「原子が同じ場所にいたまま、2つの姿を規則的に行き来し続ける」時間結晶という物質の状態が実在するらしい

「原子が同じ場所にいたまま、2つの姿を規則的に行き来し続ける」時間結晶という物質の状態が実在するらしい 自然・科学

「タイムクリスタル(時間結晶)」。ゲームに出てくる強そうなアイテムか、怪しい通販の開運グッズにしか聞こえない名前だが、これは物理学の用語である。2012年に「理論上はありうる」と言われ、2017年に実験室で本当に作られた。しかも、いちばん厄介なのは、名前から想像することのほとんどが間違っているという点だった。

今日の知ってた?

📏 時間結晶(タイムクリスタル)は、原子の並びが空間だけでなく時間方向にも規則的な繰り返し構造を持つ、物質の状態のこと。同じ場所にとどまったまま、原子の配置が2つの状態を規則的に行ったり来たりし続ける。2012年に理論として提唱され、2017年に実験でつくられたと報告された。

背景:結晶とは「空間の繰り返し」のことだった

結晶と聞いて思い浮かぶのは、雪の結晶、食塩の粒、ダイヤモンドあたりだろう。これらに共通しているのは、原子が規則正しい間隔で、同じ並び方を延々と繰り返しているという点だ。この繰り返しの骨組みを結晶格子という。ガラスのように原子がばらばらに固まったものは、見た目が透明でも結晶とは呼ばない。

ここで重要なのは、その「繰り返し」が空間方向の話だということである。水に溶けた食塩は、どこを切り取っても均一で、特別な場所がない。それが結晶になると、原子が座るべき決まった位置と、何もない隙間ができる。均一だった空間に、間隔という単位が生まれる。

※注:物理学ではこれを「対称性の破れ」と呼ぶ。ここでいう対称性とは「どこで見ても同じに見える」という均一さのこと。結晶ではその均一さが失われ、「決まった間隔ごとに同じ景色が戻ってくる」状態に変わっている。

時間結晶は、これとまったく同じことを時間方向でやってのける状態だ、と説明されている。物体はどこへも移動しない。にもかかわらず、その中身の状態が、決まった周期で行って戻ってを繰り返す。2秒前と同じ姿に戻り、2秒後もまた同じ姿になる。けれど1秒後は違う。時間の流れの中に、目盛りのようなものが刻まれている——名前に「結晶」が入っているのは、そういう理由だ。

もう少し詳しく

理論が先で、実物は5年遅れだった。時間結晶という考えを2012年に提唱したのは、ノーベル物理学賞を受けたフランク・ウィルチェックだと伝えられている。発表直後は「そんな状態は存在できないはずだ」という反論も出て、しばらく紙の上の論争が続いた。それが2017年になって、複数の研究チームがそれぞれ別の方法で「時間結晶と呼べる状態を実験でつくった」と報告し、話が一気に現実側へ動いた。

つくり方は「規則的に叩く」。実験で作られたものは、原子の集まりに外からマイクロ波やレーザーのパルスを一定の間隔で当てて生み出すタイプのものだったと説明されている。面白いのは、叩いている周期と返ってくる周期が一致しないところで、たとえばパルスを1回打つごとではなく、2回打つごとに元の状態へ戻る。外から与えたリズムとは違う、その物質自身のリズムが顔を出す。そこが「ただ揺すられているだけの物体」との分かれ目なのだという。

これは永久機関ではない。ここがいちばん誤解されるところで、元スレッドのコメント欄でも繰り返し訂正されていた。時間結晶は延々と状態を切り替え続けるが、そこからエネルギーを取り出すことはできない。エネルギーを消費しているわけでも、ためこんでいるわけでもなく、ただ形が入れ替わっているだけだから、という説明のされ方をする。何かを持ち上げたり動かしたりという「仕事」を一切していないので、無から電力が湧く装置にはならない。動き続けるものを見るとつい永久機関を連想してしまうが、そちらの話ではないらしい。

※注:物理でいう「基底状態」とは、その系がとりうる最もエネルギーの低い状態のこと。ふつう物質はそこで落ち着いて静止すると考えられてきた。時間結晶が驚かれたのは、その「いちばん静かなはずの状態」でも動きが止まらない場合がある、という点だった。

何の役に立つのかは、まだこれから。今日から生活が変わるような応用があるわけではない。よく話題に出るのは量子コンピュータとの関係で、状態を長い時間くずさずに保っていられる性質が、計算に使う情報の置き場所として役に立つのではないか、という期待が語られている。ただし現時点ではあくまで基礎研究の段階で、実験装置も超低温や真空といった特殊な環境の中にある。ポケットに入れて持ち歩ける「時間の結晶」は、まだどこにも売っていない。

※注:量子コンピュータの計算単位である「量子ビット」は、わずかな熱や振動でも状態が壊れてしまう扱いにくさが最大の課題とされている。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
正直に言うと最初は眉唾だと思って読み始めたんだ。でも記事に貼ってあったスタートレックのスクリーンショットで完全に納得した。あれが載っているなら、これは真面目に受け止めるべき話だ。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
自分の場合は、魔術師が例の目を使って時間を巻き戻すのを見た時点で確信したよ。少なくともスタートレックのほうは、自分でSFだと名乗っているぶん誠実だと思う。

3. 海外の名無しさん
3段落読み進めたところで、画面全体が4種類の広告のモザイクで埋め尽くされた。見事な手際だと言うほかない。時間結晶より先に、広告の湧き方のほうを解説してほしい。

4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
時間結晶の広告バージョンは、すでに概念実証が済んでいるということだな。同じものが決まった周期で永遠に戻ってきて、こちらが何をしても止まらない。理論より先に実用化されている。

5. 海外の名無しさん(>>3への返信)
2026年にもなって広告ブロッカーを入れていない人がまだいるのか、というのが正直な感想。もっとも、みんなが入れ始めると向こうも本気で潰しにかかってくるので、入れない人がある程度いてくれたほうが我々は快適でいられる、という後ろめたい事情もある。

6. 海外の名無しさん
2012年に理論が出て2017年に作られた、で合ってる? 2017年に理論が出て2012年に作られたの間違いでは。時間結晶の記事なんだから、そのくらいの順番の入れ替わりは起きていてほしい。

7. 海外の名無しさん
はいはい、時間結晶ね。もう何度も見たよ。この掲示板で時間結晶の話題を見るのは、体感でこれが3回目か4回目だ。持ってきて見せびらかすのが好きな人がいるらしい。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
発表の時間になるたびに同じものを持ってくる子がクラスに一人はいたよな。周期的に同じ状態へ戻ってくるという意味では、この掲示板そのものが立派な時間結晶なのかもしれない。

9. 海外の名無しさん
順を追って説明してみる。ふつうの結晶は、原子が同じ並びを空間の中で延々と繰り返している構造のことだ。この繰り返しがあるから、硬い角ができたり、光が透けたりする。仮にこれを「空間の結晶」と呼ぶことにする。そのうえで、指で押すと形が切り替わるパズルのおもちゃを思い浮かべてほしい。押せば立方体、開けば長方形。途中の中途半端な形もあるが、そこには落ち着かず、必ずどちらかの形に収まる。物質にも、そういう「落ち着く形」が複数ある場合がある。時間結晶というのは、その落ち着く形の切り替わりが、決まった周期で永遠に繰り返される状態のことだ。物体はどこへも移動しない。同じ場所にいたまま、姿だけが規則正しく往復する。だから空間ではなく時間の中に、繰り返しの模様ができる。

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
これを「5歳児にも分かるように」の枠で出してくるのがすごい。うちの5歳は靴を左右正しく履くのに毎朝5分かかっているんだが、この説明は理解できるんだろうか。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
公平のために言っておくと、あれは文字通り5歳児に向けて書けという意味ではないし、そもそも簡単に説明できる概念でもない。専門用語を使わずにここまで持っていっただけで十分すぎる仕事だと思う。

12. 海外の名無しさん(>>9への返信)
本当に分かりやすかった、ありがとう。今まで何度か記事を読もうとして、途中の数式で毎回引き返していたんだ。押すと形が切り替わるおもちゃ、というだけで急に手触りが出てきた。

13. 海外の名無しさん
自分も一つ喩えを出してみる。ふつうの結晶は、大勢で手をつないで同じ模様をどこまでも広げていく組みひもみたいなものだ。人がどんどん加わって模様が伸びていく。時間結晶のほうは、同じ一人が部屋の隅で同じ振り付けの踊りを延々と繰り返している状態に近い。誰も加わらない。ただ同じ動きが戻ってくるだけ。

14. 海外の名無しさん
外から何もしなくても動き続けるって、それはつまり永久機関では? そこに発電機をつないだら、無限に電気が取り出せることにならないのか。学校でそういうものは作れないと習った記憶があるんだが。

15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
そこがこの話でいちばん誤解されるところで、答えは「取り出せない」だ。時間結晶はエネルギーを消費してもいないし、ためこんでもいない。ただ形が入れ替わっているだけで、何かを動かすという意味の仕事はまったくしていない。だから電気は湧かない。動き続けているのに何も生まないというのが、この状態の一番おかしなところなんだ。

16. 海外の名無しさん
言いにくいけど、この名前は誇大広告に近いと思っている。結晶と言われて想像するようなキラキラした固体ではないし、時間をどうこうできるわけでもない。中身は「周期的に状態が入れ替わる」という現象で、名前が中身の10倍かっこいい。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
とはいえ「周期的な状態遷移を示す非平衡系」みたいな名前だったら、この話題が掲示板の上のほうに来ることは永遠になかったと思うぞ。名付けた人は、自分が何をしているかよく分かっていた。

18. 海外の名無しさん
で、結局これは何の役に立つんだ? 研究として面白いのは分かるんだが、超低温の装置の中でしか存在できないものが、自分の生活のどこかに顔を出す日は来るのか、というのが素朴な疑問。

19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
今のところは基礎研究の段階だと言われている。よく挙がるのは量子コンピュータとの相性で、状態が長い時間くずれずに持ちこたえる性質が、情報の置き場所として使えるのではという期待がある。ただし「使えるかもしれない」の段階で、来年の家電売り場に並ぶ話ではない。

20. 海外の名無しさん
ここまでの流れで、名前のよく似た対戦シューティングゲームの話が一度も出ていないのは、自分としてはかなり心外だ。当時あれを死ぬほど遊んだ人間が、この掲示板に一人もいないとは思えないんだが。

21. 海外の名無しさん
海外ドラマ『グッド・プレイス』で、あの世の時間の流れを説明する場面を思い出した。時間は直線じゃなくて筆記体でつづった名前みたいな形をしている、という説明で、しかも文字の上に打つ点の部分にあたる時期が別に存在するという。あれと同じ手触りの話が現実に出てくるとは思わなかった。

22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
その点の部分を思い出させないでくれ。あの場面で一度こわれた頭が、いまようやく直ったところだったんだ。物理学者が現実側から追い打ちをかけてくるのは想定していなかった。

23. 海外の名無しさん
名前がSFすぎるせいで真剣に読まれないのが、この話のいちばん不幸なところだと思う。中身は「物質の状態には、まだ人類が把握していない種類がある」という、けっこう静かで大きい話なんだよな。100年前の人に半導体を説明しても同じ顔をされただろうし、順番としては正しいのかもしれない。

まとめ

時間結晶は、原子の配置が同じ場所にとどまったまま2つの状態を規則的に往復し続ける、物質の状態のこと。2012年に理論として提唱され、2017年に実験でつくられたと報告された。コメント欄でいちばん盛り上がったのは物理の中身よりも「名前がSFすぎる」という一点で、映画やドラマの小道具と本気で見分けがつかない、という声が並んだ。一方で、押すと形が切り替わるおもちゃに喩えた長文の解説には感謝が集まり、そこから「永久機関では?」という当然の疑問と、「エネルギーは一切取り出せない」という訂正が続いた。動き続けるのに何も生まない——その静かさこそが、この状態のいちばん奇妙な点らしい。

元ソース: 時間結晶——空間だけでなく時間方向にも規則的な構造を持つ物質の状態。原子の配置が2つの状態を規則的に行き来する。2012年に理論として提唱され、2017年に実現した

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