雨を降らせて貯水池をいっぱいにしてみせる。降らなければ報酬はいらない——。1915年の暮れ、干ばつに悩むアメリカ・サンディエゴ市に、そんな話を持ちかけた男がいた。年が明けて間もなく雨が降り出し、やがてダムが決壊する大洪水に。市は報酬の支払いを拒み、争いは20年あまりに及ぶ裁判へもつれこんだ。自称「雨を呼ぶ男」チャールズ・ハットフィールドの話だ。
今日の知ってた?
🌧️ 1915年12月、干ばつに悩むカリフォルニア州サンディエゴ市の議会は、雨を降らせる男として知られたチャールズ・ハットフィールドに、モレナ貯水池を雨で満たせば1万ドルを払うことを、口約束で決めた。翌1916年1月に入ると雨が降り続き、1月27日にはダムが決壊。20人前後が亡くなったとされる大洪水になった(死者数は資料によって幅がある)。市は、報酬がほしいなら洪水の損害の責任も引き受けるようにと迫って支払いを拒否。争いは裁判に持ち込まれたが、報酬は最後まで支払われなかった。
背景:「雨を呼ぶ男」ハットフィールドとは
チャールズ・ハットフィールドは1875年(1876年とする資料もある)、カンザス州の生まれ。子どものころに家族で南カリフォルニアへ移り住み、大人になってからはミシンのセールスマンとして働いていた。その一方で雨を降らせる方法の研究に熱中し、23種類の薬品を混ぜ合わせた秘伝の調合を作り上げたとされる。これを木で組んだやぐらの上で蒸発させると、湿った空気や雲が引き寄せられて雨になる、というのが本人の説明だった。
もっとも、本人は「雨を作る」とは言わなかった。名乗っていた肩書きは「moisture accelerator」、訳せば「湿気を促す者」といったところだ。「雨を作るなんてばかげた主張はしない。私は雲を引き寄せるだけで、あとは雲がやってくれる」と語ったとも伝えられている。1904年ごろからロサンゼルス近郊などで、雨が降ったら報酬を受け取り、降らなければ受け取らないという成功報酬のやり方で依頼を請け負い、「レインメーカー(雨を降らせる男)」として名前が知られるようになった。
ただし、薬品を蒸発させれば雨が降るという科学的な裏づけはない。調合の中身は最後まで誰にも明かされず、第三者が効果を確かめることもできなかった。成功したとされる例も、自然に降った雨とたまたま重なっただけとみるのが一般的だ。歴史家のあいだでは、気象の記録をよく調べ、雨の来そうな時期や土地を見きわめて売り込む「天気読みのうまい人物」だったのでは、という見方がよく語られる。
もう少し詳しく
口約束で始まった仕事。1915年のカリフォルニアは厳しい干ばつに見舞われ、サンディエゴ市の水がめのひとつであるモレナ貯水池には、3分の1ほどしか水がなかったとされる。ハットフィールドは、1年のうちに貯水池を満杯にする、できなければ報酬はいらない、と申し出た。市議会は4対1でこれを受け入れたが、正式な契約書は交わされないままだった。1916年1月1日、ハットフィールドは兄弟のジョエルとともに貯水池のそばに高さ6メートルほどのやぐらを建て、作業を始める。それから数日のうちに、雨が降り始めた。
止まらなかった雨。1月中旬には激しい雨が何日も続き、下旬にはさらに嵐がやってきた。この一連の大雨は、太平洋から続けて押し寄せた複数の嵐によるものと考えられている。目標だったモレナ貯水池は、1月26日に満水となってあふれたと記録されている。そして翌27日、スウィートウォーター・ダムでは水があふれて堤の一部が崩れ、夕方にはロウアー・オタイ・ダムが決壊した。濁流はオタイ渓谷を一気に下って湾まで達し、家や畑をのみこんでいった。道路や線路、橋、電話線も流され、サンディエゴ一帯はしばらく外部から切り離された状態になった。
犠牲になった人たち。洪水による死者は20人前後とされるが、当時の推計には50人以上とするものもあり、正確な数はわかっていない。オタイ渓谷で畑を営んでいた日本人の農家も、少なくとも11人が命を落とした。サンディエゴのマウント・ホープ墓地には、オタイ・ダムの決壊で亡くなった日本人たちの慰霊碑が残されている。
払うなら、損害の責任も。ハットフィールドは約束どおり貯水池を満たしたとして、報酬を求めた。これに対して市の法務官テレンス・コスグローブは、契約書が存在しないこと、そして雨が天災ではなくハットフィールドの働きによるものだと証明できないことを理由に、支払いを拒否。そのうえで、払うとすれば洪水の損害の責任も引き受けてもらう、という条件を示した。洪水をめぐって市に寄せられた損害賠償の請求は、総額350万ドルにのぼったとされる。ハットフィールドは4,000ドルでの和解も持ちかけたがまとまらず、市を相手に訴訟を起こした。
決着は「天災」。裁判所は、あの大雨を人の力によるものではない「天災(act of God)」と判断した。ハットフィールドは洪水の責任を問われずに済んだが、同時に1万ドルを受け取る根拠も失ったことになる。争いは長引き、1938年に訴えが退けられて幕を閉じた。報酬は一度も支払われていない。
その後。洪水のあとも各地から依頼は続き、1921年にはカナダのメディシンハットとも契約を結んだとされる。しかし大恐慌で仕事は途絶え、1958年に亡くなった。薬品の調合は、最後まで誰にも伝えなかったという。なお、1956年の映画『雨を降らす男』(バート・ランカスター、キャサリン・ヘプバーン出演)は、干ばつに苦しむ町に口のうまい雨降らし屋がやってくる物語で、ハットフィールドの存在が着想のもとになったとも言われている。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
ハーメルンの笛吹き男から何も学ばなかったのか。不思議な力を持つ男に不思議な仕事を頼んで、本当にやってのけたら、ちゃんとお代を払う。昔話であれだけ念を押されてる教訓だろうに。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
笛吹き男は報酬を踏み倒されて、町の子どもたちを連れて山の向こうへ消えちゃうんだよね。ハットフィールドがそっちの仕返しに走らなくて、本当によかった。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
とはいえ、笛吹き男に追い払われたネズミの大群が暴れて町の半分を壊してたら、あの話の教訓ももう少しややこしくなってたと思う。今回はまさにそっちのパターンなんだよな。
4. 海外の名無しさん
市の言い分がよくわからない。本気で「この男は雨を降らせられる」と信じてたなら、洪水だって起こせると考えるはず。信じてないなら最初から雇わない。雇っておいて払わないのは、どっちに転んでも筋が通らないよ。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
実際には、市は「あの雨は天災で、あの男のおかげじゃない」って立場を取ったんだよ。そのうえで「どうしても払ってほしいなら、洪水の責任も認めてもらう」。逃げ道を先回りしてふさいでる感じだ。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
雨を降らせた手柄を認めた瞬間、洪水の犯人にもなるってわけか。1万ドルと引き換えに350万ドル分の損害を背負う取引なんて、誰だって断るよ。
7. 海外の名無しさん
頼まれたのは「雨を降らせて貯水池をいっぱいにすること」で、実際に雨は降ったし、貯水池もあふれるほど満たされた。「ほどほどに」なんて条件はどこにもない。次に頼むときは注文をもっと細かく決めておくべきだね。そもそも契約書すらなかったらしいけど。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
約束以上の成果を出したら、報酬がなくなったうえに責任まで押しつけられそうになる。仕事ができすぎるのも考えものだな。
9. 海外の名無しさん
英語の「make it rain」って、スラングだと札束を景気よくばらまくことを指すんだよね。市としては、雨は降らせてほしかったけど、お金のほうは1セントも降らせたくなかったわけだ。
10. 海外の名無しさん
「払わないなら、もう一回降らせるぞ」って言い返してたら伝説になってたと思う。市議会の面々も、空を見上げて震え上がっただろうな。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
当時の人にとっては全然笑えない冗談だったと思うよ。道路も線路も流されて、しばらく街ごと外から切り離されてたらしいから。こうして冗談にできるのは、100年以上たった今だからだね。
12. 海外の名無しさん
面白おかしく語られがちだけど、この洪水では20人前後が亡くなったとされてる。オタイ渓谷で畑をやってた日本人の農家の人たちも、少なくとも11人が犠牲になったらしい。サンディエゴの墓地には慰霊碑も残ってるよ。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
それは知らなかった。「雨乞い師が張り切りすぎた話」くらいに思ってたけど、海を渡ってきて畑を耕してた人たちが巻き込まれてたのか。一気に笑い話じゃなくなるな。
14. 海外の名無しさん
で、結局この人は本当に雨を降らせたの? 薬品を蒸発させて雲を呼ぶって、今の科学から見るとどうなんだろう。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
太平洋から嵐が立て続けにやってきただけ、というのが一般的な見方だよ。調合は最後まで明かされなかったから、確かめようもない。雨の来そうな時期や土地を見きわめて売り込む、天気を読むのがうまい商売人だったんじゃないかって言われてる。
16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
雨が降ったら「私のおかげ」、降らなかったら「今回はお代は結構です」。損するのは自分の時間くらいで、当たれば丸もうけ。冷静に考えると、商売のやり方としてはかなりよくできてる。
17. 海外の名無しさん
今でも飛行機からヨウ化銀なんかをまいて雨を増やそうとする人工降雨はあるけど、あれももともと雲がなければ手の出しようがないらしい。晴れた空から狙って大雨を呼べるなら、世界の水不足はとっくに片づいてるよ。
18. 海外の名無しさん
うちの街では、トラックで来た作業員が曲がった棒を2本持って道路を歩き、水道管の位置に印をつけてた。ダウジングなんて完全にインチキだと思ってたから、自分の目を疑ったよ。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
本当にただの棒だった? 地中の配管に信号を当てて位置を探る、棒みたいな形の探知機もあるよ。工事の前に専門の業者がそれで道路に印をつけていくのは、ごく普通の光景だ。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
いや、本当にただの曲がった金属の棒2本だった。胸の前に構えて道路をまっすぐ歩いて、終わったら何にもつながってないままトラックに放り込んでたから。研究だとダウジングの的中率は偶然と変わらないらしいし、たぶん別の手がかりで見当をつけてるんだと思う。
21. 海外の名無しさん
うちの大おじはダウジングで食べてた人で、水も石油も金も探してた。一族はいまもその人が見つけた油井をいくつか持ってるし、周りが「あそこには何もない」と言ってた土地で金の採掘権を取ったこともある。車で走ってて急に止まり、20分後に金の粒を持って戻ってきたこともあったとか。本人は「全部この棒のおかげ」と言い張ってたらしい。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
その金の粒、車を降りる前からポケットに入ってたんだと思うよ。本当に棒で見つけられるなら、超常的な力を証明できたら100万ドル、っていう有名な懸賞に挑戦すれば一発だったのに、ダウジングで賞金を持っていった人は結局いなかった。
23. 海外の名無しさん
裁判所の結論が「あの雨は天災」っていうのが皮肉だよね。人の仕業じゃないと認められたおかげで洪水の責任は免れたけど、そのせいで報酬ももらえない。勝ったのか負けたのか、本人にもよくわからなかったんじゃないか。
24. 海外の名無しさん
バート・ランカスターの『雨を降らす男』って映画、この人の話がヒントになってるって聞いたことがある。干ばつの町に口のうまい雨降らし屋がやってくる話で、観たときはてっきり完全な作り話だと思ってた。
25. 海外の名無しさん
本人はどこまで本気で信じてたんだろうね。インチキだとわかってたなら、あの洪水のあとで報酬を求めに行く神経がすごいし、本当に自分の力だと信じてたなら、それはそれで背負うものが重すぎる。どっちにしても、ただの笑い話では片づけられない人だと思う。
まとめ
「雨で貯水池を満たせば1万ドル」という口約束は、20人前後が亡くなったとされる大洪水と、20年あまりの裁判に行き着いた。雨は自然の嵐と重なっただけとみるのが一般的だ。コメント欄にはハーメルンの笛吹き男になぞらえたジョークや、「手柄を認めたら洪水の責任も」という市の理屈へのツッコミが並ぶ一方、日本人の農家を含む犠牲者に触れ、笑い話では済まないと受け止める声もあった。

コメント
笑い話だなw
そういう時代だったとしか。。
今のルールや価値観は一切当てはまらない