「玉ねぎで相場を壊しすぎて、議会に名指しの法律まで作らせた男がいる」アメリカで先物取引を禁じられた唯一の農産物…

「玉ねぎで相場を壊しすぎて、議会に名指しの法律まで作らせた男がいる」アメリカで先物取引を禁じられた唯一の農産物… 歴史

金も原油も、大豆もコーヒーも小麦も、アメリカの市場では「まだ収穫していない先の分」を売り買いできる。ところが、そのリストにどうしても入れてもらえない野菜がひとつだけある。玉ねぎだ。しかも慣習ではなく、連邦法で名指しで禁止されている。きっかけは、70年前にひとりの農家が起こした事件だった。

※注:先物取引とは、「半年後にこの値段でこれだけ買う(売る)」という約束を、いま売り買いする仕組みのこと。農家は収穫前に値段を確定できるので、豊作や不作で値崩れしても生活が守られる。要するに価格の保険にあたる。

今日の知ってた?

🧅 玉ねぎは、アメリカで先物取引を連邦法によって名指しで禁じられた唯一の農産物。1955年から56年にかけて業者が相場を買い占めて暴落させたことを受け、1958年に「玉ねぎ先物取引法(Onion Futures Act)」が成立した。この法律は、70年近く経ったいまも有効である。

背景:野菜に「保険」をかける仕組み

先物市場は、もともと投機のためではなく農家を守るために生まれた仕組みだ。収穫は天気次第で、豊作なら値崩れ、不作なら売る物がない。そこで「秋にこの値段で買う」という約束を先に取引しておけば、農家も卸も、実際の値動きに振り回されずに済む。

日本でも大豆やとうもろこしの先物は取引されているし、江戸時代の大坂・堂島には米の先物市場があった。世界で最初の公設先物市場のひとつとも言われるもので、「先の値段を今のうちに決めておく」という発想自体はかなり古い。ちなみに日本に玉ねぎの先物はないが、これは禁止されているからではなく、そもそも誰も上場していないだけである。

この仕組みには弱点がある。ある品目の供給を一手に握ってしまえば、値段を思いのままに動かせてしまうことだ。※ こうした買い占めは「コーナリング(買い占め)」と呼ばれる。市場に出回っている物と、それを買う約束の両方を押さえて、売り手を追い詰めるやり方。そして玉ねぎは、この弱点を突くのにあつらえたような作物だった。市場の規模が比較的小さく、しかも長期保存が利くので、買い集めて倉庫に眠らせておけるからだ。

もう少し詳しく

「玉ねぎ王」ヴィンス・コスガ。事件の主役は、ニューヨーク州で玉ねぎを育てていた農家のヴィンセント(ヴィンス)・コスガという人物だ。作るだけでなくシカゴの取引所にも出入りしていて、相場の読みで財を成し、やがて「玉ねぎ王」と呼ばれるようになる。1955年、コスガは仲買人のサム・シーゲルと組んで、とんでもない仕掛けに出た。

まず握り、それからひっくり返す。二人はシカゴに集まる玉ねぎのほぼ全量を買い集めた。供給を押さえたところで、コスガは他の玉ねぎ業者たちに持ちかける——値段を上げることに協力しろ、さもなければ手持ちを一気に市場へ放り込んで相場を潰す、と。業者たちは従うしかなかった。ところが値段が上がりきると、コスガは自分の在庫を、結局そのまま市場に流した。

袋のほうが高い玉ねぎ。相場は崩壊した。1955年8月に50ポンド(約23キロ)入り1袋2.75ドルだった玉ねぎは、翌56年3月には10セントになった。※ 当時のドル。1ドル=約150円で単純換算すると約410円が約15円まで落ちた計算になる。中身より詰めていた袋のほうが高い、という状態である。保管する費用すら惜しくなった玉ねぎは、川に捨てられた。値上がりを見込んで作付けを増やしていた農家は、丸ごとやられた。

そして法律ができた。議会は動いた。1958年、玉ねぎの先物取引そのものを禁じる法律が成立し、アイゼンハワー大統領が署名する。取引所側は「一つの品目を名指しで禁じるのは筋が悪い」と反発したが、押し切られた。悪用のたびに個別の品目を潰していく方式は、その後さらに続く。2010年の金融規制改革では、玉ねぎと並んで「映画の興行収入」も先物取引の禁止対象に加えられた。条文の上では、玉ねぎと映画の興行成績が仲良く並んでいる。

その後の議論。買い占めそのものへの手当ては、別の形で進んだ。1936年の商品取引所法にルールはあったものの取り締まる機関がなく、1974年に商品先物取引委員会(CFTC)が設立されて、ようやく実効性を持つようになる。一方で、後年の研究には「先物で値段を固定できないぶん、かえって玉ねぎの価格は不安定になった」と指摘するものもある。農家を守るための禁止が、農家を守れていないかもしれないというわけだ。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
「玉ねぎで相場を壊しすぎて、議会に名指しの法律まで作らせた」って字面が強すぎる。普通は規制を厳しくして終わりなのに、品目ごと出禁にされてるのが凄い。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
この話、玉ねぎだけに剥いても剥いても層が出てくる。最初は「変な法律だな」で入ったのに、読み進めるほど胃が痛くなってくる。

3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
冗談抜きで、アメリカの経済系ラジオ番組がこの「玉ねぎ王」事件だけで一本の特集を組んでる。通勤中に聴くのにちょうどいい長さでおすすめ。

4. 海外の名無しさん
記事から引用しておく。「1955年、のちに玉ねぎ王と呼ばれることになる男ヴィンス・コスガが、玉ねぎ相場を買い占め、そのまま地面に叩きつけた」。一文あたりの情報量が多すぎる。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
その書き方だとまだ紳士的に見える。彼は供給のほとんどを押さえたうえで、他の業者に「言うことを聞かないなら手持ちを全部市場に放り込むぞ」と脅して値上げに付き合わせ、値段が上がりきったところで、結局自分だけ全部売り抜けた。

6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
最後に川へ玉ねぎが流された話が地味に効いてくる。捨てるのにも金がかかるから川に流すしかなかったわけで、値上がりを見込んで畑を増やした農家の側からすると笑い話にならない。

7. 海外の名無しさん
なんで玉ねぎだけなんだ、と思ったけど「この品目で実際にやられたから」以上の理由がないの、逆に味わい深い。同じことは他の作物でもできるはずなのに。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
症状に絆創膏を貼っただけで、根っこの原因はそのまま放置されてる。玉ねぎだけに根の話。

9. 海外の名無しさん(>>7への返信)
一応その後ちゃんと手当てはされてるよ。1936年の商品取引所法にルール自体はあったけど取り締まる組織がなくて、そこで1974年に商品先物取引委員会(CFTC)ができた。大口の買い付けが早く表に出る仕組みも整ったから、同じ手口は当時よりずっとやりにくい。

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
それなら理屈のうえでは、もう玉ねぎ先物を解禁してもいいことになるよね。誰も言い出さないだけで。

11. 海外の名無しさん
「禁止されてる農産物は玉ねぎだけ」は正確だけど、ちょっと誤解も招く言い方だと思う。そもそも先物市場がある農産物のほうが圧倒的に少なくて、レタスもブロッコリーもニンニクもアボカドもイチゴもバナナも先物なんて無い。わざわざ名指しで禁じられたのが玉ねぎだけ、という話。

12. 海外の名無しさん
こういう法律の作られ方がいちばん腹立つ。悪いことをした具体的な事例をひとつずつ潰すもぐら叩きばかりで、「そもそもこういう行為はだめだ」というルールのほうを作らない。だから何十年かごとに、技術的には合法な新しい手口で同じことが起きる。

13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
気持ちは分かるけど、全面的なルールを作ろうとすると業界が総出で潰しにくるからね。玉ねぎ一品目なら誰も本気で抵抗しないから通った、という身も蓋もない事情もあったと思う。

14. 海外の名無しさん
後年、先物のある似た作物と玉ねぎの値動きを比べた研究があって、値段を固定する手段が無いぶん玉ねぎのほうが不安定になった、と結論づけてる。守るための規制が農家を振り回してるかもしれないの、皮肉が効きすぎてる。

15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
保険を禁止したら事故が減るかというと、そんなことはないよね、という話に近い。リスクを引き受けてくれる相手がいなくなるだけで。

16. 海外の名無しさん
てっきり冷凍オレンジジュースだと思ってた。ホームレスの男と落ちぶれたトレーダーが相場をひっくり返す、あの映画の刷り込みが強すぎる。
※ 1983年のアメリカ映画『大逆転』(原題 Trading Places)のこと。冷凍濃縮オレンジジュース先物の相場をめぐる終盤の場面が有名。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
ゴリラの着ぐるみも忘れないであげてほしい。本筋にはまったく必要ないのに、なぜかいちばん記憶に残ってる。

18. 海外の名無しさん(>>16への返信)
あの映画がきっかけで現実の規制がひとつ増えてるのも面白い。関係者のあいだでは「エディ・マーフィ・ルール」と呼ばれてるらしい。

19. 海外の名無しさん
ゲームのカブ相場ってこの事件が元ネタ…ではないか。でも週に何度も値段が変わって、持ちすぎると腐る仕組みは完全に先物の入門編だと思う。

20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
元ネタは英語の駄洒落だよ。stalk(茎)とstock(株)をかけてる。日本語だと「カブ」が株と蕪の同音で、たまたま両方の言語で成立してるのが出来すぎてる。

21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
訳した人が偶然に救われた例として、末永く語り継がれてほしい話だ。

22. 海外の名無しさん
ゲームの話でいうと、オンラインRPGで一年くらい特定の素材の供給を握ってたことがある。少しずつしか出回らないうえ使うと消える物だったから、まとまった量を持ってるのは実質自分だけだった。規模が違うだけで、やってることは玉ねぎ王とまったく同じだと今なら分かる。

23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
経済学部に進んだ人のうち何割がオンラインゲームの相場が原因なのか、誰か真面目に調べてほしい。自分の周りは体感で三割いる。

24. 海外の名無しさん
イギリスのファンタジー小説に、豚肉先物を豚肉になるまで保管しておく冷蔵倉庫が出てくる場面があって、初めて読んだときに笑った。何かを取引しているなら、その何かを置く場所が要るはずだ、という理屈は完璧に正しい。
※ テリー・プラチェットの『ディスクワールド』シリーズ(邦訳『ディスクワールド騒動記』ほか)のこと。

25. 海外の名無しさん
日本にも大豆やとうもろこしの先物はあるし、江戸時代の大坂には米の先物市場があった。ただ玉ねぎの先物は聞いたことがない。禁止される以前に、誰も上場しようと思わなかったんだろうな。ここまで読んだら目が痛くなってきた。

まとめ

ひとりの農家が仕掛けた買い占めが、70年近く生き残る法律を残した。コメント欄では「たった一品目を名指しで禁じるのは筋が悪い」という声と、「禁止したせいで玉ねぎの値段はむしろ不安定になった」という指摘が並び、思いのほか真面目な議論になっていた。その脇で、ゲームの相場を握って遊んでいた人たちが次々に名乗り出てくるのも、この手のスレッドらしい光景である。

元ソース: アメリカで先物取引を禁止されている唯一の農産物は玉ねぎ

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