竜巻でやられた家を直して、また住むつもりだった。ところが数日後に現場へ戻ってみると、家そのものが消えていた——2016年、アメリカ・テキサス州ロウレット。取り壊しを請け負った業者が案内どおりに重機を入れ、まったく別の住所の建物を、しかも2軒分まとめて更地にしてしまった話である。
※注:ロウレットはテキサス州ダラスの北東に隣接する住宅地の街。2015年末に竜巻の直撃を受け、広い範囲で家屋が壊れた。この出来事は、その復旧作業のさなかに起きている。
今日の知ってた?
🏚️ 2016年、テキサス州ロウレットで、取り壊しを請け負った業者がGPSの案内に従って現場へ向かい、まったく別の住所の建物を解体した。壊されたのは壁を共有して2世帯が暮らす平屋で、「2軒の家」がまとめて更地になった。数か月前の竜巻で、現場の道路標識は向きが変わったままだった。
背景:竜巻が通ったあとの街で
舞台はテキサス州ロウレット。2015年の年末、この街を竜巻が横切った。屋根がめくれ、壁が抜け、住めなくなった家が一帯に残る。そこから数か月にわたって、街のあちこちで取り壊しの重機が動き続けることになった。
取り壊しというのは、本来ただ壊せばいい作業ではない。対象の住所を確認し、ガス・電気・水道を止め、行政の許可を取り、中に人や物が残っていないかを確かめる——いくつもの工程が積み重なる。ところが竜巻のあとのロウレットでは、同じ通りの何軒か先で別の業者が同じ作業をしている、という状況が延々と続いていた。確認はもう誰かが済ませたはずだ、という思い込みが生まれやすい環境ではあった、とコメント欄でも指摘されている。
※ アメリカで建物を取り壊すには、市や郡から解体許可を取るのが一般的とされる。申請書には対象の住所が書かれるが、書類の上で住所が特定されていることと、現場でその住所に立てているかどうかは、まったく別の話になる。
そしてもうひとつ、竜巻は道路標識もなぎ倒していた。カリプソ通りとクストー通りが交わる角の標識にいたっては、トラックがぶつかった拍子に向きが回ってしまい、通りの名前が本来とは違う方向を指したままになっていた。報道にはその標識の写真も載っている。地図の案内と、現地の標識と、目の前の家の見た目。三つとも「ここでいい」と言っているように見えてしまう条件が、たまたま同時にそろっていた。
もう少し詳しく
壊されたのは「2軒」で、しかし「1棟」だった。被害に遭ったのは、壁を共有する形で2世帯が並んで暮らす平屋の住宅だったと報じられている。日本の感覚では二戸一の長屋が近い。つまり片側だけを残すという選択肢がそもそもなく、重機が入った時点で2軒分がまとめて失われた。せめてもの救いは、この建物も竜巻で傷んで修理待ちの状態にあり、そのとき誰も中で暮らしていなかったことである。
※ デュプレックス=1棟の建物を壁で仕切り、2世帯がそれぞれ別の玄関を持って暮らす形式の住宅。アメリカの郊外では珍しくなく、賃貸にも分譲にも使われる。
「大したことじゃない」。この件が特に大きく報じられたのは、会社側の受け答えのせいでもあった。解体会社の最高責任者ジョージ・ゴメス氏は現地の記者に対し、担当した作業班は間違いに気づくまで正しい家を壊したと思い込んでいた、と説明したうえで、この一件を「大したことじゃない」と表現したと伝えられている。この一言が広まり、批判は現場の作業員ではなく会社そのものへ向かった。
家主は訴訟を起こした。取り壊された住宅の持ち主だったリンジー・ディアスさんは、2016年9月に解体会社を相手取って訴えを起こしている。並行して、災害からの復旧に使える公的な融資も申請していた。
※ アメリカでは大きな災害のあと、中小企業庁(SBA)が事業者だけでなく個人の住宅所有者にも低利の復旧融資を出す仕組みがある。保険金だけでは建て直しに足りない場合の受け皿として使われることが多い。
その後。地元メディアが2018年7月に伝えたところによれば、何か月ものやり取りを経て、ディアスさんは解体会社と和解した。融資も下り、家を建て直せるだけの資金がそろったという。新しい家は、以前のような平屋の二戸一ではなく、ガレージ付きの2階建ての一戸建て。一家が引っ越したのは2018年の6月だった。「ほっとしました。もう終わり。つらいことは全部終わりました」「やっと家に帰れた。もう心配しなくていいんです。ここはわたしたちのものだから」——報道にはそんな言葉が残っている。ただし和解の中身がどのようなものだったかは公表されていない。竜巻から数えると、落ち着くまでに2年半が過ぎていた。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
「壊す家を間違えた」なんて、コントの中にしか存在しない事故だと思っていた。しかも1軒ではなく2軒まとめて。現場に着いて更地を見た瞬間の家族の気持ちを想像すると、こちらまで足元が抜ける。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
2軒といっても建物としては1棟で、壁を共有した平屋の両側だったらしい。片方だけ残すという選択肢が物理的になかったわけで、そこはもう不運としか言いようがない。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
着工前に中を一通り見て回るものだと思っていた。人が残っていないか確かめるだけでも普通は入るはずで、そこを飛ばしていきなり重機を寄せる流れが存在すること自体が驚きだ。
4. 海外の名無しさん
記事を読むと、業者だけを責めきれない事情も出てくる。数か月前に竜巻が街を横切っていて、その一帯では取り壊しの現場がいくつも同時に動いていた。確認はもう済んでいるものだと思い込みやすい状況ではあった。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
決定打はそこじゃなくて標識だと思う。交差点の標識がトラックにぶつかって向きが変わったままで、通りの名前が別の通りを指していた。実写でやられると笑えない、古典的なアニメのギャグそのものだ。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
標識のせいで全部説明がつくわけじゃないぞ。地図の案内と現地の表示が食い違っていたなら、そこは一度手を止めて確かめる場面だろう。むしろ疑うための材料は目の前にそろっていたようにも見える。
7. 海外の名無しさん
社長が記者に「作業班は正しい家を壊したと思っていた」と説明したうえで、「大したことじゃない」と言い添えた、というくだり。ここで一気に印象が変わった。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
訴訟が控えている場面で「とんでもない失敗をやりました」と社長が言えるかというと、まず無理だと思う。弁護士が全力で止める。あとから責任を認めた発言として使われるからだ。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
言えないのは分かる。でも言い方はいくらでもあった。広報も社長の仕事のうちで、あの一言のせいで「社員の失態を何とも思っていない人」に見えてしまった。結果として損をしたのは会社のほうだ。
10. 海外の名無しさん
引っかかるのはそこだ。家族は何ひとつ落ち度がない。明らかに会社の側の間違いなのに、生活の立て直しを近所の人たちが手伝うことになっている。順番がおかしくないか。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
順番というより時間の問題だと思う。民事の決着は判を押せば終わる話ではなくて、何か月も、へたをすれば何年もかかる。その間に食べるものと寝る場所を用意できるのは、近所の人しかいない。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
それに、そもそも竜巻の直後から地域で助け合っていた流れの続きでもある。取り壊しの件が起きてから急に始まった話ではない、というのは記事を読めば分かるはずだ。
13. 海外の名無しさん
うちの親が古い家を壊して建て替えたときのことを思い出した。決まりで、施主と業者の担当者が一緒に家へ入り、全部屋を回って「誰かいますか、この家を壊します」と声をかけることになっていた。しかも部屋ごとに署名させられたそうだ。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
そこまでやるのが当たり前だと思っていた。今回のは、その手順が丸ごと省かれたということになるのか。重機を横づけして、そのまま壊し始めたとしか読めないんだが。
15. 海外の名無しさん(>>13への返信)
その話、たぶんアメリカのことじゃないよね。どこの国か知らないけれど、うっかりや手抜きが起きる前提で仕組みを作ってあるのは素直にうらやましい。
16. 海外の名無しさん
中に入れば一目で分かりそうなものだと思ったが、壊された建物のほうも竜巻でかなりやられていて、修理待ちのまま誰も住んでいなかったらしい。当時の写真を見ると、これも取り壊し対象だと思い込む余地はあったのかもしれない。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
逆に言えば、中に入る手順さえあれば「生活の跡が残っている家だ」と気づけた。人が残っていないかを確かめるだけじゃなく、自分が正しい現場に立っているかを確かめる工程でもあるわけだ。
18. 海外の名無しさん
現場の業者だけの問題にして終わらせるのも違う気がする。どの番地を壊すのか指示を出した側、書類を回した側、許可を出した側がそれぞれいるはずで、重機に乗っていた人間だけが全部かぶるのは筋が通らない。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
とはいえ最後にレバーを引くのは現場の人間だ。書類さえ正しければ何を壊してもいい、という理屈が通ってしまうと、この種の事故は永遠になくならないと思う。
20. 海外の名無しさん
こういう話を読むと、自分の失敗がずいぶん小さく見えてくる。やらかしたことは数え切れないほどあるけれど、少なくとも他人の家を地上から消したことはない。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
君は自分の失敗を気にして、そこからちゃんと学んでるだろう。今回の件との差はそこだと思う。向こうは「大したことじゃない」で片づけているんだから。
22. 海外の名無しさん
ベルギーでも10年から15年ほど前に似た事故があった。間違った家を壊してしまった作業員のインタビュー映像が、当時あちこちで回っていた記憶がある。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
あれは重機を動かしていた人のミスじゃなくて、会社側が保険金を狙って仕組んだ話だった、と後から出てきたはず。うっかりで済む事故と、そうでない事故がある。
24. 海外の名無しさん
ハワイで、業者が測量を惜しんだせいで、別の区画に家を一軒まるごと建ててしまった件も思い出した。土地の持ち主は「あなたは間抜けだし、私は要らない家を手に入れた」と言ったそうだ。業者は費用を求めて訴えたが負け、取り壊しの費用まで払うことになった。
25. 海外の名無しさん
その後どうなったのか気になって調べた人がいて、続きが分かった。家主は2016年9月に業者を訴え、災害復旧の公的融資も申請している。何か月ものやり取りの末に会社と和解し、融資も下りて建て直せたそうだ。いまは平屋の二戸一ではなく、ガレージ付きの2階建てに住んでいるという。読めてよかった。
まとめ
竜巻に壊された街で、取り壊しを請け負った業者が案内どおりに現場へ向かい、まったく別の建物を、それも壁を共有した2軒分まとめて更地にした。標識は向きが変わったまま、周囲では別の取り壊しが同時に動いていて、壊された建物自体も竜巻でひどく傷んでいた——重なった条件を並べていくと、確かに間違えやすい場面ではあった。それでもコメント欄では「事情は分かるが、確認を省いた事実は消えない」という声と、「重機に乗っていた人間だけに背負わせるのも違う」という声が最後まで並んでいる。家主はのちに会社と和解し、いまは以前より大きな家に住んでいるという。救いのある結末ではあるけれど、そこにたどり着くまでに2年半かかっている。

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