「箱の中の猫は、観測されるまで生きていると同時に死んでいる」——量子力学を語るときに必ず出てくる「シュレーディンガーの猫」。じつはこの思考実験、提唱者シュレーディンガー本人が「重ね合わせの理論を支持するため」ではなく、「こんなのバカげてるだろ」と否定するために考え出したものだった。創った本人がアンチだったという、なかなか皮肉な話。
※注:「重ね合わせ」=量子力学で、粒子が複数の状態を同時に取りうるとされる現象。観測した瞬間にひとつの状態に確定するとされる。
今日の知ってた?
🐱 シュレーディンガーは「猫の思考実験」を、重ね合わせの理論を「否定する」ために創った。提唱者本人が「ナンセンスを示す例え話」のつもりだったのに、後世では「重ね合わせを説明する代表例」として使われている。
背景:シュレーディンガーの猫とは何だったのか
1935年、オーストリアの物理学者エルヴィン・シュレーディンガーは、当時の量子力学の解釈に強い違和感を持っていた。とくに「観測するまで粒子は複数の状態を同時に持つ」というコペンハーゲン解釈に対し、「それは粒子のような目に見えないものだから許される話で、もしマクロな物体に当てはめたらこうなるぞ」と提示したのが、あの猫の思考実験だった。
箱の中に猫と放射性物質、そして放射線を検知すると毒ガスを放つ装置を入れる。一定時間後、放射性物質が崩壊する確率は半々。コペンハーゲン解釈をそのまま当てはめると、観測するまで猫は「生きている状態」と「死んでいる状態」の重ね合わせになる——でも、そんな猫がいるはずないだろう?というのがシュレーディンガーの主張だった。
もう少し詳しく
本人は「反例」のつもりだった。シュレーディンガーはこの思考実験を「reductio ad absurdum(背理法)」として書いた。「コペンハーゲン解釈をマクロに広げると不条理になる、だから何かが間違っているはずだ」という指摘である。決して「猫は本当に半生半死だ」と言いたかったわけではない。
意図に反して大ヒット。ところが、この例え話は強烈すぎて独り歩きしてしまう。「観測されるまで生きてもいて死んでもいる猫」というイメージのインパクトが大きすぎて、ポップカルチャーから入門書まで「重ね合わせを説明する有名な例」として使われ続けている。提唱者の意図とは真逆の使われ方だ。
似たような皮肉話、もうひとつ。じつは「ビッグバン」という名前も同じパターンで生まれた。提唱者ではなく、対立する「定常宇宙論」を支持していたフレッド・ホイル卿が、ラジオ番組で「あんなのは”ビッグ・バン(大爆発)”理論だ」と揶揄して呼んだのが始まり。皮肉だった呼び名がそのまま定着し、肝心の定常宇宙論のほうは廃れてしまった。
「観測者」とは何か。この思考実験の本当のテーマは、じつは「観測者とは何か」を問い直すことだった。猫自身は観測者ではないのか? 放射線検出器は? シュレーディンガーは「観測者」の定義を厳密にするよう物理学者たちに迫ったのだ。今もこの問いに完璧な答えは出ていない。
海外の反応
1. 海外の名無しさん
つまり彼は思考実験において、同時に成功し、かつ失敗したわけだな。
2. 海外の名無しさん(>>1への返信)
最高に上手いコメント。これぞトップティアの一言だと思うけど、同時にボトムティアでもある。観測されるまで両方の状態を保っているコメント。
3. 海外の名無しさん
似たような話だと、フレッド・ホイル卿が「ビッグバン」って名前を皮肉のつもりで付けたのに、結局その呼び名が定着してしまったエピソードを思い出す。本人は定常宇宙論派だったのに、対立側の名前を流行らせてしまったのは何とも皮肉。
4. 海外の名無しさん(>>3への返信)
カルバン&ホッブス(米国の人気漫画)では、これを「The Horrendous Space Kablooie!(恐ろしい宇宙のドカン!)」って呼んでて、これからずっとそう呼びたいと思っている。
5. 海外の名無しさん
僕がシュレーディンガーの猫を説明するときの会話:「猫は量子的な揺らぎの中にあって、箱を開けて波動関数を収束させるまで死んでもいるし生きてもいるんだ」「は?意味わかんないんだけど」「うん、シュレーディンガーもそう思ってた」——だいたいこれで会話が終わる。
6. 海外の名無しさん(>>5への返信)
シュレーディンガー「で、その猫はさ、生きてもいるし死んでもいるってわけ。意味不明だろ?こんなの……」
科学者会議「素晴らしい!」
シュレーディンガー「あ、いや……あ、はい……」
の流れが想像できて笑える。
7. 海外の名無しさん
まあ、もしあの箱に本当に猫がいたとしたら、今ごろ確実に死んでるとだけは言える。1935年から放置されてる猫なんて、量子力学の前にまず生物学的に無理。
8. 海外の名無しさん(>>7への返信)
もし猫が光速で観測者から遠ざかっていたら? 相対論的に時間の進み方が変わるから、もうちょっと粘れる可能性がある……かもしれない。
9. 海外の名無しさん
ずっと疑問なんだけど、猫自身は「観測者」じゃないの? 自分の生死は自分が一番わかってると思うんだけど。
10. 海外の名無しさん(>>9への返信)
それこそがシュレーディンガーの言いたかったことで、「観測者の定義をもっと厳密にしてくれ」と理論家たちに訴えていたんだ。本人もモヤモヤしてた。
11. 海外の名無しさん(>>9への返信)
猫は実験の一部だから観測者にカウントされない、というのが一応の答え。でもじゃあ「実験の一部」と「外部の観測者」の境目はどこ?という問いが残る。深い。
12. 海外の名無しさん
ちなみに「観測者」って意識のある存在のことじゃないんだよ。「外部からその系を測定できるかどうか」だけの話。一般向けの解説はこのへんを丁寧に説明しないから誤解が広がる。
13. 海外の名無しさん
彼は要するに「ほら、こんなふうにマクロに当てはめたら不条理だろ?だから何かが足りないんだよ」と言いたかったわけだ。レトリックとしては完璧だけど、皮肉なことに「ナンセンスを示す例」のはずがいちばん有名な「ナンセンスっぽい説明例」として残ってしまった。
14. 海外の名無しさん(>>13への返信)
ポップ科学でいちばん誤用されている思考実験ランキング、ぶっちぎりの1位だと思う。映画でも漫画でも引用されまくり。
15. 海外の名無しさん
カモノハシは「アヒルとカンガルーの両方」じゃなくて、「カモノハシという独自の存在」だ。猫の状態もそれに似ている、というたとえを聞いたことがある。要するに「重ね合わせ」を「両方同時」と訳すから話がおかしくなる。
16. 海外の名無しさん
ダイソン球も似た話で、フリーマン・ダイソンが「電波望遠鏡をSETI探査に使うのはもったいない」って皮肉るためにジョーク半分で書いた1ページの論文がきっかけだった。本人いわく「真面目に書かなかったものほど有名になる」って。
17. 海外の名無しさん(>>16への返信)
学者あるあるなのか、それとも世の中あるあるなのか。たぶん後者。本気の論文より思いつきの一文のほうが100年残るパターン、けっこう多い。
18. 海外の名無しさん
科学的仮説は「証明される」ものじゃないからね。観測をうまく説明するモデルとして強く支持されるだけ。証明は数学の領分で、自然科学では起こらない。だからビッグバンも厳密には「証明された」わけじゃない。
19. 海外の名無しさん
学校でこの話を最初に聞いたときから「いや、猫って観測者じゃん」とずっと思ってて、結局それがシュレーディンガー本人の言いたかったことだったと知って妙にスッキリした。
20. 海外の名無しさん(>>19への返信)
たぶん中学生くらいで一度は思いつく疑問だよね。実は最先端の物理学者もまだ完全には答えが出せてないというのが面白いところ。
21. 海外の名無しさん
ベルギーの神父ジョルジュ・ルメートルが、ビッグバンの原型となる方程式を最初に導いた人なんだよね。物理学者でカトリック司祭、すごい肩書き。神様と宇宙の起源を両方研究したことになる。
22. 海外の名無しさん
科学コミュニケーションの永遠の課題は、量子力学における「observer(観測者)」の意味をきちんと伝えられないことだと思う。意識のある人間が見るかどうか、みたいに誤解されがち。
23. 海外の名無しさん(>>22への返信)
日本語でも「観測者」って言うと「観察する人」みたいに聞こえちゃうんじゃないかな。本当は「相互作用する系」とでも訳したほうが近そう。
24. 海外の名無しさん
シュレーディンガー本人は晩年「あの猫の話は、本当はやらなきゃよかったよ」って言ってたって聞いた。意図と真逆の引用ばかりされる発明者の悲哀がにじんでいる。
25. 海外の名無しさん
要するにシュレーディンガーは、「重ね合わせ」をマクロに広げる説明を信じてなかった。なのに今では「重ね合わせの代表例」として彼の名前が世界中で消費されている。歴史って残酷だけど面白い。
まとめ
シュレーディンガーの猫は、提唱者本人が「重ね合わせの理論はマクロに当てはめると不条理になる」ことを示すために考えた「反例」だった。ところが思考実験のインパクトが強烈すぎて、後世では真逆の意味で「重ね合わせを説明する代表例」として広まってしまった。海外の反応も「同時に成功し、同時に失敗した思考実験」と皮肉るコメントが多く、似たケースとして「ビッグバン」「ダイソン球」が挙げられるなど、皮肉が定着するパターンの面白さに脱線が広がった。

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