食卓に並ぶ黄色いマーガリン。実はあの色、生まれつきの色ではなく「売るために塗られた色」だったのをご存じだろうか。1880年代、白くてラードそっくりだったマーガリンに、商人たちはバターに似せるための黄色い染料を加え始めた。それを猛烈に嫌った乳業ロビーは、各州で着色禁止法を次々と通し、ついには「自宅で自分で混ぜさせる」という奇妙な商品まで生み出すことになる。今日はその、バターと食用油の100年戦争を覗いてみよう。
今日の知ってた?
🧈 1880年代、マーガリンは売上アップのために黄色く着色された。元々はラード(豚脂)のような白色。乳業界はこれを猛反対し、米国の多くの州で着色マーガリンの販売を禁止。これに対抗してW.E.デニソン社は、白いマーガリンと黄色い染料カプセルをセットにして販売し、「消費者自身が家で混ぜる」という抜け道商品をヒットさせた。
背景:マーガリンとは何だったのか
マーガリンは1869年、フランスのイポリット・メージュ=ムリエという化学者が、ナポレオン3世の依頼で「軍隊と貧困層向けの安いバター代用品」として発明した。原料は牛脂(後に植物油)と脱脂乳で、バターより圧倒的に安く、保存もきいた。やがて産業革命下の都市労働者の食卓に急速に広まる。
しかし、その「安くてバターに似ている」点こそが、乳業界には脅威だった。当時のバター価格はマーガリンの2〜3倍。安価な代用品が市場を席巻すれば、酪農家は廃業に追い込まれかねない。乳業ロビーは「マーガリンは偽物だ、消費者を欺いている」という論法で各州議会に働きかけ、19世紀末から20世紀にかけて、米国では着色マーガリン規制、課税、表示義務、そして州によっては販売そのものの禁止までが行われた。
もう少し詳しく
「ピンク色マーガリン法」という珍法律。ニューハンプシャー州は一時期、マーガリンをピンク色に着色することを義務付けた。プロイセン(ドイツ)に至ってはマホガニーブラウン(赤茶色)。理由は単純で、見た目を不味そうにして、誰もバターと間違えないようにするためだった。
カプセルを揉む子どもたち。各州の着色禁止に対抗してデニソン社などが売り出したのが、白いマーガリンの袋に赤い染料カプセルが乳首のように一つ載った商品。袋を破らないようにカプセルだけを潰し、手で揉んでマーガリン全体に色を行き渡らせる。これが当時の子どもの「お小遣い仕事」だった。1セントや5セントもらって、ひたすら袋を揉む。
カナダではマーガリン解禁が憲法問題に。カナダでも長年マーガリンは違法だったが、1948〜49年にニューファンドランド州が連邦に加わったとき、すでに同地ではマーガリンが合法だった。そこで「ニューファンドランドはマーガリンを持ち続ける権利を有する」という条項を憲法に盛り込んだ末、結局カナダ全土で解禁される流れになった。ケベック州では、なんと2008年まで「白いマーガリン」が義務付けられていた。
「オレオ」と呼ばれた時代。マーガリンは正式には oleomargarine(オレオマーガリン)と呼ばれ、当時の祖父母世代は「オレオ」と短く呼んでいた。古いレシピ本に「オレオ大さじ2」と書かれていて首をかしげる、というのは英語圏のあるあるネタである。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
ニューハンプシャー州なんて、一時期マーガリンを「ピンク色」にすることを義務付けてたんだぞ。誰が好き好んでピンクのトーストを食べるんだよ。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
プロイセンに至っては「マホガニーブラウン」(赤茶色)を要求してたらしい。なお、現代のドイツは今でもバター大国というオチ。
3. 海外の名無しさん
ウィスコンシン州ではマーガリンが何年も違法だった。今でも年配の人たちは当時の話を懐かしそうにする。「マーガリン密輸の時代」みたいに。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
ウィスコンシン在住だけど、ここでレシピに「マーガリン使って」と言うと、わりと真剣にキレられる。「うちは酪農州だぞ」って。
5. 海外の名無しさん(>>3への返信)
他州でマーガリン買って車で帰る途中に職質されて「違法物質所持」で逮捕される図を想像してしまった。クラックかよ。
6. 海外の名無しさん
当時のマーガリンは色んな訴訟を抱えていた。今思えば、乳業界がここまで本気で潰しにかかった食品ってマーガリンくらいじゃないか。
7. 海外の名無しさん(>>6への返信)
今で言うと、植物性ミルクや培養肉に対する反応と全く同じ構図。国によっては「アーモンドミルク」と呼ぶことすら禁止されて「アーモンドドリンク」表記になってる。業界は常に競合を潰そうとする、それだけの話。
8. 海外の名無しさん
うちの祖母は1939年生まれだけど、子どもの頃の「初めての仕事」がマーガリン揉みだったと言ってた。袋に入った白いマーガリンに染料カプセルが付いてて、それを潰して全体に色を行き渡らせる係。1個揉むごとに1セントとか5セントもらえたんだって。
9. 海外の名無しさん(>>8への返信)
祖母が言うには、袋の上に乳首みたいに赤いカプセルが載ってたらしい。実は黄色の染料って、混ぜる前は赤く見えるんだそうだ。それを指でつぶして、ひたすらマッサージするように揉み込む。子どものお手伝い感あって、ちょっと楽しそう。
10. 海外の名無しさん
カナダもマーガリンは違法だった。1948〜49年にニューファンドランドが連邦に加わったとき、そこではマーガリンが合法だったから、「ニューファンドランドのマーガリン権」を憲法条項に書き加える羽目になった。それが結果としてカナダ全体の解禁につながったらしい。
11. 海外の名無しさん
ケベック州なんて、白いマーガリンが義務だったのが2008年まで。21世紀の話だぞ。乳業ロビー、強すぎだろ。
12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
50年代60年代のプレーリー(カナダ西部)でも染料カプセル方式が普通だった。乳業ロビーが強い地域では本当に長く続いてたんだな。
13. 海外の名無しさん
マーガリンは正式には「オレオマーガリン」って呼ばれてた。うちの祖父母は「オレオ取って」って略してたから、「お菓子のオレオか?」と混乱した記憶がある。古いレシピ本にも「オレオ大さじ2」とか普通に書いてあるよ。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
古いアメリカのレシピで「oleo」って単語見て、最初なんの暗号かと思った。バター代用品のことだったとは。
15. 海外の名無しさん
ノルウェーで2011年にバター不足が起きて、500グラム1パックが数百ドルまで高騰したことがある。みんなスウェーデンまで車で買い出しに行って、密輸して10倍の値段で売りさばいた。ついには税関でバター検査が始まったらしい。21世紀の話なのに、まるで禁酒法時代。
16. 海外の名無しさん
アメリカのバターが白っぽいのには理由があって、牛をトウモロコシ中心で育ててるからビタミンDが少ない。だから後から添加してる。グラスフェッド(牧草飼育)のバターは天然にビタミンDが多くて、深い黄色なんだ。色そのものが品質を語ってる。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
だから「黄色いバター」が当たり前だった国の人から見ると、白いマーガリンは余計に「偽物っぽい」と映ったわけか。乳業界が黄色着色を必死で止めにかかった理由が分かる気がする。
18. 海外の名無しさん
正直、マーガリンって栄養面では悪くない選択肢なんだよな。多価不飽和脂肪酸が豊富で、コレステロールを下げる効果が繰り返し示されてる。オメガ3強化タイプもある。バターの飽和脂肪酸を避けられる、というだけでも価値はある。「超加工食品で体に悪い」と思い込んでる人が多いけど、データはむしろ逆。
19. 海外の名無しさん(>>18への返信)
そう言いつつ、2020年からマーガリンのトランス脂肪酸はほぼ完全に除去されてるって最近知った。昔のイメージのままアップデートできてない人、多そう。
20. 海外の名無しさん
そもそも「植物性ミルク」を「ミルクと呼ぶな」って論争、構図がマーガリンの黄色禁止と完全に同じ。150年経っても人類は同じことやってる。
21. 海外の名無しさん(>>20への返信)
ココナッツミルクなんてめちゃくちゃ昔からその名前で呼ばれてる。今さら「ココナッツドリンクと呼べ」とか誰も言わない。結局、業界の利害でルールが歪んでるだけ。
22. 海外の名無しさん
ピンクのマーガリンを塗ったトーストを朝食に出されたら、たぶん子ども泣くと思う。「サーモンペーストかと思ったらマーガリンだった!」みたいな悲劇が起きる。
23. 海外の名無しさん
野球選手のボブ・ユーカーが昔ジョークで言ってたな、「俺は両親がイリノイ州までオレオマーガリン買い出しに行ってる途中に生まれた」って。マーガリン密輸が日常だった時代を象徴する一発ネタ。
24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
当時のアメリカは州ごとに法律が違って、隣の州に「合法マーガリン買い出しツアー」が普通にあったらしい。今で言うとガソリンや酒を隣州に買いに行くノリ。
25. 海外の名無しさん
マーガリンの歴史を辿ると、結局のところ「色」って商品の本質じゃないのに、人間はそこで戦争を始めるんだなって思う。白いマーガリンも黄色いマーガリンも、味も成分も同じなのに。見た目だけで100年揉めた人類、ちょっと愛おしい。
まとめ
1880年代、白いマーガリンを売れるバター色にするための着色——たったそれだけの工夫が、米国とカナダで100年以上続く法廷闘争を生んだ。ピンク色義務、マホガニーブラウン義務、染料カプセル付き「自宅で混ぜる商品」、そしてカナダ憲法を巻き込んだ州際騒動まで。コメント欄では「植物性ミルクや培養肉を巡る今の論争と全く同じ構図」という冷めた指摘が目立つ一方、子どもの頃にカプセルを揉んでお小遣いを稼いだ祖母の思い出話のような、温度のあるエピソードも多く集まっていた。色という些細な属性に、産業の生死と消費者の選択が重ねられていく——食の歴史の縮図のような一件である。


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