周期表の85番、アスタチン。名前を覚えている人は化学が得意な部類だろう。だが「地球の地殻全体に存在する量を全部かき集めても1グラムに満たない」と聞くと、ちょっと話が変わってくる。鉱山どころか、地球規模で探しても角砂糖一個ぶんすら見つからない元素。なぜそんなことが起きるのか、そしてなぜ人類はそれを「知っている」のか――というのが今日の豆知識。
※注:地殻(ちかく)は地球の表層を覆う岩石の層。地表から深さ30〜70kmほどまでを指す。アスタチンは原子番号85、ハロゲン族の最重元素にあたる。
今日の知ってた?
⚛️ 地球の地殻全体に存在するアスタチンは合計で1グラム未満。最も安定な同位体(アスタチン210)でも半減期は約8.1時間で、生成と崩壊が釣り合った「定常量」がこの値になる。アスタチンを実験で使いたい研究者は、地面を掘るのではなく、ビスマスを粒子加速器でぶん殴ってその場で作るのが現代の流儀である。
背景:アスタチンとは何者か
アスタチンが「発見」されたのは1940年、カリフォルニア大学バークレー校のサイクロトロン実験でビスマスにアルファ線を当てた結果、ごく短時間だけ存在する未知の元素が確認された。名前のAstatineはギリシャ語の「ástatos(不安定な)」が語源。つまり名前そのものが「すぐに崩れる」という意味で、命名した側もよく分かっている。
すべての同位体が放射性で、最も寿命の長いアスタチン210でさえ半減期は8.1時間ほど。半減期というのは「集めた原子の半分が崩壊して別の元素に変わるまでにかかる時間」のことで、8時間というのは原子核の世界ではほぼ「瞬間」に近い。仮に1グラムのアスタチンを目の前に置いたとしても、翌朝には半分、その翌朝にはさらに半分――1ヶ月後には地球上のどこを探しても1個か2個の原子しか残らない計算になる。
そして崩壊の仕方が派手だ。放出されるのは主にアルファ線で、エネルギーが高い。1グラム集めた瞬間に出る熱と放射線で物質ごと吹き飛ぶ、と専門家はあっさり言う。「集める」という発想そのものが成立しないのである。
もう少し詳しく
では地殻にある「1グラム未満」とは何なのか。これは地中のウランやトリウムが自然崩壊する過程の途中で、ごく微量のアスタチンが副産物として生まれ続けているという話。生まれては数時間で消え、また別の場所でひと粒生まれる――そのサイクルが地球全体で釣り合った瞬間のスナップショットがちょうど1グラム弱、ということになる。「埋蔵量」ではなく「常時の在庫量」と言ったほうが正確だろう。
必要なときはどうするか。研究者がアスタチンを使いたいと思ったら、サイクロトロン(粒子加速器の一種)でビスマス209標的にアルファ粒子を撃ち込み、その場で合成する。世界中で年間に作られる量はナノグラム(10億分の1グラム)からマイクログラム(100万分の1グラム)の単位で、それでもすぐ崩壊してしまうので、作ったらすぐ使う。文字どおり「水ものの元素」だ。
そんなものに何の使い道が?主役はがん治療である。アスタチン211(半減期7.2時間)は寿命が短いぶんアルファ線を強く放出するため、抗体にくっつけて腫瘍に直接送り込めば、周りの正常な細胞を傷つけずに「点」で破壊できる。標的アルファ線治療(TAT)と呼ばれ、現在は世界各国で臨床試験が進行中。1グラム作るのに膨大な手間がかかる元素を、ナノグラム単位で薬として運用する――そんな小さじ一杯の宇宙が、実用一歩手前まで来ている。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
アスタチンってどこにも大量に存在しないんだよな。半減期が数時間しかないし。だから必要なときは粒子加速器でビスマスをぶん殴って、その場で作る。掘り出す元素じゃなくて、注文を受けてから合成する元素なんだよ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
洞窟の壁に黄土で絵を描いてた我々が、ビスマスを粒子加速器でぶん殴ってアスタチンを作る種になったって考えると、人類のジャンプの仕方が凄まじい。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
そのあいだに最低でも3ステップくらいあると思うんだが。間に「焚き火」とか「車輪」とか色々挟んでくれ。
4. 海外の名無しさん(>>1への返信)
「在庫切れか…仕入れ部に発注メール送らないと」って言いたくなる言い回しだな。研究室で「アスタチン1mgください」って言ったら隣の研究員に殺されそう。
5. 海外の名無しさん
SF作家のアイザック・アシモフがエッセイで書いてたんだよ。「南北アメリカ大陸を深さ16キロまで原子一個ずつ調べたら、アスタチン215は何個見つかるか?」って奥さんに聞いて、奥さんが「さあ?」と答えたら「ほぼゼロ、たった1兆個だ」って返した話。1兆個って一見多そうだけど原子の単位だとほぼゼロという、化学者ならではの口説き文句。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
アシモフ、こういう何気ない会話の中で奥さんに化学知識をプレゼントするタイプだったらしいね。長年連れ添った妻、相当鍛えられていたんだと思う。
7. 海外の名無しさん(>>5への返信)
真のアルファエミッター(口説き手)だわ。アスタチン215もアシモフも、放出するエネルギーが強い。
8. 海外の名無しさん
ランドール・マンローの『ホワット・イフ?』にも出てくる元素なんだよね。あの本いわく「もしアスタチンの物質安全データシートがあったとしたら、その内容は『ダメ』という文字が血で何度も走り書きされてるだけ」。1立方メートルぶん集めたら一瞬で過熱ガスになって建物を吹き飛ばす、らしい。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
つまり億万長者が不老不死のために飲んでもダメってこと? じゃあもう打つ手なしか、残念だな。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
むしろ全員に処方すべきでは。粒子加速器をまず自分の屋敷に建ててから、好きなだけ集めて飲んでくれ。臨界量まで頑張ってほしい。
11. 海外の名無しさん
うちのキッチンの棚にいっぱいあるよ。白い錠剤、紅茶に入れて甘くするやつ。みんなも普通に常備してるよね?
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
指示の意味が分からない…自分は今、皮膚を通して骨が透けて見えるほど緑色に光っている。これは正常な反応ですか?
13. 海外の名無しさん(>>11への返信)
それアスパルテーム(人工甘味料)。アスタチンは医者が「2錠飲んで」と言う鎮痛剤のほう。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
それアスピリン。アスタチンはゼリーを固めてる接着成分のほう。だんだん誰も分からなくなってきた。
15. 海外の名無しさん
そして8時間18分後には、地球上のアスタチンは0.5グラムになる。半減期というのは恐ろしい概念で、コーヒーを淹れてる間にも世界の在庫が減り続けてる。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
たぶん「1グラム未満」っていうのは、自然崩壊で常時生成される量と、半減期による消失量が釣り合った定常状態の数値なんだろうな。蛇口を全開にしながらバケツの底に穴があいてるイメージ。
17. 海外の名無しさん
あえて言わせてもらえば、アスタチンよりも宇宙全体で見れば木のほうが圧倒的にレアな素材だと思う。地球の表層にあれだけあるが、銀河を見渡したら木が生えてる星なんて指で数えるほどしかない。視野の問題。
18. 海外の名無しさん
がん治療に使われ始めてるんだよね。抗体にくっつけて腫瘍に運ばせると、放射線がピンポイントで腫瘍だけを叩く。半減期が短いから周辺組織を長期間痛めつけずに済む。問題は「いったいいくらするんだ」だが。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
まだ臨床試験段階のはず。ただアスタチンは自然界から掘ってくる必要がないからね。テクネチウムも医療用に人工合成してるし、希少性そのものは実用化のネックにならない。むしろ「作れる施設が世界に数えるほどしかない」のがネック。
20. 海外の名無しさん
ちなみに地球上で「常時1原子前後しか存在しない」レベルの同位体って何だろう、と考え始めると夜眠れなくなる。アスタチン215はそれに近い。今この瞬間、世界のどこかの岩盤の中にちょうど数原子だけある、と思うと急にロマンが出てくる。
21. 海外の名無しさん
1グラム1袋、半分こしてくれる人いない? 個人輸入したい。一晩で半量に減ったらどうやってクレーム入れるんだろうな。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
先に経理を通してくれ。先月ジムがイットリウムを発注してから、希少元素はぜんぶ部長決裁になったんだ。
23. 海外の名無しさん
そもそも水素を大量に集めて長い時間放っておくと、勝手に粒子がぶつかり合って核反応が始まり、最終的にはそのうちのいくつかが宇宙のなかでの自分の立ち位置について考えだす。星も人間も、ある意味で天然のアスタチン製造装置の一部分。
24. 海外の名無しさん
高校化学の周期表ポスター、アスタチンの欄に「?」マークがついてた記憶あるんだけど、あれ正解だったんだな。物性データの一部は計算でしか分かっていないらしい。融点も沸点も、十分な量を集めて測ったことがある人類は一人もいない。
25. 海外の名無しさん
名前すら知らない元素が、地球の地殻ぜんぶを探しても1グラムない――この事実が一番面白い。普段「鉄1000万トン」みたいなニュースを聞いてる感覚で見ると、桁違いすぎて感覚が壊れる。あるとないの境目に立ってる元素、と言ってもいい。
まとめ
地殻全体で1グラム未満――しかも在庫量であって埋蔵量ではない。生まれた瞬間から崩壊カウントダウンが始まる元素を、人類はわざわざ粒子加速器で合成し、がん治療の弾頭として使おうとしている。海外の反応では「アシモフの口説き文句」「半減期で世界の在庫が減り続けるという感覚」「もはや掘るのではなく注文してから作る元素」といった切り口で盛り上がっており、ロマンと実用がきれいに同居している話題だった。周期表の隅っこにこっそり座っている文字ひとつぶんの存在が、これほど多くのドラマを抱えているのは面白い。

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