ワインの瓶に貼られた金色のメダルのシール。あれが付いているだけで、なんとなくおいしそうに見える。2023年、ベルギーのテレビ番組が、スーパーで買った2.50ユーロ(約450円)の赤ワインのラベルを貼り替えて国際コンクールに送ってみたところ、返ってきたのは金賞だった。番組は何をしたのか、主催者側はどう説明しているのか。報道とコンクールの規約を突き合わせてみる。
※注:円の金額は1ユーロ=およそ180円で概算した目安。出来事のあった2023年当時のレートとは異なる。
今日の知ってた?
🍷 2023年、ベルギーのフランス語公共放送RTBFの消費者番組「オン・ネ・パ・デ・ピジョン」(On n’est pas des pigeons)が、スーパーで買った2.50ユーロ(約450円)の赤ワインを、国際ワインコンクールに出品した。
🏷️ ラベルは「シャトー・コロンビエ」(Château Colombier)という架空の銘柄のものに貼り替えた。出品料はおよそ50ユーロ(約9,000円)。
🥇 結果は金賞。コンクールのサイトには「口当たりはなめらかで、生き生きとして豊か……実に興味深い」という審査コメントが載った。
💶 金賞を示すシールは、1,000枚で60ユーロ(約1万800円)で買えた。
📝 出品先は、フランスのワインガイド「ジルベール&ガイヤール」(Gilbert & Gaillard)の名を冠した国際コンクール。主催者側は、同じ年に別の番組が行ったよく似た検証に対して、悪意を前提にした決めつけだと反論している。
背景:ワインの「金賞シール」とは
フランスやベルギーのスーパーのワイン売り場には、金・銀・銅のメダルをかたどったシールを貼った瓶がたくさん並んでいる。ワインのコンクール(品評会)で入賞したしるしだ。RTBFによると、このシールが付くとワインの売り上げは最大で15%伸びるという。フランスの公共放送フランス2の番組は、フランスでは消費者の9割近くがワイン選びでメダルを頼りにしていると伝えている。
今回の舞台になったのは「ジルベール&ガイヤール・インターナショナル・チャレンジ」。ジルベール&ガイヤールは、フィリップ・ガイヤール(Philippe Gaillard)とフランソワ・ジルベール(François Gilbert)が1989年に始めたフランスのワインガイドで、いまは雑誌やウェブも手がけるグループになっている。フランス2によれば、そのメダルは2022年に7,200種類を超えるワインの瓶に付いていた。同社のサイトは、受賞したワインを世界の輸入・流通業者1万社に直接紹介するとうたっている。
コンクールの規約によると、主催しているのは香港に所在地を置く会社(Wine Tasting and Trading Ltd)で、2018年1月1日に始まった。審査は1〜3月、4〜6月というように3か月ごとの年4回。サンプルは形が分からないよう同じ包装でくるんだうえで、専門記者・醸造技術者・ソムリエなどから選ばれた審査員が、種類や価格帯ごとに試飲すると定められている。賞はダブル金賞・金賞・銀賞・銅賞の4種類。入賞すると、主催者からシールを買って瓶に貼ることができる。
もう少し詳しく
選んだのは「いちばん出来が悪い」1本。この検証が報じられたのは2023年5月。RTBFは番組の15周年にあたる2026年3月にも、経緯を振り返る記事を出している。この記事と各国の報道を合わせると、流れはこうだ。番組の記者サミー・ホスニ(Samy Hosni)は、1988年にベルギー最優秀ソムリエに選ばれたエリック・ボッシュマン(Eric Boschman)の助けを借りて、スーパーで売っている3ユーロ(約540円)未満のワインを何本か飲み比べ、いちばん出来が悪いと判断した1本を選んだ。ベルギーの大手スーパー、デレーズ(Delhaize)で2.50ユーロで売られていた赤ワインだった。
鳩の絵のラベルと、架空の産地。ラベルは「シャトー・コロンビエ」という名前のものに貼り替えた。コロンビエはフランス語で「鳩小屋」のこと。番組名にある「ピジョン」(鳩。フランス語では「だまされやすいカモ」の意味でも使う)にかけた名前で、ラベルには鳩の絵まで入れてあった。産地は、ベルギー南部ワロン地域の「コート・ド・サンブル・エ・ムーズ」ということにした。似た名前のワイナリーは実在するが、この銘柄は番組が作った架空のものだ。
かかった費用は、合わせて130ユーロほど。RTBFによると、出品料はおよそ50ユーロ。出品前に求められるチェックはひとつだけで、アルコール度数や糖分などを研究所で測った分析表を添えることだった。こちらは20ユーロ(約3,600円)ほど。番組は、この分析表についても「ここでもごまかす手はある。何を送ってもいいのだから」と指摘している。海外の報道には「別の上等なワインの分析値を出した」と伝えるものもあるが、RTBFの記事で確認できるのはこの指摘までだ。金賞の知らせを受けたあと、番組は瓶に貼るシールも買っている。金賞のシールは1,000枚で60ユーロ。すべて合わせても130ユーロ(約2万3,400円)ほどで、2.50ユーロのワインに金賞のシールを貼れるところまで行けたことになる。
返ってきたのは金賞と、ほめ言葉。RTBFが紹介した審査コメントはこうだ。「口当たりはなめらかで、生き生きとして豊か。若々しく澄んだ香りが、見事な複雑さを予感させる。実に興味深い」。スイスのメディア「ル・マタン」(Le Matin)が引用した全文には、「繊細なスパイスと、かすかな煤(すす)の風味へ移っていく」というくだりもある。同じ記事によると、点数は100点満点の88点。コンクールのサイトには同じ銘柄の「2022年」も載っていて、こちらも金賞(87点)、評は「グリルした肉に合う」だったという。
フランスの規則の外にあるコンクール。フランスには当局が認めたワインコンクールが120以上あり、「賞を与えられるのは、出品されたサンプルの3分の1まで」という決まりがある。一方、このコンクールの規約には、フランス国外の会社が主催する国際コンクールなので、フランスのコンクールを対象にした2013年の省令は適用されず、当局が公表するフランスのコンクール一覧にも載っていない、と明記されている。フランスのワイン業界メディア「ヴィティスフェール」(Vitisphere)は、番組がこの点に触れなかったことを指摘している。
主催者側の言い分。ヴィティスフェールは、ベルギーでの放送のあと主催者に見解を求めたが、返答は無かったと書いている。同じ2023年の12月には、フランス2の調査報道番組が、ボルドーの生産者と組んでよく似た検証を放送した。スーパーで買った3.50ユーロの白と1.99ユーロの赤をボルドーの瓶に詰め替えて出したところ、どちらも金賞で、点数は87点と88点だったという内容だ。主催者側は撮影への協力を断り、放送後、その内容を伝えたヴィティスフェールに反論文を送った。番組は悪意を前提にした決めつけだと批判したうえで、詰め替えは公的な立会人のいない場で行われており、送られた中身が本当に安いワインだったのか疑わしいこと、番組内でソムリエが行った試飲と、自分たちが十数本を目隠しで比べる審査とは同列に並べられないことを主張している。
コンクール全体が当てにならない、という話ではない。RTBFも記事のなかで「もちろん、きちんと仕事をしているコンクールはある」と断り、「コンクール・モンディアル・ド・ブリュッセル」など5つの名前を挙げている(ヴィティスフェールは、ボッシュマン自身がその2023年大会の審査員だったことも書き添えている)。この一件から言えるのは、出品料を受け取ってメダルのシールを売る仕組みのコンクールのなかに、スーパーで最も安い部類のワインが金賞を取れたものがあった、というところまでだ。専門家の舌や、コンクールというもの全体を否定する証拠にはならない。番組は最後をこう締めている。「ワインについては、自分の舌だけを信じること。メダルの価値はどれも同じではない。光るものすべてが金ではない」。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
この投稿のリンク先(ワインのブログ記事)に、こんなくだりがある。筆者がジルベール&ガイヤールのサイトで出品者向けの案内を見たら、「受賞で売上と知名度が上がる」「輸入業者1万社のデータベースを使える」といった宣伝文句が並んでいたそうだ。筆者はこの会社を「ワイン業界に的を絞った、マーケティングとネットワークづくりの会社」と書いてる。出品にお金がかかるのも、まあ当然だよね、とも。要するに、評論家というより、そっちが本業の会社ってことなんだろう。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
自分がいた業界にも、似たような賞があったよ。その雑誌に広告を出してお金を払うと、不思議なことに賞がもらえる。で、宣伝に「◯◯賞2026 受賞!」と書けるようになる。雑誌を売って稼ぐために、ずっと昔からあるやり方だ。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
フランスだと、この手のコンクールとメダルはお決まりの笑い話になってるよ。中くらいの規模のスーパーでワイン売り場をのぞくと、2割くらいの瓶に、聞いたこともないコンクールの金・銀・銅メダルが付いてる。それも高級品じゃなくて、10〜20ユーロ(約1,800〜3,600円)くらいのワインの話ね。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
そう、ここの人たちにはその前提が伝わってない気がする。フランスのスーパーだと、瓶の首に「◯◯審査会 金賞」と書いた小さな厚紙が掛かってるんだけど、棚の半分くらいの瓶にそれが付いてるんだ。だからこっちの人間は、あれをそこまで真に受けてない。ほかの国にあるかは知らないけど、「顧客サービス部門1位」みたいな賞も同じで、部門が細かく分かれていて競争相手が少ないうえに、名乗るにはけっこうなお金がかかる。
5. 海外の名無しさん(>>3への返信)
車も同じだよ。平凡な車でも、たいてい何かしらの「カー・オブ・ザ・イヤー」を取ってる。どう見てもぱっとしない車が「デザイン賞」を受賞してるのを見たこともある。
6. 海外の名無しさん
正直に言うと、金色のシールが貼ってあるとつい手が伸びる。同じ値段の瓶が2本並んでたら、ずっとシールがあるほうを選んできた。でも出品料と分析とシール1,000枚で合わせて130ユーロくらいなら、作る側が貼りたくなるのも分かる気がするな。
7. 海外の名無しさん
高いお酒が安いお酒よりおいしいなんて、自分はまったく信じてない。今回の話でますますそう思った。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
自分も同じ考えだった。ところがあるとき、1本5,000ドル(約75万円)くらいするスコッチを1杯飲ませてもらってね。ひと口で分かったよ。……これにその値段の価値はない。おかげで、すっかり確信に変わった。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
10ドルのボトルと100ドルのボトルの違いは、たいてい分かる。でも100ドルと1万ドルの違いとなると、あったとしてもほとんど分からないんだよな。
10. 海外の名無しさん(>>8への返信)
自分は逆だった。おばに、たしか1,000ドルくらいするスコッチを1杯もらったことがある。値段を知ったのはひと口飲んだあとだったけど、それまで飲んだウイスキーのなかで明らかに一番おいしかった。じゃあその値段を出す価値があるかというと、それはまた別の話で……いまだに自分では1本も買ってない。
11. 海外の名無しさん(>>7への返信)
違いはちゃんとあると思うよ。ただ、ある値段を超えると、余分に払ったぶんほどには味が良くならなくなる。自分の感覚だと、30ドルあたりがその境目だな。
12. 海外の名無しさん
2.50ユーロ? それ、ヨーロッパの外に住んでる自分たちがワインに払いすぎてるって話に見えてくるな。ワイン通でも何でもないけど、昔買った激安ワインにはいい思い出がない。気の抜けたまずいブドウの炭酸飲料に、アルコールを足したみたいな味だった。高いワインも買わないけど、2.50ユーロはさすがにすごい。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
フランスのワイン産地に住んでる。地元の市場に容器を持っていくと、ガソリンスタンドの給油機みたいなノズルからワインを入れてくれて、1リットル1ユーロ(約180円)。これがけっこうちゃんとした味なんだ。ここまで安くなると、ガラス瓶そのものが値段のかなりの部分を占めるようになる。だから自分は5リットルのペットボトルを持っていく。払うのは中身のぶんだけだ。
14. 海外の名無しさん(>>12への返信)
ベルギーだと、4ユーロ前後でそれなりのフランスワインが買えるよ。感動するほどじゃないけど、普段飲みには十分。アメリカは何でももっと高くて、うちの近所だと、まともに飲めるワインは8〜9ドルからだ。
15. 海外の名無しさん
この実験に足りないのは比較だと思う。同じ安ワインを、元のラベルのままと、貼り替えたものと、両方出してみてほしかった。それで評価や点数に差が出れば「先入観で変わる」と言えるけど、今のままだと「たまたま出来のいい安ワインだった」可能性も残る。ワインの世界では、安くておいしい1本は別に珍しくないらしいし。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
ただ、番組はソムリエと一緒に3ユーロ未満のワインを飲み比べて、いちばん出来が悪いと思った1本をわざわざ選んでるんだよね。それが金賞なんだから、「実はおいしかった」で片づけるのも、ちょっと苦しい気はする。
17. 海外の名無しさん
こういう話になると「ワインの専門家なんて当てにならない」と言う人が出てくるけど、それってどういう意味なんだろう。種類の違う2本の特徴を飲み分ける。目隠しで産地を当てる。香りや舌ざわりを言葉にする。どれもちゃんと身につく技術で、上手い人とそうでもない人がいるだけだよ。技術そのものが作りものってわけじゃない。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
それは実際に調べた人がいる。品評会の審査員に、同じワインを、前にも飲んだとは知らせずに何度か出したんだ。一度「良い」と評価したワインは、たいてい次も「良い」になる。ただ、どのくらい良いかは回によってぶれる。ある日は最高ランクなのに、別の日は平均よりちょっと上、という具合にね。
※ カリフォルニアのワイン生産者で元海洋学者のロバート・ホジソン(Robert Hodgson)が、カリフォルニア・ステートフェアの品評会で行った調査のこと。同じ瓶のワインを、審査員に知らせずに3回出した。結果は2008〜2009年に学術誌「Journal of Wine Economics」に掲載されている。
19. 海外の名無しさん
ユーチューバーが、刑務所式の密造ワインを作れる人に1本仕込んでもらって、ワイン系のインフルエンサーたちに飲ませる動画があったな。みんな「ろ過を控えめにした、こだわりのオーガニックワイン」みたいにほめてたよ。実際にこすのに使ったのは、スポーツ用の靴下だったんだけど。
※ イギリスのユーチューバー、マックス・フォッシュ(Max Fosh)の動画「I Tricked Wine Critics Into Tasting Prison Hooch」(ワイン評論家に刑務所の密造酒を飲ませてみた)のこと。刑務所式のワインは、受刑者が果物やジュースをこっそり発酵させて作る密造酒を指す。動画の中身はコメント主の説明による。
20. 海外の名無しさん
ワインについてもらった一番のアドバイスは、昔いっしょに働いてたワイン担当の人の言葉だな。「自分が好きなものを飲め」。ものすごく高いワインの多くは、結局のところ、お金持ちが食事の席で「1本にいくら出せるか」を見せつけ合うための道具になってる、とも言ってた。ワインを売って生活してる本人がそう言うんだから、説得力がある。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
自分も何年も前に、マスター・オブ・ワイン(ワインの世界で最難関とされる資格のひとつ)を持つ醸造家から同じことを言われた。「良いワインとは何か分かるか? 君が好きなワインのことだ」。この一言で、ワインにつきまとう気取りみたいなものが、きれいに消えたよ。
22. 海外の名無しさん
うちの妻にも似たようなことをした。妻は元バーテンダーのニューヨーク育ちで、ワインには詳しい。結婚して間もないころ、家にはいつも何本か開いたボトルがあった。仕事終わりに飲む普段用の大瓶と、日替わりの上等なボトル。で、上等なほうを飲むたびに、妻が香りがどう、味わいがどうと延々語るんだ。ある日それがあまりに気取って聞こえたので、安いカベルネを買ってきて、開けたばかりの高いボトルの中身とこっそり入れ替えた。
妻は気づかなかった。
自分もいまだに言ってない。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
つまり奥さんは……ワインに詳しくなかった、ってことになるね。
24. 海外の名無しさん
30年前にバックパックを背負ってイタリアを回ったときは、ペットボトル入りのやつを除けば、値段に関係なくどのワインも最高だったな。
25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
それはワインが最高だったんじゃなくて、君がイタリアをバックパックで旅してたからだよ。
まとめ
2023年、ベルギーの番組が2.50ユーロ(約450円)のワインを架空の銘柄に仕立てて国際コンクールに出したところ、金賞と「実に興味深い」という評が返ってきた。主催者側は、後に別の番組が行ったよく似た検証に対して、決めつけだと反論している。この一件で専門家の舌やコンクール全体が否定されるわけではなく、番組自身も信頼できるコンクールの名前を挙げている。コメント欄には「フランスのスーパーではメダルつきの瓶が珍しくない」という現地の声や、「結局は自分が好きなものを飲めばいい」という意見が並んだ。日本のワイン売り場でも、金色のシールが貼られた瓶はよく見かける。次に手に取るとき、それがどこの、どんな審査のシールなのか、少しだけ気にしてみてもいいかもしれない。
元ソース: 「ベルギーのテレビ番組が、2.50ユーロの安ワインをフランスのワインガイド『ジルベール&ガイヤール』のコンクールに出して、金賞を取った」という海外掲示板の投稿


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