「2017年からフランスでは、勤務時間外に仕事のメールを見なくていい」その法律が会社に課したのは”禁止”ではなかった

「2017年からフランスでは、勤務時間外に仕事のメールを見なくていい」その法律が会社に課したのは"禁止"ではなかった 文化・社会

仕事が終わったら、会社のスマホは机の引き出しにしまって帰る。上司は私用の番号を知らないので、翌朝まで仕事の連絡は来ない。フランスでは2017年から、こうした「仕事から切り離される権利」が法律に書き込まれている。海外の掲示板では「時間外のメールを無視した社員を罰すると違法になる法律」として紹介されて大きな反響を呼んだが、条文を確かめると、法律が会社に求めたのは少し違うことだった。

今日の知ってた?

📵 フランスでは2017年1月1日から、勤務時間外に仕事のメールやチャットから離れる「つながらない権利(droit à la déconnexion)」が労働法典に定められている。2016年8月の労働法改正、通称「エル・コムリ法」で盛り込まれたもので、この権利を世界で最初に法制化した例とされる。ただし、法律が会社に義務づけたのは「時間外の連絡の禁止」ではない。従業員50人以上の企業に対し、この権利をどう守るかを労使交渉のテーマに入れるよう求め、話がまとまらなければ会社が社内ルール(憲章)を作る、という仕組みだ。

背景:「つながらない権利」とは

スマホが、勤務時間の境目を溶かした。メールやチャットがポケットに入るようになってから、上司や同僚、取引先からの連絡は、帰宅後も休日も届くようになった。働く時間と場所の自由が増えた反面、仕事と私生活の区切りがあいまいになり、「いつでも連絡がつく状態」そのものが負担になる。この問題への答えとして議論されてきたのが「つながらない権利」(英語では right to disconnect)で、その口火を切ったのがフランスだった。

通称は、当時の労働大臣の名前から。この権利を盛り込んだ2016年8月8日の法律は、法案を担当した労働大臣ミリアム・エル・コムリの名前をとって「エル・コムリ法」と呼ばれる。解雇ルールの見直しなども含む大がかりな労働法改正で、成立前には大規模な反対デモも起きた。つながらない権利はその一部として、翌2017年1月1日から適用された。

中身は「ルールを話し合って決めなさい」。フランスには、労働組合のある企業に対し、賃金や働き方について定期的な労使交渉を義務づける仕組みがある。対象はおおむね従業員50人以上の企業だ。改正後の労働法典L2242-17条は、この交渉のテーマに「従業員がつながらない権利を十分に行使するための方法」と「デジタル機器の使い方を調整する仕組み」を加えた。目的は、休息や休暇、そして私生活と家庭生活を守ること。交渉で合意できなければ、会社は従業員代表の意見を聞いたうえで憲章を作り、従業員と管理職に向けて、デジタル機器の適切な使い方についての研修や啓発を行うことになっている。

具体的なやり方は、会社ごとに違う。法律は「何時以降はメール禁止」といった中身までは決めていない。つながらない権利を法制化した国々の企業で実際に定められている例としては、一定の時間帯は会社のサーバーを止める、時間外に同僚や部下へメールを送らないよう決める、管理職向けの研修を行う、権利を侵害されたと感じた人が社内で苦情を申し立てられる手続きを設ける、といったものがある。

もう少し詳しく

「無視しても処分されない」は、この法律より前からあった。元の投稿は「時間外のメールを無視した社員を罰することを違法にした法律」と紹介しているが、L2242-17条そのものに、そういう書き方の条文があるわけではない。ただし「時間外の連絡に応じなかったことを理由にした処分は通らない」という結論は、フランスの裁判所が以前から示している。勤務時間外、私用の携帯にかかってきた会社からの呼び出しに出なかったことなどを理由に、重大な過失として解雇された救急車の運転手の裁判で、破毀院(フランスの最高裁にあたる)は2004年、「勤務時間外に私用の携帯電話で連絡がつかなかったことは、落ち度にはあたらない」として、解雇を認めた下級審の判断を退けている。日本の労働政策研究・研修機構の整理でも、フランスは、時間外の連絡に応じなかったことを理由とする解雇などを、専用の条文ではなく既存の解雇ルールの解釈で違法・無効としている国の一つに挙げられている。

罰則はなく、連絡の禁止でもない。フランスの労務解説では、つながらない権利について定めなかった会社への専用の罰則は用意されておらず、協定を結ぶこと自体も義務ではない、と説明されている。上司が夜にメールを送ること自体も禁じられていない。法律の性格は「企業の自主的な取り組みを促すもの」に近く、労働組合の側からは、時間外の業務連絡をはっきり禁止するなど、もっと強い規制を求める声も出ていた。

その後、ほかの国にも広がった。EUの機関ユーロファウンド(欧州生活労働条件改善財団)の2023年の報告書によれば、EU加盟国のうちフランスを含む8か国が、つながらない権利に関する法的なルールを持っている。フランスより踏み込んだのがポルトガルで、2021年の法改正により、休息時間中に雇用主が従業員へ連絡すること自体を、不可抗力の場合を除いて禁じた。違反には罰金が科されうる。一方オーストラリアは、2024年8月26日から(従業員15人未満の小規模事業者は2025年8月26日から)、勤務時間外の連絡を「確認しない・読まない・返信しない」権利を従業員に認めた。こちらは連絡すること自体は禁じておらず、拒否が「不合理」と判断されれば保護されない。不合理かどうかは、連絡の理由、どれほど生活に割り込むものか、待機や時間外対応に見合う手当があるか、本人の役職と責任の重さ、家族の世話などの事情を踏まえて判断される。

日本はまだ議論の段階。日本では、つながらない権利はまだ法律として定められていない。2021年に改定された厚生労働省のテレワークのガイドラインが、長時間労働の対策として時間外のメール送付の抑制やシステムへのアクセス制限を挙げているほか、厚労省の研究会の報告書でも「つながらない権利」が取り上げられ、海外の例も参考にしながら議論が続いている。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
フランス在住。一日の終わりに、会社支給のスマホを机の引き出しに放り込んで帰るのが最高に気持ちいいんだ。上司は私用の番号を知らないから、会社を出たらもう連絡のつけようがない。本当に深刻なトラブルのときのために、人事部だけは私用の番号を知ってるけどね。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
ソフトウェア開発者だけど、昔、かなり高圧的なプロジェクトマネージャーの下についたことがあって、うっかり私用の番号を教えちゃったんだよ。運よく数週間後に携帯会社を乗り換えることになって、当時は乗り換えると番号も変わった。新しい番号は頑として教えず、会社用の電話を支給しろと要求したら、しばらくしてそのマネージャー本人がうやうやしく手渡してくれた。で、その日の昼休み、電話を机の引き出しに入れて食事に出た。戻ったら不在着信が一件。マネージャーがフロアに乗り込んできて、俺の机の引き出しの中で電話が鳴ってるのを聞く——という場面を同僚がモノマネで再現するのが、その後の飲み会の定番ネタになった。

3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
残念ながら、最近はつながってるほうが普通になりつつあるよ(私もフランス人)。始まりはいつも無害なんだ。「遅刻しそうなときや入館カードを忘れたとき用に、WhatsApp(海外で定番のメッセージアプリ)のグループを作っておいたから」。そのうち昼休みや退勤後、週末に社内チャットから抜けていると、そっちに「緊急」の連絡が来るようになる。命に関わる話じゃない、会社が損をするってだけの緊急ね。懲りたので、今は仕事用に二つ目の番号を持ってる。

4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
結局そこなんだよね。会社のスマホなら電源を切れば済む。でも私用のスマホは自分のものだ。その中でくらい、仕事の連絡に邪魔されずに過ごす権利があってもいいと思う。

5. 海外の名無しさん
つながらない権利って、ヨーロッパの多くの国に似たようなものがあると思う。ここノルウェーでは、会社の規模に関係なく、契約で決めた勤務時間や法律で決まった時間の外まで「連絡がつくようにしておけ」と求めることは、基本的に認められていない。

6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
ドイツも同じ。例外はあって、たとえば予期せぬ障害に備えて呼び出し用の端末を持たされるサーバー管理者みたいな人は、そのことを契約に書いておく必要がある。そのうえで、呼び出しに備えて待機している時間の分も、ちゃんと支払われる。

7. 海外の名無しさん
こういう制度がない国ってどうなってるのか、正直よくわからない。24時間いつでも連絡がつくようにしておけ、でも給料はオフィスにいた時間の分だけ、ってこと? 馬鹿げてるよ。雇い主が私の労働を買いたいなら、その分はちゃんと払ってほしいんだけど。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
簡単な話だよ。社員の休みをきっちり尊重する会社もあれば、夜7時にメッセージを送ってきて「別に今やらなくていいからね」と言う会社もある。ただ、やったらやったで、時間外は何もしない同僚のボブより先に昇進できるかもしれない。どうするかはあなた次第。誰も強制なんてしてませんよ、ってわけ。

9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
でも、それはフランスでも起きてると思うよ。そこから目をそらしたら嘘になる。昇進の話になったときに「緊急時に協力的」とか「チームプレーができる」とか、言い方を変えて評価に入ってくるだけ。フランス人の同僚も、時間外に電話がかかってくるのはよくあることで、出ないと白い目で見られるって言ってた。

10. 海外の名無しさん
タイトルはちょっと盛ってる。フランスの法律は「時間外のメールを無視した社員を罰したら違法」とまでは書いてなくて、中身は「50人以上の会社は、つながらない権利をどう守るか労使で話し合え。まとまらなければ会社がルールを作れ」なんだよ。上司が夜にメールを送ること自体は禁止されてない。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
なんだ、禁止ですらないのか。罰則もないなら、話し合ったふりをして憲章を一枚作れば終わりだよね。それで現場の何が変わるんだろう。

12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
そう単純でもないよ。時間外の電話に出なかったことを理由にクビにするのは、この法律ができるずっと前から裁判所が認めてない。この法律がやったのは、その考え方を会社ごとの具体的なルールにまで落とし込ませること。紙一枚でも、揉めたときに「うちの会社のルールではこうなってる」と言えるのは大きいと思う。

13. 海外の名無しさん
そもそも「無視する」って言い方が強すぎると思う。会社が私にメールをチェックさせたいなら、その分の給料を払えばいい。私は夜にだらだらスマホを眺め終わったあと、暇つぶしに仕事のメールを開いて人を無視してるわけじゃない。そもそも開いてないだけ。

14. 海外の名無しさん
オーストラリアでも似た法律ができたけど、うちのは骨抜きで、ほぼ一瞬で意味がなくなった。会社は相変わらず連絡してこられるし、こっちに返信する義務はない……ただし、それなりの役職だったり責任が重かったりすれば別。雇用契約に「対応すること」と書かれていても別。で、たいてい書かれてる。

15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
オーストラリアのは、時間外の連絡を「確認しない・読まない・返信しない」権利なんだよね。ただし、拒否が不合理でなければという条件つき。判断材料が連絡の理由とか、役職と責任の重さとか、待機の手当が出てるかどうかだから、偉い人ほど守られにくい作りになってる。

16. 海外の名無しさん
先週、夕飯中に会社のチャットを放っておいたら、上司から「大丈夫?」って個別メッセージが来た。死んだと思われたらしい。こっちには法律の後ろ盾なんてないから、トイレにこもってこっそりメールをチェックする毎日だよ。もう笑うしかない。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
なんでそこで不安になるの? 通知を切って、月曜の朝9時に返せばいいじゃない。夕飯中に返事がなかったくらいで生死を心配してくる上司のほうが、よっぽど心配だよ。

18. 海外の名無しさん
記憶違いじゃなければ、ブラックベリー(ひと昔前にビジネスマン御用達だった携帯端末)の時代、ドイツでは会社がサーバーを設定して、勤務時間外にはメールが端末に届かないようにしなきゃいけなかったはず。

19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
それは法律じゃなくて、フォルクスワーゲンが2011年に労働組合の要求をのんで始めたやつだと思う。勤務が終わって30分たったらブラックベリーへのメール配信を止めて、次の勤務の30分前まで再開しない、っていう仕組み。対象は労働協約でカバーされている一部の社員だけで、管理職は外れてた。

20. 海外の名無しさん
理想としてはわかるけど、緊急のときはどうするの? 夜中にサーバーが落ちたとか、工場のラインが止まったとか。「誰にも連絡がつきません」じゃ済まない仕事もあると思うんだけど。

21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
大きめの会社なら、たいてい部署ごとに当番表があるよ。時間外の対応に備えて、誰か一人が会社のスマホの電源を入れておく。うちの部署だと、6週間のうち1週間はメイン担当、もう1週間は予備担当。手当がつくからいい小遣い稼ぎになるし、4年やって実際に電話が来たのはたぶん5回くらい。ちなみにフランスじゃなくて、似たような規制がある別のEUの国の話ね。

22. 海外の名無しさん
アメリカだと、たぶん真逆の法律が通るね。勤務時間外に仕事のメールをチェックしてないと違法、みたいなやつが。

23. 海外の名無しさん
フランス人のメンバーが何人もいるチームで管理職をやってる。こういう制度は、つべこべ言わずに世界中どこでも導入されてほしい。上司の側だって、夜は送らないと決まっていれば、送るべきかどうかで悩まなくて済むんだから。

24. 海外の名無しさん
週末は家族以外からの電話には出ないことにしてる。反感を買うかもしれないけど、みんながせめて一日くらいスマホの電源を切れば、ストレスはだいぶ減ると本気で思う。スマホを持たずに買い物に行くと、頭がおかしいと思われるけどね。

25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
スマホなしで買い物に? じゃあ道ばたに湧いてるポケモンは誰が捕まえるんだよ。

まとめ

フランスの「つながらない権利」は2017年に適用が始まった制度で、従業員50人以上の企業に、時間外のデジタル機器の使い方を労使で話し合ってルールにするよう求めるもの。連絡を禁じる法律でも、罰則つきの法律でもない。コメント欄では、スマホを引き出しにしまって帰るフランス人に羨望が集まる一方、「フランスでも出ないと評価に響く」「緊急時はどうする」と冷めた声も多かった。線を引くのは法律でも、最後に効いてくるのは職場の空気と、当番や手当といった具体的な仕組みのほうなのかもしれない。

元ソース: フランスには2017年から「つながらない権利」の法律があり、従業員50人超の企業は、勤務時間外の仕事のメールやメッセージを無視した社員を罰してはいけないと知った

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