19世紀のヴィクトリア朝イギリスの監獄では、何の役にも立たないハンドルを1日6時間ひたすら回させる「クランクマシン」という刑罰があった。砂の入った箱の中でカップを引きずり回すだけで、生産物はゼロ。なぜ国家がわざわざこんな機械を発明し、囚人にやらせていたのか。海外掲示板の反応とともに、無意味な労働の歴史をたどってみる。
今日の知ってた?
📏 ヴィクトリア朝イギリス(19世紀)の監獄で使われた「クランクマシン」は、砂の入った箱に取り付けられたハンドルを、囚人が1日6時間ひたすら回し続ける刑罰だった。箱の中ではカップが砂をかき混ぜるだけで、何も生産しない。ノルマは1日1万回転前後で、達成しないと食事抜き。看守がネジで負荷を強められたため、看守は今でも俗語で「screws(ネジ)」と呼ばれる。
背景:「役に立たない」ことが目的だった
クランクマシンが登場したのは1840年代のイギリス。当時、監獄の労働といえば縄ない・船舶用ロープのほぐし作業など、何かしら成果物が出るものが主流だった。しかし「囚人の罰は苦しみそのもので完結すべき」という思想から、あえて何も生み出さない労働として設計されたのがこの装置だ。
背景にあったのは、当時の「プロテスタンティズムと労働倫理」の極端な解釈。困窮している人や罪を犯した人は「怠惰のせい」と見なされ、まずは過酷な労働で「真面目さ」を証明させてから初めて支援や減刑の対象になる、という発想。クランクマシンはその思想を機械に落とし込んだ典型例とされている。
もう少し詳しく
1日1万回転、達成できなければ夕食抜き。標準的なノルマは午前中に5,000回転、午後に5,000回転で計1万回転。装置によっては回転計が付いていたが、多くは「カチカチ」という音だけで看守が監視していた。回転を止めると音が消えるため、サボると即座にバレる仕組みだった。
看守の俗称「screws(ネジ)」の由来。クランクマシンには負荷を調整するネジが付いていて、看守はそれを締めることで囚人にとって機械を重くできた。気に入らない囚人にはネジをきつく締めて懲罰的に苦しめた。これが転じて、看守そのものを「screws」と呼ぶスラングが英語に定着した。
有名な犠牲者・オスカー・ワイルド。作家オスカー・ワイルドは1895年に同性愛の罪でレディング監獄に2年間収監され、クランクマシンと類似のトレッドミル労働を経験した。出所後に書かれた『獄中記』『レディング監獄のバラード』では、無意味な労働が人間の精神をどう蝕むかが詳細に描かれている。19世紀末にはこの種の刑罰の非人道性が問題視され、20世紀初頭までに廃止された。
※注:トレッドミルは現代のフィットネス機器ではなく、当時の監獄で使われた巨大な踏み車のこと。囚人が階段状の輪を踏み続ける装置で、これも基本的に何の生産物もなかった。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
これ「何の役にも立たない」って言われてるけど、実際は熱力学第二法則のおかげで熱を発生させていた。エネルギーは無駄になっていない、ジュール換算で言えばわずかながら部屋を温めていたわけだ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
カップが砂をかき混ぜると、看守の机の隣のヒーターがほんのり温かくなる仕組みだったかもしれない。だとしたら経済合理性はあった。
3. 海外の名無しさん
プロテスタンティズム的労働倫理の極致だな。重要なのは「努力したかどうか」であって、「何かが生まれたかどうか」じゃない。これ、現代の「忙しいフリ」の原点かも。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
正確には「貧しい人や罪人は怠惰のせい」って前提から、まずは骨の折れる労働で『支援される資格』を証明させようっていう発想。今でもこの考え方を持ってる人がいるからゾッとする。
5. 海外の名無しさん
私のクランクマシンは1日7時間回ってる、なんちゃって(在宅勤務している人)。会社に行って意味のある仕事をしているフリで時間を潰してると、たまに当時の囚人と本質的に何が違うんだろうって考える。
6. 海外の名無しさん
「囚人を制御する一番の方法を考えたぞ。怒らせて、退屈させて、しかもムキムキに鍛え上げよう」っていう発想、控えめに言って正気じゃない。出所したらそりゃ社会の脅威になる。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
コナン・ザ・グレートが大量生産されるシステムだ。映画の冒頭シーンって本当にこれだったよね。岩を回す巨大な装置で主人公が肉体改造される、あれ完全に当時の刑罰の延長線上にある。
8. 海外の名無しさん
中学生時代のあだ名が「クランクマシン」だった。めちゃくちゃ動き続けて何も生み出さないって意味で。ちょっと言い得て妙すぎてつらい。
9. 海外の名無しさん
ジムと変わらないじゃんって思ったけど、ジムは自分でお金払うって違いがあった。むしろ刑罰よりひどい契約してる現代人。
10. 海外の名無しさん
看守が「screws(ネジ)」って呼ばれるようになった由来がこれだって初めて知った。負荷を強めるネジを締める行為がそのまま看守の俗称になった、っていう語源の生々しさ。
11. 海外の名無しさん(>>10への返信)
看守がネジをきつく締めると、囚人は同じ回数を回すのに何倍も力が必要になった。気に入らない囚人にはこっそりネジを増し締めして地獄を見せる、なんてこともあった。陰湿。
12. 海外の名無しさん
当時すでに歯車や滑車で機械を動かす技術はあったのに、わざわざ何も生み出さない装置を作ったのが本当に意味不明。技術的には小型発電機にだってできただろうに。
13. 海外の名無しさん(>>12への返信)
「無意味さ」が刑罰の本質なんだよ。役に立つ仕事をさせちゃったら、それは労働であって罰じゃない。苦痛だけを純粋蒸留することが目的だった。
14. 海外の名無しさん
シーシュポスの神話の現代版だな。神々から永遠に岩を山頂に押し上げ続ける罰を課された男、あれを大量生産で再現してたのがヴィクトリア朝イギリス。
15. 海外の名無しさん
回転数の確認方法が「カチカチって音が止まったら止まってるのが分かる」って原始的すぎる。電子カウンタなんてない時代だから、ひたすら聞き耳を立てる看守と、サボれない囚人。
16. 海外の名無しさん
オスカー・ワイルドが類似の刑罰を経験して、出所後に「これを知っていれば、もっと楽しめたのに」と言ったというジョークがある。彼の獄中記を読むと、笑い事じゃない過酷さが伝わってくるけど。
17. 海外の名無しさん
現代の営利刑務所のオーナーがこれ見たら卒倒するだろう。これだけの労働力を商業利用してないなんて信じられない、って。皮肉なことに、19世紀の方が「労働の商業化」に対して倫理的に慎重だったとも言える。
18. 海外の名無しさん
似た発想で「飢饉の壁」っていうのがアイルランドにある。1840年代のジャガイモ飢饉のとき、政府が支援する代わりに「とにかく何でもいいから労働しろ」と要求して、何の意味もない壁を作らせた。今も野原に立ってる。
19. 海外の名無しさん
要は、苦しみを与えること自体が目的。今でも「他人に苦しみを与えるのが社会のためになる」と本気で思ってる人は多いから、19世紀の話だと笑えない。
20. 海外の名無しさん
1日に1万回転の砂粒シーシュポス、6時間続くと右腕だけ筋肉モリモリの囚人ができあがる。出所後に治安が悪化したっていう記録もあったとかなかったとか。
21. 海外の名無しさん
シーシュポス1人分の永遠の罰を、100万人の囚人で並列処理してた感じ。神々の罰を国家がDIYで実装するヴィクトリア朝イギリス、本当に治安維持の発想が独特。
22. 海外の名無しさん
このクランクマシンが廃止されたのは20世紀初頭。理由の一つは、出所後に囚人が「鍛えられすぎて」社会で危険になるという問題が表面化したから。ある意味、罰として失敗していた。
23. 海外の名無しさん
日本人にとってのクランクマシンって、たぶん通勤電車だ。1日2時間揺られて、特に何も生まないけど苦痛だけはある。19世紀のイギリス人が見たら「我々の発明が継承されている」と感動するかもしれない。
24. 海外の名無しさん
ノルマが1万回転で、達成できなかったら夕食抜き。これ食事を「報酬」として吊り下げてる時点で、行動経済学の負の見本市だ。報酬と罰のバランスが完全に崩れてる。
25. 海外の名無しさん
無意味な作業を強制される苦痛のレベルは、現代でも研究テーマになっている。心理学では「無目的労働」が精神に与える影響は、過酷な仕事より大きいとも言われる。クランクマシンは19世紀がそれを直感的に知っていた証拠。
まとめ
1日6時間、1万回転、何も生まない砂の箱。クランクマシンは「労働は本来生産的なもの」という現代の常識を真っ向から否定し、純粋な苦痛そのものを目的化した装置だった。看守を「screws」と呼ぶ英語スラングや、シーシュポス的な無意味労働の象徴として、19世紀の刑罰思想を今に伝えている。コメ欄では現代の通勤・在宅勤務・ジム通いとの比較ネタが続出していて、私たちが意外と当時と変わらない構造の中で生きていることも見えてきて、笑えるような笑えないような気分になる。


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