クレーンで吊り上げられた17.2トンのトラックが、地上1メートルの高さで1時間、静かにぶら下がり続けた。支えていたのはワイヤーでもボルトでもない。トラックと吊り具をつないでいたのは、清涼飲料の缶ほどの太さのアルミの円筒に塗られた接着剤だけだった。
※注:英語の「ton」と「tonne」は別の単位で、tonne(メートルトン)は1,000キログラム、アメリカで使われるton(ショートトン)は約907キログラムを指す。この記事の数値はすべて1トン=1,000キログラムで統一している。
今日の知ってた?
📏 ドイツの接着剤メーカーDELO(デロ)が打ち立てた「世界一強力な接着剤」の世界記録は、17.2トンのトラックをクレーンで地上およそ1メートルまで吊り上げ、そのまま1時間保持するというものだった。その荷重をすべて受け止めていたのは、接着された半径わずか3.5センチのアルミ製シリンダー1個である。清涼飲料の缶ほどの太さしかない接着面だけで、車体の全重量を1時間支え切った。
背景:接着剤の「強さ」は、吊れた重さでは決まらない
この記録の面白さは、「17トン」という数字そのものにはない。というより、接着剤の性能を語るうえで「何トン吊れたか」という数字は、単独ではほとんど意味を持たない。
接着面にかかる負担は、荷重を接着面積で割った応力で表される。同じ17トンでも、接着面が2倍広ければ応力は半分で済む。つまり接着面積を広げさえすれば、半分の強さしかない接着剤でも同じトラックが吊れてしまう。だから「何トン吊った」という宣伝文句は、接着面の大きさとセットでなければ技術的には空欄と変わらない。この記録が本当に語っているのは、17トンという重さのほうではなく、それを受け止めた面が半径3.5センチしかなかったという一点である。
※ 応力:加わる力を、それを受け止める断面積で割った値。同じ重さでも接着面が広ければ応力は小さくなる。
接着の世界には、もうひとつ厄介な事情がある。接着の強さは接着剤という商品だけで決まらない、ということだ。何と何を貼るのか、その表面がどれだけきれいで、どんな下ごしらえがされているか、固めるときの温度や時間はどうか。同じ一本のチューブを使っても、条件が変われば結果は桁で変わる。強度の数値が「接着剤の性能」ではなく「その組み合わせの性能」になってしまうところが、この分野の話をややこしくしている。
力のかかる向きも効く。接着面を横にずらすように働く力と、面に垂直に引き離す力、そして端からめくり上げる力とでは、耐えられる値がまるで違う。接着はめくられるのに弱く、面全体で受けるのには強い。ガムテープが横に引っ張っても切れないのに、端をつまむとするりと剥がれるのと同じ理屈である。
※ せん断/引張/剥離:接着面を横にずらす向きにかかる力がせん断、面に垂直に引き離す向きが引張、端からめくり上げる向きが剥離。同じ接着剤でも、力のかかる向きによって耐えられる値は大きく変わる。
もう少し詳しく
数字を「強さ」に直すには、面積が要る。元スレッドでも真っ先に指摘されたのがこの点だった。紹介映像には「17トン」の文字は大きく出るのに、接着面の大きさが出てこない。ただし記事本文のほうには、半径3.5センチのアルミ製シリンダーで全重量を1時間支えた、と書かれていた。この数字を拾ったコメント欄では、接着面はおよそ38平方センチ、17.2トンを割ると1平方センチあたり450キロ弱、応力にしておよそ45メガパスカルという計算が出ていた。「高性能な樹脂の引張強さと同じくらい」という評価が添えられている。あくまでコメント欄で公開情報から逆算した概算であって、メーカーが公表した数値ではない。
※ メガパスカル(MPa):応力の単位。1メガパスカルは、1平方センチメートルあたりおよそ10キログラムの力を受け止めることに相当する。
引っ張りなのか、ずらす向きなのか。この点も断定できない、という指摘があった。映像では接着部分がぼかされていて、荷重が引張で入っているのかせん断で入っているのか判別できない。見た目には短いスリーブ状の筒に見えるので、端からめくれて剥がれるのを避けるためにせん断で受けているのではないか、というのがコメント主の読みである。同じ「17トン」でも、どの向きで受けたかによって技術的な意味合いは変わってくる。
この種の記録には前例がある。コメント欄には、以前の記録に関わった人たちを知っていると書き込んだ人物がいた。その説明によれば、この形式の記録はまず3Mが10トンのトラックで宣伝企画としてやったのが最初で、DELOはそこに重量を積み増した形になる。各社が応力の数値を出したがらないのは、数字にしてしまうと記録ほどには驚異的でないからではないか、市販されている高強度のエポキシ系接着剤でも、金属面をきちんと下ごしらえすれば同程度の値は出せる、とも書いている。以前の記録の試験片は実験室では22トン以上に耐えていたはずだ、という話も出ていた。いずれも本人の記憶に基づく書き込みであって、裏の取れた数値ではない。
※ エポキシ:二液を混ぜ、化学反応で固めるタイプの樹脂系接着剤。金属や複合材の接着に広く使われ、硬化後の強度が高い。ここではコメント主が例に挙げた一般的な接着剤の種類を指しており、記録に使われた製品の中身を示すものではない。
家庭にある接着剤と同じ話ではない。この手の記録は、貼る相手も、表面の下ごしらえも、固め方も、すべて専用に整えられた条件のうえで出ている。市販の瞬間接着剤を油の残った金属板に塗って同じことが起きるわけではない、という点は、コメント欄でも技術寄りの書き込みから繰り返し念を押されていた。接着剤の説明書に必ず書いてある「接着面をよく清掃してください」の一文は、こういう場面では飾りではなく本体に近い。
そして「1時間」。吊った瞬間に耐えるのと、同じ荷重をかけ続けたまま1時間耐えるのは、接着剤にとって別の試験に近い。時間をかけて荷重を受け続けると、樹脂はじわじわと変形していく。派手さでいえば持ち上げた瞬間がすべてだが、1時間ぶら下げたまま何も起きなかったという部分は、絵作りとは別の意味を持っている。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
「17トン吊れた」だけでは、その接着剤が強いのかどうか実は何も分かっていない。荷重を接着面積で割らないと数字にならないからだ。面積を倍にすれば、半分の強さの接着剤でも同じトラックが吊れてしまう。いちばん肝心な情報が映像の中に埋もれているのがもどかしい。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
それ、記事のほうにはちゃんと書いてあるよ。「全重量は、半径わずか3.5センチの接着されたアルミ製シリンダーの上で1時間支えられた」と。要するに、缶ジュース1本分くらいの太さの面だけで持たせているということ。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
その数字で計算してみた。半径3.5センチなら接着面はおよそ38平方センチ、17.2トンを割ると1平方センチあたり450キロ弱で、応力にしておよそ45メガパスカル。悪くない値だけれど、高性能な樹脂の引張強さとだいたい同じ水準ではある。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
しかも映像では接着部がぼかされていて、引っ張りで持たせているのかせん断で持たせているのかが分からない。見た感じ短いスリーブ状になっているので、端からめくれて剥がれるのを避けるためにせん断で受けているんじゃないかと思う。
5. 海外の名無しさん
この分野で仕事をしているので少し補足を。この形式の記録はもともと3Mが10トンのトラックで宣伝企画としてやったのが最初で、そこに重量を積み増したのが今回の話。どこも応力の数値を公表しないのは、数字にすると意外と普通だからだと思っている。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
市販の高強度エポキシでも、金属面をきちんと脱脂して荒らしておけば近い値は出る、というのが正直なところだよね。個人的にこの記録で感心したのは接着剤より、17トンを1時間ぶら下げたまま誰もその下から逃げ出さなかった段取りのほうだ。
7. 海外の名無しさん
地味だけど「1時間」の部分がいちばん効いていると思う。接着剤は吊った瞬間に耐えるのと、荷重をかけっぱなしのまま耐え続けるのがまったく別の話で、時間をかけるとじわじわ変形して最後に抜ける。1時間ぶら下げたのは見栄えのためではないはず。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
同感。試験機で一気に引っ張って何メガパスカル出たという数字より、同じ荷重を1時間かけ続けたほうが弱点は正直に出てくる。宣伝としてはいちばん退屈な60分なのに、技術的にはそこが本番だったというのが面白い。
9. 海外の名無しさん
念のため書いておくと、これを見て市販の瞬間接着剤で同じことができると思わないほうがいい。金属の脱脂と表面の荒らし方で結果の半分は決まっていて、油の残った鉄板にそのまま塗ったら笑ってしまうくらいあっさり剥がれる。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
接着剤の説明書に必ず書いてある「使用前に接着面をよく清掃してください」、あれは本当に手を抜いてはいけないところだよね。強さの半分は接着剤ではなく、貼る前の下ごしらえのほうが持っている。
11. 海外の名無しさん
細かいけれど、ここでいうトンはtonneのほうで1,000キログラムのこと。アメリカで使うton(ショートトン)は約907キログラムなので、17.2トンは向こうの単位に直すと19トン近くになる。ほぼ同じ綴りで別の重さを指すのは、そろそろやめてほしい。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
しかもロングトンというのもあって、そちらは約1,016キログラム。3種類あるだけでも面倒なのに、相手がどれを指しているのか分からないまま会話が進んでいくのが最悪なんだ。数字が合わなくなって初めて気づく。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
重さと体積に同じ名前を使う単位もあるからね。オンスは重さのオンスと液量オンスが別物だし、船の世界には積める容積のほうを表すトンまである。もはや積荷より単位のほうが重い。
14. 海外の名無しさん
このスレッドで飛び交っている単位の種類が多すぎて、頭が回らなくなってきた。トン、ショートトン、ロングトン、ポンド、キログラム、メガパスカル。接着剤の話を読みに来たはずなのに、いつのまにか度量衡の歴史の授業になっている。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
いっそ馬力で表示してくれれば全部解決する気がする。なぜ接着剤の強さを馬力で測らないのか、子どものころからずっと納得がいっていない。トラックのほうは馬力で語るのに、そのトラックを吊っている接着剤だけ別の単位なのは不公平だ。
16. 海外の名無しさん
17トンを1時間ぶら下げたという話より、その1時間に現場が何をしていたのかが気になってきた。全員で黙ってトラックを見上げ続けていたのか、それとも途中から交代で昼食に行ったのか。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
最初の10分は全員が緊張して見上げていて、30分を過ぎたあたりから一人また一人と座り始めて、最後はストップウォッチを持った担当者だけが残っていたと思う。どんな記録も、真ん中はたぶん死ぬほど退屈なんだよ。
18. 海外の名無しさん
うちの家の前の持ち主は、たぶんこれを壁紙用の糊として使っていたと思う。剥がそうとしたら壁紙ではなく壁の表面のほうが先に剥がれてきて、途中から改装ではなく発掘作業になった。
19. 海外の名無しさん
そんなに強いなら、いっそトラックごと接着剤で作ればいいのでは。車体そのものが接着剤なら、どこが剥がれても自分で自分を貼り直せるので整備の手間も減る。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
ぜひやってみてほしい。ただし完成した瞬間に地面と一体化して二度と動かなくなるはずなので、置き場所だけは慎重に選んだほうがいいと思う。名車として永久に同じ場所に残ることになる。
21. 海外の名無しさん
真面目な質問だけど、航空宇宙向けの接着剤で素人でも買えるいいものがあれば教えてほしい。今の飛行機がリベットだけでなく接着でも組まれていると知ってから、ずっと気になっている。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
その手のものは大抵、二液を正確に量って混ぜ、決められた温度で決められた時間だけ置いておく前提で性能が出るようになっている。冷蔵保存で使用期限があるものも多い。棚に置いて思いついたときに使う道具とは、そもそも運用が違うんだ。
23. 海外の名無しさん
指がくっついた人の話を誰もしないのは不誠実だと思う。世界記録の裏には、たぶん自分の親指と人差し指を1時間吊り下げていた人が何人かいるはずだ。そちらの記録も公式に認めてあげてほしい。
24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
ハンドクリームと間違えて掴んでしまったときの絶望は、17トンのトラックより重い。慌てて洗っても手遅れで、その日はもう握手だけで生きていくことになる。あれは体感で1時間どころではない。
まとめ
ドイツの接着剤メーカーDELOが打ち立てた「世界一強力な接着剤」の記録は、17.2トンのトラックをクレーンで地上約1メートルまで吊り上げ、1時間そのまま保持するというものだった。全重量を受け止めていたのは、半径わずか3.5センチのアルミ製シリンダー1個の接着面である。コメント欄がまず食いついたのは重さではなく面積の話で、「何トン吊れたか」だけでは接着剤の強さは分からない、荷重を接着面積で割らなければ数字にならない、という指摘から議論が始まった。公開されている面積から逆算すると応力はおよそ45メガパスカル、高性能な樹脂と同水準という計算も出ている。この分野で働いていると名乗る人からは、同じ形式の記録を先にやったのは3Mで、市販の高強度エポキシと丁寧な下ごしらえでも近い値は出せる、という冷静な補足もあった。そこから話は英語の「ton」と「tonne」の違いへ、さらにロングトンや液量オンスへと脱線していき、最後は「指がくっついた人の記録も公式に認めてほしい」で落ち着いた。強さを決めているのは接着剤の名前ではなく、貼る面の小ささと、その面の下ごしらえのほうだった。
元ソース: 最も強力な接着剤の世界記録はDELOの接着剤が持っていて、17トンのトラックを1時間宙に吊り下げたものだった

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