ブラウザのFirefoxを作っている非営利団体系のMozillaは、収入の大半をGoogleから受け取っている。Firefoxの検索窓に最初から設定されている検索エンジンをGoogleにしておく、という契約の対価で、年に数億ドル規模になる。Chromeという強力なライバルを持つGoogleが、なぜ競合ブラウザにそれほどの金を払い続けるのか。海外の掲示板では「独占禁止法対策の保険だろう」という見方が大勢を占めたが、実際の裁判の流れを追うと、話はもう少しねじれている。
今日の知ってた?
💰 GoogleはFirefoxの既定の検索エンジンになる対価として、Mozillaに年に数億ドルを払っている。Mozillaの2023年の収入は約6億5,300万ドルで、そのうち検索契約による収入(ロイヤルティ)が約4億9,500万ドル。2025年5月の裁判では、MozillaのCFO(最高財務責任者)が、この契約を失えば「Firefoxそのものが消えかねない」と証言した。
背景:「既定の検索エンジン」はなぜお金になるのか
ブラウザを新しく入れると、アドレスバーや検索窓に文字を打ち込んだときに使われる検索エンジンが、最初から1つ決められている。これが「既定の検索エンジン」だ。設定画面から変えることはできるが、ほとんどの人は最初のまま使い続ける。検索エンジンの会社にとっては、ブラウザの利用者がそのまま自社の検索の利用者になり、検索結果に出す広告の売上につながる。だから検索エンジン側は、ブラウザやスマートフォンのメーカーにお金を払って、この「最初の設定」の座を買っている。
Mozillaの場合、受け取るのは固定の契約料というより、Firefoxから来た検索で生まれた広告収入の分け前(レベニューシェア)だとされる。Firefoxの利用者が検索すればするほど、Mozillaの取り分も増える仕組みだ。
英国のLinux系ニュースサイト、OMG! Ubuntuが2024年12月にMozillaの財務報告をもとにまとめた記事によると、Mozillaの収入は2022年の約5億9,300万ドルから、2023年には約6億5,300万ドルに増えた。一方で検索契約による収入は約1,500万ドル減って約4億9,500万ドルになり、それでも年間収入のおよそ4分の3を占めていた。支出は約4億9,600万ドルで、前年より7,000万ドル近く増えている。元の投稿にある「年に4〜5億ドル」という数字は、この規模感と合っている。
比率については、資料によって数字が少し違う。2025年5月、米司法省がGoogleを訴えた独占禁止法の裁判で証言台に立ったMozillaのCFO、エリック・ミュールハイム氏は、Mozillaの収入の約90%がFirefoxから来ており、その約85%がGoogleとの現在の契約によるものだと述べた(米PYMNTS系の競争政策ニュース、CPIの報道)。年によって、また何を分母にするかによって「4分の3」にも「8割超」にもなるが、Mozillaの財布の大部分がGoogleの検索広告から来ていることに変わりはない。
もう少し詳しく
2024年の判決「Googleは独占企業だ」。この話が改めて注目されたのは、米司法省が2020年に起こした独占禁止法の訴訟のためだ。38州の司法長官も加わったこの裁判で、連邦地裁のアミット・メータ判事は2024年8月、「Googleは独占企業であり、その独占を維持するために独占企業として振る舞ってきた」と判断した。米公共ラジオNPRの報道によると、裁判で示された証言では、Googleは2021年だけで既定の検索エンジンになるために合計263億ドルを支払っていた。最も大きな取引相手はAppleで、その年に約180億ドルを受け取ったとニューヨーク・タイムズは報じている。支払い先にはSamsungなどのスマートフォンメーカーと並んで、Firefoxを持つMozillaも含まれていた。Googleは判決を不服として控訴する方針を示した。
「保険」説と、裁判が見たもの。海外のコメント欄では「Googleは独占だと言われないために、ライバルのFirefoxを生かしている」という見方が圧倒的だった。もっともらしく聞こえるが、裁判の中身を見ると話は逆向きでもある。判決が問題にしたのは、まさにこうした「既定の座」を買い取る支払いが、Googleの検索の独占を支えてきたという点だった。Mozillaに払うお金は、Googleにとって身を守る盾である以前に、検索の利用者を確保する営業費であり、それが裁判では独占の手段の一つとして扱われた。「ライバルを養うためにお金を出している」という説は、Google自身が公に認めた理由ではなく、あくまで外からの推測である点は押さえておきたい。
CFOの「とても恐ろしい」証言。判決のあと、どんな是正措置を命じるかを決める審理が開かれた。司法省側は、Googleがほかのブラウザに既定の検索エンジンの対価を払うこと自体を禁じる案を出していた。2025年5月に証言したミュールハイム氏は、この案が通った場合について「とても恐ろしい」と語り、会社全体で大幅な削減が必要になり、それがさらに利用者離れを招く「下降の悪循環」に入って、最後にはFirefoxが消える可能性があると訴えた。ほかの検索エンジンに乗り換えればよいのでは、という問いには、マイクロソフトのBingは広告で稼ぐ力がGoogleほど強くなく、同じ規模の条件を出してくれる相手がいないと答えている。元の投稿にある「幹部がFirefoxは生き残れないかもしれないと証言した」というのは、この証言のことだ。
2025年の判断:支払いは続けてよい。2025年9月初め、メータ判事は是正措置についての判断を示した。OMG! Ubuntuの報道によると、Googleは今後、自社の製品を既定にしたり最初から入れておいたりする「独占的な契約」は結べなくなる。一方で、Mozillaのようなブラウザの会社に既定の検索エンジンの対価を払い続けることは認められ、司法省が求めていたChromeの売却やAndroidの切り離しも命じられなかった。Mozillaは自社ブログで、裁判所が小規模な独立系ブラウザへの支払いを禁じる案を検討したうえで退けたことを歓迎し、そうした支払いを禁じれば技術革新や競争、利用者に害が及ぶという判事の判断を紹介している。つまりGoogleは、Firefoxの既定の座を「独占的に」押さえることはできなくなったが、お金を払うこと自体は続けられる。同じ記事によると、MozillaとGoogleの現在の契約は2026年末に期限を迎える。Firefoxの命綱は、ひとまずつながったまま次の契約交渉に向かうことになった。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
Googleがこの金を払ってるのは、独占禁止法に引っかからないように「ちゃんとライバルがいますよ」と言える相手を残しておくためだよ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
マイクロソフトが昔、経営危機のAppleに出資したのと同じ発想だよな。上の方の会社にはお金が有り余ってるから、競争相手を生かしておくのも立派な経営判断になる。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
あれは純粋な救済ってわけでもないぞ。1997年の出資は、両社の間で続いていた特許やソフトの権利をめぐる争いを手打ちにする取り決めとセットだった。慈善事業じゃない。
4. 海外の名無しさん
Chromeが独占だと言われて会社を分割させられないように、Firefoxを支えてるんじゃないかって話もある。いざとなったら「Firefoxという同等の選択肢がある」って指させるようにさ。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
それでも、世界の大半がChromeか、Chromeと同じ中身のブラウザを使ってる。Firefoxを指さして「独占じゃありません」は、さすがに苦しい言い訳だと思うけどな。
6. 海外の名無しさん
みんな企業の悪だって怒ってるけど、ちょっと笑える話じゃないか?ブラウザ界でいちばん「善玉」に近い存在が、よりによって「悪役」のお金で、稼ぐことを気にせず好きにいいものを作れてるんだから。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
Mozillaからすると妙な立場だよな。いちばん大事な資金源が、自分のところの利用者がまさに避けたがってる会社なんだから。
8. 海外の名無しさん
Firefoxとは一生添い遂げる覚悟だよ。理由はうまく説明できないけど、ほかのブラウザを使わなきゃいけないときは、なんだか落ち着かないんだ。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
最初からPDFに書き込みや編集ができるブラウザって、自分の知る限りFirefoxだけ。それだけでも一番だと思ってる。
10. 海外の名無しさん
2007年からずっとFirefoxを使ってるから、ほとんど使われてないと知るたびに驚く。周りにいないだけで、みんな使ってるもんだと思ってた。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
使ってる人が少ないのは肌で分かるよ。役所のサイトなんかで、Firefoxだとうまく動かないページがちょくちょくある。地味にイラッとする。
12. 海外の名無しさん
「Googleは契約を打ち切ってFirefoxを見殺しにすればいいのに」って言う人がいるけど、Googleはブラウザの会社でも検索の会社でもない。何でも屋なんだよ。彼らにとってFirefoxはライバルというより、広告を出す場所なんだ。
13. 海外の名無しさん
年に4〜5億ドルあれば、Firefoxをまともに安全に開発し続けるには十分すぎるだろ。むしろ開発者にいくら払って、宣伝と経営陣にいくら払ってるのかの方が気になる。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
元Mozillaの中の人だけど、給料はGoogleみたいな大手IT企業より安かったよ。あのお金で人件費から設備まで全部まかなってるし、Googleに契約を切られた日のための蓄えもしてる。私がいたころは自前のデータセンターまであった。
15. 海外の名無しさん(>>13への返信)
経営陣の報酬が高すぎるって批判は毎年のように出てるよな。そこは自分も同意する。
16. 海外の名無しさん
年に5億ドル近くないとFirefoxは存続できないって?ちょっと信じられない額だな。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
給料、事務所、サーバー、各種ライセンス……積み上げればすぐその額になるよ。利用者は少なく見積もっても億単位なんだから、やることは山ほどある。
18. 海外の名無しさん
Chromeが「いい人たち」扱いされてた頃を覚えてる人いる?いつから悪者になったのか、最初からそうだったのか分からないけど、今や独占企業の監視ソフトだよ。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
Googleの非公式な標語は「邪悪になるな」で、上場のときの書類にまで書くほど大事にしてた。それが2018年には社員の行動規範の冒頭から外された。いつ変わったのか、はっきり線は引けないけど、変わったのは確かだと思う。
20. 海外の名無しさん
ChromeでuBlock Origin(定番の広告ブロッカー)が使えなくなったのを機に、20年ぶりにFirefoxへ戻った。ブックマークの取り込み機能で1〜2分で移れるし、違いはほとんど感じない。プライバシーが良くなる分だけ得だよ。
21. 海外の名無しさん
それを聞いて、入れてすぐ検索エンジンをDuckDuckGoに変えた自分を褒めたくなった。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
DuckDuckGoがもうちょっと賢ければなあ。使えなくはないけど、それ以上でもないんだよ。
23. 海外の名無しさん
誰もGoogleに言うなよ。Firefoxの利用者の大半は、放っておいても自分でGoogleを検索エンジンに選ぶってことを。
24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
たぶんそうだろうね。でもGoogleにとってははした金なんだから、念のため押さえておく方が安全なんだよ。
25. 海外の名無しさん
Appleにも同じことをしてるよね。iPhoneのSafariの既定をGoogleにするための支払いは、2021年だけで約180億ドルと報じられてた。Mozillaの分なんて、それに比べたら小さなものだよ。
まとめ
Firefoxの既定の検索エンジンをGoogleにする契約は、Mozillaの収入の大半を支え、CFOが「失えばFirefoxが消えかねない」と証言するほどの命綱だった。コメント欄では「独占と言われないための保険」という見方が多数派だったが、裁判で問われたのは、こうした支払いがGoogleの独占を支えてきたことのほうだった。2025年の判断で支払いは続けられることになったものの、いちばんの資金源が利用者の避けたい会社という、Mozillaのねじれた立場は変わっていない。

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