哺乳類の母と胎児をつなぐ「胎盤」。生命の神秘そのものに見えるこの臓器、実は1億年以上前にウイルスが祖先のDNAに残していった「忘れ物」から作られている、と聞いたら信じられるだろうか。今日の知ってた?はちょっと頭がクラクラする生物進化のトリビアだ。
※注:レトロウイルスとは、自分の遺伝情報を宿主の細胞のDNAに書き込んでしまうタイプのウイルス。HIVなどが有名。
今日の知ってた?
🧬 胎盤を作る遺伝子「シンシチン」は、もとはレトロウイルスのもの。1億年以上前に祖先の生殖細胞に感染したウイルスが、細胞同士を融合させるタンパク質を作る遺伝子を残していき、それが「母と胎児の境界をつくる仕組み」に転用された。しかも同じことが、霊長類・げっ歯類・食肉類・反芻動物などで少なくとも10回、独立に起きている。
背景:レトロウイルスと「内在性レトロウイルス」とは
ウイルスは普通、細胞に入って増えて出ていく「侵入者」だ。だがレトロウイルスは少し違って、自分の遺伝子を宿主のDNAに書き込んでから増えるという、やや図々しい戦略をとる。
運悪く(あるいは運よく)この書き込みが生殖細胞(精子や卵子のもとになる細胞)で起きると、ウイルスのDNAはそのまま子孫に受け継がれてしまう。世代をまたいで残り続けるこのウイルス遺伝子を「内在性レトロウイルス(ERV)」と呼ぶ。
そして驚くべきことに、ヒトのゲノムの約8%は、こうした内在性レトロウイルス由来だと推定されている。8%というと「ヒトをヒトたらしめている遺伝子」全体(タンパク質をコードする部分は約2%)の何倍にもなる量だ。大半は壊れた化石みたいなものだが、ごく一部は「便利な部品」として進化に転用された。胎盤の遺伝子は、その中でも一番有名な成功例だ。
もう少し詳しく:細胞融合タンパクが「胎盤」になった話
シンシチンの本来の役割。ウイルス側にとって、細胞融合タンパク(envタンパク)は宿主の細胞膜と自分の膜をくっつけて中身を流し込むための道具だった。要は「細胞と細胞をくっつける糊」である。
胎盤での再利用。胎盤の母側と胎児側の境目には、たくさんの細胞が融合して一枚の巨大な細胞層になっている部分がある(合胞体性栄養膜)。ここを作るには、まさに「細胞同士を融合させる糊」が必要で、ウイルス由来のシンシチンがその役割をまるごと担っている。母体の免疫から胎児を守りつつ、酸素や栄養を受け渡す絶妙なフィルターだ。
「複数回独立に起きた」という事実。もっと驚くのはここで、シンシチンに似たウイルス由来タンパクは、霊長類・げっ歯類・食肉類・反芻動物などでバラバラのウイルスから、バラバラの時代に、何度も独立に取り込まれている。同じアイデアを別々のグループが偶然採用したわけで、進化が「これは使える」と何度も同じ答えにたどり着いた格好だ。
有袋類との比較。カンガルーなどの有袋類は、未熟極まる赤ちゃんを早産で外に出して育袋(ふくろ)で育てる方式をとる。胎盤性哺乳類は、ウイルスから受け取った「細胞融合の糊」のおかげで、もっと長く・もっと安全に胎児を母体内で守って育てられるようになった、というのが大筋の理解だ。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
ちょっと待って、つまり「あなたはママとパパの愛で生まれた」じゃなくて「あなたはママとパパとあと太古のウイルスの三者協力で生まれた」が正解ってこと?情報量が多すぎる…。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
出産祝いのカードに「ウイルスにもよろしく」って書く時代が来たのかもしれない。
3. 海外の名無しさん
ヒトのDNAの8%がウイルス由来って数字、初めて知ったときに椅子から落ちそうになった。タンパク質を作ってる「ちゃんとした遺伝子」より、ずっと多いんだぜ…?
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
しかも大半は壊れた化石みたいになってるだけで、ごく一部だけが胎盤みたいな「大当たり」を引いた。ガチャの引きが凄まじい。
5. 海外の名無しさん
進化「DNAありがとう、これはもらっておくね」。ウイルス「えっ、いやそれ俺の…」。進化「ありがとう」。
6. 海外の名無しさん
この話、地味に怖いのは「同じことが哺乳類のあちこちで独立に10回起きた」って部分だと思う。1回なら奇跡で済むけど、10回起きてるなら、それはもう奇跡じゃなくて戦略だ。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
ウイルス側からしても「この遺伝子を残せた個体は子孫が増えやすい」ってことになる。だからウイルスにとっても便利な仕掛けで、両者の利害が一致しちゃってるんだよね。
8. 海外の名無しさん
有袋類のカンガルーは「未熟児を産んで袋で育てる」方式って習ったけど、よく考えるとあれは「胎盤の糊が足りなかった種の現役解答」みたいなものなんだな。ジェリービーンみたいなサイズの赤ちゃんがママのお腹を這い上がる映像、初めて見たとき呆然とした。
9. 海外の名無しさん
進化の話読むたびに思うけど、生物って「いま手元にある部品でどうにかする」のが本当にうまい。新規開発はしない、ありもの流用で何とかする。設計者がいるならC評価の納期ギリギリのエンジニアって感じだ。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
神「徹夜で作った」「動けばOK」「あ、痛覚は派手につけといた、保険ね」
11. 海外の名無しさん
ちなみにDNAそのものもウイルスの落とし物かもしれない、っていう仮説があるらしい。生命の基本機能はRNAで回ってて、DNAは情報を保管する金庫みたいな役目しかしてない。だから「金庫部分はウイルスが置いてったもの説」がある。本当だったら笑える。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
我々の体のどこから先が「自分」でどこから先が「ウイルスの忘れ物」なのか、もうわからん。
13. 海外の名無しさん
これ、考えれば考えるほど確率がおかしい。
①ウイルスが偶然生殖細胞に感染。
②その細胞が大量の競合に勝って子を残す。
③その変化が有利に働いて広がる。
④初期段階で運悪く絶えたりしない。
これ全部クリアして、しかも10回起きてる。宇宙よ…。
14. 海外の名無しさん
胎盤の発達は父方の遺伝子に強くコントロールされてるって読んだことある。母体からすれば胎児は半分は他人の組織で、本来なら免疫が攻撃してもおかしくない異物なんだよね。胎盤はその境界線を巧妙に管理してる仕切り壁。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
妊娠高血圧腎症(妊娠中毒症の一種)の一部は、母体の免疫が胎盤を異物として攻撃してしまうことが原因らしい。治す方法は「赤ちゃんを出して胎盤を取り除く」しかない。人体ほんとに変。
16. 海外の名無しさん
シンシチンと似た仕組みのウイルス由来タンパクは、ヒツジでも別系統のウイルスから取り込まれてるらしい。哺乳類が違う系統でそれぞれ「胎盤用の糊」を別々のウイルスから調達してるの、進化のリサイクル精神が凄すぎる。
17. 海外の名無しさん
そう考えると「ウイルス=悪」のイメージは雑すぎるんだよな。彼らは生物の進化を駆動する遺伝子の運び屋でもあって、ときどき信じられない便利グッズを置いていく。新型コロナの何百万年か先の子孫が、人類の何かを救う部品になってる可能性すらある。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
1億年後の哺乳類「TIL:われわれの〇〇は2020年に流行したコロナウイルス由来らしい」。地獄か未来か紙一重。
19. 海外の名無しさん
「卵生に戻りたい」って書こうとしたけど、よく考えたら俺たちの羊膜(赤ちゃんを包んでる薄い袋)って、構造的にはほぼ卵の殻の代わりなんだよな。卵は捨ててない、内側に隠してるだけ。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
固い殻の卵を産む方が大変だと思う…。爬虫類みたいに革っぽい柔らかい殻ならアリかもしれないけど、いずれにせよ「中で発生させて柔らかいまま産む」が一番ローコストっぽい。
21. 海外の名無しさん
ウイルスが残してった遺伝子で胎盤ができた、っていう話は、SF小説の設定としても採用したら「やりすぎ」って言われそう。事実は小説より奇なり、を地で行ってる。
22. 海外の名無しさん
生物の授業で「進化はランダム変異と自然選択」って習ったけど、ここに「他種の遺伝子を丸ごとパクる」という第3のルートが堂々と存在してるの、教科書もう一回書き直したほうがいい。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
細菌界では「遺伝子の横取り(水平伝播)」は日常茶飯事だけど、哺乳類でこれが起きてるって聞くと感覚的にギョッとするよね。我々もそんなに「閉じた」存在ではない。
24. 海外の名無しさん
最終的に「我々が生まれてくる仕組み」の根幹に、太古のウイルス感染が関わってる、ってことは、ある意味感染は祝福でもありうるってことだ。生物の歴史、思ってたよりずっとカオスで面白い。
25. 海外の名無しさん
胎盤を出産後に体が再吸収してくれたらラクなのに、なぜか頑張って排出する仕様。
…って思ってたけど、母体の免疫的にはあれを「異物」として認識してる側面もあるから、長居されると困るんだろうな。よくできてる。
まとめ
哺乳類の胎盤は、1億年以上前のレトロウイルス感染が祖先のDNAに残した「細胞融合タンパクの遺伝子(シンシチン)」を、進化が転用して作り上げた仕組みだった。さらに似たことが系統の違う哺乳類で少なくとも10回独立に起きている。海外コメ欄も「ウイルスは悪役だと思ってた」「進化はC評価のエンジニア」と驚きと脱力が入り混じる反応で、生物の境界線って思ってたよりずっとぼやけているのかもしれない。


コメント
何十年も前から常識だろ
言い方を変えただけで