残虐な殺人シーンが許される一方で、たった一つの「やりすぎ」が付くと、そのゲームは大手の棚から完全に消える――。アメリカのゲーム審査機関ESRBが下す最高区分は、これまでの長い歴史の中でわずか23本にしか付けられていない。なぜそんなに少ないのか、その裏には「付いたら終わり」という冷たい現実がある。
※注:ESRBは北米のゲーム年齢区分団体。一般向けの「E」から大人向けの「M(17歳以上)」まであり、その上の最上位が「AO(Adults Only=18歳以上のみ)」。AOが付くと店頭やゲーム機での販売が事実上できなくなる。
今日の知ってた?
📏 ESRBの最上位区分「AO(Adults Only=18歳以上のみ)」が付いたゲームは、機関の歴史を通じてたった23本しか存在しない。任天堂・マイクロソフト・ソニーの大手3社はいずれもAO作品を自社プラットフォームで販売することを禁じており、AOが付くこと自体が「商業的な死」を意味する。
背景:ESRBとAO区分とは
ESRB(エンターテインメント・ソフトウェア・レーティング委員会)は1994年に設立された、北米のゲーム年齢区分団体だ。日本でいうCEROにあたる。区分は「全年齢(E)」から「17歳以上(M)」まで段階的にあり、そのさらに上に位置するのが最高区分「AO(18歳以上のみ)」になる。ESRBの公式サイトはAOを「18歳以上の大人だけに向く内容」とし、長く続く激しい暴力、露骨な性描写、本物のお金を使った賭けのいずれかを含みうる、と説明している。理屈の上ではただの一段階上のラベルだが、実際の重みはまったく違う。
というのも、任天堂・マイクロソフト・ソニーの大手3社が、AO作品を自社ハードで発売することを認めていない。さらに大手小売店もAOゲームを基本的に棚に置かない。つまりAOが付いた時点で、家庭用ゲーム機でも実店舗でも売れなくなる。だからメーカーは、内容を修正してでもAOだけは何としても避けようとする。結果として、23本という極端に少ない数に落ち着いているわけだ。英語版ウィキペディアの一覧によれば、記者たちはAOを「死のキス」、事実上の発売禁止と呼んできた。2015年には、ゲーム実況の配信サービスTwitchも、AO作品の配信を一律に禁じている。
ここで言う23本は、AOのまま実際に発売された作品の数だ。最初はAOを付けられたものの、表現を削ってMに収めてから発売した作品は、この数に入っていない。たとえばロックスターの『マンハント2』は、家庭用ゲーム機向けに表現を削ってMで発売し、無修正版は2009年にパソコン向けにだけAOで出た。フランスのクアンティック・ドリームの『ファーレンハイト』も、北米版は性的な場面を削り、題名を『インディゴ・プロフェシー』に変えてMで発売している。開発会社の代表によれば、無修正のヨーロッパ版を輸入して遊んだ人も多かったという。
もう少し詳しく
「ホットコーヒー」事件が象徴的だった。2004年発売の大ヒット作『グランド・セフト・オート:サンアンドレアス』には、開発段階で作られたものの製品版では遊べないように封印された性的なミニゲームのデータが、ディスク内に残されていた。これがユーザーの手で改造により発掘され「ホットコーヒー」と呼ばれて話題になる。問題はその後で、ESRBはこの隠しコンテンツを理由に、すでに「M」で売られていた本作のレーティングを一時的に「AO」へと格上げした。これを受けて多くの小売店が店頭から商品を撤去。メーカー側は問題のデータを取り除いた版を出し直して、ようやくMに戻している。
騒ぎは、国の役所まで巻き込んだ。アメリカの連邦取引委員会(FTC)は2006年6月、発売元のテイクツー・インタラクティブとロックスター・ゲームスが、ディスクに残った性的な内容を伏せたまま「M」の区分を広告していたとして、両社と和解したと発表した。FTCの発表によれば、AOへの変更を受けて全米の多くの小売店が棚から本作を撤去し、テイクツーは返品などで2,450万ドルの費用を負ったという。両社は、今後はレーティングの審査に出すときにゲームの中身をすべて確認する仕組みを作ることも約束させられた。日本のCEROも、ゲームの本編だけでなく「隠しコマンドや裏技等」まで、収録された表現をすべて審査の対象にすると明記している。遊べないように封印したデータでも「入っている以上は中身のうち」というのが、この事件のいちばんの教訓だった。
リストの中身は意外と地味。23本の顔ぶれを見ると、その大半はポルノ的な内容のアダルトゲームか、極端に残虐な暴力描写を含む作品だ。暴力だけを理由にAOになったのは、発売中止になった『スリル・キル』(1998年)、『マンハント2』の最初の版、そして無差別に人を襲う内容が物議をかもした『ヘイトレッド』(2015年)の3本しかない。ちなみに、その理由のどちらにも当てはまらない唯一の例外が、実際のお金を賭けられる仕様だった2003年のカジノゲーム『ピーク・エンターテインメント・カジノズ』だという。「えっ、それで?」と拍子抜けする人も多いが、これは付けられたというより、自分から取りにいったAOだった。オンライン賭博の会社だった発売元が、未成年に賭博をさせない姿勢を示すために、あえてESRBにAOの審査を申し込んだのだという。
一覧には、日本のゲームがいくつも並ぶ。もうひとつ目を引くのは、23本の中に日本の美少女ゲーム(アダルトゲーム)の英語版がいくつも入っていることだ。2001〜2002年には『Snow Drop』『X-Change』などが英語に訳されて北米で発売され、AOを付けられた。2014年の『ef – a fairy tale of the two.』は、日本の開発会社minoriの求めで、北米でパッケージ版を出す許可を得るためにわざわざESRBの審査に出されている。英語版の発売元MangaGamerのほかの作品は、ESRBには出さず自社で区分を付けて売られている。ESRBの区分がとくに求められるのは、店頭に並ぶパッケージ版なのである。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
今のSteamを見てみろよ、思いっきり18禁なゲームで溢れかえってるぞ。たぶんあれって誰もESRBの審査を受けてないってことなんだろうな。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
実店舗で売らないなら、開発者はわざわざESRBのレーティングを取ろうとしないからね。ネット配信だけなら審査自体が不要なんだよ。
3. 海外の名無しさん
サンアンドレアスのCMの最後に一瞬だけ「Adults Only」って表示が出てた時期があって、あれは本当にシュールな光景だった。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
しかも問題になったのはゲームのファイルを自分で改造しないと出てこない部分なんだよな。普通に遊んでる人にとってはAO版もM版も中身は何も変わらなかったっていう。
5. 海外の名無しさん(>>3への返信)
当時ニュースであの騒ぎを見てた身としては、たった一つの隠しデータでここまで大事になるのかって衝撃だったよ。
6. 海外の名無しさん
似たような問題が映画にもあるよね。アメリカの映画区分には大人向けが二段階あって、R指定(子どもは保護者同伴なら可)と、NC-17(17歳以下は完全に入場禁止)がある。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
で、問題はほとんどの映画館がNC-17の作品を上映するのを拒否することなんだ。だからこの区分は事実上の死刑宣告で、付きそうになると作り手は表現を削ってでもRに収めようとする。最高区分が滅多に使われないのはゲームと全く同じ構図だね。
8. 海外の名無しさん(>>6への返信)
まさにその審査の理不尽さを扱った『この映画はまだ審査されていません』ってドキュメンタリーがあるよ。レイプ描写はRなのに女性が絶頂に達する描写はNC-17、みたいな基準の謎っぷりを掘り下げてて面白い。
9. 海外の名無しさん
殺人を見せるのはOKで、おっぱいはダメ。それがアメリカだ。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
バーチャルで好き放題に犯罪をやって罪のない人を殺せるのに、胸が一つ映ったら「子どもたちを守れ」になるの、本当に意味がわからん。映画もテレビも全部同じ問題を抱えてるよな。
11. 海外の名無しさん
リストを見たんだけど、ポルノでも残虐でもない理由でAOになった唯一の例外が、実際のお金で賭博できる2003年のカジノゲームだったの、なんか妙にほのぼのしてて好き。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
逆に新鮮な発想だよな。性でも暴力でもなく「ガチで金を賭けられる」が一発アウトっていう。
13. 海外の名無しさん
俺は『Conan Exiles』の開発に関わってたんだけど、オフィスで検閲設定をテストするのがすごく奇妙な作業だった。発売前にAO判定を受けてたなんて当時は知らなくて、ただコンソール版は全裸オプションを切らなきゃいけないとだけ聞かされてたよ。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
内側の話が聞けるの貴重すぎる。プラットフォーム側の要求だと思ってたら、実はレーティングが絡んでたっていうオチなんだね。
15. 海外の名無しさん
リストにある中だと『レジャースーツ・ラリー』はマジで名作。中身は小さめのオープンワールドにミニゲームを足した感じなんだけど、とにかく笑えるんだ。プレイヤーを興奮させようとしてるんじゃなくて、笑わせにきてる作りなのが最高なんだよ。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
あれ、当時オタクな友達連中の間でこっそり回し読みされてたのを覚えてるわ。建前はともかく実態はそういう使われ方もしてた気がする。
17. 海外の名無しさん
N64の『コンカーズ・バッド・ファー・デイ』は絶対AOだと思い込んでたけど、調べたら普通にM判定だったんだな。あの下品さでよく通ったもんだ。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
親が子どもの俺に買ってくれたんだけど、ゲームのレーティングなんて全然見てなかったんだよ。あの一件は家族全員にとって、いろんな意味で記憶に残る経験になった。
19. 海外の名無しさん
正直、リストに『Postal』が入ってると思ってた。あれだけ過激な内容で外れてるのが逆に意外。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
レンガで人の頭をかち割るのが18禁にならないなら、いったい何がアウトになるんだって話だよな。
21. 海外の名無しさん
一方ヨーロッパの区分だと「PEGI 18」なんて全然珍しくもないんだよな。同じ最上位でも扱われ方がまるで違う。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
ただしドイツは別格でね。独自の区分制度を持ってて、しかもそれが法的な強制力まで持ってるからかなり厳しいよ。
23. 海外の名無しさん
3大メーカーがAOを自社機で禁止してるって書いてあるけど、もし『GTA6』がAO判定を食らって、それでもメーカーが一切修正を拒んだら、たぶん向こうが折れると思うんだよな。
24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
いや、サンアンドレアスが一時的にAOになって店頭から消えた前例があるからね。あの規模の作品でも引っ込めたんだから、ルールを曲げる気はないと思うよ。
25. 海外の名無しさん
こうして並べてみると、結局のところアメリカは「暴力は最高、でも肌の露出と汚い言葉は許さん」っていう一貫した価値観なんだよな。ゲームも映画も全部この物差しで測られてるのが面白い。
まとめ
最高区分AOが歴史上わずか23本という事実の背景には、「付いたら大手の棚から消える=商業的な死」という構造があった。コメント欄では、サンアンドレアスのホットコーヒー事件を懐かしむ声や、映画のNC-17との共通点を挙げる人が多く、最終的には「暴力には甘く、性表現には厳しい」アメリカ的な基準そのものへの軽いツッコミに落ち着いていったのが印象的だ。


コメント
アメリカはゲームじゃなく実社会で性犯罪や銃乱射などの暴力が横行してる。
ゲーム規制に意味は無いなw