欲しい物を選び、注文の中身を好きなように決めて、注文ボタンを押す。出前アプリなら、配達員がいまどこにいるのかを画面で追いかけることもできる。ところが、いくら待っても玄関のチャイムは鳴らない。お金を使わずに「買い物をした気分」だけを味わうための、何も届かないアプリが韓国で流行り始めている――海外の掲示板でそんな話が注目を集めたが、当の韓国の人たちからは意外な声が上がった。
※注:「ドーパミン」は脳内で働く神経伝達物質のひとつ。「ごほうび」を期待したり手に入れたりしたときに関わるとされ、俗に「快楽物質」とも呼ばれる。「ドーパミンサイト」は、その気持ちよさを手軽に味わえるサイトやアプリ、という意味合いの呼び名とみられる。
今日の知ってた?
📦 韓国では「ドーパミンサイト」と呼ばれるものが流行り始めている、と海外の掲示板で紹介された。中身は偽のショッピングアプリや出前の配達状況を追うアプリで、注文内容を自由に決め、架空の配達員の動きを追いかけられる。狙いは何も買わずに「お金を使った満足感」だけを得ること。もちろん、注文した物は決して届かない。
背景:「ドーパミンサイト」とは
元スレッドの説明によると、ドーパミンサイトは、ふだん使う通販アプリや出前アプリに似せて作られている。商品やメニューを選び、注文の中身を自分好みに決め、出前なら配達員がこちらへ向かってくる様子を追いかける。本物の買い物と同じような手順を踏むが、配達員は架空の存在で、実際の買い物は発生しない。最後まで進めても何ひとつ届かないし、商品の代金を払うこともない。
海外の報道でよく名前が挙がるのは、「FoodNeverComes(料理は永遠に来ない)」という偽の出前サイトだ。世界各地のテクノロジーの動きを伝えるメディア、レスト・オブ・ワールドの記者は2026年8月、こうしたサイトを1週間使ってみた体験を記事にしている。通販を模した「ドーパミン・ショップ」などのサイトでは、商品を探し、レビューを比べ、カートに入れ、届け先の住所を入れて注文し、配達状況まで追える。そして、何も起きない。お金は動かず、荷物も来ない。記者はこの1週間で、4万ドルを超えるパテック・フィリップの腕時計やエルメスのハンドバッグを「注文」したそうだ。米テック系ニュースサイトのテックスポットによると、出前を模したサイトのひとつは、Xで活動する韓国の開発者が2026年5月にChatGPTを使って作ったもので、韓国語でしか使えない。同じころには、英語で使える似たアプリも出てきて、「食欲を抑えるウェルネス企業」を名乗っているという。
なぜ、それで満足できるのか。「買い物は、選んでいるときがいちばん楽しい」とはよく言われる。カートに商品を入れていく時間や、注文したあとに配達状況の画面をつい何度も開いてしまう時間に、ワクワクした覚えがある人は多いだろう。ドーパミンは、何かを手に入れた瞬間だけでなく、「もうすぐ手に入る」と期待している段階でも働く、という説明もよく聞かれる。ドーパミンサイトは、この「選ぶ」「待つ」の楽しさだけを切り出したもの、と考えると分かりやすい。
こうしたサービスに目が向く背景には、物価が気になって気軽に買い物しにくい中、お金をかけずに気晴らしをしたいという気持ちがあるのではないか、という見方もある。韓国の新聞・韓国日報が2026年5月に報じた記事(英字紙コリア・タイムズに英訳を掲載)には、25歳の会社員が登場する。夜中に何か食べたくなっても、節約のために我慢することが多い。そこで午前2時に偽の出前サイトを開き、メニューを選んでカートに入れる。本物のアプリだと高い配達料が気になって注文ボタンの前でためらうが、ここでは最初から注文できないので、気兼ねなく眺めていられる。「何も頼まないけれど、少しストレスが和らぐ気がする」と話している。
もう少し詳しく
「流行」と言えるほどなのか。この話には注意書きが要る。元スレッドには、韓国人だという利用者から「韓国ではまったくメジャーではない」「一度も聞いたことがない」という書き込みが相次いだ。もっとも、韓国のメディアがまったく取り上げていないわけではない。先の韓国日報の記事は、こうしたサイトが「最近、若者のあいだで広がっている」と書いている。ただ、紹介されているのは数人の利用者の話で、どれくらいの人が使っているのかを示す数字は見当たらない。「韓国じゅうで大流行」というより、「若者の一部で話題になっている」くらいに受け取るのがよさそうだ。ある国のちょっと変わった話題が、海外では「その国の流行」として大きく伝わってしまうこともある。
買わずに眺めるのは、どこの国でも同じ。レスト・オブ・ワールドの記事で、デンマーク高等研究所で消費文化を研究するシュリラム・ベンカトラマンは、買うつもりもなく眺める、カートに入れたまま放っておく、手に入れる前の期待を楽しむ、といった行動はどこの国の人もしてきた、と指摘している。韓国らしいのは行動そのものではなく、それをデジタルのサービスとして形にした点だろう、という見立てだ。韓国は世界でもとりわけネット通販や出前、電子決済が暮らしに根づいた国で、だからこそ「買い物ごっこ」が形になりやすかった、と記事は書いている。
たばこを吸わない「たばこ休憩」まで。韓国日報の記事は、韓国語で「たばこ休憩」を指す俗語を名前にしたサイトも紹介している。「スタート」ボタンを押すと、いまほかに誰が来ているかが表示され、「今日もなんとか乗り切ってる」「家に帰りたい」といった匿名の書き込みが流れる。試験勉強の合間に使うという24歳の大学生は、「本当に吸っているわけじゃないのに、誰かと休憩しているみたいで、妙に落ち着く」と話している。
「モッパン」と同じ根っこ。韓国・ジュンウォン大学のキム・ホンシク教授は、同じ記事で、こうしたサイトをモッパン(大量の料理を食べる様子を配信する動画)になぞらえている。自分では食べずに、画面越しに食欲を満たす。酒やたばこや食べ物を間接的に体験させるコンテンツが増えていて、ドーパミンサイトもその延長だという。さらに教授は、将来への不安や燃え尽きが広がる中で、誰かとゆるくつながっている感覚だけでも寂しさや不安が和らぐ、面倒な人間関係を結ばずに済むのも若い人には気楽だ、と話している。
「似たようなもの」はほかにもある。コメント欄で最も支持を集めたのは、「シミュレーターゲームに似ている」という声だった。現実なら大変な仕事を、ずっと手軽な形で体験して、達成感だけをもらう。そう考えると、ドーパミンサイトは「お金を使う体験」のシミュレーターだと言える。ほかにも、中国には「働くふり」ができる場所があるという話や、「買い物好きのためのノンアルコールビールだ」というたとえも出ていた。
中国の「働くふり」は実在する。2025年8月の英BBCの報道によれば、中国では、職のない若い人がお金を払って「出勤」する模擬オフィスが、深圳、上海、南京、武漢、成都、昆明などの大都市に現れている。広東省東莞の「働くふり会社」に通う30歳の男性は、2024年に食品の事業をたたみ、1日30元(約4.2ドル)を払って朝からオフィスに通っている。料金はたいてい1日30〜50元で、昼食や飲み物が付くこともある。パソコンで求職や起業の準備をする人もいる。背景には14%を超える若者の失業率がある。経営者の男性は「売っているのは席ではなく、役立たずではないという尊厳だ」と語っている。
かえって物欲をあおらないか。一方で、「逆効果になりそう」と心配する声もあった。買ったつもりで満足できる人もいれば、画面で選んでいるうちに本当に欲しくなってしまう人もいるだろう。練習のつもりのシミュレーターが、本物への入り口になりかねない、という指摘も出ていた。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
これって、シミュレーターゲームに近い気がする。現実だったら大変な仕事を、ずっと楽なやり方でこなして、ご褒美の気分だけもらうっていうあれ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
「出前を気軽に頼めるくらいお金に余裕がある人」シミュレーター、ってことか。欲しいのは料理じゃなくて、その身分のほうなんだな。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
小学校高学年くらいの息子が、友達とVRで仕事をするシミュレーターゲームにハマってて、毎日大はしゃぎしてる。横で見てると「本物の仕事に就いてから同じ顔ができるかな」って、つい笑っちゃうよ。
4. 海外の名無しさん(>>1への返信)
ただ、シミュレーターにはよく知られた副作用もあるよね。遊んで慣れているうちに、いつの間にか本物のほうへ進む裏口ができてしまうっていう。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
つまり偽の出前アプリで注文の練習を積んだ結果、本物のアプリで一切迷わず注文できる人間が完成するわけか。いちばん危ないやつじゃん。
6. 海外の名無しさん
古い人間だと言われてもいいけど、自分が満足するのは、どう考えても「品物を受け取った瞬間」なんだよな。届かないなら、いったい何のために待ってるんだ。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
自分は逆で、注文ボタンを押した瞬間がピーク。届いた頃には何を頼んだかも忘れてて、段ボールを開けて「ああ、これか」ってなる。こういうアプリは、たぶん自分みたいな人間向けなんだと思う。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
分かる。箱を開けるときより、配達状況のページを何回も更新してる時間のほうが楽しいんだよ。その「待ってる時間」だけを切り取ったのは、ある意味で人間のことをよく分かってる。
9. 海外の名無しさん
韓国人だけど、これ全然メジャーじゃないよ。「流行り始めている」の一言に、話を盛る役目が全部押しつけられてる。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
同じく韓国人。正直、このスレで初めて知った。周りでこんなアプリの話をしてる人なんて、一度も見たことがない。
11. 海外の名無しさん(>>9への返信)
韓国人だけど聞いたこともないよ。どうしてみんな、この国のことになると大げさに盛られたニュースにこんなに飛びつくんだろう。明らかにAIが作った動画を見て、SNSで本気で騒いでる親世代を眺めてる気分だよ。
12. 海外の名無しさん
「一応あるにはあるけど、ほとんど誰も使ってない」類の話じゃないかな。「韓国ってまた変なものが流行ってるな」って面白がるのは楽しいけどさ。アメリカにだって自分の爪を売ってる男の一人くらいはいるだろうけど、アメリカ人のほとんどはそんなこと知りもしない。それと同じだと思う。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
日本の話でもよく見るパターンだね。どこかの店が一軒やってるだけのことが、海外に伝わるころには「日本で大流行」になってる。
14. 海外の名無しさん
ドーパミンが出るかどうかは分からないけど、中国には「働くふり」をするための場所があるらしい。1日4ドルくらいで共有オフィスの席を貸してくれる会社がある、って記事を読んだことがある。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
買い物のふりに、働くふり。次は「長い休暇を取ったふり」ができるサービスが出てくるんじゃないか。旅先の写真まで勝手に用意してくれるやつ。
16. 海外の名無しさん
なるほど、買い物好きのためのノンアルコールビールってわけか。酔えはしないけど、飲んでる気分にはなれるやつ。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
でもノンアルで我慢できる人もいれば、かえって本物が飲みたくなる人もいるからなあ。これもむしろ逆効果になりそうな気がする。
18. 海外の名無しさん
正直、このアイデアは嫌いじゃない。みんなが何を選んで、どこで注文をやめたのかが全部分かるんだから、消費者調査のデータとして売れそう(笑)
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
それ、本物の通販サイトがとっくにやってるやつでは…。一回見ただけの商品の広告が、一週間くらいずっと追いかけてくるもんな。
20. 海外の名無しさん
次はフリマサイト版を作ってほしい。買い物依存の人がチャットボット相手に「まだありますか?」とだけ送って返事をしないまま放置したり、定価の2割の値段で交渉を持ちかけたりできるやつ。これなら本物の出品者が迷惑しなくて済む。
21. 海外の名無しさん
頼むから普通にゲームをやってくれ。架空の物を買って架空の配達を待つくらいなら、ゲームの中で装備をそろえたほうがよっぽど楽しいだろ。
22. 海外の名無しさん
ネットの9割は、とっくにドーパミンサイトみたいなものだと思う。延々とスクロールしてしまうSNSも、次々に流れてくる短い動画も、やってることは同じだよ。
23. 海外の名無しさん
お金を使うこと自体が娯楽になって、ついに商品すらいらなくなったのか。消費社会の行き着く先を見せられてる気分だ。いかにも現代らしい悩みだね。
24. 海外の名無しさん
人間って本当に変な生き物で、そこが好きなんだよね。自分の脳をだますやり方を、あの手この手で考え出すんだから。すごく面白い。
25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
目覚まし時計を5分進めておくのも、要は自分の脳をだましてるわけだしね。しかも進めてあるのを知ってるのに、毎朝ちゃんとだまされてる。
まとめ
お金を使わずに「買い物をした満足感」だけを味わう、偽の通販・出前アプリ。「韓国で流行り始めている」という紹介に、コメント欄は「シミュレーターゲームみたい」「買い物好きのノンアルビール」と面白がる一方、韓国人だという人たちからは「聞いたこともない」と冷静なツッコミが続いた。とはいえ、通販サイトのカートに商品を入れるだけ入れて、買わずに閉じた経験がある人なら、「選ぶ」「待つ」だけの楽しさには少し覚えがあるかもしれない。


コメント
日本でもこれ報道されてた。韓国人って暇なんだな…就職できないのか。
想像上の実在しない“貧しい日本”よりマシって、自分を慰めながら生きている連中に流行りそうですね。