猫は砂糖の甘さが分からない。そう聞いて「じゃあ、なぜうちの猫はアイスをなめるのか」と首をかしげた飼い主は多いはずです。海外の掲示板でも、クッキーを盗まれた人たちから反論が相次ぎました。甘味の話を追っていくと、行き着く先は脂肪と、日本で見つかった「うま味」でした。
今日の知ってた?
🐈 猫は甘味の受容体を作る遺伝子が壊れていて、砂糖を好まず、甘さを感じていないとみられる。2005年の論文で、壊れた遺伝子はイエネコ・トラ・チーターに共通と報告された。
背景:甘さを受け取る「鍵穴」が作れない
舌が甘味を感じるのは、味細胞の表面にある受容体に糖がはまるからです。この受容体は、T1R2 と T1R3 という2つのタンパク質が組み合わさってできています。片方でも欠ければ、受容体は働きません。
2005年、アメリカのモネル化学感覚研究所などのチームが学術誌『PLoS Genetics』に報告したのが、猫ではこの片方の設計図である Tas1r2 遺伝子が、247塩基分抜け落ちているうえに、途中で読み取りが止まる箇所を抱えた「偽遺伝子」になっているという発見でした。舌でも働いていません。もう片方の Tas1r3 は無事でしたが、相手がいないので甘味の受容体は組み上がりません。調べた健康な成猫6匹のすべて、さらにトラとチーターにも、よく似た欠けと読み止まりがありました。
猫が甘い物に興味を示さないことは、遺伝子の発見より前から知られていました。1975年には人工甘味料を猫が嫌がるという報告があり、1977年の研究では、イエネコもトラもチーターも、真水より砂糖水を好むことはありませんでした。猫の味覚の神経を調べると、塩味・酸味・苦味、アミノ酸などには反応するのに、砂糖には反応しません。遺伝子の発見は、昔から分かっていた行動に理由を与えたものです。
なお、この論文は「好まず、甘さを感じられない可能性がある」という慎重な書き方をしています。「猫は甘味を絶対に感じない」と言い切っているわけではありません。研究者の一人ジョー・ブランドも、2007年にサイエンティフィック・アメリカン誌の取材で、ごくまれに、残った受容体で高濃度の糖を感じる猫がいるのかもしれないが、まだ分からないと話しています。アイスやわたあめを喜ぶ猫の話は、同誌でも「確かめられていない体験談」という扱いでした。
もう少し詳しく
猫だけの話ではない。2012年に米科学アカデミー紀要に載った研究によると、肉だけを食べる哺乳類では、同じ遺伝子が別々に壊れていました。アシカ、オットセイ、ゼニガタアザラシ、アジアコツメカワウソ、ブチハイエナなど、ネコ科以外の7種です。一方、アードウルフ(ハイエナの仲間)、アライグマ、メガネグマでは無事でした。カワウソでも種類によって違います。甘いものを口にしない暮らしでは、遺伝子が壊れても困らなかったのだろう、というのが一つの説明です。
では、アイスをなめる猫はなぜいるのか。甘さ以外に惹かれているとみるのが自然です。米ペット誌キャスターの獣医師回答(2026年)は、猫が好むのは砂糖ではなく脂肪分とクリーミーさだと説明しています。ただ、これは獣医師の見立てで、甘味のように遺伝子や実験で確かめられた話ではありません。獣医師のレベッカ・マクミランはペット情報サイトで、甘い物を食べたがる理由ははっきりしないと述べ、高濃度の糖を感じている可能性と、食べ物の別の成分に反応している可能性を挙げています。なお、成猫の多くは乳糖をうまく消化できず、人工甘味料やチョコレートを含むものは危険なので、好きそうだからとあげてよいわけではありません。
猫の舌の主役はうま味。2023年に英国のウォルサム・ペットケア科学研究所などのチームが学術誌『Chemical Senses』で、猫の味の好みを動かす中心はうま味だと提案しました。味覚乳頭でうま味受容体の Tas1r1 が働いていることを猫で初めて示し、おおむね20匹あまりの猫に水と味の溶液を選ばせる試験も行っています。面白いのは、人間とは反応する物質が違うことです。人間のうま味受容体はグルタミン酸によく反応しますが、猫の受容体はグルタミン酸に反応せず、イノシン酸などの核酸に強く反応しました。猫は、うま味調味料の主成分であるグルタミン酸ナトリウムの水溶液も、とくに好みませんでした。
ここで日本の研究がつながる。うま味は1908年に東京帝国大学の池田菊苗が昆布のグルタミン酸から見つけ、その弟子の小玉新太郎がかつお節のイノシン酸を、ヤマサ醤油研究所の國中明がグアニル酸を見つけました。つまり猫の受容体が強く反応するのは、昆布ではなく、かつお節やしいたけの系統のうま味です。猫の受容体のこの性質を2021年に報告したのは、東京大学・京都大学などを中心とするチームでした。『Current Biology』に載ったこの論文の本題は霊長類で、グルタミン酸に敏感な受容体は、葉を食べる大型の霊長類で少なくとも3回別々に生まれたと結論づけています。昆布のうま味によく反応するのは、むしろ人間を含む大型の霊長類の側の特徴だったのです。
マグロとカツオ。2023年の論文は、猫がマグロを好む理由も提案しています。カツオやマグロの身にはイノシン酸と遊離のヒスチジンというアミノ酸が多く、この2つが受容体の上で強め合うのではないか、というものです。昆布とかつお節の合わせだしでうま味が強まる相乗効果の、猫版のような話です。根拠のひとつに使われたカツオやキハダの分析は、1980年代に日本水産学会の学会誌に載った研究でした。もっとも、かつお節そのものを猫に試した実験ではないので、「猫がかつお節に寄ってくる理由」と言い切るところまでは確かめられていません。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
猫は完全肉食動物で、肉がないと生きていけない。犬はそこが違う。肉は甘くないから、甘味を感じる力を失っても困らなかったんだろうね。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
まあ甘味は失ったけど、猫はビタミンCを体内で作れるからな。そこは人間より上だぞ。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
ビタミンCを作れないのは人間のほうが少数派なんだよね。ほかにはモルモットとか。だから壊血病の研究にモルモットが使われたらしい。
4. 海外の名無しさん
じゃあなぜ、うちの猫はクッキーを盗むのをやめないんだ!?理由があるなら説明してほしい。こっちは毎回、皿を守る戦いをしてるんだぞ。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
クッキーやお菓子は脂肪のかたまりだからね。猫が狙ってるのは砂糖じゃなくて、バターのほうなんだと思う。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
それは分かる気がする。うちの気難しいお嬢さんは人間の食べ物に一切興味がなくて、ベーコンすら無視。でもバターを出しっぱなしにしたら、くわえて走り去った。
7. 海外の名無しさん
これ、遺伝子の論文が1本あるだけの話でしょ。受容体の遺伝子に欠けがあるのは面白いけど、そこから「甘さが分からない」とまで言うのは飛躍だと思うよ。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
いや、遺伝子より先に、砂糖水を好まない実験とか神経が反応しない実験が1970年代からあるよ。遺伝子の論文はその理由を説明した側。
9. 海外の名無しさん
うちの子猫は私のパンケーキを盗む。甘さが分からないなら、あれは純粋に遊びでやってるってことか。余計に腹が立ってきた。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
パンケーキは脂肪もタンパク質も入ってるから、肉食の猫が欲しがるのは分かるよ。それに子猫なら、盗むこと自体が楽しいのかも。
11. 海外の名無しさん
アイスが大好きな猫を飼ってた。体の大きいやつで、器に顔を突っ込むためならこっちを押し倒す勢いだった。優しいじいさんだったよ。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
うちのもアイスに目がない。クリームは牛乳より脂肪分が多いから、そりゃ好きだよね。でも乳糖でお腹を壊す猫も多いから、ほんのひとなめまでにしてる。
13. 海外の名無しさん
うちの猫はいま、個包装のキャンディの山をなめて、この説が間違いだと証明しようとしてる。包み紙の味が好きなだけかもしれないけど。
14. 海外の名無しさん
マンゴーのスライスが大好きな猫がいたよ。サビ猫だったんだけど、ちょっと変わった子だった。甘さじゃないなら、あれは何が目当てだったんだろう。
15. 海外の名無しさん
うちの猫はポテチやクラッカーの塩をなめるのが好き。甘味はだめでも、塩味はちゃんと分かってるんだろうな。お菓子の袋を開けると飛んでくるし。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
もう家猫は好きなものを勝手に食べてるだけな気がする。うちのはチュールも鶏肉も断るくせに、生のほうれん草はねだって食べるんだよ。
17. 海外の名無しさん
プリンとヨーグルトが好きなのはなぜ?甘くないなら、人間の皿にあんなに執着する理由が分からない。やっぱり乳製品の何かに惹かれてるのかな。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
脂肪だよ。あいつらは脂肪が大好き。それと、チョコプリンをあげてるわけじゃないよね?チョコは猫にも危ないから、そこだけは気をつけてほしい。
19. 海外の名無しさん
ライスプディングが大好物の猫がいたな。米の間のプディングだけをきれいになめ取って、それから米を食べるの。あの几帳面さは何だったんだろう。
20. 海外の名無しさん
似た話で、鳥は辛さを感じないんだよね。世界一辛い唐辛子とピーマンをニワトリに並べて出しても、たぶん区別がつかない。味の世界は動物ごとに全然違う。
21. 海外の名無しさん
犬と猫の違いでいうと、猫はタウリンが必要だから、ドッグフードだけで育てると目を悪くするって聞いた。肉を食べる体に、とことん振り切ってるんだよな。
22. 海外の名無しさん
マシュマロに目がない猫がいて、月に一度ミニサイズを3つだけあげてた。甘さが分からないなら、あの興奮は何だったのか。今でも謎のままだよ。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
猫は人間が食べてるものを欲しがるだけ、という気もするな。あと、ただ人間が困る顔を見て楽しんでるだけかもしれない。
まとめ
猫の甘味の受容体を作る遺伝子は壊れていて、砂糖を好まないことも昔の実験で確かめられています。コメント欄は「それでも盗む」という飼い主の体験談であふれ、脂肪が目当てだろうという声が多く出ました。甘さの代わりに猫の舌が強く反応するのは、かつお節やマグロに多いイノシン酸です。海外の掲示板の話が、最後は日本のだしに戻ってきました。
参考資料
- PLoS Genetics「甘味受容体遺伝子の偽遺伝子化が、猫の砂糖への無関心を説明する」Li ほか(2005年・英語)
- Chemical Senses「イエネコのうま味の知覚と嗜好」McGrane ほか(2023年・英語)
- Current Biology「霊長類のグルタミン酸味覚センサーは核酸センサーから進化した」Toda ほか(2021年・英語)
- うま味インフォメーションセンター「うま味の基本情報」(日本語)
元ソース: 今日知った話:猫は砂糖の味が分からない

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