フラミンゴといえば、片脚で立ったまま眠る姿です。あの姿勢は疲れないのか。2017年、アメリカの研究者2人が、動物園から入手したフラミンゴの遺体を片脚だけ支えて立たせてみました。筋肉はまったく働いていないのに、体は1本足の姿勢にすっと収まって崩れません。ところが2本足で立たせようとすると、関節がぐらついて体重を支えられませんでした。海外の掲示板では、「研究者はヒマなのか」という声と、「役に立たなそうな研究こそ大事」という声がぶつかりました。
今日の知ってた?
🦩 2017年、米ジョージア工科大学とエモリー大学の研究者が、フラミンゴの遺体を片脚だけ固定して立たせたところ、筋肉が働いていなくても1本足の姿勢で安定した。体を前後に大きく傾けても、関節はほとんど動かなかった。
🦵 同じ体を、2本足で立つときのように脚をまっすぐ縦にそろえると、関節がすぐに崩れて体重を支えられなかった。
😴 生きたフラミンゴ8羽の揺れを測ると、目を閉じて休んでいるときがいちばん揺れが小さかった。足にかかる重さの中心が動く速さの最大値は、目を開けてじっとしているときの約半分、動き回っているときの約7分の1。
❓ ただし「なぜ1本足で立つのか」は、体温を逃がさないため、脚の疲れを防ぐため、そして今回の「力がほとんど要らないから」という説が並んでいて、まだ決着していない。
背景:フラミンゴはなぜ1本足で立つのか
フラミンゴは、1本足で長いあいだ立ち、そのまま眠ることもよくあります。2015年の米スミソニアン誌の記事によると、この姿勢は強い風の中でも何時間も続くことがあります。世界に6種いて、南米、アフリカ、中東、カリブ海の浅い湖や潟で暮らし、なかにはアンデス山脈の高地で、雪の吹きつける寒さに耐えている群れもいます。
ここで一つ、よくある誤解があります。フラミンゴの脚の真ん中あたりにある、人間の膝とは逆向きに曲がるこぶのような関節は、膝ではなく足首です。米公共ラジオNPRの記事によると、太ももの骨は体の羽毛の中にほぼ水平に隠れていて、膝もその中にあります。私たちが「脚」と思って見ている細長い部分は、膝から下で、その途中のこぶが足首というわけです。
なぜ1本足で立つのかについては、スミソニアン誌によると、2009年ごろまでは「そのほうが楽だから」という説明がほとんどでした。研究者のあいだで唱えられていたのは主に2つの説です。ひとつは疲労説で、片脚ずつ休ませれば両脚の筋肉がこわばらず、天敵が来たときにすばやく動ける、という考えです。もうひとつは体温説で、鳥の脚と足は体の熱が逃げやすい場所なので、片脚を体に引き寄せておけば熱を逃がさずに済む、という考えです。ただ、どちらも長いあいだ確かめられていませんでした。
最初に実際に確かめたのは、米フィラデルフィアのセントジョセフ大学の実験心理学者マシュー・アンダーソン氏です。フラミンゴの休み方の左右の好みを調べるうちに、1本足で立つ理由そのものを誰も検証していないことに気づきました。2009年に米ライブサイエンスが伝えた研究では、フィラデルフィア動物園のベニイロフラミンゴの群れで、休んでいた姿勢から歩き出すまでの時間を比べました。疲労説が正しければ1本足で休んでいた鳥のほうが早く動けるはずですが、実際には2本足の鳥のほうが早く歩き出しました。また、暖かいときほど2本足で立つ鳥が増え、涼しいときほど1本足の鳥が増えました。スミソニアン誌によると、1本足で休むのは陸の上より水の中のほうがはるかに多く見られました。アンダーソン氏は「水は体の熱を本当にあっという間に奪う」と話しています。成果は学術誌『ズー・バイオロジー』に載り、この体温説は、とくに動物園の飼育員のあいだで定説のように受け入れられていきました。
ただ、これで決着したわけではありません。スミソニアン誌によると、フラミンゴやほかの水辺の鳥を観察したニュージーランドの研究者たちは、水温による違いは見られなかったと報告しています。彼らが注目したのは眠り方です。フラミンゴには、クジラやイルカのように脳の半分ずつを休ませて眠る性質があるとされ、眠くなると反射的に片脚が体のほうへ持ち上がるのではないか、という見方を示しました。一方、スミソニアン国立動物園で鳥類の担当学芸員を務めるサラ・ハラガー氏は、同じ記事で「本当にうまい説明はない。単にそのほうが楽なのだと思う」と話しています。
もう少し詳しく
遺体を「立たせて」確かめた。2017年5月、ジョージア工科大学のヨンヒ・チャン氏とエモリー大学のレナ・ティン氏は、英国王立協会の学術誌『バイオロジー・レターズ』に論文を発表しました。使ったのは、アラバマ州のバーミングハム動物園から入手した、冷凍保存のベニイロフラミンゴの成鳥2羽の遺体です。NPRによると、研究者の説明では、別の理由で安楽死の処置を受けた個体で、研究のために傷つけられたわけではありません。チームはまず関節に「錠」のような固定の仕組みがないか探しましたが、関節はゆるく動くだけでした。変化が起きたのは、すねの下端を縦の支柱に固定して体を起こしたときです。ティン氏はNPRに「縦に向けたとたん、片脚で立っているときのあの姿勢にすとんと収まった」と話しています。体を前後に119度の範囲で傾けても、押したり引いたりしても、関節はほとんど動きませんでした。一方、2本足で立つときのように脚をまっすぐ縦にそろえると、関節はたちまち不安定になりました。
重力が「つっかえ棒」になる。論文はこの仕組みを「重力によって受動的に働く支持機構」と呼んでいます。筋肉で踏ん張るのではなく、体の重さが関節を一定の向きに押しつけ、関節の曲がる範囲の限界がそれを受け止める形です。働くには、体の重心が膝より前にあり、足が体の真下に来ていることが必要でした。NPRの説明によると、片脚を持ち上げると体が前に傾き、重心が体の前側から支えの脚を押し下げる形になります。似た仕組みは馬にもあり、論文によると、馬は立ったまま眠るとき、こうした仕組みで筋肉の力を約98%減らしています。ティン氏は「1本足のほうが2本足より少ない労力で立てるのかもしれない」と話し、アメリカオシやコウノトリの仲間など、ほかの鳥にも共通する仕組みである可能性を挙げています。どの骨や軟骨の形がこの支えを生んでいるのかは、まだ特定されていません。
眠るほど、揺れが小さくなる。生きた鳥では、ズー・アトランタ(アトランタの動物園)のチリーフラミンゴの幼鳥8羽を、フォースプレートという板に乗せて調べました。体の重さがどの位置にかかっているかを1秒間に200回記録する装置で、ティン氏はNPRの取材で、任天堂のゲーム機Wiiのバランスボードにたとえています。重さのかかる位置が動く速さの最大値は、目を閉じて休んでいるときが秒速40ミリ、目を開けてじっとしているときが秒速79ミリで約2倍、羽づくろいなどで動いているときは秒速296ミリで約7倍でした。目を閉じているときは、位置のほとんどが半径3.2ミリの円の中に収まっていました。ティン氏は「人間なら、片脚で立って目を閉じると揺れがぐっと大きくなり、たいていは足をついてしまう。それとは逆だ」と話しています。
分かったのは「仕組み」まで。この研究が示したのは、1本足の姿勢が筋肉の力をほとんど使わずに保てるらしい、ということです。論文は結論で、1本足で立つのは筋肉の疲れや熱の損失を防ぐためというより、筋肉で使うエネルギーを減らすためではないか、という仮説を出しました。ただし生きた鳥の筋肉の働きもエネルギーの消費量も測っておらず、この仮説には直接の証拠がないと論文自身が認めています。遺体と生きた鳥は、種類も年齢も違います。NPRの記事は、この結果は体温説とも矛盾しないと書いています。ティン氏の言葉を借りれば、答えはもっと単純で、「ほかのどの立ち方よりも楽だから」なのかもしれません。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
『ザ・ファーサイド』の1コマが頭に浮かんだ。白衣を着てクリップボードを持った科学者たちが、死んだフラミンゴにポーズをつけてる。後ろの黒板には、うまくいかなかったポーズの図がずらっと並んでいて、全部に×が付いてるやつ。
※注:『ザ・ファーサイド』は、ゲイリー・ラーソンがアメリカの新聞に連載していた1コマ漫画。動物や科学者が出てくるシュールなネタで知られる。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
逆バージョンもいける。フラミンゴの科学者たちが死んだ人間にポーズをつけながら、「こいつら、なんで支えなしで立てないんだ?」って首をかしげてるやつ。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
人間が支えなしで立てないのは、たぶんピンクの羽が足りないせいだな。羽さえ生えてれば何とかなる。
4. 海外の名無しさん
頼むから、これがイグノーベル賞を取ったと言ってくれ。
※注:イグノーベル賞は、「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に贈られる、ノーベル賞のパロディの賞。
5. 海外の名無しさん
この話で今日分かったのは、一部の研究者がヒマを持て余しすぎてるってことだな。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
誰かを説得してお金を出してもらえるなら、自分は大賛成。自分は慢性の痛みを研究してる神経科学者だけど、タコの動きの研究で食べていけるなら、迷わずそっちをやってる。慢性痛が大事じゃないって意味じゃなくて、役に立つ発見がどこから出てくるかなんて、ほとんど予測できないからなんだ。だったら好奇心で選ぶほうが、結果的に効率がいいと思ってる。実際、自分の痛みの研究に欠かせない道具のひとつは、クモの視覚を調べてたクモ好きの研究者たちがいなければ存在しなかった。
7. 海外の名無しさん(>>5への返信)
珍しい動物の飼育管理を学んでたときの先生は、ニワトリの神経科学で博士号を持ってた。博士論文は、要するにニワトリ用の「脳トレ」ゲームを考えることだったらしい。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
研究ってものを分かってないね。その先生は神経科学の博士で、ニワトリをモデル生物(仕組みを調べるために代わりに使う、扱いやすい生き物)として使ってるだけ。生物学の研究のほとんどは、モデル生物を使ってやるものだよ。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
いや…分かってるって。けなしてないよ?先生は研究を心から楽しんでたし、すごくいい先生だった。博士論文と自分の研究のことを、本人が文字どおり「ニワトリのためにゲームを作ること」って言ってたんだ。早とちりしないほうがいいのはそっちだよ。落ち着けって。
10. 海外の名無しさん
変だけど面白い。この知識が何に使えるのかは見当もつかないけど、もっと効率のいい外骨格(体に着けて動きを助ける装置)とか?論文には、馬が立ったまま眠るときは筋肉の力が98%少なくて済む、ってことも書いてあった。これも変だけど面白い。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
信じられないかもしれないけど、すべての研究が人間の役に直接立つためにやられてるわけじゃないんだよ。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
あるいは、いきなり役に立つこともある。GLP-1の薬だって、アメリカドクトカゲがなぜあんなに長いあいだ食べずにいられるのかを、研究者が調べたところから生まれたんだから。
※注:アメリカドクトカゲの毒(唾液)から見つかった物質をもとに糖尿病の薬が作られ、今の「GLP-1」系の糖尿病・肥満の薬の先駆けになった。GLP-1そのものは、人間の体にもともとあるホルモン。
13. 海外の名無しさん(>>11への返信)
腰が悪い身としては、動物から筋肉や骨格のうまい秘密を見つけてくれる人がいるなら大歓迎だよ。
14. 海外の名無しさん(>>10への返信)
関節を固める仕組み、筋膜による補強、筋肉の配置。死んだ鳥と生きた鳥、両方の実験から体の作りについて学べることはいろいろある。恩恵を受けそうな分野のひとつは、義足や義手かもね。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
そりゃそうだ。そこら中の庭に立ってるピンクのプラスチック製フラミンゴも、支えがないと立てないからな!
※注:アメリカには、ピンクのプラスチック製のフラミンゴを庭に飾る習慣がある。たいてい細い金属の脚を地面に刺して立てる。
16. 海外の名無しさん
論文の結論を一言でいうと、「フラミンゴが1本足で立つのは、筋肉の疲れや熱の損失を防ぐためというより、筋肉で使うエネルギーを減らすためではないか」という仮説。何を調べててこの論文にたどり着いたのか知らないけど、ちゃんとした学術論文だった。ただ、土曜の朝にコーヒーも飲まずに遺体2羽の実験の数字を読み込むのは、自分には早すぎる。生きたフラミンゴとどう比べたのか気になってたら、研究者が撮った動画が補足資料に載ってたので、興味がある人はどうぞ。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
その結論にはちょっと首をひねった。筋肉で使うエネルギーが減るなら、結局それは筋肉の疲れも減るってことじゃないの?
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
減るよ。ただ、エネルギーの節約はたぶん生き延びることのほうに関わる話なんだ。疲れにくければ生存率も上がる、と言うこともできるけど、論文が言いたいのはそこじゃない。
19. 海外の名無しさん(>>17への返信)
それは鳥類学者に答えてもらわないとな…。フラミンゴの骨の作りが関係してるのかな?
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
論文にも、股関節や膝の骨と軟骨の形が関わっているかもしれない、とは書いてあった。ただ、まだ確かめられてはいないらしい。疲れについても、生きた鳥の筋肉の働きは直接測っていないから、そこは今後の課題だってさ。
21. 海外の名無しさん
ある研究者のところに死んだフラミンゴがやたらと集まって、「これで何か楽しいことができないかな」って思いついたんだろうな。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
論文には「冷凍保存されたベニイロフラミンゴの成鳥2羽の遺体を、バーミングハム動物園(アラバマ州)から入手した」って書いてある。こんなちょっと間の抜けた研究のために、動物園から鳥を「調達」したってことか。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
NPRの記事によると、研究者の話では、この鳥たちは別の理由で安楽死の処置を受けた個体で、研究のために傷つけられたわけじゃないそうだ。亡くなったあとの体を使わせてもらった、ってことだね。
24. 海外の名無しさん
これってもしかして、新しいクロッケーの木槌を探すための研究?
※注:『不思議の国のアリス』には、ハートの女王のクロッケー大会で、生きたフラミンゴを木槌の代わりに使う場面がある。
25. 海外の名無しさん
自然はフラミンゴに1本足用のスタンドを付けて出荷したのに、2本足で安定させるアップデートは配らなかったわけか。品質管理の担当者には聞きたいことが山ほどある。
まとめ
フラミンゴの遺体が、片脚のすねの下端を固定しただけで筋肉の力なしに1本足の姿勢に収まり、2本足では崩れたという実験は本当でした(「支えなしで」というのは、それ以上の支えが要らなかったという意味です)。生きた鳥も、目を閉じて休んでいるときほど揺れが小さくなります。ただ、この研究が示したのは「力がほとんど要らない仕組み」までで、体温を守るためか、眠りの反射か、単に楽だからか、なぜ1本足を選ぶのかはまだ決着していません。
コメント欄は『ザ・ファーサイド』風の想像図から始まり、「研究者はヒマなのか」という声と、「役に立つ発見は好奇心から出てくる」という声がぶつかりました。
参考資料
- バイオロジー・レターズ(英国王立協会)「フラミンゴが筋肉の力をほとんど使わずに1本足で体を支えられることを示す力学的証拠」(2017年・英語)
- NPR「フラミンゴが1本足でバランスを取る仕組みを、科学者が突き止めた」(2017年・英語)
- ライブサイエンス「フラミンゴが1本足で立つ理由」(2009年・英語)
- スミソニアン誌「スミソニアンに聞く:フラミンゴはなぜ1本足で立つのか」(2015年・英語)
元ソース: 2017年の実験で、死んだフラミンゴは支えなしで1本足の姿勢に立たせられることが分かった。ところが同じ遺体は、2本足では支えなしに姿勢を保てなかった

コメント
関節の構造が一本の方が安定なのさ。