「Beam me up, Scotty(転送してくれ、スコッティ)」。『スタートレック』を見たことがない人でも、どこかで耳にしたことのある名ゼリフです。ところが、カーク船長がこの形のとおりに言った場面は、テレビシリーズにも劇場版にも一度もありません。実際に口にしたのは「Scotty, beam us up」や「Beam me up」など、どれも少しずつ違うセリフでした。
今日の知ってた?
📺 『スタートレック』の名ゼリフとして知られる「Beam me up, Scotty(転送してくれ、スコッティ)」。カーク船長はテレビシリーズでも劇場版でも、この形どおりには一度も言っていない。
🎙️ 最初のシリーズで実際に言ったのは「Beam me up」(1967年)、「Mr. Scott, beam us up」(1969年)、「Scotty, beam us up fast」(1969年)など。名前の呼び方も、「私を」か「私たちを」かも、回によって違う。
🎬 語順まで同じなのは1973年のアニメ版の「Beam us up, Scotty」。「me」まで同じなのは1986年の映画『スタートレックIV 故郷への長い道』の「Scotty, beam me up!」。どちらも、あと一歩だった。
📖 スコッティを演じたジェームズ・ドゥーハンは、1996年に出した自伝の題名を「Beam Me Up, Scotty」にした。
背景:「転送」はカーク船長の帰り道
『スタートレック』は、1966年にアメリカで放送が始まったSFドラマです。最初のシリーズ(日本での題名は『宇宙大作戦』)は1969年まで3シーズン続き、宇宙船エンタープライズ号のジェームズ・T・カーク船長(ウィリアム・シャトナー)と乗組員たちの航海を描きました。
この作品でおなじみなのが「転送装置」です。人や物を光の粒に変えて、宇宙船と惑星のあいだを一瞬で送り届けます。惑星での任務を終えたカークは、通信機で船を呼び出して「転送してくれ」と命じます。このとき名前を呼ばれることが多いのが、機関主任のモンゴメリー・スコット、愛称スコッティです。カークとスポックが船を離れているあいだは、たいてい彼が船を預かっています。英語の「beam up」は、光線(ビーム)で上へ、つまり軌道上の船へ引き上げる、という意味です。
このやりとりは、番組の外で決まり文句として広まりました。記録に残る早い例では、1975年にイギリス王立航空協会の学会誌に「一種の“beam me up Scotty”式のやり方」という言い回しが出てきます。「Beam me up, Scotty. There’s no intelligent life down here(転送してくれ、スコッティ。ここには知的生命体がいない)」と書いた車用のステッカーも出回り、アメリカの下院議員ジェームズ・トラフィカントは、議会での演説の決めゼリフに「Beam me up」を使っていました。ただ、誰がこの形で言い始めたのかは分かっていません。
もう少し詳しく
実際に言ったセリフ。最初のシリーズで、カークの帰りの合図は回ごとにばらばらでした。1967年の回(原題 This Side of Paradise)では名前を呼ばずに「This is the Captain. Beam me up(船長だ。転送してくれ)」。1968年の回(The Gamesters of Triskelion)では「Scotty!」と呼びかけ、返事を聞いてから「Beam us up」。1969年の回では「Mr. Scott, beam us up」(The Cloud Minders)、「Scotty, beam us up fast(スコッティ、大至急転送してくれ)」(The Savage Curtain)と言っています。仲間と一緒に戻る場面では、「me(私を)」ではなく「us(私たちを)」になります。
アニメと映画で「あと一歩」。1973年に始まったアニメ版(日本での題名は『まんが宇宙大作戦』)では、2つの回でカークが「Beam us up, Scotty」と言っています。語順は名ゼリフと同じで、違うのは「us」のところだけです。劇場版では、1986年の『スタートレックIV』に「Scotty, beam me up!」が出てきます。23世紀から1986年のサンフランシスコへやって来たカークが、力を貸してくれたクジラの研究者ジリアンに別れを告げ、通信機に向かって言うセリフです。ところが転送の瞬間にジリアンが飛びついてきて、そのまま一緒に船へ送られてしまいます。1994年の劇場版第7作では「Beam them out of there, Scotty!(スコッティ、彼らをそこから転送しろ)」と、今度は自分ではなく、ほかの人たちを送る命令でした。
なぜ「言っていない形」が残ったのか。はっきりした答えはありません。豆知識サイトのToday I Found Outは、雑誌アトランティックの記事を引いて、言い間違えたほうが口に出したときの響きがなめらかだから広まる、という説を紹介しています。たしかに「Beam us up, Mr. Scott」より「Beam me up, Scotty」のほうが、ずっと言いやすい形です。
本人たちも知っていた。スコッティ役のジェームズ・ドゥーハンは、1996年に作家ピーター・デイヴィッドとの共著で出した自伝に「Beam Me Up, Scotty」という題を付けました。カーク役のシャトナーは、作家夫婦のジュディス&ガーフィールド・リーヴス=スティーヴンスと共著した小説『The Ashes of Eden』(1995年)のオーディオ版で、このフレーズを自分の声で口にしています。英語版ウィキペディアは、『スタートレック』の関連作品でこの形どおりに声に出して言われたのは、これが初めてだったとしています。
日本では「チャーリー」だった。日本で『宇宙大作戦』の放送が始まったのは1969年です。このときの吹き替え版では、スコットの名前が「チャーリー」に変えられていました。理由ははっきりしませんが、ウフーラは「ウラ」、スールーは「カトウ」と、ほかの乗組員の名前も変えられています。そのため日本では、この名ゼリフが「チャーリー、転送を頼む」の形でも知られています。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
劇場版の4作目でカークが言う「Scotty, beam me up」が、たぶんいちばん近いと思う。使ってる単語はまったく同じで、並び順が入れ替わってるだけ。そこまで来たなら言い切ってほしかった。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
アニメ版だと「Beam us up, Scotty」って言ってるよ。並び順は完璧なのに、今度は「me」が「us」になってる。どっちも、1か所だけ惜しい。
3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
考えてみれば「us」になるのは当たり前で、カークはたいていスポックやマッコイと一緒に惑星に降りてるんだよね。ひとりで帰るなら「me」、みんなで帰るなら「us」。船長が自分だけ船に戻って部下を置いてきたら、それこそ大問題だ。
4. 海外の名無しさん
ダース・ベイダーも、映画の中で「ルーク、私はお前の父だ」とは言ってないしね。こういう“言ってない名ゼリフ”って意外と多い。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
実際は「No, I am your father(いや、私がお前の父だ)」。面白いのは、間違ったほうは言い方まで変わってること。みんな「ルーク、私はお前の“父”だ」と父のところを強く言うけど、本物は「いや、“私”がお前の父だ」で、重みがあるのは「私」のほう。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
でも、間違って覚えられる理由は分かる。「No, I am your father」だけを切り取って言っても、誰が誰に言ってるのか伝わらないんだよ。名前を足さないと、引用として成り立たない。
7. 海外の名無しさん
シャトナー本人もこの豆知識はちゃんと知ってて、自分が共著した小説『The Ashes of Eden』のオーディオ版で、とうとう本人の声で「Beam me up, Scotty」と言ってる。テレビでも映画でも言わなかったセリフを、放送開始から30年近くたって自分で回収したわけだ。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
子どもの頃に何冊か読んだけど、シャトナーが本当に自分で書いてるとは一度も思わなかったな。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
共著者に作家夫婦のリーヴス=スティーヴンス夫妻がいるからね。とはいえ、続編の小説では、劇場版で死んだカークを生き返らせてる。本人の思い入れが詰まってるのは間違いない。
10. 海外の名無しさん
アメリカの深夜番組でやってた「シャトナーの秘密」っていうネタの中に、好きなのがある。
「スコッティ役のジェームズ・ドゥーハンとバーで飲んだことがある。飲んでいたのはバーボンのジム・ビーム。私は身を乗り出して『ビーム・ミー・アップ、スコッティ』と言った。彼は笑ったが、どこか愛想笑いだった」
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
ドゥーハンが愛想笑いだけして、横を向いてからうんざりした顔をしてる姿がありありと目に浮かぶ。相手がシャトナーなら、たぶん一度や二度じゃなかったはず。
12. 海外の名無しさん
これ、いわゆる「マンダロリアン効果」ってやつだね。大勢が同じ形で覚え違いしてるっていう。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
マンデラ効果な。マンダロリアンが相手だったら、何を聞いても「This is the way」としか返ってこないだろ。
※ マンデラ効果:大勢の人が同じ記憶違いをしている現象のこと。南アフリカのネルソン・マンデラが1980年代に獄中で亡くなったと覚えている人が多かった(実際は釈放後に大統領を務め、2013年に死去)ことから、超常現象研究家のフィオナ・ブルームが名付けた。『マンダロリアン』は『スター・ウォーズ』のドラマシリーズで、「This is the way」は作中の決まり文句。
14. 海外の名無しさん
同じ流れでいうと、ダーティハリーも「運がいいと思うか、チンピラ?」とは言ってないんだよね。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
正しくは「自分に聞いてみるんだな。『俺はツイてるか?』ってな。どうなんだ、チンピラ?(You’ve got to ask yourself one question: ‘Do I feel lucky?’ Well, do ya, punk?)」。長いけど、こっちのほうが断然しびれる。
16. 海外の名無しさん(>>14への返信)
それって『ハリー・ポッターと賢者の石』だっけ? それとも続編のほう? ハリーがそんなこと言ってた記憶がないんだけど。
17. 海外の名無しさん
『カサブランカ』の「Play it again, Sam(もう一度弾いて、サム)」も、映画の中では誰も言ってないよね。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
イルザ(イングリッド・バーグマン)が言うのは「Play it once, Sam. For old times’ sake(一度だけ弾いて、サム。昔のよしみで)」と「Play it, Sam」。ボガートのほうは「彼女に弾いたなら、俺にも弾けるだろう」と迫って、最後は「Play it!(弾け)」。「again」はどこにも出てこない。間違ったほうが定着したのは、ウディ・アレンが1972年の映画にこの題名(邦題『ボギー!俺も男だ』)を付けたのが大きいらしい。
19. 海外の名無しさん
シャーロック・ホームズの「Elementary, my dear Watson(初歩的なことだよ、ワトソン君)」も同じ。コナン・ドイルが書いた話には一度も出てこない。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
原作でいちばん近いのは短編「背の曲がった男」(原題 The Crooked Man)で、ワトソンが「すばらしい!」と感心すると、ホームズは「初歩的なことさ(Elementary)」とひとことで返すだけ。その話にこれ以上言葉を使う気はない、って感じが逆にかっこいい。
21. 海外の名無しさん(>>19への返信)
あの形で有名になったのは映画のほう。1929年の映画『The Return of Sherlock Holmes』で、ホームズが初めてスクリーンでこのセリフを言ったとされてる。ただ、新聞や雑誌には1909年ごろからもう似た言い回しが出てたらしい。
22. 海外の名無しさん
この流れで言わせてもらう。「ジム、私は医者だ。歴史家じゃない!」
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
マッコイのその口ぐせは本物で、「医者だ、レンガ職人じゃない」「医者だ、エスカレーターじゃない」「医者だ、炭鉱夫じゃない」と、回ごとに違うものを持ち出してくる。ついでに言うと「He’s dead, Jim(死んでるよ、ジム)」も実は言ってない説を信じてたけど、調べたら何回も言ってた。マッコイの名ゼリフは、だいたい本物。
24. 海外の名無しさん
スコッティ役のドゥーハンは、カナダ軍の兵士としてノルマンディー上陸作戦に参加していて、その夜、神経をとがらせていた味方の見張りに撃たれて6発も被弾してる。右手の中指を失っていて、画面ではなるべく映らないように隠していたらしい。
25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
しかも遺灰の一部は、本当に宇宙へ行ってる。2008年にはゲーム開発者のリチャード・ギャリオットが国際宇宙ステーションにこっそり持ち込んで、2012年にはスペースXのロケットにも載った。最後の最後で、ちゃんと転送してもらえたわけだ。
まとめ
カーク船長は「Scotty, beam me up」や「Beam us up, Scotty」とは言っても、「Beam me up, Scotty」の形では一度も言っていませんでした。それでも番組の外ではこの形が広まり、スコッティ役の俳優が自伝の題名にするほどになっています。
コメント欄ではダース・ベイダーやホームズなど「実は言っていない名ゼリフ」が次々に挙がり、最後はドゥーハンの遺灰が本当に宇宙へ行った話で締めくくられました。
元ソース: カーク船長は「Beam me up, Scotty」とは一度も言っていない。似た言い方はしているが、この形どおりではなかった


コメント
テレビ版は宇宙大作戦ね。