「前作のあの役をもう一度? ですが確か……いえ、なんでもありません」死んだはずの悪役に届いた続投オファー

「前作のあの役をもう一度? ですが確か……いえ、なんでもありません」死んだはずの悪役に届いた続投オファー 音楽・エンタメ

続編を作るとき、ふつうは前作を見る。見ないまま作りはじめると何が起きるかというと、前作で死んだはずの悪役に「もう一度あの役をやってください」というオファーが飛ぶ。1995年のハリウッドで実際にそういうことがあったらしい、という話が海外の掲示板で掘り返されていた。しかも役を降ろされた俳優は、一度もカメラの前に立たないまま75万ドルを受け取っている。

※注:ここで出てくる「プレイ・オア・ペイ契約」は、出演したかどうかに関係なく報酬の支払いが確定する取り決めのこと。俳優はその期間、ほかの仕事を断ってスケジュールを空けることになるので、制作側の都合で降板になっても報酬は守られる。ハリウッドではごく普通に使われている。

今日の知ってた?

🎬 1995年の映画『暴走特急』(原題 Under Siege 2: Dark Territory)のキャスティングで、プロデューサーのジョン・ピーターズが、俳優ゲイリー・ビジーに前作と同じ悪役での続投を持ちかけたと伝えられている。ところがビジーが演じたその役は、前作『沈黙の戦艦』(1992年)の劇中ですでに命を落としていた。つまりピーターズは、前作を見ないまま続編のキャスティングを進めていたことになる。ビジーは最終的に降板となったが、すでに交わしていたプレイ・オア・ペイ契約により、1本も撮らずに75万ドル(当時のレートでおよそ7000万円)を受け取ったとされる。

背景:『沈黙の戦艦』と、その続編

1992年の『沈黙の戦艦』は、スティーヴン・セガールの名前を世界中に広めた作品である。退役間近の戦艦が乗っ取られ、船内に取り残された元特殊部隊の料理長がたった一人で反撃する——という、いま並べて書くと身も蓋もない筋書きなのだが、狭い船内という舞台設定がうまく効いていて、この手のアクション映画としては評判がいい。

この映画を支えているのが、二人の悪役だった。トミー・リー・ジョーンズが演じた元政府側の男と、内側から乗っ取りに手を貸す副長クリル。クリルを演じたのがゲイリー・ビジーである。軍服の下に妙な緊張感を抱えた男を、笑っているのか怒っているのか分からない表情で演じきっていて、この作品でいちばん記憶に残る顔だという人は多い。そしてクリルは、映画の終盤で死ぬ。ここが今回の話の要点になる。

3年後に作られた続編が『暴走特急』だ。今度の舞台は列車で、走行中の車両を乗っ取った一味が、それを移動基地にして軌道上の軍事兵器を掌握しようとする。ちなみに日本では、1作目が当たったあとにセガールの主演作へ内容と関係なく『沈黙の◯◯』という邦題が付けられていくことになるのだが、直系の続編であるこの作品だけは『暴走特急』というまったく別の題で公開されている。原題を知らないと続編だと気づけないという、これはこれで妙な話である。

もう少し詳しく

問題は、順番だった。キャスティングというのは、俳優のスケジュールを押さえるところから始まる。押さえるということは契約を交わすということで、契約を交わした時点で報酬の支払いはほぼ確定する。今回のようにプレイ・オア・ペイの条項が入っていれば、その後で企画がひっくり返ろうが役が消えようが、俳優には約束された額が支払われる。理不尽に見えるかもしれないが、俳優の側からすれば「あなたのために数か月空けておきます」という約束の対価なので、これがないと誰も他の仕事を断れない。

つまりこの一件では、確認より先に契約が済んでいた。「前作でその役は死んでいます」と誰かが指摘した時点で、支払いの義務はもう発生していたわけである。ビジーは降板し、75万ドルだけが残った。1995年の為替でおよそ7000万円。当時のアクション映画の制作費から見れば致命傷というほどではないが、確認作業を一つ飛ばした代償としてはなかなかの額だ。

ジョン・ピーターズという人は、それはそれで有名な人物である。もともとはバーブラ・ストライサンドの担当をしていた美容師で、そこから映画製作に転身し、『スター誕生』(1976年)や『バットマン』(1989年)といった大作を手がけた。同時に、企画の場での要求が独特なことでも語り草になっている。実現しなかった『スーパーマン』の企画で「主人公を空に飛ばすな」「巨大なクモと戦わせろ」と言い張ったという逸話は、関係者の証言としてくり返し語られてきた。ただし、こうした話はどれも当事者の回想として伝わっているもので、本人が認めた記録があるわけではない

今回の逸話も、その扱いには少し注意がいる。この話が広まった出どころはエンタメ系メディアの記事で、指摘されているとおりピーターズは『暴走特急』の主要スタッフとしてクレジットされていない。プロデューサーが誰だったのか、どの段階での出来事だったのかについては、語られ方に幅がある。一方で、降板した俳優にプレイ・オア・ペイで報酬が支払われること自体は業界では珍しくない。「ハリウッドの制作現場では、その程度の行き違いが起こりうる」という部分が事実で、細部は語り継がれるうちに整えられた、というあたりが実情に近いのだろう。掲示板でもそこは冷静に突っ込まれていて、笑いながらもソースを疑う声が並んでいた。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
オファーを受けた瞬間の会話を想像してしまう。「前作のあの役をもう一度? ですが確かあの人は……いえ、なんでもありません。ええ、スケジュールは空いております」。この間の取り方だけで一本コントが作れると思う。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
75万ドルを差し出してくる相手の間違いを、わざわざ正しにいく人間はいないよ。自分だったら黙って契約書にサインして、家に帰ってから声を出して笑う。訂正するのは小切手が現金になったあとでいい。

3. 海外の名無しさん(>>1への返信)
「わかりました、では小切手の名前のつづりだけは間違えないようにお願いします」まで言えたら大したものだと思う。この手の話でいちばん強いのは、最後まで何も聞かなかった人なんだよな。

4. 海外の名無しさん
続編を作ると決めた人間が、前作を2時間見る時間すら取れなかったということ? その2時間を惜しんだ結果として支払われた金額が7000万円相当なんだから、時給としては歴史的な水準だと思う。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
一応かばっておくと、今回の題材は「走っている列車を乗っ取って、そこを拠点に軌道上の軍事兵器を奪う」という話なんだ。この企画書に最後まで目を通した人がいたかどうかも、正直かなり怪しいところだと思う。

6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
きっと会議で第3幕の話に入るたびに誰かが別のビジネスの話を始めて脱線していたんだよ。そして12回目に脱線したあたりで「脱線……そうだ、列車だ!」と誰かが言い出して舞台が決まった。全部つながっている。

7. 海外の名無しさん
そもそも「死んでいる」というのは、その気になればいくらでも回避できる障害だと思う。瀕死の重傷から生還した/死を偽装して身を潜めていた/双子の兄弟が復讐に来た。好きなものを選んでくれ、どれでも通る。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
いちばん手軽な二つを忘れているよ。回想シーンと夢の場面だ。これなら死んだままの設定を一切いじらずに顔を出せるし、脚本を書き直す必要すらない。予算的にも優しい。

9. 海外の名無しさん(>>7への返信)
自分は双子に一票を入れたい。この手の映画で双子が出てくると、だいたい何の説明もないまま同じ顔の人間がもう一人立っているだけで押し切られるので、いちばん手数がかからない。

10. 海外の名無しさん
みんな驚いているけど、この路線の続編なら死んだ悪役を史上もっとも雑な理屈で復活させても誰も文句を言わなかったと思う。むしろ、理屈を用意しようとした形跡すら残らない可能性のほうが高かった。

11. 海外の名無しさん
似た話でマイケル・シャノンのがあるよね。別の映画でゾッド将軍をもう一度やってくれと言われて、「あの、僕の役は死んでいるんですけど、そこはご存じですよね?」と聞き返したと本人が語っていた。同じ空気を感じる。

12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
ただ、そっちには多元宇宙という万能の言い訳が用意されていたからまだ話が早い。今回は1995年で、そんな便利な逃げ道は誰も持っていなかった。純粋に確認を怠っただけというのが味わい深い。

13. 海外の名無しさん
ジョン・ピーターズって、あの巨大グモの人だよね? 美容師からプロデューサーになって、企画の場に呼ばれるたびに巨大なクモを出そうとすることで知られている、あの人で合っている?

14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
その人で合っている。新しい逸話を聞くたびに必ず巨大グモを提案しているんだ。最近知ったところでは、ニール・ゲイマンの『サンドマン』を映像化する話のときにも同じ提案を持ち込んだらしい。ぶれない。

15. 海外の名無しさん(>>13への返信)
皮肉なのは、実際に巨大なクモが登場した『ワイルド・ワイルド・ウエスト』では、あれはもともと脚本にあったもので、彼はむしろ外そうとしていたという話があること。人生でいちばん報われなかった瞬間だと思う。

16. 海外の名無しさん
面白い話なのは分かるんだけど、この件はもう少しまともな出典が欲しいところ。そもそもジョン・ピーターズは『暴走特急』のクレジットに名前が載っていないんだよ。誰の話なのかという部分から怪しい。

17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
その指摘はもっともだと思う。ただ、降板した俳優にプレイ・オア・ペイで報酬が渡ること自体は本当によくある話なので、骨格の部分は起きていて、誰がやらかしたかの部分だけ語り継がれるうちに入れ替わった、というのがありそう。

18. 海外の名無しさん
逆の例を挙げると、ニコラス・メイヤーは『スター・トレック』を一度も見たことがない状態で監督に呼ばれている。それで最初にやったのが、撮影所からフィルムを借りてきて、まず全部きちんと見ることだった。

19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
そこから書き上げたのが『スター・トレックII カーンの逆襲』で、いまだにシリーズ最高傑作と言われているのがすごい。知らないこと自体は罪じゃなくて、知ろうとしないことが問題なんだと分かる好例だと思う。

20. 海外の名無しさん
1995年なら、その辺のレンタルビデオ店に行けば前作は普通に棚に並んでいたはずなんだよな。数百円と2時間で防げた事故だったと考えると、なんだかその時代の空気まで一緒に思い出してしまう。

21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
あの頃のビデオ屋のアクション棚、いま思い出しても宝の山だった。背表紙の並びを端から見ていくだけで一日つぶせたし、こういう続編ものは大抵1作目と2作目が隣り合わせで置かれていたよ。

22. 海外の名無しさん
ここで一つだけ言っておきたい。ゲイリー・ビジーは1988年にヘルメットを着けずにバイクで事故を起こして、頭に重い怪我を負っている。その後の彼の様子をネタにして笑うのは、この話の趣旨からずれていると思う。

23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
同感だよ。彼はその後も俳優を続けているし、後遺症を抱えながら仕事をしている人を茶化すのは筋が悪い。今回の件で笑うところがあるとすれば、それは確認を怠った側であって、話を持ちかけられた側ではない。

24. 海外の名無しさん
ここまで散々な言われようだけど、1作目は本当によく出来ているんだよ。舞台が船の中だけで完結していて、悪役が二人とも魅力的で、主人公が強すぎる以外に文句のつけようがない。彼の出ている場面はどれも良かった。

25. 海外の名無しさん(>>24への返信)
分かる。あの映画で彼が女装して現れる場面、いまだに覚えている。たしか「俺が精神鑑定を受けるべき人間に見えるか?」と真顔で聞いて、相手が眉一つ動かさずに「まったく」と返すやり取りだった。90年代のこういう潔さ、今の映画にはもう無い。

まとめ

前作を見ないまま続編のキャスティングを進めた結果、すでに劇中で死んでいる役に続投オファーが飛び、契約だけが先に成立してしまった——というのが今回の話である。ゲイリー・ビジーは降板しながら、プレイ・オア・ペイ契約に守られて75万ドル、当時のレートでおよそ7000万円を受け取ったとされる。

コメント欄は「訂正しないのが正解」というやり取りから始まり、死んだ役を復活させる方法をみんなで真面目に考え出すという妙な流れになり、途中で「そもそも出典が弱い」という冷静な指摘が入って軌道修正されていた。

そして最後は、俳優本人の怪我を茶化すべきではないという声と、それでも1作目は本当に良かったという昔語りで静かに落ち着いている。雑さを笑いながら、その雑さごと当時の映画を愛している人たちの集まりだった。

元ソース: 1995年の『暴走特急』のキャスティングで、プロデューサーのジョン・ピーターズは、その役が前作ですでに死んでいることを知らないままゲイリー・ビジーに続投を依頼した。ビジーは後に降板したが、締結済みのプレイ・オア・ペイ契約により75万ドルを受け取った

コメント