沖縄、イタリアのサルデーニャ島、ギリシャのイカリア島——100歳を超える人が多い土地は「ブルーゾーン」と呼ばれ、長寿の手がかりを探す場所として世界に知られてきました。ところが、「長寿で有名な人の多くは、出生と死亡の記録がずさんな土地に暮らしていた」と指摘した研究が、2024年のイグノーベル賞を受けています。ブルーゾーンを調べてきた研究者たちは強く反論していて、決着はついていません。海外掲示板では「やっぱりか」という声と「それは言いすぎだ」という声が入り混じっていました。
※注:元スレッドのタイトルは「ブルーゾーンはずさんな記録管理と死亡の未届けにもとづいている」と言い切っていますが、これは一人の研究者の主張で、定説ではありません。もとになった論文は、専門家による審査(査読)を受ける前に公開される「プレプリント」という形のものです。この記事では、誰の主張なのかを示しながら紹介します。
※注:イグノーベル賞は、「人々をまず笑わせ、それから考えさせる」業績に贈られる賞です。2024年の授賞式は9月12日、米国のマサチューセッツ工科大学で開かれました。
今日の知ってた?
🗺️ ブルーゾーンは、100歳以上や90代の人が際立って多いとされる地域の呼び名。沖縄、サルデーニャ島(イタリア)、ニコヤ半島(コスタリカ)、イカリア島(ギリシャ)、ロマリンダ(米カリフォルニア州)の5地域が広く知られている。
🏆 研究者ソール・ジャスティン・ニューマンは、「長寿で有名な人の多くは、出生と死亡の記録がずさんな土地に暮らしていた」ことを突き止めたとして、2024年のイグノーベル賞(人口統計学賞)を受けた。
📄 もとになった論文は、査読を受ける前のプレプリント。米国では、州ごとに出生証明書が導入されると、110歳以上の人の記録が69〜82%減った、などと報告している。
🗣️ ブルーゾーンを調べてきた研究者たちは、「年齢は複数の記録を突き合わせて確かめてある」と反論している。2025年12月には、査読つきの学術誌に反論の論文が載った。
📉 沖縄については、戦後生まれの世代で長寿の優位が失われていることを、反論した側の研究者も認めている。2020年の都道府県別の平均寿命で、沖縄県は男性43位・女性16位。
背景:「ブルーゾーン」とは
名前の出どころは、一本の青いペンです。ベルギーの人口学者ミシェル・プーランは2000年、イタリアのサルデーニャ島で、医師のジャンニ・ペスが報告した100歳以上の人たちの年齢を確かめる作業をしていました。その過程で、百寿者がとくに多い山あいの一帯を、地図の上に青いペンで囲んだ——プーラン本人はそう説明しています。この一帯を「ブルーゾーン」として紹介した最初の学術論文は、2004年に老年学の専門誌に載りました。
この言葉を世界に広めたのは、米国の作家ダン・ビュイトナーです。2005年、米誌ナショナル ジオグラフィックに長寿の土地を取り上げた記事を書き、沖縄とサルデーニャに、米カリフォルニア州のロマリンダを加えました。ロマリンダは、健康を重んじる生活の決まりを持つキリスト教の一派、セブンスデー・アドベンチスト教会の信徒が多く暮らす町です。その後、コスタリカのニコヤ半島とギリシャのイカリア島が加わり、5つの地域がそろいました。「長寿の土地の暮らしに学ぶ」という考え方は本などを通じて広まり、2023年には動画配信サービスのネットフリックスでも、ビュイトナーが5つの地域を訪ねる番組が配信されています。
ただし、5つの扱いは同じではありません。プーランは、ロマリンダは厳密な意味でのブルーゾーンではなく、長寿の「集団」と見るべきだと述べています。AFP通信によると、ビュイトナー自身も2024年、米紙の取材に、編集者から「アメリカのブルーゾーンを見つけてこい」と言われて加えたと認めています。
沖縄県は、国の都道府県別の統計に加わった1975年以降、長く全国でも指折りの長寿県でした。女性の平均寿命は1975年から2005年まで全国1位、男性も1980年と1985年に1位になっています。
もう少し詳しく
ニューマン氏は何を主張したのか。ソール・ジャスティン・ニューマン氏はオーストラリア出身で、受賞当時は英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに所属していた研究者です。論文は2019年、生命科学のプレプリントを公開するサイト「bioRxiv(バイオアーカイブ)」に最初の版が出て、その後も改訂が続いています。調べたのは、110歳以上の「超高齢者」や100歳以上の人が、どんな地域に多く記録されているかです。米国では、州ごとに出生証明書が導入されると、110歳以上の人の記録が69〜82%減った。イタリア、イングランド、フランスでは、並外れた長寿の記録の多さが、貧困や所得の低さ、平均寿命の短さ、犯罪率の高さと結びついていた。超高齢者の誕生日は、5で割り切れる日に偏っていた——。論文はこうした結果を並べ、ブルーゾーンとされるサルデーニャ、沖縄、イカリアも、国内の平均と比べて所得や識字率が低く、平均寿命も短い地域にあたる、と書いています。そのうえで、並外れた長寿の記録の多くは、事務的な誤りや年金目当ての不正から生まれているのではないか、と主張しました。
日本の「高齢者所在不明問題」はどう関わるのか。ニューマン氏が論拠のひとつに挙げるのが、2010年の日本の出来事です。この年の7月、東京都足立区で、戸籍上は111歳で都内の男性最高齢とされていた人が、自宅で遺体で見つかりました。亡くなったのは30年ほど前とみられ、家族は年金をだまし取った疑いで逮捕されています。これをきっかけに各地で確認が進み、法務省は同年9月10日、戸籍の上では生きていることになっているのに、現住所の記録がない100歳以上の人が全国に23万4354人いると発表しました。うち120歳以上が7万7118人、150歳以上が884人です。ニューマン氏は論文でこの件を取り上げ、当時は世界でも最良の部類とされていたデータに82%もの誤りがあった、と書いています。取材にも「2010年の日本政府の調査で、100歳以上の人の82%がすでに亡くなっていたと分かった」と語りました。
ただし、この23万人あまりは、戸籍に名前が残っていた人の数です。戸籍は本籍地で管理される身分関係の記録で、いま誰がどこに住んでいるかを記録する住民基本台帳とは別の仕組みです。戦災や海外への移住などで死亡届が出されないままになった人が、戸籍の上だけに残っていたとみられています。厚生労働省が毎年発表する100歳以上の人数は、住民基本台帳をもとに自治体が報告した数で、2010年は4万4449人でした。厚生労働省は当時、平均寿命の計算に戸籍は使っていないと説明しています。たとえば都道府県別の平均寿命は、国勢調査の人口と、人口動態統計の死亡数などから計算されます。住民登録の側でも所在の分からない100歳以上の人は見つかっていますが、厚生労働省の同年8月時点の集計では、報告のあった81自治体で271人でした。この「82%」は海外の記事でもよく引かれますが、日本の公式の長寿統計にそれだけの水増しがあった、ということを示す数字ではありません。
沖縄をめぐる主張と反論。沖縄について、ニューマン氏は、沖縄戦で戸籍のおよそ9割が失われ、戦後に本人の記憶などをもとに作り直されたことを挙げています。取材には「沖縄で100歳以上の人が多い場所をもっともよく言い当てるのは、戦争で記録の保管所が爆撃された場所だ」と語りました。そのときに年齢の誤りが入り込んだのではないか、という主張です。
ブルーゾーンを調べてきた研究者は、これに反論しています。2025年の反論論文は、沖縄の百寿者の研究では、本人や家族への聞き取りに加えて、学校や軍の記録などと突き合わせて年齢を確かめてきたこと、戦災で失われた記録は保存されていた写しをもとに復元されていることを挙げました。沖縄の研究チームは2008年にも、「彼らは本当にその年齢だ」という題の検証論文を出しています。
興味深いのは、「ブルーゾーン」の名づけ親であるプーラン自身の立場です。2024年に医学誌に発表した論文で、戸籍が作り直された経緯から、年齢に誤りが入った可能性はあるとして、一人ひとりの記録にさかのぼった検証を求めました。そのうえで、戦前生まれの世代の長寿は、多少の誤りがあったとしても際立っている、と結論づけています。沖縄の記録をめぐる問いは、提唱した側の内部でも以前から議論されてきたことになります。
一方で、ブルーゾーンを調べてきた研究者も、沖縄の長寿の優位が戦後生まれの世代では失われていることは認めています。2000年の統計で男性の平均寿命が全国26位に下がったときには、県内で「26ショック」と呼ばれました。厚生労働省の2020年の都道府県別生命表では、沖縄県は男性が80.73歳で43位、女性が87.88歳で16位です。プーランらは、戦後に食生活や暮らしが大きく変わったことが背景にあるとみています。2025年の反論論文も、沖縄はもうブルーゾーンの条件を満たしていない、と書いています。
論争のその後。受賞の翌月にあたる2024年10月、サルデーニャのペスや、沖縄・コスタリカ・ギリシャを調べてきた研究者たちは、共同で反論を出しました。査読を経ていないプレプリントをもとに長年の研究を否定するのは「倫理的にも学術的にも無責任だ」とし、サルデーニャでは1866年以降の住民の記録、17世紀からの教会の手書きの記録、村人の家系の復元を突き合わせて年齢を確かめた、と説明しています。
ニューマン氏は引き下がっていません。AFP通信の取材に、「最初の出生記録が間違っていれば、それがすべての書類に写されて、完璧に一貫した、完璧に間違った記録ができあがる」と答えています。書類どうしが一致していることは、もとの記録が正しい証拠にはならない、という指摘です。
2025年12月には、老年学の専門誌『ジェロントロジスト』に、研究者スティーブン・オースタッドとペスによる査読つきの反論論文が載りました。沖縄、サルデーニャ、イカリア、ニコヤの4地域は、複数の独立した資料で検証されている、という内容です。ブルーゾーンは永久に続くものではなく、暮らしの変化とともに消えることもある、とも書いています。一方、ニューマン氏の論文は、2026年5月の米メディアの報道の時点で、査読つきの学術誌にはまだ掲載されていません。応酬は続いていて、どちらが正しいのかは定まっていないのが現状です。
なお、この論争で争われているのは、「どの地域に、本当に長生きの人が多いのか」という記録の問題です。野菜を食べることや体を動かすことが体に良いかどうかを、直接調べたものではありません。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
ブルーゾーンという言葉を初めて聞いた人のために書いておくと、日本の沖縄、イタリアのサルデーニャ、ギリシャのイカリアのように、住民がとても長生きだと言われてきた地域のこと。その土台になっている統計のつじつまが合わない、と指摘した研究があるんだ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
ネットフリックスの番組で見たやつだ。あれに影響されて豆料理を作るようになったのに、今さらどうしてくれるんだ。
3. 海外の名無しさん
面白いのは、指摘の中身が「健康法が嘘だった」じゃなくて「そもそも年齢の記録が怪しい」という点だよね。年金のある国なら、亡くなった家族を生きていることにしておく動機はどこにでもあるわけで。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
とはいえ、厳しい検証を通った長寿記録の上位には日本の人が何人も入ってるよ。記録の不備で数が膨らんだ地域があることと、本当に長生きの人が多い国があることは、両立する話だと思う。
5. 海外の名無しさん
記事に「日本では2010年の政府の調査で、100歳以上の82%がすでに亡くなっていたと分かった」と書いてあって、思わず二度見した。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
それ、少し話が違うみたいだよ。あれは戸籍という家族単位の記録に名前が残っていた人の数で、実際に住んでいる人を数える住民登録とは別の台帳らしい。100歳以上の人数や平均寿命の統計は、戸籍から計算しているわけじゃないそうだ。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
なるほど、台帳が二種類あるのか。亡くなった人が名簿に残ったままになる話は、うちの国の選挙人名簿でもときどき聞く。数字だけ切り取ると、だいぶ印象が変わるね。
8. 海外の名無しさん
年金を受け取り続けるために親の死を届け出なかった、という事件は、うちの国でも何年かに一度ニュースになる。特定の国だけの話じゃないんだよな。
9. 海外の名無しさん
ブルーゾーンの科学が怪しかったとしても、歩いて用事が済む街に住んで、野菜や果物をよく食べ、加工食品や砂糖を控える暮らしまで否定されたわけじゃないと思う。大事なものまで一緒に捨てることはないよ。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
ただ、「長寿の村では毎日ワインを飲んでいる」みたいな話が独り歩きして、お酒の害が軽く見られた面はあると思う。そこは罪深い。
11. 海外の名無しさん
これ、研究者の側からしっかり反論が出てるよ。現地で本人や家族に会って話を聞き、学校や軍の記録、家系までさかのぼって年齢を確かめてきた、というのが向こうの言い分。データベースを検索して出した結論とは重みが違う、と。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
それに対する返事が「最初の出生記録が間違っていたら、それを写した書類はぜんぶ、きれいに一貫して間違う」なんだよね。どっちの言い分にも筋が通っているから厄介だ。
13. 海外の名無しさん(>>11への返信)
沖縄は戦争で記録が失われて作り直された経緯があるから、いちばん議論が残っているところらしい。ただ、暮らしが変わった戦後生まれの世代で長寿の優位が消えていることは、研究者たちも認めている。そこから学べることはあると思うな。
14. 海外の名無しさん
一部は当たっているけど、言いすぎでもあると思う。記録がしっかりしている地域もあるんだから、「全部が嘘」は行きすぎ。それに、記録が正しかったとしても「その土地の食事のおかげ」とまでは言えない。観察して気づいたことは仮説の出発点であって、証明じゃないからね。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
それを言うなら、批判した側の論文もまだ専門家の審査を通っていないんだよね。賞をもらったから正しい、とはならない。そもそもイグノーベル賞は「笑わせて、考えさせる」研究に贈るものなんだし。
16. 海外の名無しさん
1. 仮説を立てる 2. 仮説に合うデータを集める 3. もうかる 4. 誰かが検証しにやって来る(←今ここ)
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
老化の研究がしたくて大学に入った者だけど、長生きに裏技や秘密はないと思ってる。ほどほどの食事と運動、あとは命取りになりやすいものを避けること。地味で退屈だけど、たぶんそれだけ。
18. 海外の名無しさん
コスタリカ出身だけど、ニコヤの人が長生きなのは食事のおかげだ、なんて話、自分のまわりでは誰も本気にしてないよ。
19. 海外の名無しさん
5つのうち、アメリカのロマリンダだけは特定の教会の信徒が多い町なんだよね。ひとつだけ毛色が違うな、と前から思ってた。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
名づけ親の人口学者も「厳密な意味でのブルーゾーンではない」と言っているそうだよ。広めた作家があとから加えた、という経緯らしい。
21. 海外の名無しさん
バミューダ・トライアングルの話を思い出した。あの海域で船や飛行機が消えるというけど、行き交う数の多さを考えれば事故の件数は別に不思議じゃない、と言われてるよね。数字は分母を見ないと分からない。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
子どもの頃は、バミューダ・トライアングルと底なし沼が人生の大問題になると信じてたのに、どっちもいまだに出番がない。
23. 海外の名無しさん
そもそも、とても高齢の人は自分の生年月日をはっきり覚えていないこともあるし、生まれた頃は記録の取り方もまちまちだったはず。誰にも悪意がなくても数字はずれていく、というのは分かる気がする。
24. 海外の名無しさん
記録をいい加減につけると長生きできるというなら、今日から家計簿も日記も適当につけることにする。
25. 海外の名無しさん
役所に記録がなければ死ぬこともできない、というわけか。自分は曜日の感覚をなくして久しいから、もう実質的に不老不死だと思う。
まとめ
「長寿の土地」として知られるブルーゾーンに対し、記録の不備や年金目当ての不正が超高齢者の数を押し上げているのではないか、と指摘した研究が2024年のイグノーベル賞を受けました。提唱した側は年齢を検証済みだと反論していて、決着はついていません。コメント欄も「やっぱりそうか」一色ではなく、「記録の問題と、食事や運動の話は別」「賞を取っただけでは正しいとは限らない」という慎重な声が目立ちました。100歳の誕生日を証明することの難しさを考えさせられる話です。
元ソース: 長寿の秘密とされる「ブルーゾーン」は、ずさんな記録管理と死亡の未届けにもとづいている——そのことを突き止めた研究はイグノーベル賞を受けた

コメント
日本だと人口統計は国勢調査に基くんだがw