ビールをコップ1杯飲んだだけで、顔が真っ赤になる。日本ではおなじみのこの体質と、アルコール依存症の治療に使われる薬「ジスルフィラム」が、同じ酵素でつながっている——そんな投稿が海外の掲示板で話題になりました。コメント欄には、実際にこの薬を飲んでいる当事者たちの体験談も集まっています。
※注:この記事は、海外掲示板で話題になった豆知識と、公的機関などが公開している情報を紹介する読み物です。治療の助言ではありません。コメント欄の体験談は個人のもので、薬の効果や安全性を示すものではありません。お酒の問題や治療については、医師や専門の相談窓口に相談してください。
今日の知ってた?
💊 アルコール依存症の治療に使われる抗酒薬「ジスルフィラム」(英語圏での商品名はアンタビュース、日本ではノックビン)は、肝臓でアルデヒド脱水素酵素の働きを妨げる薬。
🍺 この酵素は、お酒のアルコールからできるアセトアルデヒドを分解している。薬を飲んでいる間にお酒を飲むと、アセトアルデヒドが血液中に増え、顔の紅潮・吐き気・頭痛・動悸などの不快な反応が出る。
🧬 お酒で顔が赤くなる体質の人の多くは、この酵素のうちアセトアルデヒド分解の主役である「2型」の働きが、生まれつき弱い。
🗾 この体質は日本・中国・韓国など東アジアの人に多い。厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」によれば、日本人の40%程度にみられる。
背景:抗酒薬と「お酒で赤くなる体質」をつなぐ酵素
お酒のアルコール(エタノール)は、主に肝臓でまず「アセトアルデヒド」という物質に変わり、続いて酢酸へと分解されます。この2段階目を受け持つのが、アルデヒド脱水素酵素(英語の頭文字をとってALDH)です。なかでも「2型」(ALDH2)と呼ばれるものが、アセトアルデヒドを分解する主役とされています。厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」は、アセトアルデヒドを、顔が赤くなる反応や二日酔いの原因物質と説明しています。
ジスルフィラムは、肝臓でこの酵素の働きを妨げる薬です。日本の添付文書(薬の公式な説明書)によると、服用中にお酒を飲むと血液中のアセトアルデヒドが増え、5〜10分ほどで顔の紅潮、熱感、頭痛、吐き気や嘔吐といった症状が出ます。国立病院機構久里浜医療センターは、こうした薬を飲んでいる間は「気持ち悪くなるからやめよう」と心理的に飲酒を断念しやすくなり、結果として断酒の継続に役立つ、と説明しています。お酒への欲求を弱めるタイプの薬とは別もので、「飲めば具合が悪くなる」ことを歯止めにする薬です。日本では従来から、ジスルフィラム(商品名ノックビン)とシアナミド(商品名シアナマイド)の2種類が「抗酒薬」として使われてきました。
一方で、薬を飲まなくても似たことが起きる人がいます。e-ヘルスネットによれば、ビールコップ1杯程度の少量の飲酒で顔の紅潮・吐き気・動悸・眠気・頭痛などが出ることを「フラッシング反応」と呼び、この体質の人の多くはALDH2の働きが弱いタイプです。日本、中国、韓国など東アジアの人に多く、日本人では、両親から受け継いだ遺伝子が2本とも弱いタイプの人が1割弱、1本だけ弱いタイプの人が3割強とされています。国内にも地域差があり、沖縄・九州南部・東北では30%台以下、九州北部や京都・大阪・愛知では50%前後と紹介されています。
つまり元スレッドの言う「同じ酵素」とは、薬が働きを妨げる酵素と、体質によって働きが弱い酵素が、どちらもアルデヒド脱水素酵素だという意味です。お酒で顔が赤くなるこの体質は、英語圏では「アジアン・フラッシュ」とも呼ばれています。
もう少し詳しく
始まりはゴム工場。ジスルフィラムは、もともとゴムの加工(加硫)を速める薬品として使われていた物質です。1937年、アメリカの医師E・E・ウィリアムズが、ゴム工場で働く人たちがお酒を飲むと体調を崩すことに気づいて報告しました。ただ、これが治療に結びつくまでには、さらに10年ほどかかっています。
気づいたきっかけは、自分たちの体。1940年代、デンマークの研究者エリック・ヤコブセン(Erik Jacobsen)とイェンス・ハル(Jens Hald)は、この物質を寄生虫の治療に使えないかと調べていました。安全性を確かめるためにまず自分たちで飲んでみたところ、お酒の効き方が変わってしまうことに気づきます。ヤコブセンは、この錠剤がアルコールの作用を「きわめて不快な方向に」変えた、と書き残しました。2人は1948年に、服用後にお酒を飲んだときの体の反応を調べた論文を発表しています。
お酒以外でも反応が出る。日本の添付文書は、服用中はアルコールを含む食品(奈良漬など)や化粧品(アフターシェーブローションなど)も避けるよう求めています。アルコールに対する感受性は、服用後少なくとも14日間は続くとされています。コメント欄に出てくる「マウスウォッシュや、ワインを使った料理でも具合が悪くなった」という話と重なる注意書きです。
赤くなる体質と、がんのリスク。e-ヘルスネットは、アルコールとアセトアルデヒドの両方に発がん性があり、ALDH2の働きが弱い人では、飲酒による食道やのど(咽頭)のがんのリスクが高まると説明しています。赤くなる体質の人でも、長年飲んでいるうちに慣れて不快感なく飲めるようになることがある一方、そうした人が大量に飲むと食道やのどのがんのリスクが高まることも分かってきた、としています。同サイトは「飲まない人や体質的に飲めない人などは、無理に飲まないようにしましょう」と呼びかけています。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
この薬について手短に解説を。1937年、アメリカのゴム産業の化学工場に勤めていた医師が、ある種の工業用薬品を扱う作業員はお酒を飲むと具合が悪くなることに気づいた。同じことは欧米のほかの工場でも確認されている。戦後になって、アルコール依存症の患者を診ていたデンマークの医師オルフ・マーテンセン=ラーセンがこの化合物で小規模な臨床試験を始め、製薬会社が「アンタブス」の名前で売り出した。当初はとんでもない量が処方されていて、重い反応や死亡例まで出たので、いったんは敬遠されたんだ。その後、量は大幅に減らされた。この薬の登場をきっかけに、人体がアルコールをどう分解しているのかという研究も一気に進んだよ。自分たちの現場では、本人に断酒の強い意志がある場合を除いて、いまはあまり使わなくなっている。副作用がきつくて、結局は薬を飲まなくなってしまうからね。
※注:コメント主による説明です。臨床試験を行った医師の名前や、発売時の名称「アンタブス(Antabus)」は、この説明にもとづいています。英語圏ではアンタビュース(Antabuse)の名で知られています。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
アセトアルデヒドって毒性がかなり強くて、発がん性も知られている物質だよね。その分解を止めてしまう薬を飲むのは、それはそれで危なそうに思えるんだけど。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
お酒そのものも毒性がとても強くて、発がん性が知られているんだ。結局は、リスクと利益を天秤にかけるしかない。
4. 海外の名無しさん
薬の名前を見て一瞬、アリを虐待(Ant abuse)する話かと思ったよ。きみたち、アリをいじめているのかい?
※注:英語での商品名 Antabuse(アンタビュース)を、「Ant(アリ)」と「abuse(虐待)」に区切って読んだ言葉遊びです。
5. 海外の名無しさん
自分は一口で顔が真っ赤になる体質なんだけど、つまり生まれつきこの薬を飲んでいるようなものだったのか。長年の謎がひとつ解けた気分だ。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
残念ながら自分も重いフラッシング反応持ちだよ。お酒を標準的な1杯の半分も飲まないうちに、こうなる。顔と首が熱く真っ赤になる。上半身のあちこちにまだらな赤みが出る。呼吸が浅くなって息苦しい。心臓がバクバクして激しい動悸がする。ズキズキする頭痛と、脈打つような大きな耳鳴り。吐き気がして、たぶん吐く。そのあと冷や汗と震え。これが1時間ほど続くんだ。
7. 海外の名無しさん
大学時代の友人は中国系で、軽いイチゴアレルギーもあった。それなのに、ひどい味のイチゴ味ワインクーラーをわざわざ買ってきて飲んでは、全身を真っ赤に光らせていたよ。本人はそれを「スーパーサイヤ人」ならぬ「スーパー・エイジアン」になる、と呼んでいた。
※注:原文は「Super SAsian」。『ドラゴンボール』の「スーパーサイヤ人(Super Saiyan)」と「アジア人(Asian)」をかけた言葉遊びです。ワインクーラーは、ワインを果汁や炭酸で割った甘い低アルコール飲料のこと。
8. 海外の名無しさん
自分は、3度目の依存症治療施設への入所を終えたあとで、この薬を試すことにした。当時は研究室で働いていて、毎月、室内と機器をイソプロピルアルコールで徹底的に掃除する決まりがあったんだ。職場に復帰して、薬が体に入った状態で掃除を始めたら……数分で「心臓発作で死ぬ」と思った。会社が救急車を呼んで、そのまま救急外来へ。そこで初めて「何の薬を飲んでいますか」と聞かれたよ。高くついた失敗だった。
※注:救急搬送や救急外来の受診に高額の請求が来る国があり、「高くついた」はその費用を指しているとみられます。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
揮発したアルコールの蒸気を吸い込んだだけで反応が出たってこと? とんでもない話だな……。その後は、もっと順調にいっているといいんだけど。
10. 海外の名無しさん(>>8への返信)
病院で真っ先に「いま飲んでいる薬は?」と聞かれる理由がよく分かる話だ。自分も、飲んでいる薬のメモを財布に入れておこうと思った。
11. 海外の名無しさん
友人がこの薬を服用していたけど、四六時中ひどい体調だったそうだ。服用を始めて1〜2日で、絶え間ない頭痛、めまい、発疹、不意に襲ってくる吐き気が、ほぼ一日中続くようになった。うっかりアルコールを口にしたり触れたりすると(マウスウォッシュ、ワインを使った料理、手指の消毒液でさえ)、ほとんどその場で吐いて、何もできなくなるほどのめまいと片頭痛に襲われたらしい。本人いわく「これまでの人生で、この薬ほど『酔って何も感じなくなりたい』と思わせたものはなかった」。
12. 海外の名無しさん
依存症の当事者に聞いてみるといい。気分が最悪になるくらいじゃ、飲むのは止まらないんだよ。最近は、GLP-1受容体作動薬(オゼンピックなど)でお酒への欲求が弱まるらしい、という話をよく耳にする。
※注:GLP-1受容体作動薬は、糖尿病や肥満症の治療に使われる薬です。お酒への欲求についての話はコメント主たちの見聞や体験で、効果が確立した治療法として紹介するものではありません。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
アンタビュースの場合は、「ちょっと体調が悪い」なんてレベルの話じゃないよ。自分の理解では、服用中にお酒を飲むと、何もできなくなるほどの症状が出るはずだ。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
きついよ。大汗、嘔吐、震え、その他いろいろ。根っこにある問題そのものを治すというより、「手を出せば痛い目を見るぞ」式の治療だね。
15. 海外の名無しさん(>>12への返信)
あくまで体験談レベルの話だけど、GLP-1の薬で欲求が減る人は多い。でも全員じゃない。自分の場合は減らなかった。
16. 海外の名無しさん
もし自分がアルコール依存症で、つらい副作用を避けて酔える簡単な方法(この薬を飲まない、とか)があるなら、そうすると思うな。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
この薬は普通、本人がやめようとしている場合にしか処方されないんだ。罰じゃなくて、治療だからね。
18. 海外の名無しさん(>>16への返信)
うちの父は、月に1回の注射で投与されている。錠剤だと、飲まないか、飲んだうえで無理やりお酒を飲もうとするかの、どちらかだったから。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
へえ、それは知らなかった。この薬に持続性の注射があるなんて、初めて聞いたよ。北米では使えないみたいだ。
20. 海外の名無しさん
ポーランドでは、アルコール依存症の人の皮膚の下に埋め込む形で、これが使われていた。「エスペラル」という名前でね。どうしてもまた飲みたくなった人が、自分でそれを取り出してしまうこともあったそうだ。ほかの国にも、体の中でゆっくり溶けるものを入れる方法があって、4〜8か月、長ければ1年もつと言われているらしい。
※注:注射や埋め込みについての国名・名称・持続期間は、いずれもコメント主の説明です。2023年の総説によると、皮下に埋め込む方式は服薬を続けてもらう方法として1960年代後半に広まりましたが、有効性と安全性の根拠が十分でないとして、米国では承認されていません。日本の添付文書に載っているのは、飲み薬としての使い方です。
21. 海外の名無しさん
90年代の軍では、未成年での飲酒や自室での飲酒といった、アルコール関連の規則違反で処分された隊員に、これが処方されていた。本人は先任曹長のところへ出向いて、薬を飲むところを目の前で確認してもらわなきゃいけなかったんだ。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
規則違反をした人に、罰のように薬を飲ませていたのか。冷静に考えると、かなりひどい話じゃないか。
23. 海外の名無しさん
いままさに服用している者だけど、自分にはすごく合っている。最初に服用したのは2013年で、断酒のためだった。そこから2022年に離婚するまでは、飲まずにいられたんだ。そのあと、新居の改装中に、うつと重い関節リウマチの痛みを紛らわせようとして、また飲み始めてしまった。今回は薬とカウンセリングの併用で、断酒して1か月半。毎日がかなりいい感じだよ。言えるのは、服用中は絶対にお酒を飲まないこと、それと食べる物に気をつけること。ある日の昼にケチャップをたっぷり食べたら(反応が出る種類の酢が入っていた)、激しく吐いて、その日はずっと死ぬかと思った。
24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
1か月半、立派だよ。あなたならこのまま続けられる。応援してる。
25. 海外の名無しさん
自分はアルコール依存症で、この薬のおかげで大学のキャンパスにいた3年間、通算では5年間、飲まずにいられた。終わりのほうは毎日服用していたわけじゃないけど、「せめて今日だけは飲まない」という自分の誓いを守る支えになったよ。しらふで目覚めると、明日もそうしたいと思える。この1錠を飲めば、お酒は選択肢から消える。夕方6時に頭の中で「飲もうか、どうしようか」と騒ぎ出す声も、聞こえなくなるんだ。
まとめ
抗酒薬ジスルフィラムは、お酒で顔が赤くなる体質の人で働きが弱いのと同じ酵素を、薬で妨げるものでした。コメント欄には「この薬のおかげで何年も飲まずにいられた」という当事者の声と、「薬のほうを飲まなくなればそれまで」という限界の指摘が並び、罰ではなく本人の「やめたい」を支える治療だ、という意見が印象に残ります。日本人の40%程度にみられる体質と海の向こうの治療薬が同じ酵素でつながっていたとは、少し意外な話です。
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット「2型アルデヒド脱水素酵素」、同「フラッシング反応」、同「アセトアルデヒド」、同「アルコールの吸収と分解」、同「アルコールとがん」、国立病院機構久里浜医療センター「アルコール科(アルコール依存症治療)」、医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ノックビン原末」添付文書、総説「Disulfiram: Mechanisms, Applications, and Challenges」(Antibiotics誌、2023年)

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