「地球の生物量の大半は地表より下にある。日光を浴びている我々のほうが変わり種だ」足元の岩の中の話

「地球の生物量の大半は地表より下にある。日光を浴びている我々のほうが変わり種だ」足元の岩の中の話 自然・科学

地面を掘っていけば、いつかは生き物のいない領域に出る。そう思っていたのだけれど、どうもそうではないらしい。地表から数千メートル下、洞窟のような空洞ですらない、見た目には隙間ひとつない固い岩。その内部に微生物がいる。光は届かず、地表から落ちてくる栄養もない。それでも、そこには生きているものがいる。

※注:この記事の「微生物」は、細菌や古細菌といった、顕微鏡でしか見えない単細胞の生き物のことを指しています。

今日の知ってた?

📏 地表から数千メートル下の固い岩の内部に、微生物が生きている。洞窟の空洞ではなく、岩そのものが持つ目に見えないほど細かい隙間と割れ目、そこに薄く残った水の中にいる。彼らは光合成に一切ぶら下がっておらず、岩と水のあいだで起きる化学反応からエネルギーを取り出している。国際共同研究プロジェクト「深部炭素観測所」が2018年にまとめた見積もりでは、この地下の生息域は体積で約20億〜23億立方キロメートル、全海洋の体積のおよそ2倍にあたる。そこに含まれる生命の炭素量は150億〜230億トンと見積もられ、全人類の体を構成する炭素の数百倍になるという。

背景:太陽と縁が切れた生き方

地表の生態系は、ほぼ全部が太陽の下請けである。植物が光のエネルギーを使って二酸化炭素から有機物を作り、それを虫が食べ、鳥が食べ、我々が食べる。深海の生き物にしても、多くは上から沈んでくる有機物の粒に頼っている。たどっていけば、どこかで必ず光合成に行き当たる。

ところが、そこから完全に切れている生態系がある。日本では深海の熱水噴出孔の映像でよく知られているだろう。真っ暗な海底で熱水が噴き出している場所に、なぜか貝や巨大なチューブワームが密集している、あの光景である。あそこにいる微生物は、噴き出す熱水に含まれる硫化水素などを使い、その化学反応から取り出したエネルギーで有機物を作っている。これを化学合成という。光の代わりに化学物質を燃料にしているだけで、やっていること自体は光合成と同じ、「無機物から自分の体を作る」である。

地下深くの微生物も、この化学合成の仲間だ。ただし燃料の出どころが少し変わっている。岩に含まれるウランやトリウム、カリウムはごくわずかに放射線を出しており、その放射線が水の分子を叩き割って水素を作る。この水素と、やはり岩から供給される硫酸塩などを組み合わせると、細々とではあるがエネルギーが取れる。太陽どころか、火山の熱ですらない。岩そのものが持っている微弱な放射能が、生態系の動力源になっている。

もう少し詳しく

「固い岩の中」というのは比喩ではない。岩は、肉眼で見れば詰まった塊に見えるが、顕微鏡の目盛りで見れば鉱物の粒と粒のあいだに隙間があり、細かい割れ目が走っている。地下水はそこを通っている。微生物がいるのは、この隙間に張った水の膜の中である。洞窟の中で暮らしている、という話とは根本的に違う。動き回れる空間はなく、隣の隙間へ移ることすら簡単ではない。

1種類しかいない生態系が見つかっている。南アフリカのムポネン金鉱の地下約2.8キロメートル、東京スカイツリーを4本分積み上げてもまだ届かない深さから汲み上げられた水に、デスルフォルディス・アウダクスウィアトルという細菌がいた。水温は60℃を超え、酸素はなく、水質は強いアルカリ性(pH9.3)。驚かれたのは、その試料から他の生き物がまったく見つからなかったことだった。捕食者も競争相手も共生相手もおらず、たった1種で完結した生態系。地球で最初に見つかった例である。名前のアウダクスウィアトルは、ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』に出てくるラテン語の一節「勇敢な旅人よ、下れ。地球の中心に達するだろう」から取られている。

時間の流れ方が地表と違う。大腸菌は条件がよければ20分ほどで分裂する。ところが地下深くの微生物は、エネルギーの供給があまりに細いため、代謝そのものを極端に絞っている。陸の深部地下では、細胞が一度分裂するまでの平均時間が数百年規模と見積もられている。研究や環境によっては数か月から数十年という推定もあり、幅は大きい。それでも、我々が普段「増殖」という言葉で想像する速さとは桁が違う。人間の一生をまるごと使っても、一度も分裂しない細胞がいることになる。

どうやって調べているのか。方法は基本的に、掘る。深部炭素観測所の研究では、海底を2.5キロメートル掘り抜いた地点の試料や、大陸で5キロメートルを超える深さまで達したボーリング孔の水が使われている。金鉱山のように、もともと人が深く掘っている場所も貴重な採取地点になる。海底下の生命を探る掘削調査には、日本の地球深部探査船「ちきゅう」も加わってきた。ちなみに、この手の調査で最も神経を使うのは、掘削の過程で地表の微生物が混ざり込むのを防ぐことである。地下に生き物がいた、という報告は、まず「持ち込んだのでは」という疑いを晴らさなければ話が始まらない。

そして、この話は地球の外につながっている。火星やエウロパ(木星の衛星)に生命がいるかを考えるとき、長らく効いてきた反論は「表面が過酷すぎる」だった。放射線が降り注ぎ、液体の水は表面に安定して存在できない。だが地球で、光も届かず栄養も乏しい岩の内部に生態系が成立しているとなると、この反論の効き目はかなり落ちる。表面が住めないことと、地下も住めないことは、別の話だからだ。エウロパやエンケラドゥス(土星の衛星)は、厚い氷の下に液体の水をたたえていると考えられている。探すべき場所は表面ではないのかもしれない、という発想の転換が、地下生物圏の研究からは自然に出てくる。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
この分野の本を書いた人の講演を、亡くなる数年前に聞いたことがある。地球の生物量の大半は地表より下にある、という話だった。地表で日光を浴びて暮らしている我々のほうが、地球の生命としてはむしろ変わり種なんだと。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
面白い。ただリンク先の記事だと、地下の生命は全生物量の15%くらい、という見積もりになっていた。もっとも、細菌と古細菌に限れば90%が地下、とも書いてある。そっちの数字はたしかに圧倒的だ。

3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
数字が食い違って見えるのは、何を分母にするかで景色が変わるから。植物まで含めた全体で数えるのと、細菌と古細菌だけで数えるのとでは話がまるで別になる。そもそも地下は掘った穴の周りしか実測できなくて、あとは広い範囲へ引き伸ばした推定値だから、どの数字も幅が大きいものとして読んだほうがいい。

4. 海外の名無しさん
石油に残っている生物の痕跡が恐竜由来ではなく地下深くの微生物由来だ、というくだりが引っかかった。そもそも恐竜起源説って、誰か真面目に唱えていたっけ。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
ほぼ誰も唱えていない。「恐竜の時代にできた有機物」が、伝わるうちに「恐竜そのもの」に化けただけ。海でできたものはプランクトンやサンゴ礁が起源で、陸なら植物と細菌の遺骸が主体。学校でもそう習ったはずなんだけど、絵面の強い誤解というのはしぶとく生き残る。

6. 海外の名無しさん
もし意識を持ったまま固い岩の中に閉じ込められて生きているのだとしたら、それは相当な地獄だと思う。地獄って本当はこれのことなんじゃないか、という気がしてきた。

7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
岩の中で進化した知性なら、岩の中こそが当たり前の世界だろう。むしろ何もない空気の中に放り出されるほうが、向こうからすれば悪夢のはずだ。支えのない空間があって、しかもそこを落ちる、という概念からして恐怖でしかない。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
こっちは地上で進化したはずなんだが、それでも普通に地獄だと感じる日がある。環境に適応していることと居心地がいいことは、どうやら別々に成立するらしい。

9. 海外の名無しさん
地質の仕事をしていて一日中地下にいるけど、言われるほど悪いものじゃないよ。念のために書いておくと、自分は岩に埋まって働いているわけではない。発破でトンネルを抜いてあって、そこを歩いているだけだ。

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
そこが今回の話でいちばん誤解されるところだと思う。この微生物がいるのは洞窟でもトンネルでもなく、岩そのものの中。人が入れる空間は一切ない。ただの固い石の塊に見える岩の、粒と粒のすきまや細い割れ目に水が残っていて、そこにいる。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
「固い」の定義の問題でもあるね。流れないという意味では固いけれど、顕微鏡の目盛りで見れば穴だらけ。我々が手に取って「うん、ただの石だ」で済ませてしまう代物の中に、ちゃんと水路が通っている。

12. 海外の名無しさん
大腸菌が20分で分裂するのに対して、こいつらは一度分裂するのに何千年もかかると聞いた。同じ「生きている」という言葉を両方に使っていいのか、だんだん自信がなくなってくる。

13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
遅いからこそ持つ、という話でもある。栄養が届くまでのあいだ、集団の一部を切り離して少しずつ食いつぶしながら凌ぐ振る舞いも観察されている。動くこと自体がエネルギーの無駄なので、その場でじっとしている。

14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
そこは妙に救いのある話で、仮に地表の生き物が何かの拍子に全部消えたとしても、地下のこいつらは残る。地表がまた住めるようになったころにのこのこ上がってきて、まったく別の進化の系統を一から始めるんだろうと思うと、少し気が楽になる。

15. 海外の名無しさん
正直なところ、細菌はどこにでもいる、という話に今さら驚けない。南極の氷の中にもいる、温泉にもいる、深海の泥にもいる。岩の中にもいましたと言われても、リストが一行増えただけという感想になってしまう。

16. 海外の名無しさん(>>15への返信)
気持ちはわかるけど、今回の肝は場所じゃなくて動力源のほうだと思う。南極の氷だろうと深海の泥だろうと、地表の生態系はたどっていけば大体どこかで太陽エネルギーのおこぼれにぶら下がっている。地下の連中はそこから完全に切れていて、岩と水の反応だけで回っている。同じ「どこにでもいる」でも、意味がひとつ違う。

17. 海外の名無しさん
深海の熱水噴出孔の生態系を初めてテレビで見たときの衝撃を思い出した。光が一切届かないのに、あそこだけ賑やかだった。地下の話は、要するにあれの陸版が、とんでもない体積で足元に広がっているということなんだな。

18. 海外の名無しさん
地球の外にも生命がいる、という説の強い後押しになる話だと思う。表面が過酷だから無理だ、という理屈が、これでだいぶ弱くなった。

19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
そこは慎重にいきたい。固い岩の中で生きられることと、過酷な惑星で生命が生まれることは別問題だから。証拠が示しているのはむしろ順番のほうで、生命はまず穏やかな条件で生まれて、ずっと後になってから過酷な環境に耐える能力を身につけている。南極で人間が暮らしているのを見て、凍りついた惑星にも生命がいるはずだと言うのに近い。あり得るとは思うけど、それは証拠ではない。

20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
順番の話はその通りだと思う。ただ、だからこそ火星に望みが残るとも言える。火星はハビタブルゾーンの中にあって、液体の水があった時期がはっきりしている。穏やかなうちに生まれて、地表が干上がったあとで地下へ潜った、という筋書きはまだ潰れていない。

21. 海外の名無しさん
日本の探査船が海底の下を深く掘って、堆積物の中の生命を調べる調査をやっていたはずだ。海の底の、さらに下。そう言われると距離感が一気に狂う。

22. 海外の名無しさん
何百年に一度しか分裂しない細胞が足元に大量にいる、というのを読んで、正直かなり気が滅入った。生まれてから死ぬまでのあいだ、何も起きない。それでも生きているには違いなくて、そういう在り方が普通にあるということが、なんとも落ち着かない。

23. 海外の名無しさん
科学の半分は、実験から生命を締め出すことに費やされている。クリーンルームだの滅菌だのは全部そのためだ。シャーレを外で一度開けて閉じるだけで、一週間後には立派なカビのコロニーができている。生命がどこにでもいるというのは、そういう日常の実感の話でもある。

24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
突き詰めればただの化学反応でしかないのに、一度始まると異様にしぶとい。始めるより止めるほうにずっと手間がかかる。その意味では火に似ていると思う。

25. 海外の名無しさん
生命が一度きり発生して、以来ずっと自分を作り替えながら地球のあらゆる隙間に詰まっていった。そう考えると頭が痛くなる。ただ別の見方もあって、実は今も新しい生命が日常的に生まれていて、生まれた端から先に始めた既存の生命に食われているだけかもしれない。一度きりだったのか、毎日起きているのに気づけないだけなのか、どちらも同じくらい落ち着かない。

まとめ

地表から数千メートル下、洞窟ではなく固い岩そのものの隙間に微生物がいる。光合成とは縁が切れていて、岩の放射能が水を割って作る水素などを燃料に、化学合成でエネルギーを取る。深部炭素観測所の見積もりでは、その生息域は全海洋の約2倍の体積があるという。コメント欄でまず盛り上がったのは「洞窟じゃなくて岩の中」という一点で、地質の仕事をしている人が「自分は岩に埋まって働いているわけではない」と念を押すやり取りが面白かった。次いで、何千年に一度しか分裂しない生き方に感心する声と、正直気が滅入るという声が半々。そして最後は地球外生命の話に流れたが、「岩の中で生きられる」から「過酷な惑星にも生命がいる」へ一足飛びに進む議論には、すぐ待ったがかかった。南極で人間が暮らしているのを見て凍った惑星にも生命がいるはずだと言うのと同じだ、という指摘は的確だった。

元ソース: 地球の生命はあまりにありふれていて、地表から数千メートル下の固い岩の中にまで微生物が存在する(洞窟ではない)

コメント

  1. Reddit名無しさん より:

    現代に光合成のおこぼれにあずからない生物がいるとは考えもしなかった
    驚きだな