「すべてのオタマジャクシと金魚の指揮権を与える」海軍を持たない州が贈り続けている提督の称号

「すべてのオタマジャクシと金魚の指揮権を与える」海軍を持たない州が贈り続けている提督の称号 文化・社会

「ネブラスカ大海軍提督」。アメリカのネブラスカ州が贈る、州の名誉称号のひとつである。問題はふたつあって、ひとつはネブラスカ州に海軍が存在しないこと。もうひとつは、この州が海に面していないどころか、海に出るまでに州境を3回越えなければならない「三重内陸」の州だということ。それでも提督には、ちゃんと指揮下に置くものが用意されている。伝わっている文面によれば、それは「すべてのオタマジャクシと金魚」である。

※注:三重内陸(triple-landlocked)とは、自分が海に面していないだけでなく、隣り合う地域もすべて内陸で、そのまた隣も内陸——という入れ子の状態のこと。ネブラスカから海に面した州にたどり着くには、最低でも3回、州境を越える必要がある。

今日の知ってた?

🐟 「ネブラスカ大海軍提督(Admiral of the Great Navy of the State of Nebraska)」は、米ネブラスカ州が贈る名誉称号である。ネブラスカ州に海軍は無く、州は海にも面していない。それどころか隣接する州もすべて内陸で、海に出るには最低3つの州境を越えなければならない。それでもこの称号にはきちんと「権限」が付いてくるとされ、提督となった者は「すべてのオタマジャクシと金魚」を指揮する立場を与えられる、と伝えられている。

背景:海を持たない州の「大海軍」

ネブラスカ州はアメリカのほぼ真ん中、グレートプレーンズと呼ばれる大平原にある。面積はおよそ20万平方キロで、日本の半分強。そこに200万人弱が暮らしている。州の東の縁をミズーリ川が流れているほかは、見渡すかぎりトウモロコシと大豆と牧草地で、海はもちろん、湖らしい湖もほとんど無い。アメリカの州の中でも「海から最も遠い部類」として名前が挙がる場所である。

まず前提として、アメリカの州には「州知事が市民に贈る名誉称号」という文化がある。軍の階級とはまったく関係がなく、給料も出ないし、命令する部下もいない。証書が1枚もらえて、名刺に肩書きを書いてもいい、というたぐいのものだ。一番有名なのはケンタッキー州の「ケンタッキー大佐」だろう。

※ ケンタッキー大佐(Kentucky Colonel)=ケンタッキー州知事が贈る名誉称号。実際の軍歴とは無関係で、州に縁のある人や貢献した人に広く贈られてきた。ケンタッキーフライドチキンの「カーネル・サンダース」のカーネル(Colonel)も、軍で大佐だったからではなく、この称号に由来する。

ネブラスカ州のそれが、なぜか海軍なのである。州には海が無い。船も無い。港も無い。それでも州は真面目な体裁の証書を用意し、真面目な字体で「提督」と刷り、州の名において授与してきた。称号は知事の名で贈られるとされ、推薦を受けて決まるという話がコメント欄でも語られていた。「本人が申請するのではなく、州の誰かに推してもらう必要がある」らしい。

もう少し詳しく

「すべてのオタマジャクシと金魚」。この称号がただの冗談で終わらないのは、権限の記述がやたらと具体的だからだ。提督は州内のあらゆるオタマジャクシと金魚を指揮する立場に置かれる、とされている。海軍が無い州が名誉称号として海軍の提督を用意し、その提督に実際に指揮できるものを持たせようとした結果、水の中にいる生き物のうち一番ささやかなところに落ち着いた——という筋書きだと思うと、なかなか味がある。少なくとも、いる。田んぼの脇の水路にも、金魚鉢の中にも、部下は確実にいる。

名簿がとんでもないことになっている。元スレのコメント欄には、歴代の提督としてWikipediaに載っている名前の一覧が貼られていた。フランクリン・ルーズベルト、ハリー・トルーマン、ダグラス・マッカーサー、ジェラルド・フォード、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ。ジョン・グレン、ビル・ゲイツ、ビル・マーレイ、デヴィッド・レターマン、ジョニー・カーソン、ボブ・ホープ、ビング・クロスビー、クレイグ・ファーガソン。アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラス、マーク・スピッツ、ジュリアス・アービング。そしてエリザベス二世と、エベレスト初登頂のエドモンド・ヒラリー。海のない州の海軍に、英国女王と登山家がそろって名を連ねている。

※ この一覧はコメント欄に貼られたWikipediaの記載を紹介したもので、授与の年や経緯までは確認していない。

「三重内陸」はどこまで本当か。内陸(landlocked)は海岸線を持たない地域のこと。二重内陸は、隣り合う地域がすべて内陸である状態。三重内陸は、そのまた隣もすべて内陸——つまり海に面した州に入るまで州境を3回越える必要がある状態を指す。実際にネブラスカから南へ抜けようとすると、カンザス、オクラホマと通ってようやくテキサスで海に出る。東回りでもミズーリ、アーカンソーと来てルイジアナである。どう転んでも3回だ。

ただし元スレのタイトルにある「海から最も遠い州」という部分については、コメント欄で早々に異論が出た。北米大陸で海から最も遠い地点、いわゆる到達不能極は、隣のサウスダコタ州にあるという指摘である。ネブラスカは「屈指」ではあっても「一位」ではないらしい。もっとも、提督の称号を用意したのはネブラスカのほうなので、その点では勝っている。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
今この瞬間、人生の目標が更新された。オタマジャクシと金魚を率いる日が来るまで、まだ死ぬわけにはいかない。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
私は合衆国陸軍ではないが、我が家という偉大なる州の名において、貴殿にオタマジャクシおよび金魚の指揮官の称号を授ける。任地は玄関脇の水槽である。

3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
何年も推薦してもらおうと動いてるんだけど、自分はもう州民じゃなくて元州民なので、現住民の誰かに推薦してもらう必要があるらしい。で、ネブラスカに住んでる友人たちが誰ひとり動いてくれない。あいつら本当に薄情だ。

4. 海外の名無しさん
肝心なことを聞きたい。ネブラスカ大海軍提督は、ケンタッキー大佐に命令を出せるのか。両方持ってる人が現れたらどうなるんだ。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
理屈のうえでは提督(O-7相当)のほうが大佐(O-6相当)より上なので、敬礼するのは大佐のほうになる。ただし両者がたまたま同じ指揮系統に入っていれば、の話だが。

6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
どちらも州が市民に贈る名誉称号なんだから、そもそも同格だと思う。それに海軍のCaptainと陸軍のColonelは、日本語だとどちらも大佐にあたる同じ階級だ。称号の名前から偉さを推し量るのは最初から無理がある。

7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
名前は指標にならないけど、Oの後ろの数字は指標になる。提督の一番下がO-7で、大佐がO-6。この数字だけは嘘をつかない。

8. 海外の名無しさん(>>4への返信)
ただしケンタッキー大佐のほうには、11種類のハーブとスパイス・ガールズ全員に敬礼する義務がある。ここは譲れない。

9. 海外の名無しさん
本物の海軍でも肩書と階級はぐちゃぐちゃなので、そんなに気にしなくていい。潜水艦の艦長は「Captain(艦長)」と呼ばれるが、階級はひとつ下のCommander=中佐であることが多い。その人が任務部隊も率いると今度は「Commodore(代将)」と呼ばれるが、代将という階級はもう存在しない。つまり、潜水艦の艦長を務めていて、階級は大佐で、呼び名は代将、という人が現実にいる。

10. 海外の名無しさん
歴代の提督一覧を眺めていて一番笑ったのはエリザベス二世だな。本物の海軍を持っている国の元首が、海の無い州の海軍で提督をやっている。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
エベレスト初登頂のエドモンド・ヒラリーも入ってる。標高八千メートル超の頂に立った男に、海の無い州が海軍の称号を贈る。この方向性の一貫のなさは嫌いじゃない。

12. 海外の名無しさん(>>10への返信)
一覧の中でマーク・スピッツだけは完全に納得できる人選だと思う。オリンピックで金メダルを7個取った水泳選手だから、少なくとも水とは縁がある。

13. 海外の名無しさん
小学生のころ、1960年代の初めの話だけど、アラバマ州が戦艦アラバマをモービルまで運んで博物館にするための寄付を募っていた。うちの父が結構な額を出したら、アラバマ海軍の提督にされた。もちろんアラバマにも州の海軍なんて無い。家族でずっと笑い話にしていた。

14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
お父さんに感謝したい。戦艦アラバマは博物館船として本当によく出来ていて、行く価値のある場所になっている。

15. 海外の名無しさん
その気になれば、海軍の艦船部門の司令官になってアイダホの湖を任される道もあるぞ。あそこには本物の海軍の音響研究施設がある。海の無い州の湖で、海軍が船の音を測っている。

16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
ネバダの砂漠のど真ん中にも海軍の潜水艦がらみの施設があるって、どこかで読んだ記憶がある。あれは結局本当だったんだろうか。

17. 海外の名無しさん
オクラホマのカトゥーサ港も相当なものだと思う。オクラホマシティよりトゥルサ寄りの完全な内陸なのに、沿岸警備隊の拠点まである。キーウェストみたいな南の海を夢見て沿岸警備隊に入って、辞令を開いたらオクラホマ、というのを想像してほしい。

18. 海外の名無しさん
三重内陸ってどういう意味なんだ。俺は昔ミズーリ海を渡ってアイオワまで行った記憶がはっきりあるんだが。

19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
内陸というのは海岸線を持たない地域のこと。単純内陸は、自分に海岸線は無いが海に面した地域と隣り合っている状態。二重内陸は、隣がすべて内陸の状態。三重内陸は、隣がすべて二重内陸以上の状態。ネブラスカはこれにあたる。ちなみにミズーリ海は無い。

20. 海外の名無しさん
ネブラスカが海から最も遠い州のひとつなのは確かだけど、最も遠いわけではない。北米大陸で海から一番遠い地点、いわゆる到達不能極はサウスダコタにある。称号を作らなかったサウスダコタの負けだと思う。

21. 海外の名無しさん
一応ミズーリ川は流れている。ただしあれはカンザスとミズーリを通ってからミシシッピ川に合流して、そこからさらにいくつも州を越えて、ようやくメキシコ湾に出る。船で海まで行こうとしたらとんでもない長旅になる。提督が出撃を命じても、たぶん任期中には着かない。

22. 海外の名無しさん
結局この称号の一番いいところは、権限が「すべてのオタマジャクシと金魚」で止まっていることだと思う。誰も傷つけないし、誰も本気にしないし、誰も嫌な気持ちにならない。名誉というのは本来これくらいでちょうどいい。

まとめ

海軍を持たない州が、海軍の提督という称号を贈り続けている。しかも海に出るには州境を3回越えなければならない三重内陸の州で、である。名簿にはエリザベス二世からビル・ゲイツ、エベレストに登ったエドモンド・ヒラリーまで並び、それでいて与えられる権限は「すべてのオタマジャクシと金魚」の指揮にとどまる。コメント欄は「提督とケンタッキー大佐はどちらが偉いのか」という誰も得をしない議論と、アラバマ海軍の提督にされた父親の思い出、アイダホの湖にある海軍施設やオクラホマの沿岸警備隊といった「海の無い場所の海軍」ネタで見事に埋まっていた。誰も傷つかず、誰も本気にしない肩書きが、ここまで人を楽しませている。名誉というのは案外これくらいでいいのかもしれない。

元ソース: 「ネブラスカ大海軍提督」は米ネブラスカ州が贈る名誉称号である。ネブラスカに海軍は無く、海から最も遠い三重内陸の州でもあるが、この称号は「すべてのオタマジャクシと金魚」の指揮権を与えるという

コメント

  1.   says:

    埼玉大海軍提督より偉いの?