カリフォルニアの森のどこかに、高さ116メートルの木が立っている。世界一高い木として名前だけは有名なのに、その場所を教えてくれる地図はどこにもない。案内板は立てられず、近づけば罰金と禁錮が待っている。木を守るための措置なのだが、そこに至った経緯がなかなか苦い。
※注:この記事の「セコイア」は、北カリフォルニアの海岸沿いに生えるレッドウッド(沿岸セコイア)のこと。内陸のシエラネバダに生えるジャイアントセコイアとは別の種類です。
今日の知ってた?
📏 世界一高い木として知られているのは、カリフォルニア州のレッドウッド国立州立公園に立つセコイア、ハイペリオン。高さは約116メートル(380フィート)で、東京タワー(333メートル)のおよそ3分の1にあたる。ところが位置情報がネット上に広まって見物人が押し寄せ、根元が踏み固められて周りのシダが生えなくなった。公園は2022年、この一帯への立ち入りを全面的に禁止。破って入った場合、最大5,000ドルの罰金と最長6か月の禁錮が科される。
※ 5,000ドルは1ドル150円換算でおよそ75万円。為替によって上下します。
背景:レッドウッドとはどんな木か
レッドウッド(沿岸セコイア)は、北カリフォルニアからオレゴン州南部にかけての、霧の多い海岸沿いの帯にしか自生していない木である。地球上で最も高くなる樹種で、100メートルを超える個体が一本や二本ではなく、何十本も確認されている。寿命も長く、樹齢2,000年を超えるものがある。
名前が似ていてよく混同されるジャイアントセコイア(セコイアデンドロン)は、内陸のシエラネバダ山脈に生える別の種類だ。こちらは高さでは劣るが幹が桁外れに太く、体積で世界最大の木「シャーマン将軍」はこの仲間である。高さで一位のハイペリオンと、大きさで一位のシャーマン将軍は、そもそも種が違う。この2つを同じものだと思っている人はかなり多い。
そして、いま残っているレッドウッドの原生林は、かつてあったもののごく一部にすぎない。19世紀の材木ブーム以降に大半が伐り出され、手つかずのまま残っているのは全体の5%程度とされる。ハイペリオンは、切られなかった側に偶然入っていた一本ということになる。
もう少し詳しく
ハイペリオンが見つかったのは2006年である。2人のナチュラリストが谷の斜面で発見し、計測したところ、それまで世界一とされていた木を上回った。ちなみに、この木の梢はキツツキに傷つけられており、そのせいで上へ伸びるのが止まったのではないかとも言われている。もしそれがなければ、記録はもう少し伸びていたかもしれない。
なぜ「足元を歩かれる」だけで木が弱るのか。レッドウッドは、あの高さに対して意外なほど根が浅い。地中深くに太い主根を下ろすのではなく、地表近くに根を広く張り巡らせて体を支えている。土の中には水と空気の通り道になる細かな隙間があるのだが、人が繰り返し歩くとこの隙間がつぶれて、地面が固く締まってしまう。すると根は呼吸ができず、雨も染み込まなくなる。周りのシダが生えなくなったというのは、その土がもう植物を支えられない状態になったという合図だった。加えて、見物人が置いていったゴミや排泄物の処理も、公園側の重い負担になっていた。
そして2022年、公園はハイペリオン周辺を全面立入禁止にした。踏み跡が消えるまで人を入れない、という判断である。違反者には最大5,000ドルの罰金と最長6か月の禁錮。木一本のために刑事罰まで用意したことになるが、逆に言えば、そこまでしないと止まらないところまで来ていた。
この話、日本にも見覚えがある。屋久島の縄文杉も、見物客が根元まで歩いて回ったことで土が踏み固められ、木が弱ることが問題になった。現在は幹に近づくことはできず、少し離れた木製の展望デッキから眺める形になっている。登山道にも木道が敷かれ、人の足が直接地面と根に触れないようにしてある。「柵を作るのは人が悪いからではなく、人数が多いから」という点で、カリフォルニアの判断と発想は同じである。悪意のある破壊者を締め出す話ではなく、善意の見物客が一人ずつ足す小さな圧力の合計を、どうにかして減らす話なのだ。
木はどこまで高くなれるのか。じつは、高さには物理的な天井がある。木は根から吸い上げた水を、幹の中の細い管を通して梢まで運んでいる。ところが高くなるほど水を引き上げる力が足りなくなり、ある高さで葉が十分な水を受け取れなくなる。この限界はおよそ120〜130メートルあたりと見積もられており、116メートルのハイペリオンは、樹木という仕組みの上限にかなり近いところまで来ていることになる。世界一の記録がなかなか塗り替えられないのは、単に大きな木が見つからないからではなく、そもそもこれ以上の背丈が原理的に難しいからでもある。
位置を伏せられている「世界一」は、ほかにもある。現存する世界最古級の木とされるブリッスルコーンパイン(イガゴヨウの仲間)は、同じくカリフォルニアの山中にあるが、こちらは案内板すら立てられていない。どの木がそれなのかは公表されておらず、目の前を通り過ぎても気づかないようになっている。理由はハイペリオンとまったく同じで、名前と場所が結びついた瞬間に人が集まってしまうからである。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
あれは本気の警告だよ。入口の案内所でレンジャーに「探そうとすら思わないでください」と真顔で言われた。代わりに勧められたのがモナークという木で、こっちは幹の周りに木道が作られていて、根元を踏まずに間近で見上げられる。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
あの一帯の木はどれも理解を超えた大きさなんだよな。世界一かどうかなんてどうでもよくなる。あれだけ巨大なものが生きていて、しかも自分より何百年も長くそこに立っていたという事実だけで、しばらく声が出なくなる。
3. 海外の名無しさん
木の名前としては最高にかっこいい。ヒュペリオンはギリシャ神話の巨神の名前で、太陽神ヘリオスの父にあたる。何百年も黙って立ち続けている木につける名前として、これ以上のものは思いつかない。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
同じ名前のSF小説シリーズもある。邦題も『ハイペリオン』で、巡礼者たちが順番に自分の身の上話を語っていく構成が『カンタベリー物語』を下敷きにしているやつ。あれを読んだ後だと、この木の名前が急に重く聞こえてくる。
5. 海外の名無しさん(>>3への返信)
逆に「トレヴァー」とでも名付けておけばよかったんだ。わざわざゲートを越えて川を渡ってまで、トレヴァーという名前の木を見に行く人間は世界に一人もいない。名前を格好よくしすぎたのが敗因だと思う。
6. 海外の名無しさん
この木がすごいのは間違いないんだけど、同じくらいの巨木を自分たちは95%切り倒してしまったんだよな。いま残っている原生林は、かつてあったものの二十分の一しかない。ハイペリオンはたまたま生き残った側の一本だ。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
しかも切り倒した木の相当な量を、燃やして灰にして畑の肥料にしていた。アメリカの東部や中部には、樹齢200年を超える森がほとんど残っていない。その上でアマゾンの伐採を批判しているわけで、あまり気持ちのいい話ではない。
8. 海外の名無しさん
世界最古とされる木も同じくカリフォルニアにあるんだけど、あっちは案内板すら立っていない。ラベルも標識もなし。行っても、どれがその木なのか絶対に分からないようになっている。今回の件を見ると、その判断は正しかったとしか思えない。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
前にその森へ行ったとき、南カリフォルニアから来たという女性が古木の枝をぼきぼき折っていて、思わず怒鳴ってしまった。「枯れて見えるし、癒しのエネルギーがあるから問題ない」と返された。五千年生きてきた相手を折っておいて、悪いと思っていないのが一番きつかった。
10. 海外の名無しさん
「最大5,000ドル」の「最大」がよくないと思う。この書き方だと、運がよければ数百ドルで済むと読む人が必ず出てくる。一律で罰金5,000ドル、加えて拘留、くらいでちょうどいい。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
正直、金銭の罰則はもう抑止力になっていない。動画の再生数で5,000ドル以上稼げる人間にとって、それはただの経費だ。撮影機材のレンタル代と同じ欄に書かれて終わる。
12. 海外の名無しさん
余談だけど、フロリダ州の最高地点ブリトン・ヒルは標高345フィート、約105メートルしかない。つまりカリフォルニアの木一本のほうが、フロリダのどの土地よりも高い場所にある。文字にすると相当おかしい。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
ニューオーリンズの最高地点は海抜27フィートだそうです。登頂を目指される方には、酸素ボンベとシェルパをご用意しております。
14. 海外の名無しさん
悪意のある人間の話に見えるけど、実際はそうじゃないのが怖いところだと思う。一人一人はただ木を見に来て、足元を歩いて、写真を撮って帰っただけ。それが何千人分積み重なると地面が締まって下草が消える。人数そのものが害になるという例だ。
15. 海外の名無しさん(>>14への返信)
こういうのを「愛され死に」と呼ぶんだったと思う。憎まれて壊されたわけじゃなくて、好かれすぎて壊れる。景色のいい場所がだめになるときは、だいたいこのパターンだ。
16. 海外の名無しさん
全面封鎖はやりすぎだと思っている。誰も見られない自然を守っても、それを守りたいと思う人間が次の世代に育たない。柵と木道を作って、決められた場所からなら見上げられるようにするほうが、長い目では効くはずだ。実際、隣のモナークはその方式でうまくいっている。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
気持ちは分かるけど、あの場所に木道を敷くには、工事のために一度地面を踏み固めることになる。ボーイスカウトで教わったのは、とにかく道を外れるなということだった。自分一人なら跡は残らないと思っても、同じことを思いついた人が今週だけで何百人もいる。
18. 海外の名無しさん
封鎖前に一度あの谷まで行った。ゲートのある未舗装路を7、8マイル進んで、それなりに幅のある川を渡って、道のない斜面を探す必要がある。結局こちら側の岸から眺めて帰ってきたけど、周りの木も十分に巨大で、それで満足だった。
19. 海外の名無しさん
罰金も禁錮も冒さずにハイペリオンを見たいなら、写真を集めているサイトがある。写真は一枚も存在しないと聞かされてきたので、普通に何枚もあって驚いた。ただ、周りの木の枝に隠れて全体像がどうしても写らない。あれは実物を見てもたぶん同じなんだろう。
20. 海外の名無しさん
そもそも「世界一高い木が見つかりました」と発表したのが失敗だったのでは。順位をつけて名前をつけた瞬間に、記録を集めたがる人が湧いてくる。隠せば隠すほど探したくなるのが人間なので、最初から何も言わないのが一番よかった気がする。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
実際、位置情報がネットに出回るまでは静かなものだったらしい。何百年も何事もなく立っていた木が、座標が公開されてからの十数年で足元をだめにされた。壊れるときは本当にあっという間なんだな。
22. 海外の名無しさん
一番高い木はハイペリオン、体積で一番大きい木はシャーマン将軍、一番古い木はそのどちらとも違う木。しかも全部カリフォルニアにある。一つの州でよくそこまで独占できるものだと思う。
23. 海外の名無しさん
何百年も嵐と山火事に耐えて立ってきた木の足元が、人間が十数年見に行っただけでだめになった。そう考えると、立ち入り禁止は罰というより、単に物理的に必要だっただけに見えてくる。会いに行けない世界一が一本くらいあってもいいと思う。
まとめ
ハイペリオンは高さ約116メートル、東京タワーのおよそ3分の1にあたる世界一高い木で、2022年から周辺への立ち入りが全面的に禁止されている。理由は破壊行為ではなく、見物客が根元を歩き回ったことで土が踏み固められ、シダすら生えなくなったことだった。コメント欄は「罰則が甘い」「金額では止まらない」という厳罰派から、「見られない自然を守っても守り手が育たない」という封鎖反対論まで割れたが、レッドウッドの原生林が95%失われている事実が出てきたあたりから、みんな少し静かになった。屋久島の縄文杉が木道と展望デッキ越しにしか見られなくなった経緯とも、きれいに重なる話である。
元ソース: 世界一高い木として知られるカリフォルニアの116メートルのセコイア「ハイペリオン」は、見物客に根元を踏み固められてシダが生えなくなり、2022年に一帯が完全に立ち入り禁止となった

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