歩道にこびりついた黒っぽいシミには、何年も前に吐き捨てられたガムの跡が混じっています。ガムは噛んでも溶けず、捨てても土に還りません。噛む部分の「ガムベース」の多くがプラスチックの仲間の合成樹脂や合成ゴムで、微生物にもほとんど分解されないからです。海外の掲示板では「飲み込んだらどうなる?」「マイクロプラスチックは?」と質問が相次ぎ、シンガポールのガム禁止の話にまで広がりました。
今日の知ってた?
🍬 ガムの噛む部分「ガムベース」の多くは、ポリ酢酸ビニル(酢酸ビニル樹脂)やポリイソブチレン、ブチルゴムといった、石油からつくる合成樹脂・合成ゴムでできている。
🦠 どれもプラスチックの仲間なので、自然の中の微生物にはほとんど分解されない。噛んでいるうちに溶け出すのは甘みと香りだけで、ガムベースはほぼ水である唾液には溶けずに口に残る。道に吐き捨てられると、踏まれて張りつき、何年も消えない。
🌳 もともとの原料は、中米に生えるサポジラの木の樹液を固めたチクル。第二次世界大戦のころに需要が増えて足りなくなり、戦後は合成の素材への置き換えが進んだ。
🇯🇵 日本の原材料表示では、こうした成分を「ガムベース」とまとめて書いてよいことになっている。パッケージに樹脂やゴムの名前が並ばないのはそのため。
🚇 シンガポールは1992年から、ガムの販売と輸入を禁止している。都市鉄道MRTのドアのセンサーにガムが貼られ、運行が乱れたことなどが理由に挙げられた。
背景:ガムベースとは
ガムは大きく分けると、甘味料や香料と、噛むための土台「ガムベース」でできています。英語版ウィキペディアによると、ガムベースは、弾力を出すゴム成分、まとまりと強さを出す樹脂、やわらかさを出す油脂やワックス、食感を整える炭酸カルシウムやタルクなどを混ぜたものです。いまのガムでは、ゴム成分にスチレン・ブタジエンゴムやブチルゴム、ポリイソブチレン、樹脂にポリ酢酸ビニルなどが使われ、天然の素材は「石油からつくる合成のガムベースにほぼ置き換わった」とされています。アメリカの食品医薬品局(FDA)がガムベースに使ってよいと認めている素材には、天然のチクルと並んで、タイヤのチューブにも使われる合成ゴムのブチルゴムが入っています。
原点は中米です。マヤの人々には、サポジラの樹液を煮て固めたものを噛む習慣があったとされ、これがチクルです。19世紀後半にアメリカでチクルを使ったガムが売り出され、商品として広まりました。日本には1916年に初めて輸入されましたが、そのときはあまり広まらず、普及したのは第二次世界大戦後、駐留したアメリカ兵の影響によるものとされています(日本大百科全書)。
合成の素材に切り替わるきっかけも、戦争でした。チクルの歴史を研究するジェニファー・マシューズは、アメリカの公共ラジオNPRの取材に、ガム大手のリグレーが陸軍を説得して兵士の携行食にガムを入れさせ、兵士たちが世界中にガムを噛む習慣を広めたと話しています。需要が増えすぎてチクルが足りなくなり、合成の代用品が必要になった。リグレーは1940年代の終わりには、グアテマラやメキシコからのチクルの輸入をほぼやめた、とマシューズは述べています。
もう少し詳しく
日本のガムと「天然チクル」。1973年の日経ビジネスによると、戦後すぐの国産ガムは酢酸ビニール樹脂を基材にしていて、天然チクルとは噛み心地に差がありました。ロッテは天然チクルを基材にした板ガムで本格的に勝負に出て、1961年には懸賞金1000万円の「天然チクルセール」を打っています。「天然チクル」は、それだけで売り文句になる言葉だったわけです。2005年の取材記事は、ガムベースの作り方を「植物性の樹脂を中心に、酢酸ビニル樹脂やエステルガム、ポリイソブチレン、炭酸カルシウムなどを混ぜる」と紹介していて、ロッテはこの植物性の樹脂に天然チクルを使っているとしています。天然チクルを使ったガムでも、ガムベースのすべてが天然の素材とは限らないということです。平凡社の百科事典マイペディアも「最近は基材に酢酸ビニル樹脂を使用したものがほとんど」と書いています。
なぜ包装に「ガムベース」としか書かれないのか。日本の食品表示では、添加物は原則として物質の名前で書きます。ただし、いくつもの成分を組み合わせて初めて働くものは、まとめた名前(一括名)で書いてよいことになっていて、ガムベースはその代表例です。名古屋市の解説は「複数の成分を組み合わせることで初めてチューインガムの基材となるもの」と説明しています。
吐き捨てられたガムの後始末。シンガポールの禁止は1991年12月30日に発表され、1992年1月3日に始まりました。MRTのドアのほかにも、団地のエレベーターのボタンや郵便受け、鍵穴にガムを詰められたり、清掃の費用がかさんだりしたことが理由に挙げられています。禁止されているのは販売と輸入で、噛むこと自体は違法ではありません。2004年からは、医師か薬剤師を通せば、治療用や歯科用、禁煙用のガムが買えるようになりました。イギリスでは、2022年の政府の発表で、自治体がガムの清掃にかける費用は年およそ700万ポンドと見積もられています。美化団体キープ・ブリテン・タイディによると、イングランドの通りの約87%にガムの跡があり、ガムメーカーが5年間で最大1000万ポンドを出して、跡の除去とポイ捨て対策に充てています。
噛んでいる間に出るマイクロプラスチック。2025年3月、アメリカ化学会の学会で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のチームが小規模な予備研究を発表しました。合成ガム5銘柄と天然ガム5銘柄を1人が噛んで唾液を調べたところ、ガム1グラムあたり平均で約100個、多いものでは600個ほどのマイクロプラスチックが出てきました。ほとんどは噛み始めの2分で出ていて、天然ガムと合成ガムで量に大きな差はありませんでした。研究を率いたサンジェイ・モハンティ教授は「マイクロプラスチックが人体に有害かどうかは、まだ分かっていない」と話しています。
飲み込んだら、どうなる?「飲み込んだガムは7年間お腹に残る」という話は、医学的な根拠のない迷信です。サイエンティフィック・アメリカンの取材に、小児の消化器の専門医は、ガムベースは消化されにくいものの、そのまま体の外に出てくると答えています。ただし、子どもが何個も続けて飲み込み、固まって詰まった例は医学誌に報告されています。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
天然素材のガムもあるにはあるんだよ。ただ、普通のスーパーではまず見かけないし、値段も高い。結局みんな合成のほうを噛んでる。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
天然の樹脂を噛む習慣そのものは、ものすごく古いけどね。ギリシャのキオス島では、マスティックという木の樹脂を古代から噛んできたそうだ。中東系の食料品店に行けば、いまもマスティックのガムがいろんな味で並んでる。「ガムを噛む古代人」って、時代錯誤に見えて実は合ってる絵面なのが好きだ。
3. 海外の名無しさん
デンマークで、5,700年前の人が噛んだ樺の木のタール(樹皮を熱して作る黒い樹脂)が見つかってる。その塊から、噛んだ女性のDNAがまるごと読み取れたんだって。石器時代のガムに、本人の遺伝情報が残ってたわけだ。
4. 海外の名無しさん
しかもガムを飲み込むと、7年間お腹の中に残るんだぜ!
(追記:冗談だってば。何世代もこの迷信を聞かされて育ったっていうネタだよ。真顔で訂正してくる人、多すぎ)
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
最後の「!」で冗談なのは分かるよ。俺は20年以上、妻がガムを噛んでいるのを見るたびに、年に2、3回これを言ってる。そのたびに妻がいつもの呆れ顔で、一から説明し直してくれるんだ。このネタには本当に世話になった。
6. 海外の名無しさん(>>4への返信)
いちおう真面目に書いておくと、飲み込んだガムは数日で普通に出てくる。消化されないのは本当だけど、そのまま腸を通り抜けるだけ。ただ、子どもが何個も続けて飲み込んで、固まって詰まった例は報告されてるから、小さい子には気をつけて。
7. 海外の名無しさん
歩道にある、何年たっても消えない黒い点々。あれ、ガムだからな。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
子どもの頃はそこらじゅうにあった記憶があるのに、最近はあまり見かけない気がする。昔ほどガムを噛む人がいなくなったのかな。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
それは住んでる街の掃除が行き届いてるだけかも。イギリスでは、イングランドの通りの87%にガムの跡があるって調べた団体があって、自治体がはがすのに年に700万ポンドかかってるらしい。
10. 海外の名無しさん
ガムの跡と言えば、シアトルの「ガムの壁」。観光客が路地の壁一面にガムを貼っていく名所なんだけど、2015年に約20年ぶりに大掃除したら、はがしたガムが1トンを超えたんだってさ。
11. 海外の名無しさん
ガムを噛むと、マイクロプラスチックも口に入るってこと? いまはどこからでも入ってくるのは知ってるけど、ガムもそうだとは思わなかった…
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
気になったから調べた。2025年にアメリカ化学会で発表された小規模な研究だと、ガム1グラムあたり平均で約100個のマイクロプラスチックが唾液に出てきたそうだ。意外なのは、天然ガムと合成ガムで量がほとんど変わらなかったこと。研究者本人は「害があるかどうかは、まだ誰にも分からない」と言ってる。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
同じ研究で、ほとんどは噛み始めの2分で出てくるって結果も出てたよ。気になる人は、次々に新しいのを口に入れるより、1枚を長く噛んだほうがいいって研究者が言ってた。
14. 海外の名無しさん
中身がプラスチックだって知ってから、一度もガムを噛んでない。なんでこんなものが食べ物として許されてるんだ?
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
プラスチックと一口に言っても、種類は山ほどあるからね。ガムベースに使っていい素材は、国ごとに一覧で決められてる。そもそも水道水だって、プラスチックの管を何本も通って家まで来てるんだし。
16. 海外の名無しさん
使われてる成分の一つはブチルゴムっていう合成ゴムで、タイヤのチューブで空気を閉じ込めてるのと同じゴムだよ。体温くらいの温度でちょうどいい噛みごたえになるから選ばれてるんだ。天然のほうは、木の樹液からとったゴムでできてる。
17. 海外の名無しさん
というか、分解されると思ってた人なんているの? 何年もあちこちにへばりついてることで有名なのに。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
タバコの吸い殻も、自然に還ると思ってる人は多いよ。あのフィルターも、実はプラスチックの一種なのにね。
19. 海外の名無しさん
ちょっと待って。口の中でガムが溶けてなくなったこと、何回もあるんだけど。あれはどういうこと?
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
チョコと一緒に噛んだんじゃない? ガムベースは油に溶けやすいから、チョコの油分でドロドロに崩れる。髪にくっついたガムをピーナツバターで取るのも同じ理屈。唾液はほとんど水だから、普通に噛んでるだけじゃ溶けないんだ。
21. 海外の名無しさん
妻とは「ガムは食べ物か、おもちゃか」でずっと揉めてる。妻は食べ物派、俺はおもちゃ派。飲み込まないうえに中身がプラスチックなら、もうおもちゃで決まりだろ。
22. 海外の名無しさん
なるほど、シンガポールがガムを禁止したのは正しかったってわけか。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
誤解されがちだけど、シンガポールでもガムを噛むこと自体は違法じゃない。1992年から禁止されてるのは販売と輸入。電車のドアのセンサーにガムを貼られて運行が乱れたのが、決め手の一つだったらしい。いまは禁煙用や歯科用のガムなら、医師か薬剤師を通して買える。ちなみに「ガムでむち打ち刑」は俗説で、法律の罰は罰金か禁錮だよ。
24. 海外の名無しさん
噛み終わったガムをどこに捨てればいいのか、ずっと分からなかったんだ。プラスチックなら、プラごみのほうに出せばいいってことか。珍しく生活で使える豆知識だ。
25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
いや、リサイクルのほうに混ぜちゃダメだって。紙に包んで普通のごみ箱だよ。日本で買ったボトル入りのガムには、噛み終わったガムを包むための紙がちゃんと一緒に入ってた。あれには感心した。
まとめ
ガムの噛む部分「ガムベース」の多くは、ポリ酢酸ビニルやポリイソブチレンといった合成樹脂・合成ゴムです。プラスチックの仲間なので微生物にほとんど分解されず、道に吐き捨てられると何年も残ります。コメント欄では「7年お腹に残る」迷信をネタにする人や、マイクロプラスチックの研究を調べてくる人、シンガポールの禁止の中身を正す人が現れました。日本の包装にある「ガムベース」の一語の中身も、こういうものです。

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