「6ターンの入門編を終えるのに22か月」本編は100ターン超あるらしい…誰も完走していないゲームの話

「6ターンの入門編を終えるのに22か月」本編は100ターン超あるらしい…誰も完走していないゲームの話 音楽・エンタメ

1979年にアメリカで発売されたあるボードゲームは、1回遊び終えるのにおよそ1500時間かかると言われている。1日8時間、休みなく続けたとして半年ぶんである。ところが困ったことに、その数字が正しいかどうかを確かめた人は、発売から45年以上たった今も見つかっていない。理由は単純で、最後までたどり着いた人がいないからだ。

※注:ここで扱うのは「ウォーゲーム」と呼ばれる種類の卓上ゲーム。地図を六角形のマス(ヘックス)で区切り、実在の戦史を駒と数値で再現する遊びで、1970年代の欧米には専門の出版社がいくつもあった。一般的なボードゲームと比べてルールが桁違いに細かいのがこのジャンルの標準で、これから紹介する作品は、その標準からさえ大きくはみ出した一本として知られている。

今日の知ってた?

🎲 1979年にアメリカのSPI社(シミュレーションズ・パブリケーションズ社)が発売したウォーゲーム『The Campaign for North Africa』は、1ゲームを終えるのに最大でおよそ1500時間かかると見積もられている。第二次世界大戦の北アフリカ戦役を扱った作品で、日本語の定訳はなく原題のまま呼ばれることが多い。ただしこの1500時間という数字はあくまで推定であり、最初から最後まで通して遊び切ったという記録は、いまだに一件も確認されていない。

背景:「重さ」を競っていた時代の、いちばん端にある一本

1970年代の欧米には、ウォーゲームだけを作って売っている出版社がいくつもあった。SPI社はその代表格で、機関誌に毎号ゲームを一本まるごと付けて出すという荒業を続けていた会社である。当時のこのジャンルには、ざっくり言えば「細かければ細かいほど偉い」という空気があった。戦車の型式ごとに数値を分ける。天候を毎ターン判定する。補給線が切れたら部隊が動けなくなる。そういうものを積み上げていくほど、本物に近づいたと見なされる。

『The Campaign for North Africa』は、その方向に誰よりも遠くまで走った作品として語り継がれている。設計を担当したのはリチャード・バーグという、この業界では名の知れた人物である。舞台は1940年から1943年にかけて、リビアからエジプトにかけての砂漠で繰り広げられた戦い。ドイツ・イタリア側とイギリス連邦側が、補給の細い糸を引きずりながら数千キロを行ったり来たりした、あの戦役だ。

砂漠の戦いというのは、実際のところ戦闘そのものより補給で決まる。撃ち合いの前に、まず水と燃料をどうやって前線まで運ぶかという問題がある。この作品はそこを正面から扱った。というより、扱いすぎた。推奨される人数は10人(両陣営に5人ずつ)と紹介されていて、参加者はそれぞれ担当を持つ。つまり10人で役割分担しないと処理が回らない、という前提で設計されているのである。

もう少し詳しく

まず、燃料が蒸発する。元スレッドでいちばん上に来ていたのがこの話だった。備蓄している燃料は、毎ターン一定の割合で蒸発していく。しかもその割合が国ごとに違う。理由は、国によって使っている燃料缶が違うからである。これは意地の悪い作り込みに見えて、実は史実にきちんと根がある。ドイツ軍が使っていた頑丈な燃料缶は、あまりに出来がよかったので連合軍側が鹵獲品をありがたがって使い、戦後は「ジェリカン」という名前で世界中に広まった。一方でイギリス軍が当初使っていた薄い四ガロン缶は漏れることで有名で、現地では「ぺらぺら缶」と呼ばれて嫌われていた。輸送の途中で中身がどれだけ減るかが、実際に作戦の成否を左右していたのである。それをゲームの中で毎ターン計算させる、という判断が正気かどうかは別として、着眼点そのものは的外れではない。

次に、いちばん有名な「パスタの水」の話。この作品が紹介されるとき、ほぼ必ず引き合いに出されるルールがある。イタリア軍の部隊は、パスタを茹でるために余分な水を必要とする、というものだ。連合軍側の携行食は水を使わずに食べられるので、そのぶん補給の計算が変わってくる。ただし、この話は扱いに注意がいる。ゲームの中にそういう趣旨のルールが存在するのは本当らしいのだが、「史実に忠実だからそうなっている」という部分のほうは怪しい。実際の北アフリカでイタリア軍が前線でパスタを茹でていた、という前提自体が俗説に近く、元スレッドでも歴史の質問板での検証を挙げて「これは史実ではない」と訂正するコメントが複数ついていた。設計者もそれが俗説であることを承知したうえで冗談として入れた、と紹介されている。よくできた作り話ほど長生きするという見本のような一件で、この作品でいちばん有名な要素が、いちばん史実から遠いという妙なことになっている。

では1ターンで何をするのか。元スレッドに、実際の手順を並べたコメントがあった。曰く、航空部隊の細かい処理をして記録、輸送船団の処理をして記録、天候と部隊と物資の状況を確認して記録、補給の充実度から部隊の満足度を計算して記録、反乱が起きないように物資を再配分して記録、壊れた装備を修理して記録――そこまで済ませて、ようやく自分の手番が始まる。実際の卓では両陣営が5、6人ずつのチームを組み、合議で意思決定をしていくことになる。これはコメント投稿者による説明なので細部の正確さは保証されないが、この作品を実際に触った人たちの証言はおおむねこの方向で一致している。要するに、遊んでいる時間の大半は書き取りである。

そして、誰も終わらせていない。1500時間という数字が推定のまま45年以上ひとり歩きしているのは、確かめようがないからだ。元スレッドによれば、設計に関わった人たち自身も通しで遊んではおらず、開発の途中でチームのほとんどが抜けて最後まで残ったのは一人だけだったという。部分的な検証はしたが全体は通していない、という趣旨のことを設計者が後年認めていたとも紹介されていた。二人で本気で完走に挑んでいるポッドキャストの存在も話題になっていて、その二人はまず6ターンの入門シナリオから始めたのだが、それを終えるのに22か月かかったそうだ。本編は100ターンを超える(元スレッドでは111ターンという数字が挙がっていた)。練習に約2年である。

最後に、そもそもこれは真面目に作られたものなのか。元スレッドで支持を集めていたのは「あれは半分冗談で作られた」という見方だった。リアルさを追い求めて際限なくルールを増やしていく当時の風潮を、極端まで押し進めることで皮肉ってみせた作品なのだ、という説明である。設計者にそういう意図があったと後年語られているのは事実のようで、だとすれば、この作品が今こうして「世界一複雑なゲーム」として面白がられている状況は、皮肉が完全に的中した証拠であり、同時に完全に空振りした証拠でもある。ただしこの見方にも反論はついていた。当時のこの会社の作品はどれも現在の感覚では常軌を逸した細かさで、これはその延長線上にある一番端の一本にすぎない、という指摘である。あとから「皮肉のつもりだった」と本人が語ったからといって、作っている最中まで全部が冗談だったことにはならない。どちらが正しいのかは、たぶん今となっては誰にも判定できない。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
毎ターン、備蓄した燃料がどれだけ蒸発したかを計算する。しかも国ごとに使っている容器が違うから、蒸発率も国ごとに別々に決まっている。細かさの方向が完全におかしい。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
それに付け足すと、1ターンはだいたい記録係の作業から始まる。航空隊の細かい処理をして、記録。輸送船団の処理をして、記録。天候と部隊と物資を確認して、また記録。補給の充実度から部隊の満足度を計算して、記録。反乱が起きないように物資を再配分して、記録。壊れた装備を直して、念のため記録。そこまでやって、ようやく自分の手番が始まる。

3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
それはもうゲームじゃなくて、表計算ソフトを使わない経理業務では。データ処理の仕事として給料が出るなら分かるけど、休みの日に自腹でやることではない気がする。

4. 海外の名無しさん
念のために書いておくと、1500時間というのはあくまで見積もりで、実際に最後まで遊んで確かめた記録は一件も存在しない。正しいのかもしれないし、全然足りていないのかもしれない。誰も確認していない数字が45年以上ひとり歩きしている。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
設計した側も通しでは遊んでいないらしい。しかも開発の途中でチームのほとんどが抜けて、最後まで残ったのは一人だけだったと言われている。作った本人たちが投げ出したものを、他人が遊び切れるわけがない。

6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
推奨人数が10人というのがいちばんの壁だと思う。大人を10人集めて、1500時間ぶんの予定を合わせる。これがこの作品の本当の最終ボスであって、燃料の蒸発なんて可愛いものだよ。

7. 海外の名無しさん
イタリア軍だけ余分に水が要る、という話が好きだ。パスタを茹でるのに水が必要で、連合軍側の携行食は水なしで食べられるから、そのぶん補給の計算が変わってくるらしい。史実に忠実だからそうなっていると聞いた。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
そこは毎回誤解されるところで、ルールとして実在するのは本当なんだけど、史実の裏付けのほうは怪しい。実際の北アフリカでイタリア軍がパスタを茹でていたという前提そのものが俗説で、設計者もそれを承知のうえで冗談として入れたと紹介されている。よくできた作り話ほど生き残る。

9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
歴史の質問板でも同じ話が何度か検証されていて、結論はだいたい同じだった。おかしいのは、この作品を紹介する記事のほとんどがパスタの話から入ることで、いちばん史実に近くない部分がいちばん有名になっている。

10. 海外の名無しさん
二人がかりで最後まで遊ぼうとしているポッドキャストがあって、まず6ターンの入門シナリオから始めていた。それを終えるのに22か月かかったそうだ。練習に約2年である。

11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
入門で6ターンということは、100ターンを超える本編は単純計算で三十年以上かかることになる。始めた人が終わりを見られる保証がない娯楽って、もう遊びというより大聖堂の建設と同じ枠組みじゃないか。

12. 海外の名無しさん
ちょっと待ってほしい。実際の北アフリカ戦役って3年で終わっているんだよな。再現するほうが本物より時間がかかるって、シミュレーションとして何かが根本的に間違っている気がする。

13. 海外の名無しさん
そもそも大真面目に作られた作品ではない、というのが一番大事なところだと思う。リアルさを競って際限なくルールを増やしていく風潮への皮肉として作られたもので、それが今こうして「世界一複雑なゲーム」として面白がられているのは、皮肉が完全に成功した証拠であり、同時に完全に失敗した証拠でもある。

14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
うちの父が持っていて、子どものころ意味も分からずルールブックを読み込んでいた。地図と表を眺めているだけで一日が終わるくらい夢中だった。それが冗談で作られたものだと、今このスレッドで初めて知って少し動揺している。

15. 海外の名無しさん(>>13への返信)
冗談と言い切るのは行き過ぎだと思う。当時のあの会社の作品はどれも今の感覚では常軌を逸した細かさで、これはその延長線上にある一番端の一本というだけだ。後から本人が「皮肉のつもりだった」と語ったからといって、作っている最中まで全部が冗談だったとは限らない。

16. 海外の名無しさん
長さより深刻なのは、ルールがところどころ噛み合っていないことだと聞いた。何時間、下手をすれば何週間も進めたところで矛盾に突き当たって、どこまで戻ればいいのか分からなくなる。長いだけなら根性で押し切れるが、これは根性ではどうにもならない。

17. 海外の名無しさん
計算の部分を全部コンピュータにやらせる補助ツールを作れば、案外ふつうに遊べる作品になるんじゃないか。人間がやらされているのは判断ではなくて集計なので、そこは機械の仕事だと思う。

18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
それをやった瞬間に、この作品が持っている唯一の価値が消えると思う。人間がどこまで面倒に耐えられるかを試す装置なので、面倒を機械に外注したら、あとにはただの地味な戦略ゲームが残るだけだ。

19. 海外の名無しさん
自分がこの名前を知ったのは海外ドラマの『ビッグバン★セオリー』で、出産を待つ間の暇つぶしにこれを提案する場面だった。周りが誰も乗ってこないので、言い出した本人が全員のぶんの手番を嬉しそうに進めていた。あの場面、今なら異常さがよく分かる。

20. 海外の名無しさん
1500時間というのは、大手の航空会社で旅客機を飛ばすために必要とされる飛行時間の目安とだいたい同じだ。一本遊び終えるころには、その道のプロと同じだけの時間をこのゲームに注いだことになる。

21. 海外の名無しさん
昔、この会社の作品が好きな友人の家に行ったら、床という床が紙の地図で埋まっていた。全部ひとりで両陣営を動かしていて、確か第三次世界大戦を想定した作品だったと思う。いい奴だったけど、ちょっとおかしかった。

22. 海外の名無しさん
結局これは、遊ぶためのものというより読むためのものなんだと思う。ルールブックを開いて、燃料が蒸発する表とパスタの水の項目を眺めて、こんなものを本気で設計した人間がいたのかと感心して閉じる。それで十分に元は取れている。

まとめ

1979年にSPI社から発売された北アフリカ戦役のウォーゲーム『The Campaign for North Africa』は、1ゲームに最大およそ1500時間かかると見積もられながら、最後まで遊び切った記録が今も確認されていない。燃料は国ごとに違う率で蒸発し、イタリア軍はパスタのぶんの水を余計に必要とする――ただし後者は史実というより、当時のリアル志向に対する皮肉として入れられた冗談だったらしい。コメント欄は「これはゲームではなく事務作業だ」という呆れと、「入門シナリオだけで22か月」という実例と、「冗談と言い切るのは行き過ぎ」という擁護が入り混じり、最後は遊ばれることを前提としていない設計図を眺める楽しさ、という話に落ち着いていた。

元ソース: 史上最も複雑なボードゲームのひとつとされる『The Campaign for North Africa』の話。1ゲームを終えるのに最大1500時間かかるという

コメント

  1. Reddit名無しさん says:

    ありゃ単純に戦闘するのに必要な燃料運ぶのからやるゲームで
    補給に使うトラック自体が燃料消費するのも含めて
    全ての要因が網羅されてるけど手間がかかりすぎるんだよ。