「ジャガイモだけでは足りない。でもバターミルクを足すと、何年でも生きられる」実際にそれで暮らしていた人たちの話

「ジャガイモだけでは足りない。でもバターミルクを足すと、何年でも生きられる」実際にそれで暮らしていた人たちの話 文化・社会

「ジャガイモだけでは、人間に必要な栄養はそろわない。けれど、ジャガイモとバターミルクの2つだけなら、何年でも生きていける」——海外の掲示板に投稿されたこの一文が2万5千を超える支持を集め、コメント欄には1200件以上の書き込みが並んだ。栄養素の話を始める人、自分の先祖の話をする人、そして「実際にその暮らしをしていた時期がある」と打ち明ける人。話題の中心にいるのは、台所の隅にいつも転がっている、あの地味な野菜である。

※注:バターミルクとは、生クリームをかき混ぜてバターを作ったあとに残る液体のこと。名前に「バター」と付くが脂肪はほとんど残っておらず、ヨーグルトとも牛乳とも別の飲みものである。日本のスーパーではほぼ手に入らない。また、この記事は特定の食事法をすすめるものではない。「生き延びられる」ことと「健康によい」ことは同じ意味ではないので、以下は歴史と栄養にまつわる読み物として読んでほしい。

今日の知ってた?

🥔 ジャガイモだけでは人間に必要な栄養をすべて満たすことはできない。ところが、ジャガイモとバターミルクという組み合わせになると、何年ものあいだ生きていけるとされている。絵空事ではなく、19世紀半ばまでのアイルランドでは、貧しい農民の多くが実際にほぼこの2品だけで暮らしていた。ジャガイモに足りないものを、バターミルクがちょうど埋める形になっているのである。

背景:なぜアイルランドの主食がジャガイモだったのか

ジャガイモの原産地は南米アンデスの高地で、ヨーロッパに渡ったのは16世紀のことである。つまり、ヨーロッパの歴史全体から見れば、ジャガイモは意外なほど新しい食べ物だった。それが数世紀のうちにアイルランドの食卓を支配することになる。

理由は単純で、同じ広さの土地から取れる食料の量が、麦類とは比べものにならなかったからである。冷涼で雨の多い気候にも合い、痩せた土地でも育ち、収穫したものはそのまま食べられる。小作として狭い土地しか使えなかった人々にとって、「この面積で家族を食わせられるか」という一点だけが問題であり、ジャガイモはその問いにいちばんうまく答える作物だった。

もう一方のバターミルクは、選んで飲まれていたわけではない。牛を飼っている家では、乳からバターを作る。バターは日持ちがして値がつくので、市場に出したり地代の支払いに充てたりする。そして、バターを取り出したあとに残る液体が手元に残る。つまり、売れる部分を手放したあとの残りものが、そのまま家族の飲みものになっていた。

興味深いのは、この食事をしていた人々が、当時の観察者の目に痩せ細って映っていなかったことである。18世紀の経済学者アダム・スミスは『国富論』のなかで、ロンドンで最も屈強な労働者たちの多くがジャガイモを常食とするアイルランドの最下層の出身であることに触れている。粗末な食事のはずなのに、体はよく育っている——この不思議さが、当時から書き留められていた。

もう少し詳しく

ジャガイモに足りないのは、主にビタミンB12と脂質である。ジャガイモは「でんぷんの塊」と思われがちだが、実際にはビタミンC、カリウム、食物繊維を含み、たんぱく質も少量ながら質のよいものが入っている。とくにビタミンCを含む主食というのは珍しく、これが不足すると壊血病になるため、主食がジャガイモだったこと自体に大きな意味があった。一方で、植物性の食品には基本的にビタミンB12が含まれておらず、ジャガイモも例外ではない。脂質もほとんどない。バターミルクは動物由来なのでB12を含み、わずかながら脂肪と、カルシウム、動物性のたんぱく質を持ち込む。足りない側と埋める側が、たまたまきれいに噛み合っていた。

ただし「生き延びられる」は「健康的である」という意味ではない。ここは強調しておきたい。この話が語っているのは「人間の体は、この2つだけでも壊れずに動き続けられる」という下限の話であって、これが望ましい食事だという話ではまったくない。そもそも必要なエネルギーをジャガイモだけでまかなおうとすると、単純に計算しても一日に数キロという単位を食べ続けることになる。当時の人々がそれをこなせたのは、肉体労働で消費量が大きく、皮ごと調理し、それ以外の選択肢がなかったからである。現代の生活で真似をする理由はどこにもないし、真似すべきでもない。極端な単品食は体調を崩す原因になりうるので、興味を持った人も、実行に移す前に医療の専門家に相談してほしい。

なぜ牛乳ではなく、バターミルクだったのか。コメント欄でいちばん多かった疑問がこれだった。答えの半分は先に書いた通り経済の事情だが、もう半分は保存の問題である。冷蔵庫のない時代、生乳はすぐに傷む。それに対してバターミルクは発酵していて酸性なので、生乳よりも扱いやすかった。発酵の過程で乳糖の一部が分解されるため、乳糖に弱い人でも比較的飲みやすいという面もある。栄養学的な最適解を探した結果ではなく、「手元に残るもので、いちばん長く持つもの」が選ばれた結果だった。

アイルランドの飢饉を「不作」の一語で片づけないほうがいい。1840年代、ジャガイモに疫病が広がり、収穫が壊滅的な打撃を受けた。ただし、この出来事を「作物が枯れて食べ物がなくなった」とだけ説明すると、話の半分が抜け落ちる。一種類の作物、しかも遺伝的にほとんど同じ品種に食料を全面的に頼る構造がなぜ生まれたのか。飢えが広がっていたあいだ、島から穀物や家畜が運び出され続けたのはなぜか。土地の所有と小作の仕組み、当時の統治のあり方——ここまで含めて初めて説明がつく出来事であり、死者の数や責任の所在をめぐる評価は現在も議論が続いている。ここでは断定を避けるが、「ジャガイモ飢饉」という呼び名だけでは足りない、という点は押さえておきたい。

芽と、緑色になった部分は取り除く。ジャガイモは日本の家庭でもおなじみの野菜なので、実用的な話も添えておく。ジャガイモの芽と、光に当たって緑色に変わった皮の部分には、天然の有害成分が多く含まれることが知られている。加熱してもほとんど分解されないため、調理の前に取り除くのが基本とされ、日本では学校の家庭科や小学校の栽培学習でも注意点として扱われている。保存するときは、光の当たらない涼しい場所に置くのがよい。もし食べたあとに強い苦みやしびれ、体調の異変を感じた場合は、自己判断せず医療機関に相談してほしい。

現代にも、ジャガイモだけで過ごした人たちがいる。コメント欄では、体重を落とすためにジャガイモだけの食事を一定期間試した人物の名前がいくつも挙がっていた。手品師のペン・ジレットが心臓発作のあとに味付けなしのベイクドポテトだけで過ごした話、60日間や1年間という単位で挑戦した人の話などである。共通して語られていたのは、体重の増減そのものよりも「味覚が作り直された」という感想だった。何日か続けると空腹を感じにくくなり、飽きすぎて義務のように食べるようになる、とも。ただし、これらはいずれも本人の体験談であり、期間を区切ったうえで行われたものである。栄養が偏った食事を長く続ければ何が起きるかは、それこそアイルランドの歴史が別の形で示している通りで、安全性が保証された方法ではない。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
食料品がこれ以上高くなったら、バターミルク入りのマッシュポテトとサプリで暮らすことになるな、と冗談で言ってたんだけど。最近その冗談があんまり冗談に聞こえなくなってきていて困っている。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
あるいは火星に取り残されたときにもね。『オデッセイ』の彼はバターミルクなしで乗り切ったわけだから、それに比べれば我々にはまだ余裕があるということになる。

3. 海外の名無しさん
うちのアイルランド系の先祖はこれを知っていた。というより、知っていたというよりは、それ以外の選択肢がなかっただけだと思う。知恵として受け継がれた話と、そうするしかなかった話は、後世から見ると見分けがつかなくなる。

4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
ペルー原産の作物が海を渡って、あの島の主食になって、しかも国の名前とセットで語られるまでになったの、あらためて考えるとすごい話だよね。ヨーロッパに入ってから数百年しか経っていないのに。

5. 海外の名無しさん
つまりマッシュポテトはサバイバル食だったということか。急に頼もしく見えてきたし、今夜の献立がいま決まった気がする。

6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
残念だけど、皮も一緒に食べないと同じことにはならないと思う。栄養の相当な部分が皮のすぐ下にあるので、きれいに剥いてなめらかに仕上げたマッシュポテトだと、話がだいぶ変わってくる。

7. 海外の名無しさん
母親に騙されていた。子どもの頃からジャガイモが大好きだったんだけど、そのたびに「あんなのは中身のないカロリーだ、でんぷんの塊だ」と言われ続けていた。大人になって調べたら、バナナより多いカリウムに、たんぱく質、食物繊維、ビタミンC、鉄まで入っている。もっと効率のいい食べ物があるのは確かだけど、あんなに悪者にされるような食材では全然なかった。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
上の世代の栄養に関する知識は、かなり偏っていることがある。うちの母は卵とアボカドを脂質が多いからという理由で恐れていた。今では自分の食事の柱になっているし、健康診断の数値も何ひとつ問題ない。

9. 海外の名無しさん
そもそもなぜ牛乳じゃなくてバターミルクなんだろう。名前に反して脂肪はほとんど入っていないはずだから、脂質を補いたいならむしろ脂肪分の高い牛乳のほうがよさそうに思えるんだけど。

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
貧しい小作農の立場になって考えるとわかる。バターは売れるから売るんだよ。そして手元に残るのが、バターを取ったあとの液体のほう。バターミルクを選んで飲んでいたんじゃなくて、それしか残らなかったというだけの話。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
それで腑に落ちた。誰かが栄養学的な最適解を探し当てた結果じゃなくて、単に売れるものを売った残りだったのか。歴史の食事の話って、だいたいこのパターンな気がする。

12. 海外の名無しさん
大学の植物学の講師が同じことを言っていたのを覚えている。必要なアミノ酸がひと通りそろっているから、もし一種類の食べ物だけで生きろと言われたらジャガイモが最良の選択になる、と。ただし「最良」であって「十分」ではない、と念を押していたのも印象に残っている。

13. 海外の名無しさん
十年ほど前、オレゴンで半年くらいほぼジャガイモだけで生活していた。10ポンドで1ドルだったから、正直それしか買えなかった。今でもジャガイモは好きなんだけど、食べるたびにあの頃の台所を思い出す味ではある。

14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
今のジャガイモへの気持ちってどうなんですか? 自分は何年も主食として毎日食べているけれど、いまだに一度も飽きたことがなくて、たまに自分がおかしいのかと思う。

15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
横からだけど、飽きるかどうかは調理法をいくつ持っているかで決まると思う。ゆでる、蒸す、焼く、潰す、揚げる、スープにする。同じ食材が六通りの別料理になる野菜って、実はそんなに多くない。

16. 海外の名無しさん
一週間の食費が、5ポンドのジャガイモ1袋と2ドルのカッテージチーズだった時期がある。チップの多かった週だけ安いマーガリンも買えた。栄養がどうこうという話ではなくて、それで生きるしかなかったというだけの記憶。

17. 海外の名無しさん
毎日ジャガイモとか絶対に無理。三日目で心が折れる自信がある。生き延びられるかどうか以前に、生きていたいと思えるかどうかの問題だと思うんだけど、そこはみんな気にならないの?

18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
それが逆らしくて、何日か続けると空腹をあまり感じなくなって、飽きすぎて義務みたいに口に運ぶ状態になるらしい。60日間やった人がそう書いていた。つらさの種類が想像していたのと全然違う。

19. 海外の名無しさん
手品師のペン・ジレットが、減量のためにほぼジャガイモだけの食事をやっていた。油なし、塩なし、味付けなしのベイクドポテトを好きなだけ、というやり方。あまりに味気ないので舌がリセットされて、そのあとはフライドポテトが塩辛すぎて食べられなくなったと言っていた。

20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
期間としては2週間だけだけどね。本人にとって大きかったのは落ちた体重そのものより、そのあとの食習慣が丸ごと変わってしまったことのほうだったらしい。

21. 海外の名無しさん
豆ではだめなんだろうか。乾燥豆のほうがバターミルクより安いよね。ジャガイモと豆の組み合わせで無期限に生きられない理由って何なのか、ずっと気になっている。脂質が足りないとか?

22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
たぶんビタミンB12だと思う。植物性の食べ物には基本的に含まれていないので、そこだけはどうしても動物由来のものを持ってくるか、現代ならサプリで埋めるしかない。豆はいい線いってるんだけど、あと一歩足りない。

23. 海外の名無しさん
祖母が腸の病気を抱えていて、何年もほとんどこの食事だった。それで100歳を超えるまで生きた。だからといって真似していい食事だとは全く思わないけれど、人間の体って想像しているよりずっと雑な燃料でも動くらしい、とは思う。

24. 海外の名無しさん
アイルランドの飢饉の話をするときに「不作だった」で終わらせる説明をよく見かけるけど、あれは作物が枯れているあいだも食料が船で運び出され続けていた話とセットにしないと、まったく別の出来事の説明になってしまう。ジャガイモに罪はない。

まとめ

ジャガイモに足りないものはビタミンB12と脂質、それを埋めるのがバターの搾りかすであるバターミルク——19世紀のアイルランドの食卓は、誰かが設計したわけでもないのに、必要最低限がちょうど噛み合う形になっていた。コメント欄には栄養素を解説する人と、家計の事情でそれに近い食生活を送った人が同じくらい並び、後者の書き込みには「なぜそうなったか」の生々しさがあった。ただし全員が口をそろえていたのは、これが「生き延びられる」話であって「おすすめの食事」ではない、という一点である。台所のジャガイモが少し違って見えてくる話ではあるけれど、真似をする理由はどこにもない。

元ソース: ジャガイモだけでは完全な栄養にはならないが、ジャガイモとバターミルクだけの食事なら何年も生き延びられるらしい

コメント