ペットは飼いたい。でも餌はやりたくないし、散歩にも行きたくないし、留守番もさせたくない。その身も蓋もない気持ちだけを狙い撃ちにした商品が、1975年のアメリカで爆発的に売れた。中身は、そのへんに落ちている石ころである。箱に入れて売った男は、本当に富豪になってしまった。
今日の知ってた?
📏 1975年、広告業界で働いていたゲイリー・ダールが、ただの石を「ペットロック」として売り出した。商品は空気穴の開いた小さな箱に藁を敷き、石を1個入れ、飼育マニュアルを添えただけ。これが約150万個売れ、彼は百万長者になったとされる。
背景:ジョークグッズが本気で売られていた時代
1970年代のアメリカには、漫画雑誌の裏表紙やカタログの隅に「これは本当に売っていいのか」という商品がずらりと並んでいた。水に入れると人面の水中王国が出現すると謳ったシーモンキー(正体は乾燥させたアルテミアの卵)、かければ手の骨が透けて見えると謳ったX線メガネ。買った子どもがどうなるかは、だいたい想像がつく。
※注:アルテミアは塩水湖にすむ小型の甲殻類で、日本では観賞魚の餌として売られている「ブラインシュリンプ」と同じ生き物。乾燥卵の状態で長期保存でき、水に戻すと孵化する。
ペットロックは、その系譜の頂点に立った商品だった。しかも他のジョークグッズと違い、誇大広告が一切ない。石は石である。届いたものが期待と違ったと怒りようがない。買う側も「これは石だ」と分かったうえで、5ドルほどを払って笑いを買った。日本でも一発ネタの商品が季節ごとにブームになるが、あれの元祖のような立ち位置だと思えば分かりやすい。
着想はバーでの雑談から生まれた、という逸話が伝わっている。友人たちがペットの世話の愚痴を言い合っているのを聞いて思いついた、という筋書きだが、これは本人の語りとして広まったもので、どこまでが脚色かははっきりしない。
もう少し詳しく
商品の本体は、石ではなく説明書だった。箱に同梱されていたのは『あなたのペットロックの世話としつけ』と題された小冊子で、これがとにかく真顔で書かれている。石を飼うための注意事項、しつけの手順、芸の教え方が、犬のしつけ本とまったく同じ文体で並ぶ。売れたのは石ではなくこの文章のほうだった、という見方はコメント欄でも多かった。
「転がれ」の教え方。マニュアルによれば、この芸を教えるのに最適な場所は丘の上である。石を地面に置き、「転がれ」と号令をかけ、手を離す。それだけでいい。石は飽きるまで転がり続け、たいていは丘のふもとで飽きる。飼い主は転がった先まで降りていって、思いきり褒めてやること。褒められた石はたいへん喜ぶので、丘の上に戻せばまた同じ芸をやってくれる、と書かれている。
「死んだふり」の教え方。訓練場所に石を連れていき、注意を完全にこちらへ向けさせてから「死んだふり」と命じる。「あなたの石が普通の石であれば、二度言う必要はない」。石はただちに硬直し、次の号令があるまでその姿勢を保つ。マニュアルいわく、石はこの芸が大好きなので、飼い主が見ていないときにも自主的に練習しているという。部屋に入ったらペットロックが死んだふりをしていた、というのは珍しいことではないらしい。
この小冊子は現在もインターネット上のアーカイブで全文が公開されており、元スレッドでも真っ先にリンクが貼られていた。ブーム自体は長くは続かなかったと言われているが、半世紀が過ぎてなお、笑いどころだけがきちんと残っている。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
公平を期して言っておくと、付属の『あなたのペットロックの世話としつけ』という小冊子は本当によく出来ていた。ネットに全文が上がっているから、笑いたい人は探して読んでみてほしい。石を売った話ではなく、あの文章を売った話として見るとまるで印象が変わる。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
芸まで仕込めるんだよな。「転がれ」を教えるなら丘の上がいい、石を地面に置いて号令をかけ、あとは手を離すだけ、と書いてある。そのあと「石は飽きるまで転がり続ける。たいてい丘のふもとで飽きる」と続くのが最高だ。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
「死んだふり」の項がいちばん好き。「あなたの石が普通の石であれば、二度言う必要はない」。しかも見ていないときも自主練しているので、部屋に入ったら死んだふりをしていることがある、とまで書いてある。書いた人間は絶対に途中で笑いをこらえている。
4. 海外の名無しさん(>>1への返信)
「ちょっとだけ失礼な贈り物」という枠の完成度が異常に高い。渡すという行為そのものが「お前は生き物を世話できる人間じゃないから、これで我慢しろ」というメッセージになっている。ここを分かっていない人が結構いる。
5. 海外の名無しさん
うちの母はこれを買う人間を心底ばかにしていて、対抗して道端の石を拾ってポケットに入れて持ち歩いていた。財布や鍵を出すたびに石が転がり出るので、必ず誰かが「それペットロック?」と聞く。母は真顔で「違う、これはお守り」と答える。「どんなご利益が?」と聞かれると「ない。ただの石だから」で終わる。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
お母さんのほうが商品として完成しているのが面白い。しかも元手ゼロだ。ばかにしていたはずが、いちばん長く同じネタを回し続けているという構図もいい。
7. 海外の名無しさん
妹がクリスマスにもらってた。箱とマニュアルを読んでいる15分はたしかに楽しかったよ。そのあときれいさっぱり価値がゼロになったけど。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
15分もったなら大健闘だよ。この手のジョークグッズの寿命はだいたい1分だから、14分ぶんの超過達成ということになる。
9. 海外の名無しさん(>>7への返信)
この商品は受け取る喜びより、渡す喜びのほうに重心が寄っているんだよ。店で見つけた瞬間から、包んで相手の顔を見るまで、贈り主のほうがずっと楽しい。
10. 海外の名無しさん
みんな笑うけど、あのマニュアルは本気ですごかった。5ドルだぞ。クリスマスの朝、父が妹に買ってきたやつで家じゅうが笑ったんだから、当時の5ドルとしても十分に元は取れている。どこかの広告賞を受賞していないなら、それはおかしい。
11. 海外の名無しさん
商品の中身より売り方のほうが決定的だ、という事実をこれ以上わかりやすく示した例はないと思う。マーケティングの授業でいちばん最初に見せるべき教材だ。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
箱と藁とマニュアルを抜いたら原価ゼロの石が残るだけ、というのが恐ろしいところ。付加価値が全部言葉でできている。今なら「体験を売っている」とか言われて分厚いビジネス書になっていた。
13. 海外の名無しさん
これに触発されていいアイデアが浮かんだんだけど。床に敷いておいて、その上でジャンプすると結論に飛びつける「結論飛びつきマット」というのはどうだろう。かなりいけると思うんだよな。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
それは人生で聞いた中でいちばんひどいアイデアだ。悪いけど、聞いた全員が少しずつ不幸になるやつだと思う。
15. 海外の名無しさん
同じ時代のものだと「シーモンキー」も調べてみてほしい。漫画雑誌の裏表紙で10年以上売られていて、何世代ぶんもの子どもに消費者としての失望を教えた商品だ。広告の絵は人間みたいな顔をした住人が暮らす水中の王国なのに、届くのは乾燥した卵の袋である。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
すぐ死ぬって言われるけど、あれは飼い方が下手なだけだよ。実際はゴキブリ並みにしぶとい。餌をやらないと共食いを覚えた個体が生き残るので、やたらでかいのが卵を尻にぶら下げて泳いでいたりする。あれは絶対に誰か食べてる。
17. 海外の名無しさん(>>15への返信)
その水中王国をちゃんと見るには、同じページで売っていたX線メガネが必要だったんだよ。あれをかければ骨まで見えるはずだったんだ。当時の子どもの小遣いは、こういうものに吸い込まれていった。
18. 海外の名無しさん
天気石を売っていた人が事業を拡大した、みたいな話に聞こえる。ひもで吊るした石を見て、濡れていれば雨、影があれば晴れ、白ければ雪、揺れていれば風、見えなければ霧。的中率100%の予報装置というやつだ。
19. 海外の名無しさん
深夜のコント番組で作られた架空の商品みたいだけど、これは番組じゃなくて本当に70年代がそうだったんだよな。当時の空気を知らないと、話を作っていると思われても仕方がない。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
オリジナルなものなんて何もないよ。古代ギリシャあたりにも似たことをやった男が絶対にいたはずだし、そのギリシャ人だってどうせアッシリア人からパクっている。
21. 海外の名無しさん
この人、チョコレート工場の話を書いた本も相当よかったよね。子どもの頃に何度も読み返した記憶がある。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
それはロアルド・ダールで、まったくの別人。ついでに言うと、あの人が書いたのは巨大な桃の話であって洋ナシではない。名字が同じというだけで、こんなに人生の方向が違う二人もそういない。
23. 海外の名無しさん
そもそも今この文章を表示している半導体チップだって、石に雷を通して、人間が教えた通りの考えごとをさせている装置だからな。ペットロックのほうがまだ正直に「石です」と名乗っているまである。
24. 海外の名無しさん
これ、今になって知る話なの? ジョークグッズの定番として、もうとっくに常識の側に入っていると思っていた。ペット用品店のレジ横に普通に置いてあった時期すらあるのに。
25. 海外の名無しさん
飽きたあと、うちの家族はあの石を庭に持って出て、リンゴの木の下に埋めて、別れの歌を歌ってから家に戻った——ということにしておきたい。実際にどこへ行ったのかは誰も覚えていない。たぶん最初にいた場所と、そう変わらないところに転がっている。
まとめ
1975年、ゲイリー・ダールがただの石を「ペット」として売り出し、空気穴の開いた箱と飼育マニュアルを添えただけの商品が約150万個売れて、彼は百万長者になったとされる。コメント欄は最初から一貫して、評価されていたのは石ではなく同梱の小冊子のほうだった。丘の上で「転がれ」と命じて手を離す、命じられた石は飽きるまで転がる——この真顔の一文に、半世紀後の海外の掲示板がまだ笑っている。話は「贈り物としてのちょっと失礼な絶妙さ」から、同時代のシーモンキーやX線メガネの思い出へ流れ、最後は「半導体だって石に雷を通しているだけ」という妙に納得のいく脱線で終わった。買った人が損をしたという声が、ほとんど出てこないのが面白いところだった。
元ソース: 1975年、広告業界にいたゲイリー・ダールが、ただの石を空気穴の開いた箱と飼育マニュアル付きで「ペット」として売り、約150万個を売り上げて百万長者になった


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