電車に乗るのに、切符を買わない。バスもトラムも同じ。運賃を払うという行為そのものが、国の中からまるごと消えている場所がヨーロッパにある。ルクセンブルクだ。しかも対象は住民に限らない。
※注:ルクセンブルクはフランス・ベルギー・ドイツに囲まれた小国で、国境の向こう側に住みながら毎日この国へ働きに来る「越境通勤者」がとても多い。無料の対象としてわざわざ「通勤者」が挙がるのは、そういう国だからである。
今日の知ってた?
🚌 ルクセンブルクでは、国内のバス・電車・トラムの運賃が無料。しかもそこに住む人だけでなく、隣国から通ってくる通勤者も、旅行で訪れただけの人も同じ扱い。現地の人いわく「もう何年もこの状態」だという。
背景:ルクセンブルクという国
スレッドでは、この国の大きさが「だいたいアメリカのロードアイランド州くらい」「ロングアイランドより小さい」と説明されていた。とはいえ日本の読者にはどちらもピンと来ないので、置き換えてみる。面積はおよそ2,600平方キロメートル、神奈川県とほぼ同じ広さだ。ただし人口は70万人に届かない。県ひとつぶんの土地に、島根県ほどの人数が暮らしている——それが「国全体」の規模感になる。
もうひとつ、この国を語るうえで外せないのが通勤の形だ。仕事があるのは首都ルクセンブルク市だが、そこに住んでいない人が多い。周りの村に住んで通う人、さらには国境を越えてフランス側・ベルギー側・ドイツ側の町から毎日入ってくる人も相当な数にのぼる。人の流れが国境をまたいで往復している国、というのが前提にある。
もう少し詳しく
始まりは「優しさ」ではなく渋滞だった。スレッドで現地在住を名乗る人が書いていた説明が分かりやすい。もともとは車を減らすためにやったことだという。古い街並みが残る都市なので、全員が車で移動できるだけの道路をつくるのは、土地の面でも費用の面でも無理がある。それでいて渋滞は手に負えなくなっていた。道路を増やすより、公共交通の運賃をなくして人をそちらへ移すほうが安く済んだ、という順序である。理想から入った制度ではなく、算盤をはじいた結果としての無料化だ。
本人たちも「タダではない」と言っている。同じ人がこう続けていた。無料といっても実際には税金で払っている、と。教育や医療や治安や道路と同じ枠に入っているだけで、その払い方に多くの人が納得している、という説明だった。財源の是非や、無料化で本当に車が減ったのかどうかは、スレッドの中でも意見が割れていて、はっきりした答えは出ていない。
どこまでが「無料」なのか。ここは慎重に読む必要がある。話に出てくるのは、あくまでこの国の中の路線網だ(元の投稿も「国全体で」という書き方をしている)。国境をまたいで隣国側まで乗り通した場合に同じ扱いになるのかどうかは、スレッドでは説明されていない。むしろ先の現地在住者は、システムは完璧ではないと断ったうえで「越境路線と工事がかなりつらい」とだけ書いていて、そこは歯切れが悪かった。
そして、無料でも車は減っていないという声。別の住民は、小さい国だから公共交通で楽に動けるだろうという期待をきっぱり否定していた。国が小さいぶん街も小さく、多くの人が街の外に住んでいる。バスはあるが乗り継ぎがよくなく、本数も多くない。その結果として、この国はEUで人口あたりの車の保有台数がいちばん多い国になっている——というのが彼の見立てだ。無料という一点だけで交通が変わるわけではない、という話でもある。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
先週ちょうど行ってきたけど、ルクセンブルクのトラム、こっちのドイツで金を払って乗ってるやつよりきれいだった。無料のほうが車内が整ってるって、なかなかこたえるものがある。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
国土も人口も桁違いに小さくて、しかも飛び抜けて豊かな国だからね。ドイツと並べて「ほら見ろ」とやるには、条件が違いすぎると思う。
3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
ちなみにトラムは「路線網」じゃなくて、まだ一本しかないからな。そりゃきれいにも保てるだろう、という話でもある。
4. 海外の名無しさん
現地の人間だけど、もう何年もこの状態が続いてる。いちばんいいのは、とにかく引っかかりがないところ。どの切符を買えばいいのか、どこで買うのかを考えずに、来た電車やバスやトラムに乗って、降りたいところで降りる。それで移動が終わる。
5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
それ、旅行者にはとくにありがたいんだよね。券売機の前で路線図をにらんで、結局よくわからないまま高いほうの切符を買う、あの十五分がまるごと消える。
6. 海外の名無しさん
続き。もともとは車を減らすためにやったことなんだ。古い街並みが残る都市だから、全員が車で動けるだけの道路をつくるのは土地の面でも費用の面でも無理で、渋滞は手に負えなくなっていた。道路を増やすより、公共交通をタダにして人をそちらに移すほうが安かった、という話。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
動機が「みんなに優しくしたいから」じゃなくて「道路をつくるより安上がりだから」なのが、いちばん納得できる。理想じゃなくて算数で決めてるんだよな。
8. 海外の名無しさん
それと、無料といっても実際には税金で払ってる。教育や医療や治安や道路と同じで、そういう形でみんなが払うことに、たいていの人は納得しているというだけの話だよ。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
それ、いままで誰か勘違いしたことある?同僚が差し入れを持ってきて「休憩室にドーナツ無料」と社内チャットに書いたとき、「あれはタダじゃない、あいつが金を出してる」なんて考える人はいないだろ。
10. 海外の名無しさん(>>8への返信)
公共交通が税金で支えられてるのは、だいたいどこの国でも同じだしね。ごく一部の路線をのぞけば、運賃収入だけで黒字になる交通機関のほうが珍しい。
11. 海外の名無しさん
ルクセンブルクって、だいたいアメリカのロードアイランド州くらいの大きさだよね。それなら国じゅうを回るのにも、そんなに時間はかからなさそうだ。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
じゃあロードアイランド州は何を言い訳にしてるんだ。同じくらいの広さで、あっちはしっかり運賃を取ってるぞ。
13. 海外の名無しさん
古いベルギーのジョークがある。ベルギー人が旅行者に「今日は何をするんだい」と聞く。旅行者が「ルクセンブルクを見て回るよ」と答える。ベルギー人が言う。「で、午後は?」
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
「夕食までにリヒテンシュタインを歩いて一周できるかな、と思ってる」
15. 海外の名無しさん
1人あたり15万ドル、日本円にするとざっと2,000万円台という国だからな。そりゃいろいろ気前よくできるだろう、という気持ちも正直ある。
16. 海外の名無しさん
小さい国なんだから公共交通で楽に動けるだろう、と思うよね。違うんだ。国が小さいということは街も小さいわけで、多くの人は街の外に住んでる。フランス・ベルギー・ドイツの国境の向こう側から通ってくる人も相当いる。バスはあるけど乗り継ぎはよくないし、本数も多くない。結果として、この国はEUで人口あたりの車の保有台数がいちばん多い。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
無料にしても車が減らないの、皮肉が効きすぎてる。ただ裏を返せば、人が車を選ぶ理由は運賃じゃないところにある、ということでもあるよね。
18. 海外の名無しさん
現地の掲示板をのぞくと、こんな声もあった。「ピーク時のアルロン線は45分のあいだに3本、それを過ぎたら1時間に1本。役所勤めより長く働く人間にとっては、どれだけ『無料』でも使い物にならない」
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
交通をちゃんと知ってる人ほど、運賃は使うかどうかを決める理由としては下のほうだと言う。効いてくるのは本数と、どこまで行けるか。それなら運賃を取って、その金で本数を増やしたほうがいい場合のほうが多い。
20. 海外の名無しさん
同じ掲示板から。「制度があること自体は嬉しいし、旅行者や恩恵を受ける人のために税金を払うのもかまわない。でも自分は結局、効率よく動くために車に頼りきっている」。これがいちばん正直な感想だと思う。
21. 海外の名無しさん
スイスにも、ホテルにチェックインしていれば市内の交通が無料になる街があったはず。あっちは宿泊客向けの仕組みだけど、発想としては近いものがあるね。
22. 海外の名無しさん
セルビアのベオグラードも公共交通を無料にしてる。ヨーロッパで人口50万人を超える都市としては、たぶんあそこだけじゃないかな。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
ベオグラードのあれは、ほかのいろんな問題から目をそらさせるためだった気もするけどね。まあ、目のそらし方としてはかなりマシなほうだけど。
24. 海外の名無しさん
ロンドンはなんでできないんだ、と言いたいわけじゃない。ただ、いい取り組みを見るたびに撃ち落とす理由を探すのはもうやめて、たまには前向きに受け取ってもいいんじゃないか。
まとめ
切符を買う手間ごと消してしまった国と、それでいてEUでいちばん車が多いと言われる国。この二つが同じ場所に同居しているのが、ルクセンブルクの面白いところだった。コメント欄も「うらやましい」一色にはならず、税金の話、本数の話、国の規模の話へと散っていった。ただ、日本にも運賃を無料にしたり百円で乗れたりするコミュニティバスを走らせている自治体はある。「国ごと無料」は真似できなくても、どこまでを税金で持つのかという線引きの話としては、意外と地続きなのかもしれない。

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