「外野の巨大ペンキ缶にホームランが入ったら100万ドル寄付します」本当に入ったのに1ドルも出なかった理由…?

「外野の巨大ペンキ缶にホームランが入ったら100万ドル寄付します」本当に入ったのに1ドルも出なかった理由…? 文化・社会

「外野に高さ3メートルの巨大なペンキ缶を置きます。この中にホームランが入ったら、100万ドル寄付します」——アメリカ大リーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの本拠地で実際に行われていた企画です。そして数年後、打球は本当に缶の中へ入りました。それでも寄付は行われませんでした。理由は、告知文に書かれていた「on the fly」という三語だけだったのです。

※注:「on the fly」は野球でよく使う言い回しで、「ノーバウンドで」の意味。外野からの送球が地面に触れずに届くことも「on the fly」と言います。日常英語では「その場で臨機応変に」という意味で使われる表現ですが、野球の文脈では意味が一つに定まります。

今日の知ってた?

🎨 エンゼルスの本拠地の外野には、高さ約10フィート(約3メートル)、口の直径が約8.5フィート(約2.6メートル)の巨大なペンキ缶が置かれていた。エンゼルスの選手が打ったホームランがノーバウンドで缶に入れば、球団の慈善財団に100万ドルを寄付する——2014年に始まったこの企画で、数年後、打球は実際に缶の中へ収まりました。ただしグラウンドで一度弾んだあとだったため、条件の「ノーバウンドで(on the fly)」を満たさず、寄付は行われませんでした。

背景:外野に「的」を置くアメリカの球場

アメリカの球場では、外野フェンスとその向こう側が丸ごと広告の舞台になっています。看板が並ぶだけでなく、「ここに当てたら」「ここに入れたら」という的そのものをスポンサーが持ち込む。掲げられる数字も派手で、100万ドルの寄付、新車一台といった規模が普通に出てきます。前提にあるのは、達成される確率がきわめて低いこと。まず起きないからこそ、大きな数字を出せるわけです。

今回のペンキ缶を最初に置いたのは、シャーウィン・ウィリアムズではありませんでした。フラジー・ペイントという西海岸の塗料メーカーが、2014年シーズンのスポンサーになったのを記念して外野に設置したものです。条件は当時から「ノーバウンドで缶に入れば」。その後フラジーはシャーウィン・ウィリアムズに買収され、企画はそのまま引き継がれました。

※注:シャーウィン・ウィリアムズはオハイオ州クリーブランドに本社を置く、アメリカ最大手の塗料メーカー。日本では建材向け・業務用が中心で一般の知名度はそれほど高くありませんが、現地ではホームセンターの塗料売り場に必ず並ぶ看板ブランドです。地球儀の上からペンキを流しかけるという、かなり強烈なロゴでも知られています。

球場の名前そのものも、アメリカでは早くからスポンサーの領域でした。エンゼルスの本拠地は1966年に「アナハイム・スタジアム」として開場し、1998年から電力大手エジソン・インターナショナルが命名権を取得して「エジソン・インターナショナル・フィールド」に。契約が終わった2004年からは「エンゼル・スタジアム」に戻っています。球場に企業の名前が付いたり外れたりするのは日本でもすっかり見慣れた光景になりましたが、向こうではその歴史がもう一世代ぶんほど長いのです。

もう少し詳しく

「ノーバウンドで」は、あとから持ち出された言い訳ではありませんでした。スレッドで何人もが指摘していたのが、2014年の告知文です。缶を置いた当初のリリースには「缶の口の直径は8.5フィート。エンゼルスの選手が打ったホームランがノーバウンドで缶に入れば、財団のためになる」と、はっきり書かれていました。打球が缶に入ったのは、そこから3年以上あとのこと。条件は最初から公開されていたわけです。ここは、スポンサー側を擁護するコメントの根拠にもなっていました。

ただし、「これは無効だ」と誰が判断したのかは、はっきりしません。スレッドで参照されている記事に載っているのは、その一発は条件を満たさないという球団側の説明で、シャーウィン・ウィリアムズ自身が支払いを断ったと明言した文章は見当たらない——という指摘も出ていました。打ったのはエンゼルスのジャスティン・アプトンだとスレッドでは語られていますが、日付や試合まで特定できる情報は出てきていません。ネットで語り継がれる話にありがちな、細部が曖昧なまま形だけ整っていくパターンでもあります。

そして、この手の企画には保険がかかっています。スレッドで最も納得を集めていたのがこの説明でした。「達成したら100万ドル」という企画で、企業が自腹の100万ドルを金庫に用意しているわけではありません。賞金保険(プライズ・インデムニティ保険)という商品があり、企業は達成確率に応じた保険料を払っておく。万一達成されたら、賞金を用意するのは保険会社のほうです。ゴルフのホールインワン賞が典型例で、日本でも「ホールインワン保険」の名前で知られています。

保険が絡むと、条件の一文が一字一句まで効いてきます。実際に払うのが保険会社である以上、支払い条件を詰めるのも実質的には保険会社です。ホールインワン賞なら「ホールの距離が規定ヤード以上であること」「同伴者が一定人数いて目撃していること」「事前に登録した参加者であること」といった条件が細かく並び、一つでも外れれば支払われません。今回の「ノーバウンドで」も、まさにその種の一行だったのではないか、というのがスレッドの見立てでした。あくまで推測ではあるものの、条件の書きぶりがいかにも保険の文面らしいのは確かです。

※注:同じ「ホールインワン保険」でも、日本とアメリカでは中身がまるで違います。日本でおなじみのものはゴルファー本人が加入するタイプで、ホールインワンを達成したときの記念品代や祝賀会の費用といった出費を補償するもの。アメリカで話題になるのは、賞品を出す主催者側がかける保険のほうです。

日本の球場の企画と並べてみると、設計思想の違いが見えてきます。日本のプロ野球でおなじみなのは、試合後のお立ち台で活躍した選手に協賛企業から賞品が贈られる「◯◯賞」の形でしょう。お米や調味料や焼肉券が手渡される、あの光景です。金額は小さくても、毎試合ほぼ確実に誰かが受け取ります。対してアメリカのこの手の企画は、まず達成されない前提で桁の大きな数字を掲げ、話題性のほうで元を取る設計になっています。どちらが良いという話ではありませんが、まれに達成されてしまったとき何が起きるかは、今回のとおりです。

海外の反応

1. 海外の名無しさん
要するに、企画にかけていた保険が「ノーバウンドじゃない」という理由で下りなかった、という話だろうね。会社が財布を開ける開けない以前の問題で、そもそも払う側は保険会社だったはずだ。

2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
そう、スポーツ会場でよくある「100万分の1」系の賞金は、ほぼ全部が保険で裏打ちされてる。保険会社は達成確率を計算したうえで保険料を決めているから、「達成」の定義に遊びを一切残さない。曖昧な条件のまま引き受けたりはしないんだ。

3. 海外の名無しさん(>>2への返信)
ブルズの試合であったハーフコートシュートの企画がまさにそれだった。選ばれた観客がハーフラインから見事に決めたんだけど、その人が大学でバスケを1学期だけやっていたことが分かって、保険会社が「経験者は対象外だ」と支払いを渋ったんだ。最終的には払われたはずだけど、裁判までいったのか球団が肩代わりしたのかは覚えてない。

4. 海外の名無しさん
これ、2014年の最初の告知文の時点で「ノーバウンドで」と明記されてるんだよ。しかも缶を置いたのは買収前のフラジーという別の会社だ。弾んだから無効というのは、あとから思いついた言い訳じゃなくて、最初からそう書いてあったという話。

5. 海外の名無しさん(>>4への返信)
条件として正しいのは分かる。分かるんだが、それでも払っておけばよかったと思うよ。100万ドルで一生語り継がれる美談が買えたのに、実際に語り継がれてるのは正反対の話なわけで。

6. 海外の名無しさん
バウンドして入る可能性を想定していたからこそ、わざわざ「ノーバウンドで」と書いたわけだよね。それなら「ノーバウンドなら100万ドル、ワンバウンドなら10万ドル」みたいに段を作っておけばよかったのに。そうすれば全員が笑顔で終われた。

7. 海外の名無しさん
一度グラウンドで弾んでるんだから、条件としては入ってないだろ。ゴルフじゃないんだから、転がって入ったのをカップインとは呼べない。前もってちゃんと説明されていなかったのは不親切だと思うけど、そこまで極悪な話でもないと思うけどな。

8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
言ってることは分かるし、たぶんそれが正しい。ただ残念なことに、その手の落ち着いた意見は掲示板ではまず伸びないんだ。みんな「大企業がケチった」の形で読みたいんだよ。

9. 海外の名無しさん
シンプソンズにこういう場面があったのを思い出した。バーンズが「そうだな、地元の孤児院に100万ドル寄付してやろう……豚が空を飛んだらな!」と言った直後に、窓の外を豚が飛んでいく。スミサーズが「では100万ドルのご寄付を?」と聞くと、バーンズは「うーん、やっぱりやめておこう」。

10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
よく聞いてほしい。バーンズは「豚が」ではなく「豚たちが飛んだら」と複数形で言っているんだ。1匹では条件を満たしていない。……という理屈がまかり通ってしまうのが、まさに今回の話なわけで。

11. 海外の名無しさん
このブランドイメージをさらに下げる方法があるとすれば、その打球が缶を倒して、観客席の小さな子どもに直撃するくらいしか残っていない。

12. 海外の名無しさん(>>11への返信)
しかもその子が、難病の子どもの願いを叶える団体(メイク・ア・ウィッシュ)の企画で球場に招待された子だったら完璧だ。コメディドラマの脚本でも、さすがにもう少し手加減すると思う。

13. 海外の名無しさん(>>11への返信)
そのうえで、倒れた缶の塗り直し代を子どもの親に請求するところまでがワンセットだろうね。塗料の会社なんだから、もちろん自社製品を定価で。

14. 海外の名無しさん
あまり知られてないけど、この手の大型賞金の企画は保険商品として成立してる。主催する企業は保険料を払うだけで、達成されたら保険会社が賞金を出す。つまり細かい条件を決めているのは、企画を打ち出した会社というより保険会社のほうなんだ。

15. 海外の名無しさん
たぶん、いちばん安いプランに入ってたんだと思う。「ノーバウンド限定」にすれば達成確率がぐっと下がるから、保険料もそのぶん安く済む。その節約分が、結局この評判に化けてしまったわけだ。

16. 海外の名無しさん
元記事を読む限り、「これは条件を満たさない」と説明したのは球団側なんだよね。シャーウィン・ウィリアムズに代わって言っただけかもしれないけど、あの記事にはスポンサー本人が支払いを断ったとは書かれていない。もっとちゃんとしたソースがあるなら読んでみたい。

17. 海外の名無しさん
逆の例もあるよ。シンシナティ・レッズには、右中間の煙突の間にある看板に当てたらファンに新車が当たる企画があるんだ。まだ誰も当てたことがないんだけど、ある試合でジェシー・ウィンカーの打球が、あと3インチ(約8センチ)というところまで迫った。それを見た球団とディーラーが「もう当たったようなものだ」と言って、本当に新車を贈ったんだよ。

18. 海外の名無しさん(>>17への返信)
よほど型落ちのトラックを在庫から動かしたかったんだろう、という見方もできなくはない。それでも「当たったようなものだ」と言って本当に渡したほうが、100倍かっこいいのは間違いないな。

19. 海外の名無しさん
この会社、年間の売上高は3兆円規模だぞ。100万ドル、日本円で1億数千万円というのは、ざっくり計算すれば1時間ぶんの売上にも届かない。その1時間ぶんを惜しんだせいで、いまだに掲示板でネタにされ続けてる。

20. 海外の名無しさん
自分がライバルの塗料メーカー(ベンジャミン・ムーアあたり)の社長だったら、その場で100万ドルを出してたね。競合をケチに見せたうえで、自分は約束を守る側として名前が出る。広告費として考えたら、100万ドルは破格の安さだよ。

21. 海外の名無しさん
ちなみにこの会社のロゴ、地球儀の上でペンキ缶を傾けて、赤い塗料を惑星まるごとに流しかけている絵なんだ。あれを自社の看板として堂々と掲げられる会社が、世間の目を気にすると思うか?

22. 海外の名無しさん
告知文をよく読むと「エンゼルスの選手が打ったホームランが」と書いてある。つまり相手チームの選手が缶に放り込んだ場合も、財団には1ドルも入らない設計だ。細かいところまで、実によく詰めてある。

23. 海外の名無しさん
金額の大小はどうでもよくて、大きな企業が自分から掲げた約束に抜け道を探しにいく姿が、単純に見ていて気分が悪い。その缶を外野に置いたのはそっちだろう、と言いたくなるんだよ。

24. 海外の名無しさん(>>23への返信)
気持ちは分かるけど、正確に言えば約束は守られているんだ。「ノーバウンドで」はフラジーが缶を置いた時点から書かれていた条件で、シャーウィン・ウィリアムズはそれをそのまま引き継いだだけ。約束を破ったのではなく、最初から条件が厳しかった、という話だと思う。

まとめ

外野に置かれた巨大なペンキ缶と、100万ドルの寄付。実際にホームランが缶へ入りながら寄付が行われなかった理由は、「ノーバウンドで」というたった一行でした。コメント欄は「約束から逃げた」という怒りと、「条件は2014年の告知に最初から書かれていた」という擁護で真っ二つ。そのうえで最も納得を集めていたのは、この手の賞金には保険がかかっていて、条件を一字一句詰めているのは保険会社のほうだ、という説明でした。派手な企画の裏側には、必ず地味な文章がある——スレッドはそんな読み方に落ち着いていました。

元ソース: エンゼルスの外野に巨大なペンキ缶を置き、ホームランが入れば100万ドル寄付すると約束していた塗料会社。実際に打球は缶へ入ったが、ワンバウンドだったため「ノーバウンドで」の条件を満たさず、寄付は行われなかった

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