日ずつ勤務帯を3回まわして2日休むという型もあって、あれをどうやって人間が続けられるのか本当に分からない。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
2日昼・2日夜・4日休みを10年ほどやった。慣れることは慣れるんだけど、時期によっては本当にただ体が動いているだけの状態になって、曜日の名前が意味を持たなくなる。いまは昼だけの勤務になって、体調は明らかに良くなった。ただ、あの頃の給料には戻れないというのも本音ではある。
23. 海外の名無しさん
高齢者施設で働いている。この業界では、秋になって日照時間が短くなる時期に認知症の症状が目に見えて出やすくなることが、記録としてはっきり残っている。理由については誰も確かなことを言えないらしいんだけど、起きているのは間違いない。光と脳の関係は、まだ相当な部分が分かっていないんだと思う。
24. 海外の名無しさん
そもそも夜勤手当が安すぎる。体内時計と引き換えにする金額じゃない。時給が2ドル上乗せされるたびに、「はい、海馬の分の追加料金です」と言われている気分になる。
25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
そこは本当にそう思う。ただ、病院も消防も送電網も鉄道も、誰かが夜にいないと翌朝の社会が動かない。だから「夜勤はやめよう」で片づく話ではないんだよな。自分たちが求めているのは、手当をまともにすること、連続勤務の上限を守ること、昼に静かに眠れる環境を作ること、その3つくらいだと思う。研究の数字が、そういう方向の話に使われるならありがたい。
まとめ
長期にわたる夜勤と、アルツハイマー病を含む認知症のリスクとのあいだに関連が見られる。ある大規模な研究では、常に夜勤だった人のリスクがおよそ2倍だったとされ、要因としては睡眠と概日リズムの乱れが挙げられている。ただしこれは統計上のつながりであって、夜勤が原因だと確かめられたわけではない。
コメント欄でいちばん支持を集めたのも、まさにその線引きだった。曰く、問題は「夜であること」ではなく「社会が昼向けにできていること」ではないか。銀行も役所も自分が寝ている時間に開き、昼の予定を断り続ければ人間関係が細り、近所は昼に生活音を立てる。夜勤には体への負担と生活の質の低下が最初から抱き合わせで付いてきて、研究の数字がどちらをどれだけ拾っているのかは、まだきれいに分けられていない。
一方で、夜勤のほうが心身に合っているという人、7年かけて睡眠の型を作り上げた人、勤務帯が数日ごとに反転する交代制のほうがつらいという人も並んでいた。そして最後に残ったのは、夜勤をやめれば済む話ではない、という当たり前の事実である。誰かが夜にいるから、翌朝の社会が動いている。

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