世界でいちばん売れた歌手の一人が亡くなったとき、その名義には5億ドル(1ドル=150円換算で約750億円)を超える借金が残っていた、と報じられている。ところがそこから十数年で、その遺産は35億ドル(約5250億円)以上を生み出したとされる。生きているあいだより、亡くなってからの方が稼いでいる——海外の掲示板で、その立て直しを担った二人の名前とともに話題になっていた。
※注:この記事に出てくる金額はいずれも報道や推計に基づく数字で、円換算はすべて1ドル=150円で計算した目安。遺産の内訳がすべて公にされているわけではなく、資料によって数字にはかなりの幅がある。
今日の知ってた?
💰 マイケル・ジャクソンは2009年に亡くなった時点で、5億ドル(約750億円)を超える負債を抱えていたとされる。遺言執行者に指名されたジョン・ブランカとジョン・マクレインの二人は、高い金利の借入の組み替え、債権者からの請求の処理、そして手元に残っていた音楽関連の権利を現金の流れに変える取引を進めた。その結果、遺産はその後35億ドル(約5250億円)以上を生み出したと報じられている。死後の稼ぎが、生前の稼ぎを大きく上回るという珍しい状態になった。
背景:彼の一番の資産は「他人の曲」だった
この話を理解するには、まず彼が何を持っていたかを見る必要がある。豪邸でも、車でも、動物でもない。最大の資産は「曲の権利」だった。
彼は自分が歌った曲の権利だけでなく、ATVという音楽出版会社が抱えていたカタログを買い取っている。そこにはビートルズの楽曲が大量に含まれていた。このカタログはのちにソニーの音楽出版部門と一つになり、掲示板で引用されていた資料によれば、亡くなった時点で彼はその半分(50%)を保有していた。
※注:音楽出版権とは、曲そのもの(メロディと歌詞)の権利のこと。レコードに録音された音源の権利とは別物である。こちらを持っていると、誰かがその曲をCDやラジオ、テレビ、映画、CM、カラオケなどで使うたびに、使用料が権利者に入ってくる。自分が歌う必要も、スタジオに入る必要もない。他人がその曲を使い続けるかぎり、勝手にお金が発生する仕組みである。ビートルズの曲のように何十年も世界中で使われ続けるものだと、これはそのまま「働かなくても収入が入り続ける装置」になる。
ここが今回の話の核心である。そしてもう一つ重要なのが、この装置は借金の担保にもなるという点だ。将来ずっとお金を生むと分かっているものは、銀行から見れば極めて優秀な担保になる。掲示板では、彼がこのカタログを担保に借り入れを行い、それを支出に充てていたとされる、という指摘が繰り返されていた。
では、その支出は何に消えたのか。名前の知られたネバーランド・ランチには、遊園地の乗り物や動物園が備えられていた。動物の世話をする人間、海外の不動産、子どもたちの教育と使用人、そして周囲に集まってきた人々。掲示板のコメントを読んでいると、入ってくるお金が大きいほど、抜けていく穴の数も増えていったという構図が浮かび上がってくる。
もう少し詳しく
まず、「借金5億ドル」という数字だけを見ると話が半分になる。掲示板で引用されていた推計では、亡くなった時点の資産は約5億6800万ドル(約852億円)、負債は約3億3100万ドル(約497億円)で、差し引きの純資産は約2億3700万ドル(約355億円)だったとされる。つまり「破産していた人」ではなく、「巨額の資産と巨額の借金を同時に抱えていた人」だった。一方で裁判資料では負債が5億ドルを超えていたとも言われており、数字は資料によって食い違う。ここは断定できる部分ではない。
ただし、資産があれば安泰かというと、そうではない。問題は資産の形である。カタログも牧場も、そのままでは一円も手元に来ない。それどころか牧場は維持費を吸い続ける。そして借入には金利がつき、支払いが滞れば債権者が動き出す。資産の額ではなく、現金がいつ入っていつ出ていくかで人は詰む。彼が抱えていたのはまさにこの状態だった。
さらに、亡くなった瞬間に新しい穴が開いた。彼はその時、「THIS IS IT」と名付けられた最後の公演シリーズの準備をしている最中だった。公演が実施されなかったことで、遺産は興行主のAEGに対して約4000万ドル(約60億円)の責任を負うことになったと掲示板では説明されていた。まだ一度も行われていない公演の穴が、借金の上に乗ってきたわけである。
そこで執行者の二人が何をしたか。掲示板でいちばん丁寧に書かれていた説明をまとめると、こうなる。高い金利の借入を組み替えて利息の負担を下げ、債権者からの請求を一つずつ処理し、眠っていた権利を実際にお金が流れてくる形に作り替え、新しい収入源を立ち上げた。この過程で、保有していたカタログの持ち分や音源・出版の権利の一部が売却されている。
この売却については、掲示板でも意見が割れていた。「今もらえる一枚のクッキーを取って、あとで五枚もらえたはずの機会を捨てた」という批判がある一方で、「利息が毎日膨らむ状況で一枚目を食べ損ねたら、五枚目は永遠に来ない」という反論も出ていた。どちらの言い分にも筋が通っていて、結論は出ていない。
最後に、いちばん身も蓋もない要因も指摘されていた。本人が使わなくなったことである。収入だけはそのまま入り続け、常軌を逸した規模の支出の方だけが止まる。蛇口を閉めただけで黒字になる家計というのは本来ありえないが、この規模になると実際に起きる。
なお、35億ドルという数字の読み方には注意が必要だ。これは「今いくら持っているか」ではなく、2009年以降に遺産が生み出した収入の累計とされている。亡くなった時点の純資産(約2億3700万ドル)と並べると桁が違って見えるが、そもそも比べているものが違う。同じ資料の中でも死後の総額を24億ドル(約3600億円)とするものがあり、この手の数字は出どころによって揺れる。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
死ぬまでにこれだけの借金を積み上げるには、具体的にどうすればいいのか本気で知りたい。自分の場合、カードの請求書が一枚届いただけで胃が痛くなるんだが。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
収入に対する借金の比率で言えば、こっちの国の人間の多くはとっくに同じ領域に入っていると思う。しかも「死ぬまで返し終わらない」というのは、この話の中ではいちばん簡単な部分だよ。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
答えは単純で、持っている資産を担保にして借り続け、返さないまま死ぬこと。銀行が金を貸すのは、返せると分かっている相手だけだからね。手順の一番目が「まず資産を持つ」なのが厳しいところだ。
4. 海外の名無しさん
そもそも何にそこまで使ったのかが分からない。年収を使い切ったという話ではなく、桁がいくつも違う出費が毎年続いていたということだよね。想像がまったく追いつかない。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
私設の映画館と遊園地の乗り物と動物園、おまけに駅まで一つの敷地に揃えたら、そりゃ金は音を立てて消えていく。この手の設備は買うときより維持する方がずっと高いんだよ。
6. 海外の名無しさん(>>4への返信)
動物の世話をする人、子どもたちの学校と使用人、海外の不動産、そして周りに集まってくる人間。入ってくる金が大きくなるほど、抜けていく穴の数の方が先に増えていったんだと思う。
7. 海外の名無しさん
収入だけは全部そのまま入ってきて、常軌を逸した出費の方だけが止まる。亡くなったポップスターが最強の稼ぎ手だというのは、身も蓋もないけれど本当のことなんだよな。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
立て直しの最大の要因が「本人が使わなくなったこと」というのは冗談みたいだけど、数字の上ではかなり効いていると思う。蛇口を閉めただけで黒字になる家計なんて本来ありえないからね。
9. 海外の名無しさん
見出しの書き方がずるいと思う。借金の額だけ並べているけれど、同じ時点で本人はそれを上回る資産も持っていた。破産寸前の人が奇跡の復活を遂げた、という筋書きではないよ。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
そこは半分だけ正しいと思う。資産があったのは事実だし、「5億ドルの借金」とだけ書くのは確かに誤解を招く。ただ「執行者はただ借金を払っただけ」というのも実態とは違う。高い金利の借り入れ、支払いが滞っていた分、債権者からの請求、興行主への責任。それを一つずつ組み替えて、眠っていた権利を現金の流れに変えるところまでやって、初めてこの数字になっている。
11. 海外の名無しさん
数字が食い違って見えるのは、比べているものが違うからだよ。亡くなった時点の純資産と、その後十数年ぶんの売上の累計を並べたら、後者が大きくなるのは当たり前の話だ。
12. 海外の名無しさん
遺言執行者の名前がジョン・マクレインって、それはもう『ダイ・ハード』じゃないか※ 映画の主人公はジョン・マクレーン。綴りは違うが英語ではほぼ同じ発音になる。借金と戦う続編が作られるなら、主演は間違いなくこの人だ。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
書類の山に埋もれた机に座り、緑のバイザーを額に下ろして、手回しの計算機に手を伸ばしながら小声で「イピカイエー」とつぶやくブルース・ウィリスしか浮かばなくなった。責任を取ってほしい。
14. 海外の名無しさん(>>12への返信)
続編の舞台は音楽出版の会議室で、爆発は一切起きず、ひたすら金利の交渉が二時間続く。それでも最後にビルの窓から書類が舞い散るシーンだけは入れてほしい。
15. 海外の名無しさん
この話でいちばん面白いのは、彼の最大の資産が自分の歌ではなく他人の曲の権利だったところ。曲の権利を持っていると、世界のどこかで誰かがその曲を流すたびに、本人は何もしていなくてもお金が入ってくるんだよ。
16. 海外の名無しさん
しかもその権利は担保としても優秀なんだよね。将来ずっとお金を生むと分かっているものだから、貸す側は安心して大金を出せてしまう。使いすぎる癖のある人が持つには危険すぎる資産だと思う。
17. 海外の名無しさん
あのカタログを手放したのは今でも失敗だったと思っている。今もらえる一枚のクッキーを取って、あとで五枚もらえたはずの機会を捨てた形だ。金を作らないといけない事情は分かるんだけどね。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
当時は債権者が待ってくれる状況ではなかったし、利息は毎日膨らんでいた。五枚のクッキーというのは、一枚目を食べ損ねて全部差し押さえられたら永遠に来ないものだよ。
19. 海外の名無しさん
あまり知られていないけれど、レコード会社が自社の歌手を借金漬けにするのはよくある話。「100万ドルの契約」というのは実質100万ドルの前借りで、そこから入る印税のわずかな取り分で返していく。何百万枚売れても手元は赤字のまま、という歌手はいくらでもいる。
20. 海外の名無しさん
亡くなった時点で最後の公演の準備中で、それが飛んだことで興行主への責任まで乗ってきたんだよね。借金の上に、まだ一度も行われていない公演の穴が新しく開いた状態だった。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
そもそもあの規模の公演を組もうとしていたこと自体が、金が必要な状況だったことの証明みたいなものだよ。趣味で引き受けられる本数ではなかったと思う。
22. 海外の名無しさん
銀行とのやり取りはきっとこんな感じだったんだろう。「1000万ドル貸してほしい」「お断りします」「私はマイケル・ジャクソンだが」「かしこまりました」。名前そのものが担保になっていた時代の話だ。
23. 海外の名無しさん
結局これは、形のない資産の強さの話なんだと思う。牧場も動物も持っているだけで金が出ていくけれど、曲の権利は放っておいても毎年お金を生む。最後に残った方が勝った、という単純な結論だ。
まとめ
亡くなった時点で5億ドル(約750億円)を超える負債を抱えていたとされる遺産が、遺言執行者のジョン・ブランカとジョン・マクレインによる債務の組み替えと権利の現金化を経て、その後35億ドル(約5250億円)以上を生み出した。ただし彼は無一文だったわけではなく、掲示板では「巨額の資産と巨額の借金を同時に抱えていた人」だったという訂正が何度も入っていた。コメント欄は「どうすればこれだけ借りられるのか」という素朴な疑問から始まり、遺言執行者の名前が『ダイ・ハード』の主人公と同じだという脱線をはさみつつ、最後は「カタログを売ったのは早すぎたのでは」という議論に落ち着いていた。牧場や動物は持っているだけで金が出ていくが、曲の権利は放っておいても毎年お金を生む。この話でいちばん残るのは、たぶんその非対称さの方だと思う。


コメント
単純に借金より資産の方が多かったってだけでは