「あのラスボスの元ネタは、創業者の息子が生まれたときの経験」Steamを作った会社の1作目に隠れていた話

「あのラスボスの元ネタは、創業者の息子が生まれたときの経験」Steamを作った会社の1作目に隠れていた話 音楽・エンタメ

1998年に発売された『ハーフライフ』というゲームには、シリーズで唯一の「最終ボス」がいる。異世界に浮かぶ、巨大な胎児のような姿をした存在だ。なぜあの形なのか。デザイナーが見た悪夢でも、ホラー映画からの引用でもなかった。答えを明かしたのは、この会社の創業者本人である。

※注:FPS=ファーストパーソン・シューティング。主人公の目線がそのまま画面になる形式のアクションゲームのこと。

今日の知ってた?

🎮 1998年発売のFPS『ハーフライフ』の最終ボスのデザインは、開発元Valveの共同創業者ゲイブ・ニューウェルの息子グレイが1990年代に生まれたときの経験から着想されている。理由は、当時の彼と妻にとって「出産」が思いつく限りいちばん恐ろしいものだったから。Valveはのちに、世界中のパソコンゲーマーが使うゲーム配信プラットフォームSteamを作る会社である。

背景:『ハーフライフ』とはどんなゲームか

Valveは1996年、マイクロソフトを辞めた2人の社員、ゲイブ・ニューウェルとマイク・ハリントンが立ち上げた会社である。ニューウェルはマイクロソフトに13年ほど在籍し、初期のWindowsの開発に関わっていた。ゲームを作った経験がないところからのスタートで、その第1作が『ハーフライフ』だった。日本でも名前だけは知られているSteamは、この会社が2003年に始めたサービスで、いまではパソコンでゲームを買う場所としてほぼ標準になっている。つまり「あのSteamの会社が、いちばん最初に出したゲーム」がこれにあたる。

内容は少し変わっている。主人公のゴードン・フリーマンは兵士でも特殊部隊でもなく、研究施設に勤める理論物理学者だ。物語は、その施設で行われた実験が失敗し、別の次元とつながってしまうところから始まる。プレイヤーは白衣の研究者として、施設のあちこちに落ちているものを拾いながら地上を目指すことになる。ちなみに、この作品を象徴する武器として今も語られるのは銃ではなくバールである。扉をこじ開けるのも、箱を壊すのも、迫ってくるものを追い払うのも、だいたいこれ一本で片が付く。

そしてこのゲームが後の業界に決定的な影響を与えたのが、物語の見せ方だった。それまでのゲームは、話が動く場面になると操作を取り上げて短い映像を流すのが普通だった。『ハーフライフ』はそれをやらない。事件は全部、主人公の目線のまま、プレイヤーが自由に動ける状態で目の前を通り過ぎていく。振り向いていれば見えるし、よそ見をしていれば見逃す。この「主観のまま話を進める」やり方は以後のゲームの標準になり、いま遊ばれている大作の多くがこの作品の子孫だと言っていい。

物語の終盤、主人公は異世界へ渡り、そこで待っている大きな存在と対決する。作中でニヒランスと呼ばれるこの相手が、シリーズを通してただ一体の、はっきりとした最終ボスである。姿かたちを一言でいえば、宙に浮かぶ巨大な胎児のようなもの。プレイした人の記憶に妙に残り続ける形をしている。

もう少し詳しく

なぜあの形になったのか。ニューウェル本人が語ったところによれば、着想の元は息子グレイの誕生だった。当時の自分と妻にとって、思いつく限りいちばん恐ろしいものが出産だったからだという。ここで注意しておきたいのは、これが痛みを茶化す話ではないという点である。何が起きるか事前には分からず、母子ともに無事に終わる保証もどこにもない——出産の恐ろしさとして本人が挙げているのはそちらの側だ。人生でいちばん怖かったものを、そのまま作品の最後に置いた、という話になる。

そもそも1998年のゲームには、最終ボスがいるのが当たり前だった。ラストに強大な一体が出てきて、それを倒すと物語が終わる。当時はそれが「ゲームとはそういうもの」という共通の了解で、なければ未完成だと言われかねなかった。だから作る側は、最後に置く「いちばん怖いもの」を必ず一つ用意しなければならない。ニューウェルたちが引っぱり出してきたのが、たまたま自分たちの直近の実体験だったわけである。

興味深いのは、シリーズでボス戦らしいボス戦があるのが1作目だけだという点だ。2004年の『ハーフライフ2』以降、物語の締めくくりは大がかりな場面で見せる形に変わり、体力ゲージのある一体と正面から殴り合う構成は姿を消した。最初の作品にだけ残った名残、という見方もできる。

そして、この話には長い後日談がある。『ハーフライフ』シリーズは2007年の『エピソード2』で物語が途中のまま止まり、続きにあたる作品は今日まで出ていない。2020年にVR向けの『ハーフライフ:アリックス』が発売されたが、番号としての「3」はついていない。Valveは他の看板作品でも2までで止めることが多く、「3が数えられない会社」としてゲーマーの間ではすっかりネタになっている。今回の話が出た瞬間、海外の掲示板で真っ先に飛び出したのがこの「3」いじりだった。理由は読めばすぐ分かる。生まれた息子は、夫婦にとって家族の3人目だったからである。

作り手の私生活が作品ににじむこと自体は、それほど珍しくない。ただ普通は、後からファンが勝手に読み取って盛り上がるだけで終わる。この件が少し違うのは、作った本人が「あれは息子が生まれたときの話です」と明かしているところだ。ゲームの中で最も不気味な造形に、いちばん個人的な出来事が入っていた。四半世紀たってから知らされる側としては、なかなか落ち着かない気分になる。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
最終ボスの見た目に理由があるとは思っていなかった。てっきりデザイナーが悪夢でも見たんだろうと。まさか創業者の実体験だったとは思わないよ。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
息子さんの立場をちょっと考えてみてほしい。大人になってから父親の代表作を遊んで、最後に自分を倒すことになるわけだよ。褒められているのか怒られているのか、判断がつかないと思う。

3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
ただ「息子が怖い」という話ではないのが救いだと思っている。生まれてくること自体が怖かったと言っているわけで、むしろ真面目に受け止めていた側の人だよね。

4. 海外の名無しさん
気になったんだけど、そのときお医者さんはバールを使ったんだろうか。あのゲーム、主人公が最初に手に取る道具がバールなので、どうしてもそこに結びついてしまう。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
さすがに使ってはいないと思うけど、あったら心強かったのは確かだと思う。あのゲーム、扉も箱も向かってくるものも、困ったらとりあえずバールで何とかなっていたので。万能すぎるんだよなあれ。

6. 海外の名無しさん
ゲームの冒頭で、施設の同僚に「ゴードン、みんな待ってるぞ……実験室で」と声をかけられる場面がある。あれが「分娩室で」だったらと想像したら、急にとんでもないホラーになった。

7. 海外の名無しさん
うちは第一子の出産が本当に大変で、しばらくは思い出すのもきつかった。第二子がわりとあっさり生まれてくれて、そこでようやく気持ちが元に戻った感じがある。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
出産をあれだけ大変だと言いながら「じゃあもう一回」となるの、冷静に考えるとすごいことだよね。自分は昔ひどい交通事故に遭ったけど、二回目のほうが楽かもしれないから試してみようとは絶対に思わない。

9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
事故と違って、終わったあとに手元に子どもが残るからじゃないかな。あと人間の脳は、痛みの記憶をかなり薄めて保存するようにできているらしい。全部そのままの解像度で覚えていたら、二人目はこの世から消えると思う。

10. 海外の名無しさん(>>8への返信)
出産のときはオキシトシンをはじめとしたホルモンが大量に出て、痛みを和らげたり、赤ちゃんへの愛着を一気に強めたりする。体のほうが「もう一回いけますよ」と嘘をついてくる仕組みになっているわけだ。

11. 海外の名無しさん
出産が怖いというのは、痛みだけの話じゃないと思う。母子ともに無事に終わる保証がどこにもない、というのが本当の怖さで。そこを「いちばん恐ろしいもの」と呼んだのなら、ちゃんと分かっている人だ。

12. 海外の名無しさん
これ完全に『イレイザーヘッド』では。デヴィッド・リンチのあの映画も、子どもが生まれることへの不安をそのまま映像にしたと言われているし、発想がまったく同じところに着地している。

13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
子どもが生まれた直後に、急に不穏な作品を作り出す表現者って本当に多いんだよな。喜びと恐怖が同じ引き出しから出てきているのかもしれない。

14. 海外の名無しさん
言われてみると、シリーズであれだけがちゃんとした最終ボスなんだよな。2以降は最後に大きな見せ場はあっても、体力ゲージのある一体と正面から殴り合う形にはなっていない。

15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
1998年は、最後にボスがいないと「作りかけなのでは」と言われかねない時代だった。あとの作品はそこから自由になっただけだと思う。むしろ1作目にだけ残った当時の常識、という見方もできる。

16. 海外の名無しさん
Valveといえば、カウンターストライクもポータルもレフト4デッドもチームフォートレスも、だいたい2までで止まっている。3という数字を徹底的に避ける会社として有名なんだよね。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
家族の3人目があの姿で現れたと本人が言っているわけだから、3を怖がるようになるのも無理はない……というのは冗談だけど、あまりにきれいに話がつながってしまって笑ってしまった。

18. 海外の名無しさん
実はこのゲームを遊んだことがないんだけど、「物理学者が実験の失敗でとんでもない目に遭い、バール片手に施設から脱出する」という説明だけで急に面白そうに聞こえてきた。

19. 海外の名無しさん
あの最終ボス、今のきれいな画面に慣れた目で見ると正直そこまで怖くない。でも1998年に部屋を暗くして遭遇したときの威圧感は本物だった。技術のほうは古びても、込められた感情は古びないんだなと思う。

20. 海外の名無しさん
作り手の私生活が作品に出るのは珍しくないけど、たいていは後からファンが勝手に読み取るだけの話なんだよな。本人が「あれは息子が生まれたときの経験です」と認めているのが、この件のすごいところだと思う。

21. 海外の名無しさん
グレイさんが友達に「うちの父親が作ったゲーム、知ってる?」と言えるのは相当うらやましい。ただ「最後に出てくるあれ、生まれたときの僕がモデルらしいよ」まで続くと、途端に話がややこしくなる。

22. 海外の名無しさん
怪物のデザインに人間側の理由があると知ると、見え方がまるっきり変わってしまう。ただ怖い形をしているだけだと思っていたものが、急に「あのとき本当に怖かったもの」の記録に見えてくる。

まとめ

1998年の『ハーフライフ』でシリーズ唯一の最終ボスとして立ちはだかる存在は、Valve共同創業者ゲイブ・ニューウェルの息子グレイが生まれた経験から形になった。当時の彼と妻にとって、思いつく限りいちばん恐ろしいものが出産だったからだという。コメント欄はバールと分娩室のジョークで賑やかに始まったのに、途中から「二人目のほうが楽だった」「痛みの記憶は脳が薄めてくれるらしい」という実体験の共有に変わり、最後は「母子ともに無事とは限らないのが本当の怖さだ」というところに落ち着いていった。四半世紀ものあいだ、ただ不気味なだけだと思われていた造形に、これ以上ないほど個人的な理由があった。それを知ったあとで同じ画面を見ると、たぶんもう同じようには見えない。

元ソース: 『ハーフライフ』1作目の最終ボスは、1990年代にゲイブ・ニューウェルの息子グレイが生まれたことから着想された。当時の彼と妻にとって、出産が思いつく限りいちばん恐ろしいものだったからだという

コメント