「ヘルメットを配ったら頭の負傷が増えた」生存者バイアスの定番として語られる第一次大戦の話は、どこまで本当か

「ヘルメットを配ったら頭の負傷が増えた」失敗作かと思いきや…第一次大戦の鉄帽が教えてくれた本当のこと 技術・発明

第一次大戦のさなか、イギリス軍が鉄帽(スチールヘルメット)を兵士に配ったところ、頭部の負傷報告が急に増えた。慌てた軍がデータを調べ直すと、ヘルメットのおかげで死なずに済んだ兵士が「負傷者」として数えられるようになっただけだった——。統計の落とし穴「生存者バイアス」の例として、英語圏でたびたび紹介される話です。ところが、この話を裏づける当時の記録や統計は見つかっていません。当時の資料に残っているのは、むしろ「重い頭の傷が減った」という報告でした。

※注:ブロディ・ヘルメットとは、1915年にイギリス軍が採用したお椀型のスチールヘルメット。上から降ってくる砲弾の破片を防ぐために設計されました。

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🪖 「イギリス軍がブロディ・ヘルメットを配ったら頭部の負傷報告が急増し、調べてみると戦死が負傷に変わっただけだった」という話は、生存者バイアスの定番の例として広く語られている。ただし、2021年に英科学ニュースサイトのIFLサイエンスがこの話を紹介したときも「おそらく作り話」と断っていて、裏づけになる一次資料や統計は見つかっていない。当時の記録が伝えているのは逆で、重い頭の傷は「驚くほど減った」とされている。

背景:ブロディ・ヘルメットとは

第一次大戦の西部戦線では、兵士たちは塹壕に身を潜め、頭上で炸裂する砲弾の破片や、吹き飛ばされた土砂にさらされていました。英国国立陸軍博物館によると、開戦当初のイギリス兵がかぶっていたのは金属ではない帽子で、破片やがれきによる頭の負傷が増えるにつれて、もっと丈夫な防具が必要になりました。

金属の帽子を最初に取り入れたのはフランス軍です。はじめは布の帽子の下にかぶる鋼の椀で、1915年には歩兵に鋼のヘルメットを配り始めました。考案した陸軍の主計総監アドリアンの名から「アドリアン・ヘルメット」と呼ばれるものです。イギリスの陸軍省は、フランス式は作りが複雑ですぐには数をそろえられず、守りも十分ではないと判断しました。

そこで1915年9月、ジョン・ブロディが特許を取った設計が、イギリス陸軍の標準の防具に選ばれます。1枚の鋼板をプレスして「スープ皿」のような形にしたもので、作りやすいうえに丈夫でした。幅5センチほどのつばが、上から降ってくる破片から頭と肩を守ります。鋼材には、砲弾の破片をある程度はじき返せるハドフィールド鋼が使われました。一方で、首と頭の下のほうはほとんど守れないという弱点もありました。

もう少し詳しく

最初は「塹壕の備品」だった。配備は一度には進みませんでした。帝国戦争博物館の所蔵品の解説によると、1916年3月までに西部戦線の部隊に渡ったのは約14万個で、それも兵士ひとりひとりの持ち物ではなく、前線の塹壕に置いて使い回す「塹壕備品」の扱いでした。現場で試すと、塗装が光って目立つ、丸くて浅すぎる、内張りが滑る、つばの縁が鋭くてけがをする、といった不満も出ます。内張りとあごひもを作り直し、縁取りを付け、光を反射しない塗装にした改良型が1916年7月に正式に認められ、そのころには100万個が使われていました。英国国立陸軍博物館によれば、階級に関係なく、イギリスと英連邦のすべての兵士に配られた最初のヘルメットでもあります。

当時の記録は「頭の傷が減った」。では、配ったあとで頭の傷はどうなったのか。帝国戦争博物館の解説は、医学的な証拠によって「重い頭の傷が驚くほど減った」ことが確かめられ、ヘルメットの価値が認められたので、生産を急ぐよう求められたと書いています。アメリカの科学誌サイエンティフィック・アメリカンも1916年1月1日の記事で、200万個を超えるヘルメットが作られて前線の兵士に配られたフランス軍の例を取り上げ、小銃や機関銃の弾は防げないものの、頭と首の負傷の数と重さを減らすのに役立った、と伝えました。当時の報告は、「頭の傷が増えて慌てた」とは逆の向きだったわけです。

「負傷報告が急増した」話の出どころは分からない。一方、「配ったら頭部の負傷報告が急増し、将軍たちが慌てた」という話は、統計の落とし穴を説明する例として、英語圏のネットなどで繰り返し紹介されてきました。ところが、どの軍の、いつの、どんな数字だったのかを示す資料は見当たりません。2021年にIFLサイエンスがこの話を取り上げたときも、「おそらく作り話だが」と前置きしてから紹介しています。もちろん、「ヘルメットで死なずに済んだ人が、負傷者として病院に運ばれてくる」という理屈そのものは筋が通っています。ただ、それが当時の軍で実際に起きた騒ぎだったかどうかは確かめられない、というのが正確なところです。

飛行機の弾痕の話には、もとになった研究がある。コメント欄でも話題になる「帰ってきた戦闘機の弾痕」の話は、事情が違います。第二次大戦中、ハンガリー出身の統計学者エイブラハム・ウォルドは、米コロンビア大学に置かれた統計研究グループの一員として、帰還した機体の損傷から機体の各部の弱さを見積もる方法を報告書にまとめました(1943年)。帰ってこられなかった機体のデータが抜け落ちていることを計算に入れる、という考え方で、「弾痕の無い場所こそ補強すべきだ」という結論は、生存者バイアスの例として今もよく引かれます。ただ、ネットでよく見かける「赤い点だらけの飛行機の図」は、説明のために後から描かれた想像図です。ヘルメットの話も同じ考え方を説明する例として語られてきましたが、こちらは裏づけが見つかっていません。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
これ、バイク用ヘルメットは首の怪我を増やすって主張してる反ヘルメット派とまったく同じ理屈だな。実際には増えてない。ただ、ヘルメットがなければ頭の負傷で即死してたはずの人が、首を痛めただけで生き残ってるってだけの話。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
抜けてるキーワードは「生存できる」だな。ヘルメットなしの人だって首は痛める。ただそういう人は路上に飛び散ってるから「問題」として記録に残らないだけ。

3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
首の骨折なんて二の次だよ。何しろ脳みそが4平方メートルに広がっちゃってるんだから、首どころの話じゃない。

4. 海外の名無しさん
誰か例の飛行機の図を貼ってくれ。赤い点だらけのやつ。あれを見れば一発で理解できるんだ。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
帰還した機体の弾痕じゃなくて、弾痕の”ない”場所を補強しろっていう、あの話か。これは完全に同じ構造だね。

6. 海外の名無しさん(>>4への返信)
飛行機の図?それって何のことだい、と聞かれる前に説明しておくと、撃たれて帰ってこられなかった機体のデータが最初から抜け落ちてるって話だよ。

7. 海外の名無しさん
出ました、おなじみの生存者バイアス。一度この概念を知ると、世の中のいろんな統計が違って見えてくるから不思議だ。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
でもヘルメットがなかったら、こんな厄介な頭の傷を負わずに済んだのに、って言い張る人が必ず出てくるんだよなあ。いや、その代わり死んでますって。

9. 海外の名無しさん
正直、当時の人が本当にその場で「これは生存者バイアスだ」と気づいたのか、それとも後世で何度も語られるうちに事実扱いになった逸話なのか、ずっと気になってる。頭部の致死率が下がったデータって、そんなに分かりやすく出るもんかな。

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
そもそも死んだ人がどこを撃たれたかの統計なんて取れるわけがない。集計してたのは病院に戻ってこられた生存者だけだ。塹壕は大混乱で、誰がどう死んだかなんて丁寧にメモする余裕はなかったんだよ。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
それな。第一次大戦の死者の大半は疫病を防ぐために集団墓地に埋められて、基地まで戻って数えられることすらなかった。だからこそ典型的な生存者バイアスの問題になるわけだ。

※注:コメント9の疑問のとおり、「頭部の負傷報告が急増して軍が慌てた」という話を裏づける当時の統計や記録は見つかっておらず、2021年にこの話を紹介した英科学ニュースサイトのIFLサイエンスも「おそらく作り話」としている。当時の帝国戦争博物館の記録では、医学的な証拠で重い頭の傷が「驚くほど減った」と確かめられた、とされている。コメント11の「死者の大半は集団墓地に埋められた」という話も、確かめられていない。

12. 海外の名無しさん
シートベルトが義務化されたときも、まったく同じことが言われてたのを覚えてる。「閉じ込められて死ぬから締めたくない」ってね。

13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
70年代の大人が「事故ったとき車の外に投げ出されたほうが安全だ」って自信満々に語ってたのを思い出す。投げ出されて助かった少数の話だけ覚えてて、ベルトで助かった大勢のことは忘れてるんだよね。確証バイアスのお手本みたいなもんだ。

14. 海外の名無しさん(>>12への返信)
80年代には「シートベルトのせいで脚や足首の怪我が増えた」なんて言われてた。でも実際は、ベルトがなかった時代はその人たちが頭の致命傷や胸の圧迫で死んでたから、脚の怪我まで話が回らなかっただけ。

15. 海外の名無しさん
エアバッグも同じだな。「怪我が増えた」じゃなくて「死者が減った」が正解。怪我と死、どっちがいいかって話だよ。

16. 海外の名無しさん
要するに、頭の怪我で死んでた人が、頭の怪我で生き残るようになったってことか。一行でまとめると拍子抜けするほどシンプルだ。

17. 海外の名無しさん
軍隊で爆破訓練の学校に行ってたとき、爆風が体に与える影響の研究をやってた。結論は知らないけど、現代の防具のおかげで本来死ぬはずの爆発を生き延びる兵士が増えて、その分だけ脳に爆風のショックを受けてPTSDが増えてるんじゃないか、っていう仮説だった。これも似た構造だよね。

18. 海外の名無しさん
塹壕での死因を並べてみるか。砲撃、破片、突撃、赤痢、塹壕足、生き埋め、浸水した塹壕での溺死、毒ガス各種、感染した銃創……。頭の傷で死ぬのは、その長いリストのほんの一部だったんだろうな。

19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
そのリスト、インフルエンザとネズミと飢餓を足し忘れてるぞ。第一次大戦の過酷さを思うと、ヘルメットで救えた命は本当にありがたいことだ。

20. 海外の名無しさん
データの「増えた数字」を見て慌てる前に、その数字が何を意味してるかを一歩引いて考える。簡単なようで、軍でも専門家でもやらかすんだから人間って面白い。

21. 海外の名無しさん
生存者バイアスの話で毎回思うんだけど、「成功者の習慣」みたいな自己啓発本も同じだよね。失敗して消えていった人の同じ習慣は、誰も本に書かないわけで。

22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
まさにそれ。ヘルメットの統計も自己啓発本も、見えてる側だけで判断すると景色が完全に歪む。歴史の小ネタかと思いきや、現代でも普通に役立つ教訓だった。

23. 海外の名無しさん
当時の将校の気持ちを想像すると面白い。「金をかけて鉄帽を配ったのに負傷が増えただと!?」って真っ青になって、よく調べたら「いや、これ命が助かってるんです」って報告が上がってくる。安堵したろうなあ。

24. 海外の名無しさん
この手の話、知ってると知らないとで世界の見え方が変わる。学校で統計を教えるなら、公式より先にこのヘルメットの話をやればいいのに。

まとめ

「ヘルメットを配ったら頭部の負傷報告が増えたが、実は戦死が負傷に変わっただけだった」——生存者バイアスの例としてよく知られた話ですが、当時の記録で確かめられるのはむしろ逆で、ブロディ・ヘルメットのような鉄帽は重い頭の傷を「驚くほど」減らしたと報告されていました。負傷報告が急増して軍が慌てたという部分は、出どころの分からない話です。それでも理屈は分かりやすく、コメント欄ではバイク用ヘルメットやシートベルト、戦闘機の弾痕、果ては自己啓発本まで「同じ構造だ」と話題が広がる一方で、「本当に当時あった話なのか」と疑う声も出ていました。

参考資料

元ソース: 第一次大戦でヘルメット導入後に頭部負傷”報告”が急増した本当の理由

コメント

  1. Reddit名無しさん より:

    数字だけ見て誤解するという話であるなら日本なら酒をまったく飲まないより少し飲んでいたほうが長生き、はどう?
    全く飲まない人の統計に飲み過ぎなどの病気で飲めなくなった人が含まれてて全く飲まない人の寿命が低くなってたという

  2. Reddit名無しさん より:

    平時なら死亡原因を調べるんだが、果たして生存バイアスだろうか。

  3. Reddit名無しさん より:

    自分はこれを文系の統計学と呼んでいます
    全体数中の一部を故意に母数に設定し都合の良いデータを抽出するやり方
    業界No.1、お客様満足度とかね 嘘じゃないけど嫌なら他所に行くもの
    残っている人でデータ取ればそりゃそうなる、10000人中10人しかいないとしてもだ
    集合のABCのcだけ抽出とかはずるいよね