バター1キロを作るのに、石炭を60キロ。そんな途方もなく非効率な「食べ物の作り方」が、かつて本気で工場で動いていた。1930〜40年代のドイツで、化学者アルトゥール・イムハウゼンが石炭から食用の脂を合成する方法を実用化していたのだ。物資の足りない戦時下、ドイツは黒い燃料をパンに塗れる脂へと変えようとしていた。
※注:イムハウゼン(Arthur Imhausen)は20世紀前半のドイツの化学者・実業家。石炭由来の合成食用脂の工業化で知られる。
今日の知ってた?
📏 石炭60kgから、合成バター(実際はマーガリン)1kg。イムハウゼンは石炭から作った合成パラフィンを酸化させ、食用の脂を取り出した。栄養価も味も悪くなく、1日あたり約700キロカロリーを供給したが、効率の悪さから第二次大戦後に製造は打ち切られた。
背景:石炭から食べ物を作るという発想
第二次大戦に向かうドイツは、油脂が決定的に足りなかった。食用油もバターも多くは輸入に頼っており、海上封鎖されれば食卓から脂が消える。そこで国は「国内で採れる資源だけで何とかしろ」という難題を化学者たちに突きつけた。ドイツにいくらでもある資源——それが石炭だった。
当時のドイツは、石炭から液体燃料を作る技術(フィッシャー・トロプシュ法など)の最先端を走っていた。「石炭をガソリンに変えられるなら、食べ物にだって変えられるのでは」。イムハウゼンの挑戦は、その延長線上にあった発想だ。
厳密に言うと、できあがったのは「バター」ではなく「マーガリン」に近い。乳から作る本物のバターではなく、合成した脂を原料にした塗れる食用脂——いわば石炭製の人造バターである。それでも、黒い鉱物が黄色い塗り脂に化けるというのは、当時の人々にとっても相当な驚きだったらしい。
もう少し詳しく
工程はかなり遠回り。まず石炭から合成パラフィン(ろうのような炭化水素)を作り、それを酸化して脂肪酸に変える。蒸留で分けたうち、食用に向くC9〜C16という鎖の長さの成分だけを取り出し、グリセリンと反応させて食べられる脂にする。このグリセリンも、プロピレンから合成したものが使われた。文字どおり「ゼロから脂を組み立てる」化学だった。
味と栄養は意外と合格点。こうして作られたマーガリンは「栄養があって、味も悪くない」と評価され、実際に人々の食事に組み込まれた。1日あたり最大700キロカロリーほどを担ったというから、緊急時の食料としては立派に機能していたことになる。
致命的だったのは効率。とはいえ、脂1キロのために石炭を60キロも燃やす計算では、平時の食料生産としてはまるで割に合わない。戦争が終わると、この工業プロセスはその非効率さゆえに静かに姿を消した。なお現代では、石炭の代わりに二酸化炭素やメタンなどの炭素ガスを原料に脂を合成しようという試みも登場している。技術の発想そのものは、形を変えて生き続けているわけだ。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
石炭をバターに変えるって、これぞ究極のドイツ料理って感じがしてしまう。なんというか、合理性と無茶が同居してる。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
そして出来上がりがバターじゃなくてマーガリンっていうオチまでドイツらしい。最後まで律儀に「正確には違います」って言いたくなるやつ。
3. 海外の名無しさん
そもそもマーガリンって最初から「合成バター」みたいなものだろ。だから石炭から作ったマーガリンは、二重に人造って感じで逆にすごい。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
マーガリンは合成された悲しみ、って誰かが言ってたのを思い出した。石炭製となると悲しみの純度がさらに上がってる。
5. 海外の名無しさん
「あなた、これが石炭だなんて信じられない」みたいなCMが頭をよぎった。ルール地方産・新発売、みたいなノリで売られてたら普通に騙される。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
キャッチコピーは「信じられないけど、石炭です」で決まりだな。誠実すぎて逆に売れない気がする。
7. 海外の名無しさん
化学系の動画でこのテーマやってほしすぎる。石炭からバターを作る過程を全部映像で見せられたら、絶対に最後まで見てしまう自信がある。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
途中で「これは食べないでください」ってテロップが出るところまで想像できる。安全に作れても自分の口に入れる勇気は別問題。
9. 海外の名無しさん
60対1の比率がもったいないのは確かにそうなんだけど、それより「1930年代に石炭から人造バターを作った」って事実そのものに普通に感心してしまう。発想が完全にSFのそれ。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
19世紀末から20世紀初頭は化学の黄金時代で、当時のドイツはまさに科学の聖地だったらしいよ。一説には1920年ごろ、世界の科学論文の半分近くがドイツ語で書かれてたとか。発想が飛んでるのも納得。
11. 海外の名無しさん
石炭って要するに大昔の植物が固まったものだよね。つまりこれ、古代の植物を脂に戻して食べてたってことになる。スチームパンク版の食物連鎖みたいで、想像するとちょっとくらくらする。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
言われてみると、食品の着色料や保存料には石油や石炭由来のものも普通にあるしね。「石炭を直接カロリーにする」のだけが突出して未来っぽく聞こえるだけかも。
13. 海外の名無しさん
僕は普通に市販のマーガリンでいいかな…。せっかくの豆知識に水を差すようで悪いけど、石炭スタートの脂を毎朝トーストに塗る勇気はちょっとない。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
こちらが用意できる最高のものは「石炭コーラ」になります、みたいな返しを思いついた。何の店なんだそれは。
15. 海外の名無しさん
これ、もし普及してたら、たぶんこの50年くらいのどこかで「全身がんになります」って判明してたタイプの発明だと思う。当時のノリで作られた合成食品、だいたいそういう末路をたどりがち。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
意外とそうでもないかもよ。化学的には割と素直な反応で、脂肪は結局のところ脂肪だから。不純物さえちゃんと取り除ければ、原理上はそんなに変な代物じゃないらしい。
17. 海外の名無しさん
ドイツの化学者って言葉を見るたびに、これから何かとんでもない話を聞かされるぞって身構えるようになった。だいたい期待を裏切らない。
18. 海外の名無しさん
「銃か、それともバターか」っていう昔の政治スローガンがあるけど、石炭からバターを作れるなら、もう銃もバターも同じ資源で賄えるじゃん、と思ってしまった。皮肉が効きすぎてる。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
戦時下に「国内資源だけで脂を確保しろ」っていう切実な事情があったのを知ると、ジョークのつもりが急に重たく響くな…。
20. 海外の名無しさん
錬金術のルーレットを回したら「石炭」と「バター」が出ちゃった感じ。アルトゥールさん、そのお題はなかなかの難易度ですよ、って言いたくなる組み合わせ。
21. 海外の名無しさん
味も栄養もそこそこ合格だったっていうのが一番びっくりする。てっきり「食べられなくはない」レベルかと思いきや、ちゃんと1日700キロカロリーを担う食料として機能してたわけで。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
追い詰められた時代の技術って、必要に迫られてる分だけ妙に完成度が高かったりするんだよな。平時なら誰も真面目にやらない研究が一気に進む。
23. 海外の名無しさん
原料をたどると「石炭→パラフィンろう→脂→バター」って流れなのね。サプライチェーンをどこまで遡るか次第で、すごく見えたり全然普通に見えたりするの面白い。
24. 海外の名無しさん
現代版は石炭の代わりにCO2やメタンを使うって書いてあって、二度見した。空気中の炭素から脂を作るって、それはそれで未来の食料っぽくてワクワクする話だ。
25. 海外の名無しさん
60キロの石炭が1キロのバターになる、っていう数字を逆に考えると、僕らが普段食べてる本物のバターってめちゃくちゃ効率のいい食べ物なんだな、と妙に牛とミルクに感謝したくなった。
まとめ
石炭60キロから合成バター1キロ——イムハウゼンが戦時下のドイツで実用化した、究極に非効率な人造バターの話。味も栄養もそこそこ合格点だったが、効率の悪さで戦後に消えた。コメント欄は「正確にはマーガリン」というツッコミと、「1930年代に石炭をバターに変えた発想がもうSF」という素直な感心が入り混じり、現代のCO2合成への言及まで脱線していった。
元ソース: 1930〜40年代のドイツの化学者が、石炭を合成バターに変える方法を開発していた(バター1kgに石炭60kg)


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