カナダ西海岸の島、ハイダ・グワイの森に、針葉が金色に輝くトウヒの木が一本だけ立っていた。先住民ハイダ族が「キードカヤース」と呼び、伝説とともに守ってきた聖なる木。ところが1997年、この木は一人の森林技師の手で違法に伐り倒されてしまう。しかも本人が主張した動機は、皮肉にも「林業への抗議」。海外掲示板で「今聞いても腹が立つ」と話題になった事件を紹介したい。
※注:トウヒはマツ科の常緑針葉樹。シトカトウヒ(Sitka Spruce)は北米太平洋岸に分布する種で、本来の針葉は緑色をしている。
今日の知ってた?
🌲 カナダの島ハイダ・グワイに、突然変異で針葉が金色になったシトカトウヒ「キードカヤース(Kiidk’yaas)」が立っていた。通称「ゴールデン・スプルース(黄金のトウヒ)」。遺伝的に唯一無二とされ、先住民ハイダ族の聖木として伝説とともに語り継がれてきたが、1997年、森林技師グラント・ハドウィンによって違法に伐り倒された。本人が主張した動機は、皮肉にも「林業界への抗議」だったという。
背景:黄金のトウヒと、ハイダ族の伝説
シトカトウヒの針葉は、本来なら深い緑色だ。ところがキードカヤースは、針葉が金色になる突然変異を抱えたまま大木にまで育った、きわめて珍しい木だった。緑の原生林の中に一本だけ立つ金色の木は、地元では広く知られた存在で、観光客に紹介される名所にもなっていた。
この木のふもとで暮らしてきたハイダ族には、こんな伝説が残されている。——昔、自然を軽んじた少年のせいで、村が恐ろしい嵐に襲われた。生き残ったのは少年と祖父の二人だけ。村から逃げるとき、祖父は「決して振り返るな」と少年に警告したが、少年はそれに背いて振り返り、その場で黄金のトウヒに変えられた——。木そのものが、伝説の登場人物だったのだ。
もう少し詳しく
伐ったのは、森を知り尽くした男だった。1997年にキードカヤースを伐り倒したグラント・ハドウィンの肩書きは「森林技師」。木こりや伐採作業員のことではなく、林道や橋、排水設備の設計などを担う、どちらかといえば土木系の技術職だ。スレッドに寄せられた解説によれば、ハドウィンは林業で栄えた一家に生まれ育ち、太平洋岸北西部の森の美しさと、その森が皆伐で失われていく現実の両方を見てきた人物だったという。
主張された動機は「抗議」。企業が広大な区画を皆伐する一方で、観光客に見せるための美しい一角だけを残す——ハドウィンの目には、キードカヤースはそんな林業界の「広告塔」に利用されている存在に映っていた、とされる。木を奪うことで、その欺瞞を成り立たなくさせるつもりだったというのだ。なお、ハドウィン自身はこの木がハイダ族の聖木であることを知らず、伐採後にそれを知ったと伝えられている。
そして本人は、冬の海に消えた。事件後、ハドウィンは真冬のヘカテ海峡——荒れることで悪名高い海だ——をたった一人、シーカヤックで渡ろうとして消息を絶った。遺体は今も見つかっていない。捜査側は溺死または低体温死が最も可能性が高いと見ているが、遺体がないことから「死を偽装したのでは」という説も消えないままだ。
「金の血筋」は生きている。実は1977年、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)の植物学者チームがこの木の挿し穂を採取し、通常のシトカトウヒに接ぎ木して、金色の苗木を2本育てていた。1997年の伐採を知った大学側は、せめてもの償いにと1本をハイダ・グワイへ贈ろうとしたが、その苗木は輸送前の保管中に枯死。もう1本は、今もUBCの植物園で生きている。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
キードカヤースの伝説はこうだ。自然を軽んじた少年のせいで村が恐ろしい嵐に襲われ、生き残ったのは少年と祖父だけだった。村から逃げるとき、祖父は「振り返るな」と警告したが、少年はそれに背いて振り返り、その場で黄金のトウヒに変えられた——。ソドムの街を振り返って塩の柱にされた、旧約聖書のロトの妻とそっくりなのが興味深いよね。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
ギリシャ神話のオルペウスとエウリュディケーもそうだ。冥界から妻を連れ帰る途中、「振り返るな」の約束を破って、あと一歩のところで永遠に失う。洋の東西を問わず同じ型があるんだな。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
日本神話のイザナギとイザナミもまさにこれだよ。亡くなった妻を迎えに黄泉の国まで行って、「姿を見ないで」と言われたのに見てしまって、すべてが台無しになる。太平洋の反対側の島に同じ骨組みの伝説があるのか。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
神話や民話は教訓を伝えるための装置だからね。「逃げるべきときに立ち止まって振り返るな」という教えは、収穫を一度逃せば命に関わるような時代なら、万国共通で必要だったんだと思う。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
映画で爆発を背にして歩くクールな主人公たちも、絶対に振り返らないだろ。あれは現代まで生き残った「振り返るな」の教えだったのか。
6. 海外の名無しさん
巨木「セネター」(アメリカにあった最古級の木)が失われたときより、こっちのほうが腹が立つ。あっちは人間のうかつな愚かさだが、こっちは計画された破壊行為で、しかも遺伝的に唯一無二の木だった。競馬業界に抗議するために、世界で一頭しかいないユニコーンを殺すようなものだ。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
本当にひどい行いなのは間違いない。ただ、せめてもの救いは生き残った苗木がいることだよ。あの突然変異は、まだこの世から消えてはいないんだ。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
補足すると、1977年にブリティッシュコロンビア大学の植物学者チームが挿し穂を採って、普通のシトカトウヒに接ぎ木して金色の苗木を2本育ててたんだ。1997年に伐採を知った大学側は、代わりにと1本をハイダ・グワイに贈ろうとしたんだけど、その1本は輸送前の保管中に枯れてしまった。もう1本は今も大学の植物園で生きてるよ。
9. 海外の名無しさん
90年代の初めに実物を見たことがある。自然の森の一部だから周りの木々に囲まれていて、横からだと意外と見えにくかったのを覚えてる。それでも見られたのは幸運だった。植物学者たちが事件の前に挿し穂からクローンを増やして、ハイダ・グワイのあちこちに植えていたのがせめてもの救いだよ。
10. 海外の名無しさん
追加で80本の挿し穂が作られたという話も読んだけど、そのうち生き残ったものはあるんだろうか。誰か続報を知らない?
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
確か、今も生きてるのは3本だったはず。大学の敷地にも何本かあるけど、どれもあまり大きく育ってない。元のキードカヤースがあそこまで立派な大木になったこと自体が、とんでもない偶然の産物だったんだよ。
12. 海外の名無しさん
うちの父は昔、ハイダ・グワイで木こりをやってたんだ。1997年のこの事件には、ものすごくショックを受けてたよ。木を伐って生きてきた人間が、だよ。それくらい特別な木だったってことだ。
13. 海外の名無しさん
犯人は死を偽装したんじゃないのか?と、どうしても考えてしまう。何から何まで奇妙な事件なんだよ。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
実質的には、自ら死へ向かったようなものだと言われてる。逃走の途中で低体温か溺死で亡くなったというのが定説だ。それにしても数奇な結末だよ。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
でも遺体が見つかってないのに、どうしてそこまで分かるんだ?
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
もちろん推測だよ。ただ、当時も今も捜査側が最も可能性が高いと見ている筋書きなんだ。彼がやろうとしたのは、荒れることで悪名高いヘカテ海峡を、真冬にたった一人、シーカヤックで渡るという無謀な挑戦だった。死の偽装も、誰かに殺された可能性も、クマに襲われた可能性だってゼロじゃない。でも遺体が出ないことは、むしろ溺死説を裏付けていると思う。
17. 海外の名無しさん
この木の伝説に従うなら、彼のほうが新しい黄金のトウヒに変えられるべきだったのにな。神話ってやつは、肝心なときに仕事をしない。
18. 海外の名無しさん
そもそも「森林技師」って何なんだ?木こりのことじゃないのか?
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
森林技師は木こりでも伐採作業員でもないよ。どちらかというと土木技師に近くて、林道や橋、排水設備の設計をしながら、環境規制への適合を管理する仕事だ。つまり彼は、森のことを知り尽くした側の人間だったってことだよ。
20. 海外の名無しさん
彼のやったことを擁護する気はまったくないが、背景だけ補足させてくれ。ハドウィンは林業で栄えた一家に生まれ育って、太平洋岸北西部の森の美しさと、林業がその森を破壊していく現実の両方を見てきた人間だった。企業は広大な区画を皆伐する一方で、観光客に見せるための美しい一角だけを残す。彼の目には、キードカヤースは「自然は手つかずで美しい」と思わせるための林業界の広告塔に見えていた。企業から「ペット・ツリー(見せ物の木)」を奪えば、その欺瞞を続けられなくなると考えたんだ。ちなみに彼はこの木がハイダ族の聖木だとは知らず、伐採後にそれを知ると、先住民のリーダーたちに「これから一人で森に入る」と伝えたそうだ。報復するならどうぞ、という意味だったんだろう。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
事情は分かった。それでも、やっぱり愚かだよ。林業をそれだけ知り尽くした人間が、あれほど唯一無二の木を前にして、「伐っても大した損失にはならない」と思えたはずがないんだ。
22. 海外の名無しさん
珍しい木というのは本当にいいものだよ。うちの近くの植物園にはウォレマイパインがあって、行くたびに眺めてる。絶滅したと思われていたのに、1994年にオーストラリアの人里離れた渓谷で60本足らずの群生が見つかった木だ。だからこそ、一点ものの木を意図的に消すなんて、私にはありえない。
23. 海外の名無しさん
この事件の顛末を描いた『ゴールデン・スプルース』という本があるから、まだの人はぜひ読んでほしい。著者のジョン・ヴァイヤントは私の大学時代の先生だったんだが、本当に見事な筆致で書かれているよ。
24. 海外の名無しさん
この話の悲しさは、じわじわと深く刺さってくる。ハイダ族にとっては、伝説そのものが森の中に生きて立っていたわけだろう。木は接ぎ木で残せても、あの場所であの木が積み重ねてきた時間と物語は、二度と戻らないんだよな。
まとめ
金色の針葉を持つ世界唯一の聖木は、「林業への抗議」を主張する一人の男の手で失われ、男自身も冬の海に消えた。コメント欄では「動機が何であれ、唯一無二の木を伐る理由にはならない」という怒りが大勢を占める一方、ハイダ族の伝説と世界各地の「振り返るな」神話の共通点で盛り上がる一幕も。接ぎ木で受け継がれた金色の苗木が、いつかまたハイダ・グワイの森で輝く日を待ちたい。
元ソース: 今日の豆知識:突然変異で金色の針葉を持つシトカトウヒ「キードカヤース」はハイダ族の聖木だったが、1997年に森林技師が違法に伐採した。皮肉にもそれは林業への抗議だったという


コメント
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伊尹は母が変わった木のうろの中で泣いていたのを里人に拾われ、養育されたと言う伝説がある。