「アフガニスタンの上空を飛ぶには、Gmailで許可を申請して、700ドル払う」。海外の掲示板にこんな投稿が上がり、1万2千近い賛成票を集めた。冗談のようだが、航空会社やパイロット向けの最新の運航情報を確かめると、大筋は本当だった。しかも、この国の上空には航路を見守る管制官がいない。パイロットどうしが無線で自分の位置を言い合い、ぶつからないように間を空けている。ただ「48時間前までに申請」の部分は資料によって食い違う。2026年時点の資料で、どこまでが確かな話なのかを見ていく。
今日の知ってた?
📮 アフガニスタンの空(カブール飛行情報区)を通る飛行機は、事前に許可を取る必要がある。申請先は航空当局のGmailのアドレスで、上空を通るだけでも1回一律700ドル(1ドル150円で約10万5千円)かかる。
📡 2021年8月以降、この空は管制サービスのない「クラスG」空域になっている。パイロットは決められた周波数で自分の位置と予定を放送し合い、互いの間隔を自分たちで保って飛んでいる。
背景:空の「縄張り」と通行料
世界の空は、国や地域ごとに「飛行情報区(FIR)」という区画に切り分けられている。区画ごとに担当の当局があり、そこを通る飛行機に気象や空港の情報を伝え、多くの区画では管制官がレーダーと無線で飛行機どうしの間隔を見守っている。日本の上空と周りの海の上は「福岡飛行情報区」で、日本の当局が担当している。アフガニスタンの空は、首都の名前をとって「カブール飛行情報区」と呼ばれる。
領空はその国のものなので、着陸しない飛行機が上を通り過ぎるだけでも、多くの国が「上空通過料」を取っている。料金は国によって、機体の重さや飛んだ距離で決めるところもあれば、一律のところもある。航空会社にとっては、燃料代や空港の使用料と並ぶ、ふつうの経費のひとつだ。
アフガニスタンの700ドルという金額は、実は最近決まったものではない。運航情報を配信する会員制サービス「OPSGROUP」の2017年8月の記事によると、アフガニスタン民間航空局はこの年の8月1日から、上空通過料を400ドルから一律700ドルに引き上げた。自前で航空管制を運営する設備の費用をまかなうため、というのが当時の説明だった。機体の大きさで料金が変わらないので、大型の旅客機も小型のビジネスジェットも同じ額を払う。
状況が大きく変わったのは2021年8月、タリバンが首都カブールを掌握したときだ。米連邦航空局(FAA)が2025年7月に出した規則の文書によると、その後、国際民間航空機関(ICAO)のアジア太平洋事務所が調整の場を設け、アフガニスタンと周りの国の航空当局が、上空通過を再開するための非常時の計画をまとめた。アフガニスタン側は航空情報(NOTAM)で通過の手順を示し、飛行の種類ごとに使ってよい高度の帯を決めた。この手順の柱が、管制がほとんど、あるいはまったく無い空で使われる「TIBA」という国際的な方式である。
もう少し詳しく
「Gmailで申請」は本当か。OPSGROUPが2026年3月3日に出した最新の解説によると、カブール飛行情報区に入るすべての運航者は事前の許可が必要で、申請先は「flightpermissions.acaa」で始まるGmailのアドレスになっている。同じ記事に載っている実際のパイロットの報告では、政府のドメインのアドレスを写しに入れて送っていた。添える書類は、エクセル形式の申請書、保険、耐空証明書(機体が安全に飛べることの証明)、機体の登録証などで、この報告者には24時間以内に返事が来たという。一方で、申請の期限は資料によって違う。パイロットの報告では「最低48時間前」と言われたが、記事そのものは「少なくとも72時間の余裕をみるように」と勧めている。元の投稿の「48時間前」は間違いとまでは言えないが、確定した数字として扱わないほうがよい。
管制官のいない空を、どうやって飛ぶのか。同じ解説によると、アフガニスタンの空は全域が「クラスG」と呼ばれる管制のない空域で、管制サービスは受けられない。飛行機は決められた高高度の非常用の航路だけを飛び、125.2MHzという周波数で、自分の位置と、これからどの高度をどう飛ぶかを放送する。空域に入る前に一度、中に入ってからも一定の間隔で繰り返し放送し、同じ高度を飛ぶ前の機体とは15分の間隔を空ける決まりだ。これがTIBA(航空機による交通情報の放送)と呼ばれる方式で、管制官の代わりに、パイロットどうしが耳で互いの居場所をつかむ。隣の飛行情報区の管制には、境界の15分前までに連絡を入れる。日本の上空では、旅客機は管制官の指示を受けながら飛ぶのが当たり前なので、仕組みがかなり違う。
通る飛行機が急に増えた理由。AFP通信の2025年8月の記事によると、航空機の追跡サイト「フライトレーダー24」の数字で、2025年5月には1日平均約50機だったアフガニスタン上空の通過便が、6月13日以降は約280機に跳ね上がり、その後も1日200機を超える日が多い。イスラエルとイランの間でミサイルの撃ち合いが起き、イランやイラクの空が閉じられて、中東の空がいつ開いていつ閉まるか読めなくなったためだ。ヨーロッパとアジアを結ぶ便が、代わりの通り道としてアフガニスタンの上を選んだ。AFPは、通過料の収入を月に約420万ドルと見積もっているが、当局は予算を公表しておらず、確かめようがないとも書いている。支払いは、アフガニスタンの空港を運営するアラブ首長国連邦の会社や、許可の手続きを代行する業者を通すことが多いという。2026年3月のOPSGROUPの解説も、中東の空の通り道が閉じているため、いつもよりかなり多くの便が通っていると伝えている。同じ月の2日には、パキスタンとの国境付近の衝突を受けて、イギリスがこの空域について注意を呼びかけた。
安全を左右するのは高さ。FAAは2025年7月、アメリカの航空会社などがカブール飛行情報区を飛ぶときの制限を2028年7月25日まで延長した。高度約9,750メートル(3万2千フィート)より下を飛ぶことを禁じ、例外として、国の東の端をかすめる特定の航路だけは約9,150メートル(3万フィート)以上で通ってよい。この区間は約12海里(約22キロ)で、巡航速度ならおよそ95秒で抜けてしまう。3万フィートの高さが外されているのは、非常時の計画でこの高さが軍用に取っておかれることがあるためだ。地上の武装勢力が持っているとみられる古い携帯式の地対空ミサイルは、届いても地上から約7,600メートル(2万5千フィート)までとされ、FAAが心配しているのは主に、空港に降りたり飛び立ったりする低い高度での危険である。AFPの記事では航空の専門家が、巡航高度で上を通るだけなら危険は「ほぼゼロ」で、海の上を飛ぶのと変わらないと話す一方、緊急着陸の先としては最悪の場所だとも付け加えている。OPSGROUPも、アフガニスタン国内の空港への着陸は「本当に最後の手段」として、燃料の計画は国外の空港に抜けられるように立てるよう勧めている。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
ニュージーランド出身の同僚から聞いた話。80年代の終わりごろ、アフガニスタンから古いアエロフロート(旧ソ連の航空会社)の便で出国したらしい。機内は乗客と貨物が半々で、前後じゃなくて左右で分けてあった。貨物の中にはヤギもいて、彼女は通路越しに人懐っこいヤギをよくなでてたって。離陸の前には滑走路から戦車をどかさなきゃいけなかったそうだ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
最初から最後まで、読んでてずっと落ち着かない話だったw
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
自分たちの当たり前と、ほかの人の暮らしって、本当に全然違うんだよな。ヤギの隣に座る国際線なんて想像もしなかった。
4. 海外の名無しさん(>>1への返信)
うちのおじも90年代のはじめに東ヨーロッパのどこかで飛行機に乗ったんだけど、全員が席に着いたあと、通路に折りたたみ椅子が並べられて、そこにも人が座ったって言ってた。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
それ、どこかの格安航空会社が読んだら「通路席(本当の意味で)」として売り出しそう。
6. 海外の名無しさん
2020年1月、デリー発アムステルダム行きの便が4時間遅れて、夜中の3時じゃなくて朝7時に出発した。おかげで全部明るいうちにアフガニスタンの上を飛んだんだけど、上から見た山々は本当に『指輪物語』のモルドールそのものだった。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
間違いなくきれいな国だよ。向こうにいたときに撮った山の写真がまだある。ヘリで山の上を飛んだのも楽しかったな。仕事じゃなければもっと楽しかった。
8. 海外の名無しさん(>>6への返信)
茶色い禿げ山ばかりなのは、長い戦争と違法な伐採で木がなくなったせいもあると聞いた。冬は暖房と煮炊きのために燃やせる物は何でも燃やすから、薪はほとんどぜいたく品なんだって。あの山にはもう少し木があってほしい。
9. 海外の名無しさん
何年か前、アメリカの航空会社が「推奨の最低高度3万2千フィートで飛べない」とひと騒ぎになって、アフガニスタンの東の端をかすめるほんの12マイル(2分もかからない区間)だけ3万フィートで飛ぶ例外を認めてもらったって話があった。たいていのロケット弾は2万5千フィートまでしか届かないらしい?
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
そう。武装勢力が持ってる携帯式のミサイルは、低く飛ぶヘリを狙う物だから、旅客機の巡航高度までは届かない。マレーシア航空機が撃ち落とされたときに使われたような、レーダーで誘導する大型の地対空ミサイルは別の話だけどね。
※注:アメリカの航空会社向けの制限は実際に2025年に延長されていて、3万フィートで通ってよい区間は約12海里(約22キロ)、巡航速度でおよそ95秒とされている。
11. 海外の名無しさん
申請メールが迷惑メールフォルダに振り分けられちゃったら、どうなるの?
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
その場合は……まあ、あんまりよろしくないことになる。だから送る前に件名はちゃんと書こう。
13. 海外の名無しさん
管制官の仕事をパイロットが自分でやってるなら、その700ドルはいったい何の料金なんだよ。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
パイロットとして言うけど、上空通過料はごくふつうのものだよ。どの国にも自分の空に対する権利があるからね。むしろほかの国に比べたら安いほうだと思う。
15. 海外の名無しさん(>>13への返信)
サービスの内容は「その空を飛んでいてもいい」ってこと。シンプルで分かりやすい。
16. 海外の名無しさん
でも実際のところ、払わずに勝手に飛んだらどうなるんだ?
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
法律違反だから、まずは航空会社を訴えて料金を取り立てることができる。もっと言えば、許可なく領空に入った飛行機にどの国でもできること、つまり戦闘機を上げて着陸させたり、撃ち落とそうとしたりもありうる。いまのアフガニスタンにそこまでの力はないし、地上の兵器も巡航高度には届かない。それでも、数百ドルを浮かせるために「撃たれても文句は言えない」飛び方をする航空会社はどこにもないよ。通過料は、通る国ごとに払うのが当たり前の経費なんだから。
18. 海外の名無しさん
「ロシアはまったく別のやり方をとっている。進路と高度と速度が決められていて、少しでも外れると両側の翼の横にミグ戦闘機がぴったり付く。最寄りの飛行場に降ろされ、乗客はバスで目的地へ向かい、乗員は二度と姿を見せない。とてもよくできた仕組みで、同じミスが二度と起きない」
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
いきなり怖い話が始まったと思ったら、昔の英語圏のコメディのレコードの一節なんだよね。本気にする人がいそうなのがまた怖い。
20. 海外の名無しさん
アフガニスタンの空って、現実版の「B7R」じゃん。ゲームの『エースコンバット・ゼロ』に出てくる、誰が何をしてもいい空域な。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
つまり、そこで敵機を全部落とせば「円卓の鬼神」と呼ばれるってこと? 申請メールは出しておけよ。
22. 海外の名無しさん
便乗して言うと、アメリカ上空を飛ぶのもGmailで申請して、たったの5ドルだよ(大うそ)。各航空会社の運航担当で知らなかった人は、自分に連絡くれればアドレスを教えます。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
こいつの言うことは信じるな、詐欺だ。本物のアドレスは自分に個人メッセージで聞いてくれ。
24. 海外の名無しさん
メールで申請するところを除けば、アフリカの一部の空もだいたいこんな感じだよ。レーダーの届かない区間を、無線で位置を言い合いながら飛ぶ区間があるって聞くよ。
25. 海外の名無しさん
アメリカの小さな飛行場を知ったら驚くと思う。管制塔のない飛行場がたくさんあって、パイロットは共通の周波数で「いまどこを飛んでいて、これから降ります」って自分で言いながら降りていくんだ。原理は同じだよ。
まとめ
「Gmailで申請、一律700ドル」は2026年時点の運航情報でも確かめられる話で、700ドルという金額は2017年から変わっていない。ただ申請の期限は48時間とも72時間ともされ、定まっていない。コメント欄では「何の料金なのか」という素朴な疑問に、パイロットが「空を通る権利の料金で、ほかの国より安い」と答え、ヤギと同乗した昔の出国便や、管制のない飛行場での飛び方の話へと広がっていった。管制官のいない空でも、決まった航路と高さ、無線の放送という約束事で、毎日たくさんの旅客機が通り抜けている。
参考資料
- OPSGROUP「2026年版 アフガニスタン上空通過の最新情報」(2026年・英語)
- OPSGROUP「カブール飛行情報区の新しい上空通過料」(2017年・英語)
- 米連邦官報(米連邦航空局)「カブール飛行情報区における特定の飛行の禁止の延長」(2025年・英語)
- ドーン(AFP通信配信)「資金難のタリバン、空域に収入源を見いだす」(2025年・英語)
元ソース: アフガニスタン上空を飛ぶには、48時間前までにGmailで許可を申請し、700ドルを払う必要があると今日知った。航路の管制がないので、パイロットは無線で位置と予定を伝え、間隔を自分たちで保つ

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