第二次世界大戦のさなか、アメリカの諜報機関が大真面目に開発した”秘密兵器”がある。爆弾でも毒ガスでもない。中身は、トイレを煮詰めたような強烈な悪臭を放つ液体だ。これを占領下のフランスでドイツ軍の将校にこっそり吹きかけ、赤っ恥をかかせようというのである。名前は「Who, Me?(え、私?)」。ところがこの作戦、思わぬところでつまずいたとされる。
※注:OSS(戦略情報局)は、第二次世界大戦中の1942年にアメリカが設けた諜報機関。スパイ活動や破壊工作、占領地のレジスタンス(抵抗運動)の支援などを担い、戦後に発足したCIA(中央情報局)の前身とされる。
今日の知ってた?
🦨 第二次世界大戦中、アメリカの諜報機関OSS(戦略情報局)は、糞便のような強烈な臭いを放つ硫黄系の悪臭剤「Who, Me?(フー・ミー?)」を極秘に開発した。人の命は奪わない”非致死性”の化学兵器で、ポケットに入る小さな噴霧器に詰めて配り、占領地のドイツ軍将校にさりげなく吹きかけることになっていた。狙いは将校本人に恥をかかせ、ひいては占領軍全体の士気をくじくことだったとされる。
背景:「Who, Me?」とは
「Who, Me?」を手がけたのは、OSSの研究開発部門だ。この部署は、スパイやレジスタンスが敵地で使うための一風変わった道具を数多く考案していたことで知られる。開発の中心にいたのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)出身の化学者アーネスト・クロッカーである。軍事研究の知られざる裏側を取材してきたアメリカの作家メアリー・ローチは、悪臭の液体を武器にする発想はもともとイギリスが先に手をつけていたもので、OSSがそれに目をつけたと紹介している。2018年の米MITテクノロジーレビュー誌の記事によれば、イギリスの情報機関は排泄物のにおいの成分をすでに詳しく調べ上げ、「悪臭(stench)」の頭文字を取った「S液」という調合液を作っていた。中身には、糞便のにおいのもとになるスカトールという物質が入っていたという。
クロッカーの経歴は、この仕事にうってつけだった。同じ記事によると、彼は第一次世界大戦中、ワシントンで毒ガスの改良にあたった1,700人の化学者のひとりで、実験のにおいが体に染みついて、同僚と部屋を出て近くの公園で寝ることもあったという。1920年代には、においを「芳香」「酸っぱさ」「焦げ」「雄ヤギを思わせる獣臭」の4つの要素に分け、それぞれの強さを0〜8の数字で表す分類法を同僚と考え出した。煎りたてのコーヒーなら「7683」になる、といった具合だ。この研究がOSSの研究開発部長スタンレー・ラヴェルの目に留まり、クロッカーは1943年に悪臭兵器づくりに招かれた。
使い手として想定されていたのは、ドイツに占領されたフランスで抵抗運動を続けていたレジスタンスの人々だ。人の多い場所で将校にそっと近づき、服にひと吹きして立ち去る。しばらくすると、将校の体からはひどい臭いが漂いはじめ、周りの人は顔をしかめて離れていく。武器で倒すのではなく、将校のプライドと威厳を削ることで占領軍の空気を悪くしようという、いわば心理戦の道具だった。機密を解かれたOSSの文書には、標的を「嘲笑と軽蔑の的」にし、「ひどく不潔であることの紛れもない証拠」を残すこと、できれば吐き気まで催させることが求められていたと記されている。
臭いのもとは、揮発しやすい硫黄の化合物だった。硫黄系の臭いと聞いてもピンとこなければ、腐った卵や温泉地に漂う硫黄のにおいを、もっと濃く、もっと不快にしたものを思い浮かべるとよいかもしれない。そこに糞便のような臭いが重なっていたというから、なかなかの代物である。
もう少し詳しく
名前の由来は「おならの犯人探し」。ローチによれば、「Who, Me?」という名前は、おならの犯人をめぐる英語圏の言い回しにかけたものだという。英語には「最初に『臭い』と言ったやつが犯人(He who smelt it, dealt it)」という決まり文句があり、日本語の「言い出しっぺ」とほぼ同じ発想だ(「言い出しっぺ」も、臭いと言い出した人こそおならの主、という意味から来ているとされる)。疑われて「え、私?」ととぼける、あのやりとりを思わせる名前というわけだ。
中身は、ありとあらゆる悪臭の詰め合わせ。MITテクノロジーレビューによると、クロッカーは何か月もかけて組み合わせを試し、1944年3月に、スカトールに硫黄を含むアミルメルカプタン、さらに酪酸・吉草酸・カプロン酸を混ぜる処方に落ち着いた。嘔吐物、腐ったバター、尿、腐った卵、足のにおい、糞便のにおいが一度に押し寄せる調合だったという。
求められた性能は、意外なほど本格的。ローチが紹介したOSSの記録によれば、この悪臭剤には「気温21℃ほどで2時間は臭いが持続すること」「ドライクリーニングの溶剤や雨水にも耐えること」「使う側に跳ね返らないこと」といった条件が課されていた。吹きかけてすぐには臭わず、少し遅れて臭いが立ちのぼるようにして、実行役が怪しまれずに立ち去れるようにする工夫もあったとされる。
ところが、その「跳ね返らない」が難題だった。硫黄の化合物は揮発しやすく、狙った相手にだけ臭いをとどめておくのは難しかった。2001年の英科学誌ニューサイエンティストの記事は、混合物の揮発性が高すぎて、標的に吹きかけると、吹きかけた本人も含めて辺り一帯が臭くなってしまったと書いている。ローチも、長さ5センチほどの容器から中身が漏れたりしたたったりして、実行役の手に臭いが付いてしまう問題に悩まされたと語っている。MITテクノロジーレビューによれば、試作品の取り扱い試験をしたメリーランド州の研究所の技術者たちは、そのたびに洗っても落ちない悪臭にまみれた。1944年のほとんどを容器の設計に費やし、キャップにゴム管で縁を付けて密閉する方法にたどり着いた。その年の秋に試験に合格し、最終的に600本が用意されたが、戦場に届く前に戦争が終わった。ローチも、計画は2年ほど続いたものの、実戦で使われることは一度もなかったと述べている。
「2週間で失敗」は、出典のない一文だった。元スレの投稿が出たころの英語版ウィキペディアには、「わずか2週間で失敗と結論づけられた」という一文があり、海外の反応の冒頭のコメントもそれを引いている。ところがこの一文には出典が示されておらず、2026年10月の編集で、「実戦で使われる前に戦争が終わった」という資料どおりの記述に差し替えられた。
狙う相手はドイツ軍だけではなかった。ローチは2016年、米公共ラジオNPRの番組『フレッシュ・エア』で、この悪臭剤をフランスだけでなく中国の抵抗組織にも渡し、ドイツ軍や日本軍の将校に使わせる構想だったと語っている。MITテクノロジーレビューによれば、1944年の終わりには日本軍向けの別の処方まで作られた。日本人は下水のにおいに慣れているのではないか、という当時の欧米の人種的な偏見から、スカトールを抜き、代わりにα-イオノンを加えて死臭のような臭いを足したものだったという。
何十年たっても、臭いは健在。ローチは著書『兵士を救え! マル珍軍事研究』(村井理子訳)の取材で、モネル化学感覚研究所から届いた古いサンプルを自宅のデッキで開けてみたそうだ。すると、しばらく誰もデッキに出られなくなり、本人もえずいてしまったと語っている。
「最悪の臭い」の研究はその後も続いた。悪臭を人を傷つけない兵器として使うというアイデアは、戦後も消えなかった。2001年のニューサイエンティストの記事によれば、アメリカのモネル化学感覚研究所では、心理学者パム・ダルトンらが、文化の違いを超えて誰もが嫌がる臭いを探していた。フィラデルフィア周辺に住む白人・アフリカ系・アジア系・ヒスパニックの4集団と、南アフリカ東ケープ州のグレアムズタウンの人々に、さまざまな悪臭をかいでもらう実験だ。どの集団にも同じように嫌われたのが、消臭洗剤の性能を試すために作られた「米国政府標準トイレ悪臭」という調合臭と、改良版の「Who, Me?」だった。
悪臭の専門家は、のちに「おいしさ」の大家になった。クロッカー本人は、戦後もにおいと味の化学、そして人がそれをどう感じるかの研究を続け、「同世代でもっとも著名な風味の科学者」と呼ばれるまでになった。MITテクノロジーレビューは、彼の仕事が、人の感覚で味や香りを測る官能評価や食品技術を学問として確立する助けになったと紹介している。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
ウィキペディアの続きがいちばん笑える。「ただしこの実験はごく短命に終わった。揮発性の高い硫黄化合物は制御が難しく、たいていは吹きかけた側も標的と同じくらい臭くなった。わずか2週間で失敗と結論づけられた」だって。
※注:このコメントが引いている「わずか2週間で失敗と結論づけられた」は、当時の英語版ウィキペディアにあった一文。出典が示されておらず、2026年10月に削除された。2018年の米MITテクノロジーレビュー誌の記事によれば、容器の問題は1944年秋に解決して600本が用意されたが、実戦で使われる前に戦争が終わった。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
想像してみてほしい。将校にひと吹きして、何食わぬ顔で立ち去る。作戦は成功だ。で、ひと息ついてタバコをくわえた瞬間、自分の指先からトイレそのものの臭いがするんだよ。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
子どもの頃、手のひらにおならを閉じ込めて友達の鼻先でパッと開くいたずらをやったけど、あれと同じだな。自分の手も臭くなるのはわかってる。それでも相手の顔を見られれば満足なんだ。
4. 海外の名無しさん(>>1への返信)
開発チームの家族も大変だったと思う。「なんで毎日トイレみたいな臭いで帰ってくるの?」と聞かれても、「国家機密だから言えない」としか答えられないんだから。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
「機密だから」で押し通されたところで、毎晩トイレの臭いをまとった夫が帰ってくる事実は変わらないからな。ドイツ軍の士気より先に、家庭の平和が崩れそう。
6. 海外の名無しさん
それにしても、発想がやけに具体的だよな。「将校を倒す」でも「基地を爆破する」でもなく、「将校をトイレの臭いまみれにして恥をかかせる」なんだから。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
たぶん、人がトイレがらみで恥をかく話にやたら執着している科学者がいたんだよ。そいつが上層部をうまく言いくるめて、莫大な研究費を自分の趣味に回したに違いない。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
要するに「軍用グレードのおならスプレー」か。研究費は一流、開発は二流、容器を納めたのは最安値で入札した業者。だから中身が漏れて自分の手まで臭くなるんだよ。
9. 海外の名無しさん(>>6への返信)
思いつきの一発ネタじゃなくて、けっこう本気の計画だったらしいよ。メアリー・ローチの本によると、フランスだけじゃなく中国の抵抗組織にも渡して、日本軍の将校に使わせる構想まであったとか。
10. 海外の名無しさん
実行部隊の名前は「言い出しっぺ特殊部隊」で決まりだな。英語でも「最初に臭いと言ったやつが犯人」って言うし、臭いの兵器を扱う部隊にこれ以上ふさわしい名前はない。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
それなら作戦名は「否定したやつこそ犯人作戦」だな。英語には「言い出しっぺ」への返し文句もあって、「え、私?」ととぼけたやつこそ怪しい、ってことになってる。兵器の名前の「Who, Me?」はまさにそれだよ。
12. 海外の名無しさん
地味にきついのは、相手が将校だってところだと思う。部下は上官に面と向かって「臭いです」とは言えないから、みんな黙って少しずつ距離を取るだけ。本人だけが理由に気づかないまま一日が過ぎていく。
13. 海外の名無しさん
第二次世界大戦から冷戦の初めごろって、突拍子もないアイデアを思いつく人にとっては最高の時代だったんだろうな。「聞いてくれ、ワニに爆弾をくくりつけて泳がせるんだ」「採用!」みたいなノリを想像してしまう。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
「隣の部署は暗号の解読やレーダーの改良をやってるそうだ。で、うちは?」「ドイツ軍の将校がうんこ臭くなったらどうなるか、です」。そのときの会議室の空気を想像するだけで笑える。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
でも冷静に考えると、誰も死なずに相手の心だけ折れるなら、戦争の道具としてはかなり平和的な部類じゃないか。うまくいっていたら、案外すごい発明として語り継がれていたかもしれない。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
平和的なのは将校の側だけで、吹きかける市民のほうは命がけだったと思う。恥をかかされた将校が、近くにいた人を片っ端から疑いはじめたら洒落にならない。しかも自分の手まで臭かったら、一発でバレるし。
17. 海外の名無しさん
なんとなく、CIAが薬品を使ってキューバのカストロのひげを抜け落ちさせようとした話を思い出した。ひげがなくなれば国民から尊敬されなくなる、という理屈だったらしい。冗談みたいだけど、本当に検討されたと言われてるんだよ。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
CIAのカストロ暗殺計画は、とにかく迷作ぞろいだと言われてるからな。毒入りのミルクシェイクとか、結核菌をしこんだダイビングスーツを贈るとか、どれも発想が斜め上なんだよ。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
もうほとんど『ロードランナー』のワイリー・コヨーテの世界だよ。爆発する葉巻を渡す案まであったと言われているし、アニメのギャグみたいな作戦を大の大人が本気で会議にかけていたんだと思うと味わい深い。
20. 海外の名無しさん
ローチが紹介していたOSSの条件がじわじわくる。「21℃で2時間は臭いが続くこと」「ドライクリーニングでも雨でも落ちないこと」。この仕様書を真顔で書いて、真顔で承認した人たちがいるんだよな。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
臭いが少し遅れて出るようにして、吹きかけた人が逃げる時間を稼ぐ工夫まであったらしいね。そこまで考え抜いたのに、肝心の容器から中身が漏れて自分の手が臭くなるんじゃ、全部台なしだ。
22. 海外の名無しさん
今では似たようなものがジョークグッズの店で普通に売られてるのが面白い。当時の極秘兵器が、いまやパーティーのいたずら用品になってるんだから。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
アメリカには、その名もずばり「液体のお尻」みたいな名前のいたずら用悪臭スプレーがあるんだけど、第二次世界大戦の頃にもうご先祖様がいたとは知らなかった。しかも国の予算で作られてたなんてね。
24. 海外の名無しさん
ローチが古いサンプルを開けたら、しばらく誰もデッキに出られなかったって話がいちばんすごいと思う。何十年も経っているのに、まだ現役で人をえずかせるんだから、臭いの強さだけは本物だったんだろう。
25. 海外の名無しさん
結局、実戦ではろくに使われなかったかもしれないのに、80年後にこうして世界中で笑いのネタにされてる。恥をかかせるはずが、いちばん恥をかいたのは開発チームのほうだったのかもしれないな。
まとめ
第二次世界大戦中、アメリカの諜報機関OSSは、糞便のような悪臭を放つ「Who, Me?」を開発し、ドイツ軍の将校に吹きかけて恥をかかせる作戦を考えた。しかし揮発しやすい硫黄の化合物は扱いが難しく、吹きかけた側まで臭くなる弱点を抱えたまま、実戦で成果を上げることはなかったとされる。コメント欄では、「言い出しっぺ」にも通じる命名のセンスや、機密を理由に家族へ臭いの説明ができない開発者を想像する冗談で盛り上がった。誰も傷つけずに心を折る発想を「意外と平和的」と見る声がある一方、吹きかける役の市民こそ危なかったのでは、と指摘する人もいた。


コメント
朝鮮土人は田舎の香水が大好きだぞw
これ、元はフェイクニュースだぞ
外国の虚構新聞みたいのが発信元