最終コーナー、先頭集団の4人が一斉に転倒し、はるか後方をひとりで滑っていた選手がそのままゴールラインを越える——2002年ソルトレークシティ冬季五輪、ショートトラック男子1000メートル決勝で実際に起きた光景です。金メダルを手にしたのはオーストラリアのスティーブン・ブラッドバリー。日本でも「棚ぼたの金」として語り継がれていますが、その手前にどれだけのものが積まれていたかは、あまり知られていません。
※注:ショートトラックは、1周111.12メートルの短いリンクを数人が同時に滑る競技です。1レーンずつ分かれて走るスピードスケート(ロングトラック)と違い、抜くにはインを差すか外から回るしかなく、接触も転倒も日常茶飯事。妨害と判定されれば順位に関係なく失格になりますし、予選・準々決勝・準決勝・決勝と勝ち上がっていく形式のため、レースごとに「誰が転ぶか」が結果を大きく左右します。
今日の知ってた?
🥇 2002年ソルトレークシティ冬季五輪、ショートトラック男子1000メートル決勝で、オーストラリアのスティーブン・ブラッドバリーは最終コーナーの時点で最後尾だった。その目の前で前を走る4人全員が絡んで転倒し、彼はひとりで氷の上に残ってゴールした。
🇦🇺 これがオーストラリアにとって冬季五輪初の金メダルであり、南半球の国として史上初の冬季金でもあった。
🧊 しかも同じことは準決勝でも起きていた。さらに準々決勝では3位でいったん敗退が決まりながら、上位選手の失格によって繰り上がっている。決勝までの3レースすべてで、彼は「他人の脱落」に助けられて勝ち上がった。
🗣️ 帰国後、この出来事は「doing a Bradbury(ブラッドバリーする)」という言い回しになってオーストラリアに定着した。
背景:ブラッドバリーは「たまたま出ていた人」ではない
10代から代表として滑り続けていた選手です。この話が「無名の選手に運が転がり込んだ」という形で語られがちなのは、決勝の映像があまりにも劇的だからでしょう。ですが実際のブラッドバリーは、10代のころから国を代表してワールドカップを回っていた選手で、ソルトレークシティは4度目の冬季五輪でした。
すでに五輪のメダリストでもありました。1994年リレハンメル大会のショートトラック男子5000メートルリレーで、彼を含むオーストラリアチームは銅メダルを獲得しています。これはオーストラリアにとって冬季五輪初のメダルでした。つまり2002年の彼は「初めて表彰台に近づいた人」ではなく、「8年前にすでに一度上がっている人」だったわけです。
そして、二度も競技生命を絶たれかけています。1994年、レース中の接触で他の選手のスケート靴の刃が右の太ももに入り、大量に出血する重傷を負いました。輸血が必要で、縫合は100針を超えたと伝えられています。復帰までにおよそ1年半。さらに2000年には練習中に防護壁へ突っ込んで首の骨を折り、頭部を金具で固定する装具をつけたまま療養する日々を送っています。「もう滑れないかもしれない」と言われた状態から、彼は2度目の復帰を果たしています。
もう少し詳しく
決勝で最後尾にいたのは、作戦でした。2002年当時のブラッドバリーは、世界の上位には食い込むものの、金メダル候補と呼べる位置にはいませんでした。本人も、正面から競り合って勝てる速さはもう自分にはないと考えていたようです。そこで彼が選んだのが、集団の後ろにつき、混戦に巻き込まれない位置を保ったまま最後まで残るという滑り方でした。前に出れば接触の当事者になり、後ろにいれば当事者にならずに済む——ショートトラックという競技では、これは十分に成立する読みです。
準々決勝は、失格による繰り上がりでした。準々決勝で彼は3位に終わり、その時点では敗退が決まっていました。ところが上位でゴールした選手に妨害の判定が下って失格となり、彼が準決勝へ繰り上がります。順位を争って勝ち取ったものではありませんが、失格を受けずに走り切ったこと自体は彼の側の結果です。
準決勝は、決勝とほぼ同じ形でした。準決勝でもブラッドバリーは後方につけていました。そして最終盤、前を行く選手たちが絡んで転倒。氷の上に立って残っていた彼は、そのまま順位を上げて決勝進出を決めます。決勝で世界を驚かせたあの光景は、彼にとっては「30分前にも見た景色」だったわけです。
決勝で転んだ4人は、いずれも優勝候補でした。最終コーナーで絡んで氷に投げ出されたのは、アポロ・アントン・オーノ(アメリカ)、リ・ジアジュン(中国)、マチュー・チュルコット(カナダ)、アン・ヒョンス(韓国)の4人。順位を1つでも上げようと最後の直線に向けて全員が仕掛けた結果の接触でした。ブラッドバリーはその15メートルほど後ろにいて、目の前で4人が消えるのを見ながらゴールラインを越えています。
本人が残した言葉。レース後、彼はこの金メダルについて「自分が実際に勝った1分半に対してもらったものだとは思っていない。この10年、地道に積み上げてきたぶんに対してもらったものとして受け取るつもりだ」という趣旨のことを語っています。「棚ぼた」という言葉を最初に受け入れたのは、ほかならぬ本人でした。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
オーストラリアでは国民的英雄だよ。今でも「doing a Bradbury(ブラッドバリーする)」って言い回しが普通に使われてる。20年以上経つのにまだ現役の表現っていうのがすごい。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
意味としては「自分の力じゃなく、周りが勝手に潰れてくれて勝つ」ってことね。選挙で対立候補が両方スキャンダルで消えたとか、社内の昇進レースで上の二人が同時に辞めたとか、そういう場面で出てくる。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
今は企業向けの講演で立派に食べてるらしいよ。あれから何年経ったと思ってるんだ。まあ僕らはこの手の下馬評ひっくり返し話に本当に弱いからな。
4. 海外の名無しさん
あまり触れられないんだけど、まったく同じことが準決勝でも起きてるんだよね。しかもあれは彼が意図してやっていた作戦だった。決勝の1レースだけ切り取るから「まぐれ」に見えるだけで。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
正直、僕はずっと「ブラッドバリーする」の本当の意味はそっちだと思ってた。運がよかったって話じゃなくて、自分の限界を正しく見積もって、それに合わせてやり方を変えたって話。本人も「この1分半じゃなく、その前の10年ぶんの金だと思ってる」って言ってる。
6. 海外の名無しさん(>>4への返信)
そもそもショートトラックって転倒だらけの競技だからね。誰かが転ぶ前提で位置取りを考えるのは、あの種目では戦術のうちなんだよ。運はあった。でも運を拾える場所に自分を置いたのは彼の判断。
7. 海外の名無しさん
韓国系アメリカ人として、当時はテレビの前で本気で腹を立ててた。あの4人がどれだけ準備してきたかを思うとね。ただ、彼が現役中にあれだけの怪我をしながら決勝まで残っていた事実は、いくら強調してもし足りないと思う。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
その気持ちはわかる。転んだ4人にはそれぞれ4年ぶんの時間があって、あの数秒で全部終わったわけだから。彼を称えるのと、あの4人が気の毒だと思うのは、両立していい話だと思う。
9. 海外の名無しさん
首の骨を折って「もう滑れないかもしれない」と言われた人間が、2年も経たずに五輪の決勝に立ってる時点で相当おかしいんだよ。そこを飛ばして最終コーナーの話だけするのはもったいない。
10. 海外の名無しさん
太ももを刃で切って大量出血したって話が本当なら、正直そこで辞めても誰も文句を言わないと思う。スケート靴の刃って想像以上に鋭いらしいし、あれが当たる位置がもう少しずれてたらと考えるとぞっとする。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
復帰までおよそ1年半だったって。1年半って、選手として一番大事な時期を丸ごと失う長さなんだよね。そこから戻ってきて、その6年後にまた首をやって、それでもまた戻ってきてる。
12. 海外の名無しさん
1994年リレハンメルのリレーで銅を取ったチームにも彼がいたんだよ。オーストラリアにとって冬季五輪初のメダルがそれ。「どこの誰だか分からない人が優勝した」みたいな語られ方をするけど、そこは事実と違う。
13. 海外の名無しさん
「あの1分半に対してもらったメダルだとは思っていない。その前の10年に対してもらったものとして受け取る」。この言い方ができる人、そうそういないと思う。金メダルを取った直後に自分の勝ち方を正確に説明してるわけで。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
これがいちばんかっこいいところだよね。誤魔化さないし、卑下もしない。事実をそのまま置いて、それでも自分の10年は本物だと言い切ってる。
15. 海外の名無しさん
リアルタイムで見てた。五輪をちゃんと見たのって人生でこの時くらいなんだけど、彼がゴールを駆け抜けた瞬間、部屋にいた大人が全員おかしくなってた。あの叫び声は今でも覚えてる。
16. 海外の名無しさん
南半球の国が冬季五輪で金を取ったのがこれが初めてだったっていうのも地味に効いてる。雪の降らない国から来た選手が、氷の上でいちばん高いところに立ったわけで。
17. 海外の名無しさん
ブリスベンで「ラストマン・スタンディング」っていう名前のパブをやってるって聞いたことがある。本人がつけたんだとしたら、自分のネタを自分でいちばんうまく使ってることになる。
18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
店名で全部持っていくのやめてほしい。看板を見た瞬間に何の店か分かるし、分かった瞬間に笑ってしまう。
19. 海外の名無しさん
数年前に溺れていた人を助けて表彰されたという話も聞いた。あの決勝の映像だけで人物像を決めてしまうのは、たぶんずいぶん失礼なことなんだと思う。
20. 海外の名無しさん
「努力すればするほど運がよくなる」って言葉があるけど、これほど分かりやすい実例もそうそうない。運が来た時に、それを拾える場所に立っていられるかどうかの話なんだよな。
21. 海外の名無しさん
決勝の映像、最終コーナーに入るところまでは完全に「あー、これは最下位だな」って顔で見てたんだよ。そこから3秒で世界がひっくり返る。何回見ても同じところで声が出る。
22. 海外の名無しさん(>>21への返信)
実況の人が一瞬言葉を失うのがまたいい。何が起きたか処理しきれてないまま、とりあえず名前を叫んでる感じ。あれが全部を物語ってると思う。
23. 海外の名無しさん
彼を「まぐれ」の一言で片付ける人がどうにも好きになれない。まぐれで五輪の決勝には立てないんだよ。あそこにいる時点で世界の上澄みで、そのうえで自分の勝ち筋を計算していた人なんだから。
まとめ
最終コーナーで前の4人が消えたあの数秒は、たしかに彼の実力で作ったものではありません。ただ、その位置に立つまでに、太ももの重傷からの1年半と、折れた首からの復帰と、リレハンメルの銅メダルと、4度目の五輪までの十数年がありました。決勝で後方を選んだのも、勝てる速さがもう自分にはないと見切ったうえでの判断です。海外のコメント欄では「あれは運ではなく作戦だった」という擁護が大半を占めつつ、転んだ4人の側に立って悔しさを語る声もきちんと残っていて、その両方が並んでいるのが印象的でした。オーストラリアで「ブラッドバリーする」が今も使われ続けているのは、たぶん棚ぼたの部分だけでなく、そこに至るまでの粘りごと言い表せる言葉だからなのでしょう。
元ソース: 2002年冬季五輪で、前を走る4人全員が最終コーナーで転倒し、オーストラリアのスティーブン・ブラッドバリーがひとりでゴールして金メダルを獲得した話

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